これは魔法少女ですか?~はい、ゾンビです~   作:超淑女

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19「そう、お前はもう死んでいる」

 翌日、マミは学校を行くのをやめてユウを捜しまわった。

 それは杏子とセラも同じで、マミの家はもはやもぬけの空状態だ。

 一日中探しても見つからない。のは、大体わかっていた。

 だからいくらでも探し続けるつもりでいる。

 

「はぁっはぁっ、ユウ……」

 

 肩で息をしながら走っているマミ。

 今日は使い魔や魔女を良く見つけてしまう。

 こんな日に限って、という感じだ。

 見つけた使い魔や魔女は放置できない。

 

「グリーフシードが溜まるのは良いんだけどねぇ」

 

 そう言えば、グリーフシードが濁るとどうなってしまうんだろう?

 まだしっかりと聞いたことは無い。

 どうせろくなことにならないのは確かだろうけれど……と思っていた矢先、マミの視界に見慣れたピンク色のツインテールが映った。

 

「鹿目さん、どうしたの?」

 

 まどかだけでなく、隣にはさやかもいる。

 

「どうしたのって下校中です」

 

 えっ? とつぶやいてポケットから携帯電話を取り出す。

 着信やメールが何件も入っていて、時刻はもう夕刻だ。

 確かに空を見れば茜色。まったく気づかなかったと反省する。

 

「二人にも話しておいた方がいいかな、場所を変えましょうか……」

 

 そしてマミと共に二人が近くの公園のベンチに座った。

 マミの話が始めった。昨日の帰りユウが居なくなってしまったこと、そして置手紙のことをだ。

 

 

 

 驚いているさやかとまどか、話終えると、暗い顔になった二人。

 ユウを友達と思っていただけあって衝撃は大きいということだろう。

 

「私はまだ探すから、二人とも気を付けてね!」

 

 安全を、という意味もあるだろうけれど魔女狩りの方だろう。

 まどかは帰るがこの後もさやかはパトロール。

 それだけ言うと走っていくマミ。

 さやかとまどかがそこに残るが、さやかがソウルジェムを出すと輝いているのがわかった。

 

「気を付けてねさやかちゃん」

 

 そう言うと、強く頷くさやか。

 踵を返して走っていく彼女の後姿を見て、公園のベンチに一人座って背もたれに寄りかかる。

 まどかはポケットから一枚に紙を出す。

 メモ帳の一ページ。

 

「言えなかった……」

 

 その紙に書かれた文字、間違いなくユウの文字だ。

 まどかは深いため息をつく。呆れるような溜息。

 

「やぁ、元気そうだね……」

 

 急いで顔を上げるまどか。その視線の先には見間違えるはずもなく昨日の青年。

 強い眼差しで、その相手を睨みつけるまどか。

 きっとまどかの周囲にいた人間が見たなら驚くことだろう。

 鹿目まどかは“気弱”で“誰にでも優しい”女の子だ。

 他人を睨むなどと、無いことである。

 

 だが、マミやさやか、杏子やユウなどにあれだけのことをした。

 それは彼女のその視線を受けるに値するということだ。

 

「夜の王……さん」

 

「おや、どこでそれを知ったんだい?」

 

 間違いなくユウ。それを知って聞いているのだろう。

 だがその青年が『夜の王』だということ知るのはまどか一人。

 

「で、ボクの願いを叶えてくれる気には……なったのかい?」

 

 首を横に振るまどか。

 

「それもそうだよね。他人のために自分を犠牲にするなんてね」

 

 笑う夜の王。

 まどかは彼を睨むのをやめる。

 静かに深呼吸して立ち上がると、ずいぶん身長が違う夜の王を“ただ見る”……先ほど睨んでいたのが嘘だったかと思えるほど静かな表情だ。

 だからといって冷めてるような表情でもない。

 

「私、誰かのためにこの祈りが使えるなら何でもいいって思ってた。魔法少女になって誰かを救うのが私の望みだから……」

 

 夜の王の笑みが消える。

 昨晩と同じように金色の眼を開いて、まどかを見つめた。

 冷たい氷のような視線を受けながらも、まどかが揺れることはない。

 

「でも違う。私は魔法少女にならない。それが……ほむらちゃんや、ユウちゃんのためになるなら」

 

 まどかは、ハッキリと口にした。

 

 暁美ほむらは自分に魔法少女になるなと、そう言っている。

 何度も何度も言っているのだ。理由も聞いたが教えてくれない。

 それでも信じる。友達だから、彼女のお願いを聞き、自分は魔法少女にはならない。

 今手に握られているユウからの手紙にも『魔法少女にはならないで』と書かれていた。

 ならば自分はならない。友達を悲しませるぐらいなら、ならない。

 

「じゃあ目の前で死にそうになっている彼女たちがいても、君は見捨てるんだね?」

 

 首を横に振るまどか。

 

「最大限、今の私にできること……やれることを考えて、それでもダメなら……私はその時、魔法少女になるんだと思う」

 

 魔法少女に“なる”のか“ならない”のか?

 まったく正反対な言葉を続ける。

 夜の王は眼を細めた。

 

「それでも一つ言えることがあるの……私の願いは私のために使う、みんなと同じようにでも良い。貴方のためになんて使わない。貴方の願いを私が叶えることがあるとするなら、それは私が貴方の願いを叶えて私のためになる時だけ」

 

 自分の願いは自分のためだけに……それは杏子に言われたことがある。

 誰もが自分のための願いだ。けれど誰かのためにもなる願いもあった。

 それがさやかや杏子の願い。ならば自分もそうして願いを叶えたい。

 

 誰かのためになるなら自分のためにならない願いでも簡単に叶える。

 それは間違いなく―――残酷なことなのだ。

 

「そうか、それが君の答えだね。僕の願いを叶えられるのはこれでユウだけになったわけだ」

 

 背後の影が蠢く。

 まどかはわずかに後ずさる。

 

「フッ、またね……僕の願いを叶える気になったら見滝原動物園に来てくれ、ペンギンの前で待ってるよ」

 

 そして、夜の王は消えた。

 先ほどとは全く違う静寂があたりに残る。

 完全に夜の王が居ないのがわかったからか、まどかはベンチに腰かけて息を吐いた。

 胸を抑えると、ドクンドクンと激しくなっている動悸を感じる。

 片手に持ったユウのメモ帳。

 

 

『先に、この手紙のことは誰にも言わないでって約束してほしい。

 

 まどか、今日はありがとう楽しかった。

 それとごめんなさい。

 私のせいで、貴女まで巻き込んだ。

 

 マミや貴女たちの前から私は姿を消す。

 彼は夜の王。

 夜の王は、また貴女に迫ることがあるかもしれない。

 

 でも決して魔法少女にはならないで、なにがあってもならないで。

 貴女はなってはいけない。

 お願い、私やほむらを信じて』

 

 

 メモ帳に書いてある言葉の数々。

 きっと自分はほむらを信じるということを、忘れていた。

 理由を求めていたのだ。

 

「信じることに、理由なんていらないよね」

 

 頷くまどか。ただ一人、戦わないのはツライかもしれない。

 けれど、今は魔法少女になる必要のないように、彼女たちを信じよう。

 ベンチから立ち上がって、まどかは歩き始めた。

 

 

 

 

 

 日が沈んでからも、マミは街を走り続ける。

 自分にとっての特別。ユウをみつけるまで、諦めるわけにはいかない。

 立ち止まるマミが肩で息をしながら、ふらつく足で再び歩こうとするが、その腕を誰かが掴む。

 振り返ったマミの視界に映るのは、長い黒髪を持った少女。

 

「暁美、さん……」

 

 まっすぐと、いつかとは違う目で自分を見つめるほむら。

 強い意思がその瞳には見える。なぜ、まどかになにかあったのだろうか?

 そう言えば昨晩はユウとまどかが一緒に居なくなったと気づく。

 

「鹿目さんになにか!?」

 

「違う」

 

 ハッキリと、そう言った。

 ならばほむらはなににこんな風に、そう……必死さを感じるのだ。

 今の彼女の眼からまどかに何かがあったということではない。というのは理解できた。

 

「じゃあ、どうしたの?」

 

「貴女のことを心配したのよ……」

 

 昨晩のことを思い出してしまう。昨晩でいろいろあった。

 年甲斐も無く黄昏てしまいそうな自分を抑えてほむらを見つめる。

 

「鹿目さんのこと以外で必死になる貴女なんて珍しいわね」

 

「貴女が魔女に食べられた時にも、必死だったつもりなのだけれど?」

 

 そう言うほむらが、なんだかおかしかった。

 マミはくすくすと笑いながら、息を吐く。

 疲れがだいぶマシになってきたのだろう。

 

「そうね、あの時は嬉しかった。でも昨日はまるで他人みたいだったから驚いたわ」

 

「色々、思い出してしまったのよ」

 

 少しうつむき加減で言うほむらに、頷くマミ。

 

「繰り返した時の中でってことかしら?」

 

 少し驚いた表情のほむら。

 悪戯が成功した子供のようにほほ笑むマミ。

 昨日必要以上はきかないと言ったから、これ以上は追及してこようなどとはしないだろう。

 だが一応、ほむらは言っておく。

 

「今はノーコメントよ」

 

“今は”ということはその内語る気はあるようだ。

 頷くマミがほむらの頭をそっと撫でた。

 身長はほぼ変わらないので、多少なりとも腕を上げることになるが十分絵にはなる。

 

「さて、暁美さんが心配してくれたのは嬉しいんだけど……私はユウを見つけなきゃいけないから」

 

「取りあえず今日は帰りなさい。セラフィムさんに話は聞いた……私も探しておくから」

 

 少し強いほむらの言葉。ほむらの腕をつかむ力は強い。

 

「今夜は魔女も使い魔も少ないでしょうね、貴女やセラフィムさんが片付けたから」

 

 マミは、おとなしく頷いた。

 魔女や使い魔をずいぶん狩ったこともあり疲れ切っている。

 なによりも自分が晩御飯を作りに帰らなければ、セラの壊滅的な料理が杏子に振るまわれるだろう。

 

「それじゃ、よろしく頼むわね。暁美さん」

 

「ええ、任せなさい」

 

 その言葉を最後に、ほむらはその場から消えた。

 いや、移動したで正解なのだろう。全てがマミの推理道理だとしたら彼女の能力は中々どうして疲れるものだ。

 だがそれでもユウの捜索を手伝ってくれるというのだから、彼女もそれなりに自分たちを認めているのだろう。

 友達というには少し気が早いかもしれないが“友達”になるまでそこまで時間はいらないはずだ。

 

 

 

 

 

 マンションへと帰ってきたマミが、靴を脱いでリビングへと入る。

 若干ながらそわそわしている杏子が一人だけ。

 セラは、帰ってこないだろう。

 ここ数週間、一緒にいたのだから多少のことはわかる。

 

「お腹減った?」

 

「うん」

 

 どこか上の空の杏子の返事を聞くと、マミはすぐにエプロンをつけた。

 おそらく杏子もほむらから言われたのだろう。

 準備をして、食材を切っていくマミ。

 

「(はぁ……ユウ、どうしちゃったのよ……)」

 

 ユウのことを考えながら食材を切っていると、指先に痛みが走る。

 

「痛っ!」

 

 指がさっくりときれていた。骨まで達していないものの、決して軽い傷ではない。

 前ならば舐めたり消毒液をかけていたものの、今はその必要はなかった。

 流しの蛇口を捻り水を流して、指をつける。

 だらだらと流れていく血はすぐに止まって傷も再生。

 

 とりあえず、学校は二、三日休もう。

 受験生にあるまじき行為かも知れないけれど、知ったことでは無い。

 少し遠出してみても良いかもしれないし、風見野などの隣町も調べよう。

 マミはフッ、と笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 巴マミの背中は、私にとっての目標だった。

 あの子は私の理想というより、友達という意識の方が強かったから……私の魔法少女としての憧れ、正義の味方は巴マミ。

 私が守りたいのは願いを叶えるまではまどか一人だった。

 きっと、私は彼女の隣に立ちたかったんだと思う。

 

 彼女は強い人だから、私が守るなんておこがましいとまで思っていた。

 けれど、彼女は全然強い人なんかじゃなかった。むしろ彼女は弱くて、脆い。

 それに気づいたのは、皮肉にも魔法少女になった次の時間でだ。

 私は彼女だって守りたかったけれど、そんなことできなかった。

 彼女は一人、奴を巻き込み自爆。それでも奴を倒せなかったのは、きっと巴マミの心に迷いがあったからだ。

 

 佐倉杏子。彼女の中での彼女の存在は大きいものだった。

 彼女さえいれば戦力的にも倒せたし、巴マミの心の中のしこりだって取れたはず。

 まどかと巴マミを救う。それだけで良かった。

 

 けれど、次の時間でまた増えてしまう。

 あの頃の私はバカで臆病で説得力のある話方もできなかったから、誰も信じてくれなかった。

 そこの時間軸で、魔法少女の美樹さやかを初めて見て、そして巴マミのもろさを実感。

 美樹さやかは魔女へと変わり、私が始末した。

 でも、終われば巴マミが佐倉杏子を撃ったのだ。

 なんだか悔しかった。彼女の心中相手、一番はやはり佐倉杏子。

 

 そこでも命拾いした私は、その時間軸の最後、魔女になると思いきややはり命拾い。

 私はそこで初めてまどかを自らの手で“殺した”のだ。

 その後も戦い続けた。まどかのために、巴マミのために戦い続けた。

 美樹さやかが死ねばまどかが願う。佐倉杏子が死ねば巴マミは脆くなる。

 全員を助けなければ希望は薄い。

 

 でも、まどかをなんとか魔法少女にしなくて良い時間軸もあった。

 さやかが死んで、それでもまどかが魔法少女にならなかった時間軸。

 それでも、彼女は死んだ。ワルプルギスの夜に殺された。

 きっと巴マミと佐倉杏子に戦闘中気を使いすぎたせいだと思った。

 

 私の願いは『まどかを守る私になりたい』だったなら、私はまどかを生き残らせればそれで良い。

 そう。それが私の願いなのだから、と自棄になって戦い続けた。

 私の戦い。そう。だけれど彼女を見捨てることだけがどうしてもできない。

 でもしなければならない。だから最後に、もう一度だけ彼女に頼ってみようと思った。

 

 

 その結果、彼女は私に依存。

 彼女は寂しがりやで脆い。あの時間軸の彼女は私に依存していた。

 最終的に、私は彼女に私以外の存在が見えないようにした。

 それで彼女はもう一人の魔法少女候補者であるまどかに対してもまったく興味を示さない。

 私はひそかに杏子に協力を仰いだ。

 

 そして三人でワルプルギスの夜に挑んで、戦った。

 佐倉杏子は巴マミをかばって死んだ。そしてマミは、私をかばって死んだ。

 結果、巴マミはワルプルギスの夜との戦いに出してはいけないことを理解できた。

 彼女は誰かをかばって、誰かのために死んでしまう。

 

 もう、まどか以外はどうでも良かった。

 

 

 

「なのに……」

 

 小さな和室で彼女はつぶやく。

 自分の頭を押さえながらつぶやいた。

 この異質ともいえる状況下、彼女は葛藤していた。

 もう誰にも頼らないと決めた。それでも、自分は彼女に頼っている。

 

「まどかっ……」

 

 まどかはまどかじゃない。そして彼女は彼女じゃない。

 みんな違う。自分を助けてくれた彼女でもなければ、自分に銃を向けた彼女でもない。

 自分に敵意を向けてきた彼女でなければ、自分に好意を向けてきた彼女でもない。

 

 とっくの昔に、暁美ほむらは迷子になっていた。

 

 それでも、ほむらはここでみんなを救いたい。

 自分の意思で、強くそう思った。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 そして、三日が過ぎた。

 結局ユウは見つかることは無く、ワルプルギスの夜が現れるまでそれほど時間もない。

 季節は冬。二日前に降った雪はだいぶ溶けたが、今だ街には残った雪がある。

 

 まだ街に残っているはずの雪。

 しかし、マミとほむらの二人が立つ場所に雪などない。

 周囲に咲く桜。周囲の木々は桜の花びらを散らせている。

 

 火花と共に、銃弾が飛ぶ。

 

「まったく、次から次へとっ!」

 

 鬱陶しいと言わんばかりの声音で言うマミ。

 ほむらと背中を合わせて、拳銃サイズのマスケットを持っている。

 背中を合わせているほむらも、その手に拳銃を二挺持っていた。

 

 二人の周囲には木が人型になったような使い魔。

 歪な姿は使い魔らしい。

 きっと人間の醜い部分を具現化したらこんな感じなんだろうと、思う。

 

「(最深部のはずなのに、魔女がどれかわからないっ)」

 

 舌打ちをするマミがマスケットを撃ち、新たに創作した技を使った。

 

「カーリコ!」

 

 お得意のイタリア語、和訳するならば『再装填』つまりはリロードだ。

 今まで単発を撃ち使い捨てだったマミの武器だが、これによりだいぶ戦いやすくなった。

 リロード速度もそれほど遅くない。ほむらの持つ拳銃ほどではないがそこまで隙なくリロードは可能だ。

 

「暁美さん、ここの結界の魔女の弱点とかわからない!?」

 

「経験がないわ!」

 

 まったく困ったものだと、頭を抱えたくなるマミだがそんな余裕はない。

 二人で背中を合わせながらハンドガンで敵を撃ち続けていく。

 マミが敵を撃ちながら、ふと考えたことを実行してみる。

 

「暁美さん、跳ぶわよ!」

 

「え?」

 

 戸惑いの声を上げるほむらを無視して、ほむらをお姫様抱っこ。

 そしてそのまま足の力を上げて、跳んだ。

 魔法少女状態での限界は今のところ、千パーセント。

 結界の空高くまで跳ぶと、ほむらをさらに上に投げる。

 

「っ!?」

 

 叫び声をあげることもできぬまま、空に飛んで行くほむら。

 マミが下方に体を向けると、腕を振る。

 マミの背後から現れる巨大な二つのマスケット銃。

 

「ドゥーエ・ステルミナトーレ!」

 

 彼女が叫ぶ。それと共に“二つの破壊者”は同時にその魔弾を放つ。

 地上へと真っ直ぐとんだ魔弾は、地上で爆発し、桜の木などに火を放った。

 炎の中心に、華麗に着地したマミ。

 空から落ちてくるほむらを確認して、ほむらをリボンで受け止めた。

 ゆっくりとおりてくるほむらが地面に立つ。

 

「死ぬかと思ったわ。まったく」

 

 あたりの風景がガラス細工のように割れていく。

 魔女の結界は崩壊し、二人は早朝の廃ビルの中に立つ。

 軽く欠伸をするほむら。

 

「はしたないわよ暁美さん?」

 

「しょっちゅう死んでる貴女に言われるのは癪ね、何回死んでるのよ」

 

 そう言われると、マミはぐうの音も出なかった。

 かつての彼女ならば、あまりに無様な戦いをすれば『魔法少女の戦いは常にエンターテイメントでなければならない!』ぐらい言い出しそうだったが、何度も死んでて優雅もエンターテイメントもあったものじゃないと思う。

 

「しょうがないじゃない」

 

 分が悪いという表情をして、言うマミ。

 どこかそんな姿が先輩や年上っぽくなく、ほむらは微笑する。

 そんな笑みを見てマミも笑みを浮かべた。

 この三日でずいぶんと仲良くなれたものだと頷く。

 いや、仲直り、と言った方が正しいかもしれない。

 

「(フフッ……死んだ甲斐もあるというものね)」

 

 マミは自分て納得したような顔で、頷いた。

 

 ―――巴マミ、魔法少女でゾンビです。あと、人探ししてます。

 

 

 

 




あとがき

はい、今回はユウが居なくなった翌日です!
まどかが夜の王を拒絶しました。
多くは語りませんが、ほむほむも葛藤していたということです。
これからどうなっていくのか!お楽しみに♪

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