これは魔法少女ですか?~はい、ゾンビです~   作:超淑女

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1「はい、魔法少女です」

 事故現場。トラックは止まっていて、先ほどのサラリーマンは空いた口がふさがらないと言った様子だ。

 そこには何もない。

 何一つも無いのだ。

 現場は、困惑した空気に包まれていた。

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 マンションの一部屋、表札に“巴”と書かれた家。

 玄関に倒れこんでいる金髪ダブルロールの少女。

 名前は巴マミ。

 

「ぞ、ゾンビじゃなかったら即死だったわ……」

 

 なんとか壁を支えに歩いてリビングに行くと、そこに座っている少女が一人。

 今朝と同じくお茶を飲みながらテレビを見ている。

 いつも通りの光景だ。

 

「ただいま」

 

 疲れ切ったマミがそう言うが、眼のハイライトはどことなく暗い。

 死なないものの、体のダメージも尋常じゃないのだろう。

 ただ、声一つ出さない少女。

 

「ユウ、ただいま」

 

 “ユウ”と呼ばれた少女はマミの方を見ると片手にボールペンを持ってちゃぶ台の上に置かれたメモ帳をつつく。

 目を細めてそれを見るマミ。そこには文字が書かれている。

 

『飯の用意を』

 

「え?」

 

『めし』

 

 書かれている文字。長い輝く銀髪やプレートアーマーとガントレットの不思議な少女は、ただ無表情でその文字をつついていた。

 頭を片手で押さえる。ボロボロで髪も所々跳ねていた。

 あくまでも理性的に、マミは言う。

 

「ご、ごめん…今、軽くトラックにはねられたとこで」

 

『無問題。メニューは。満漢全席』

 

 一文ずつ書かれたその文章。

 伝えたいことは終わったのか、ペンを置くとお茶を飲みながらテレビを見ている。

 ボロボロのマミの足がガクガクと奮えていた。

 

「(これは巷に言うツンってやつよね?ほ、本当の気持ちは……)」

 

 マミの頭の中にユウが現れる。

 顔を赤らめているユウが、マミの頭の中で言う。

 

「お姉ちゃん、ユウお腹空いちゃった。早くご飯作って……あと、お・風・呂♪」

 

 一しきり妄想を終えると、マミはリビングのユウから視線を逸らして頷く。

 マミの少女はどことなく嬉しそうだ。

 

「そう、シャイなのね。お姉ちゃんユウのために頑張るからね」

 

 そう言うと、食事の準備のため立ち上がるマミ。

 ユウはマミの方を見ることも無くただお茶を飲みながらテレビを見ていた。

 

 

 

 キッチンにて、マミが米を磨いでいる。

 私服姿に着替えているマミは袖をめくって慣れた様子でやっていた。

 その背後にはユウが立つ。

 ユウは、静かに自分の手を見た。

 

「あぁ、その手で手伝おうなんて思わなくても良いからね」

 

 オープンフィンガーの手袋とガントレットを付けた手。

 マミはユウを見て優しく笑う。

 それを見て、ユウも頷いた。

 優しいのね、とマミが言うがユウはただ黙ってマミを見続ける。

 

 

 

 ちゃぶだいに並べられた食事の数々。ちなみに満漢全席は無い。

 実はユウがやってくる前まではガラス張りの三角形のテーブルだったのだが、ユウと買い物に行った時、ユウがこれを見ていた。

 実用性があって安い物ばかりのホームセンターに売っていたので買ったのだが、結構強度もあることがわかり買って正解だったと思っている。

 最近はあのテーブルよりもこちらの方がマミも気に入っているほどだ。

 

「ところで、今日はなにしてたの?」

 

 食事をしながらマミが聞く。

 ユウが食事の手を止めてペンとメモ帳を持ち、マミに見せる。

 

『寝てた』

 

 マミの脳内で再び妄想が始まる。

 顔を赤らめたユウこと妄想ユウが可愛らしい声で言う。

 

「えへ、お昼寝してたら夕方になっちゃった」

 

 ゆるんだ表情でうなずくマミ。

 そして、ふと気づいた。ユウの口の横にご飯粒が一つ。

 身を乗り出すマミ。

 

「ほら、ご飯粒ついてるわ―――」

 

 ―――よ。と言おうとしてそのご飯粒を取る寸前で、ユウがマミの手首を裏拳。

 凄まじいダメージと共に、マミの骨がゴキ、と鳴る。

 

「ひぎぃっ!?ぬうぅぅぅっ!人をゾンビだと思ってぇ!」

 

 手首を抑えながら床に突っ伏すマミが恨めしくユウを見た。

 ユウは片手でペンを使って文字を書くと、メモ帳をマミに見せる。

 

『ゾンビじゃなかったら、ここにいない』

 

 もう再生したのか、マミはそのメモ帳を静かに見た。

 ん?と頭を傾けるマミに、ユウはメモ帳のページをめくる。

 

『迷惑?』

 

 それを見ると、マミは微笑。

 なにを馬鹿なと言うようなマミの表情。

 

「いえ、ユウが生き返らせてくれなかったら……私は死にっぱなしだったわけだしね。一先ず感謝してるわ」

 

 そう言うと―――ユウは何も答えず、表情に表さず食事を再開する。

 一見無愛想に見えるも、マミはユウのことなら大体わかっていた。

 

「(死にっぱなしだったら……私を殺した人も見つけられないしね)」

 

 マミは目を細める。頭に思い浮かぶのはマミの家では無い部屋にぶちまけられた血液と、自分を貫く白銀の刃。

 刀身は確実に刀のものだった。

 

 

 

 

 

 食事を終えて、食後のお茶を飲むユウ。

 マミはそんなユウを見て物思いにふけった顔をしながら紅茶を飲む。

 冥界のネクロマンサー。ユークリウッド・ヘルサイズ。

 マミと住み始めて一ヶ月。一体何者なのか、マミにもそれはわからない。

 

 テレビを見ていると、マミにとって興味深いニュースが始まった。

 また自分たちが住んでいる見滝原市の隣町にて殺人事件のようだ。

 “姿無き連続殺人”あの日自分を殺したのも、きっとそいつの仕業。

 マミは今すぐにでも探しに、隣町行きたかったがそうも行かない。

 

「じゃ、行ってくるわね」

 

 そう言って立ち上がるマミ。

 ユウがメモ帳を持ち上げる。

 

『行ってらっしゃい』

 

「ええ」

 

 嬉しそうに頷くマミが家を出ていく。

 別に“姿無き連続殺人”の犯人を捜しに行くわけでは無い。

 マミの指輪から小さな宝石が現れる。

 黄色い宝石のわずかな光を見ながら、マミはマンションを出た。

 

 

 

 マミが探しているのは、非現実的なもの。

 歩いていると、マミの手の上にある宝石が一層強く輝いた。

 それに気づいて、歩いていくマミがついたのは路地裏。

 

「さて、一仕事終わらせてちゃっちゃと帰っちゃわないとね!」

 

 マミが宝石を目の前に出す。その瞬間、体を包む光。

 それと同時にマミの服装は大幅に変わっていた。

 黄色を主体とする服装。

 彼女が“魔法少女”として戦うべき時の正装。

 

 そのまま、路地裏の壁にある刻印を撃ちぬき。その中に入る。

 

 

 

 じっくり見れば吐き気を催しそうなほどのおぞましい絵が書いてある壁。

 そんな絵が描かれている壁。そして廊下。

 溜息をつくマミが、どこからかハンドガンサイズのマスケット銃を出現させる。

 それを両手に持って走るマミ。

 

「まったく、使い魔なのに面倒に迷路広げてくれちゃって!」

 

 廊下を走っていると、大きなドームのような場所に出た。

 天井付近を飛んでいる巨大な翅が生えた芋虫。

 まったくおぞましい容姿だと苦笑するマミが、両手のマスケット銃のトリガーを引く。

 奇声を上げながらその銃弾をよけていく“使い魔”と呼ばれる存在に、内心イラッとしながらも、マミは次々とマスケット銃を召喚して撃ち続ける。

 数発が当たって落ちていく使い魔。

 

「終わりかしら?」

 

 そう言うと近づいていくマミ。

 マスケット銃を召喚したりなどの“魔法”を使うための力。魔力を削減させるためにハンドガンタイプでしとめようと近づいていく。

 近づくための一歩を踏み出した瞬間、片足が沈んだ。

 刹那、背後から白い円盤が飛んでくる。

 

 上半身と下半身の間を、スッと抜ける円盤。

 マミが芋虫のような使い魔相手に銃を撃つ。

 銃声と共に使い魔が消滅。それと同時に、その不思議な空間“結界”も同時に壊れた。

 そこは先ほどと同じ路地裏。

 

「なにこれ痛い」

 

 ずるっと音を立てて、マミの上半身と下半身がずれて、倒れた。

 顔面から地面に落ちるマミが、腕を使ってあおむけになる。

 下半身は横に転がっていた。

 魔法少女姿からもとに戻ると、私服が血で汚れはじめる。

 

「あちゃぁ、まあ魔法で綺麗にできるかな……」

 

 それよりも、合体しなければと動き出すマミ。

 腕を使ってうつぶせになると、両腕をつかって動きだす。

 

「キャアァァァッ!」

 

 叫ぶ声が聞こえる。

 顔を上げると、路地の先の道に女性が一人。

 自分を指さしてガタガタと震えていた。

 これは不味いと汗をかきながら、片手を女性に出す。

 

「すみません!手伝ってほしいんですけ―――」

 

「キェェェェェアァァァァァァシャベッタァァァァァァァ!!!」

 

 女性は叫びながら走り去って行った。

 これは不味いと、マミは身体を両手で引き摺って移動しはじめる。

 正直いって不気味な光景であった。

 

 

 

 

 

 

 なんとか上半身と下半身をくっつけて帰ってきたマミ。

 血まみれだった服は魔法で綺麗にした。

 玄関を開けて、ダルそうにリビングのちゃぶ台の前に座る。

 ユウはメモ帳に『おかえり』とだけ書いて見せてきた。

 

「ただいま」

 

 優しげな表情で言うマミに、ユウはそっと頷く。

 マミはティーポットに残されている冷えた紅茶をティーカップに注いで飲む。

 ふぅ、と息をついて、この後のことをを考えた。

 風呂に入って、寝て、また明日。

 

 溜息が出るほど、マミにとっての日常通りだ。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 翌日。朝から強い日差しの元、授業を受けている巴マミ。

 窓際の彼女にとっては強いはずの陽の光だが、考え事をしているようであまり気にしていないようだ。

 

「(アンデッドであり魔法少女である。私という特異点がきっとなんらかの異変を呼び出しているのね)」

 

 難しい表情で何かを考えているマミ。

 

「(ユウの存在もわからないけれど私の存在も相当謎だわ。魔法少女でゾンビなんて魔法少女じゃないじゃない……ガイアよ。私に一体どうしろと言うの?)」

 

 難しそうな表情でいろいろと考えているマミだったが、チャイムが鳴って、昨日と同じく友人が傍に寄ってきた。

 ちなみに名前は“夏乃(なつの)”という。

 

「きゃぁぁっ!」

 

 叫びの原因。

 そちらを見る。夏乃はマミの腕を指さして震えている。

 指の向いている場所を見ると、マミの左腕。

 マミの左腕は陽が長時間あたっていたためか干からびている。

 

「マミの手がカッサカサだぁっ!」

 

 困った。本当にゾンビとは大変なものだ。

 これでも魔法少女なのだけれど、と言いたくなる気持ちを抑えて、まず水が必要だと水道へと走った。

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

 

 

 放課後。今日はいつにも増して日差しが強い。

 あまり外に出たくないので教室で日が陰るまで待つことにした。

 使い魔たちのせいで人になにかがあるかもと思うが……自分がやられては元も子もない。

 そんな時、夏乃がやってきた。

 

「まだ帰らないの?」

 

「ええ」

 

 振り返ってそう言う。

 一ヶ月前まではホームルームが終わり次第ダッシュで帰っていたマミにしてはかなり珍しい。

 夏乃とだって一緒に遊んだことは無いほどだ。

 

「最近いつも残ってるけど、なにしてるの?」

 

「(ゾンビは日向を歩けないのよ)」

 

 心の中で思っても口が裂けても言えることでは無い。

 だからこそ、しっかりと疑われないように言う。

 

「色々事情があるのよ」

 

「帰れない事情?」

 

「複雑な家庭なのよ」

 

 疑わしい目でマミを見る夏乃。彼女、というより同じ小学校の同学年は全員知っている。

 マミの両親が居なくなって一人暮らし。

 だからこそあまりみんな突っ込んだことを言わないが、夏乃は別だ。

 夏乃の疑う表情に、顔をしかめるマミ。

 

「あっ、そうだ。今日これ持ってきたんだよ。やって感想聞かせてよ」

 

 そう言って夏乃が出したのは“ゾンビハザード”と呼ばれるゲーム。

 マミは魔法少女の時でも出るか、という速度で夏乃の腕をつかんだ。

 

「だめよ!」

 

 ギリギリと音が鳴る腕。

 夏乃は驚愕した表情でマミを見ている。

 容姿端麗文武平等のお嬢様的存在のマミ。

 

「(世界は極めて理解しがたい。ゾンビだからって撃っても良いの?殺戮しても良いの?否、答えは断じて否!私は訴えたい。ゾンビにだって人権はある!)」

 

 その時のマミの眼は魔女を狩る時の眼。それにそっくりだった。

 夏乃は顔をしかめながらゲームをカバンにしまう。

 

「そ、そっか…なんかすごい事情があるんだね。自分に負けないでね!じゃぁ!」

 

 明らかに動揺した顔で教室を出ていく夏乃。

 教室を出てすぐに、夏乃はつぶやく。

 

「一人暮らしも、大変なんだな」

 

 そのまま帰っていく夏乃。

 一方、教室で暗くなるまで待とうというマミの頭に声が響く。

 

『マミ!助けて!』

 

 ユウが来てから一切聞いていない声だ。

 ずいぶん久しぶりだなと思うも、切羽詰まった声に反応する。

 

『どうしたの!?』

 

 テレパシーでの会話に、テレパシーで返すマミ。

 魔法少女としての能力の一つで、テレパシーと使えるのは“魔法少女”と“魔法の使者”であるこの声の主だけだ。

 そしてこの声は後者のもの。

 

『助けて!』

 

 声のする方向を理解すると、昨日の宝石を手に出現させる。

 目をつむると、どこから声がしたのか感じ取れた。

 

『助けて!』

 

 同じ声が聞こえる。

 そしてカバンを持って外に出ようとした瞬間、マミは止まった。

 外の日差し。夕焼けは地を茜色に染める。

 この地獄に赴けと―――そう、言うのだろうか?

 

『マミ!』

 

「(ガイアよ。なぜ貴女は私にこのような試練を)」

 

 茫然としながら外を見たマミは、何かを諦めた表情で走り出した。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 二人の少女が、そこには居た。

 ピンク色のツインテールをした少女“鹿目まどか”と青い短髪の少女“美樹さやか”の二人。

 彼女たちはちょっとした事情により、ある人物から逃げていた。

 だがその最中、突如異質な場所にたどり着いたことに気づき立ち止まる。

 

 そこは使い魔の結界。マミが狩るべき敵の巣窟。

 

「冗談だよね?私、悪い夢でも見てるんだよね?ねえ、まどか!」

 

 さやかが叫ぶが、それでも現実は変わらない。

 使い魔の姿は毛玉に黒いひげをつけたようなファンシーなもの。なのだが、使い魔は突如、口を大きく開きながら巨大なハサミを二人に向ける。

 命が切り取られようとした瞬間―――二人の周囲に銃弾が降り注ぐ。

 

「あ、あれ?」

 

「これは?」

 

 二人の周囲には銃弾により穴が空いた使い魔。

 足音が聞こえて、二人はそちらを見る。

 

「あ、危なかったわね。でも……もう大丈夫、よ」

 

 そこにはやつれた巴マミ。

 二人の少女は同じ見滝原の制服だと気づくも、その次に気づいたことは違う。

 

「なんか便りにならなそうな人キタァァァッ!」

 

 叫ぶさやか。いまだに窮地は抜けられていないと思っているのだ。

 マミは、カバンから水の入ったペットボトルを出すとおぼつかない手つきでキャップを開けて一気に飲む。

 500ミリの水を一気飲み。そしてペットボトルを投げ捨てた。

 

「よし!危ない所だったわね。でも、もう大丈夫」

 

 やつれたマミの表情がつやつやになっている。

 するとマミはその手に宝石を出して、光と共に姿を変えた。

 魔法少女としてのマミが飛びあがると―――上空で手を振る。

 

 あたりに出現するマスケット銃の数々。

 数十を超えるそれを従え―――そして、再び手を振った。

 周囲に配置された銃が一斉に弾丸を撃ちだす。

 あたりの白い毛玉の使い魔は全て消え去る。

 燃え盛る結界。

 

 華麗に着地したマミ。

 それと共に結界が消えて、改装中の建物の一部屋になる。

 

「あ、案外すごい!」

 

「戻った!」

 

 案外は余計だと思ったが、マミは広い心で許す。

 そして、マミは何らかの気配がする方を向く。

 新人ゾンビでありながらベテラン魔法少女であるマミが言う。

 

「魔女は逃げたわ。仕留めたいならすぐに追いかけなさい」

 

 その言葉と共に、物陰から出てくるのは黒髪の少女。

 ずいぶん長い髪の毛だな、と思うマミ。

 黒髪の少女は少し眉をひそめていた。

 

「今回はあなたに譲ってあげる」

 

「さっきカラッカラだったけど、大丈夫なの?」

 

「……飲み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの」

 

 さらに眉間にしわを寄せる黒髪の少女。

 さやかとまどかの二人にも、話を逸らしたとわかった。

 

「まぁ、もし貴女が望むなら話合いで終わらせても―――」

 

「その必要はないわ」

 

 黒髪の少女が消える。

 マミは顔をしかめて溜息をついた。

 振り向くと、二人は安心したような顔をしているのに気づく。

 あの黒髪の少女になにかされたのだろうか?

 

「まぁいっか」

 

 そうつぶやいて頷くと、マミはまどかが抱いている生き物を見る。

 一ヶ月ぶりぐらいに見る。傷ついたその白い体を見て、下ろしてもらう。

 まどかがそっと地面に降ろしたのは白い生き物。地球上のどの生き物にも属さない容姿をした生き物。

 

「(治癒なんて久しぶりね)」

 

 ここ一ヶ月はずっとゾンビだったせいでうまくできるかわからないけれど、なんとなくやってみたら―――成功した。

 傷がふさがった白い生き物は元気よく体を動かす。

 

「ありがとうマミ!」

 

「私は来るの遅れてしまったでしょ、この子達にもお礼を」

 

 この生物がしゃべるのにも慣れているマミがそう言うと、白い生物はさやかとまどかの方に顔を向け、ありがとうと礼を言う。

 さやかは、喋った!とのけ反る。

 

「あなたが私を呼んだの?」

 

 マミはわずかに疑問を抱く。

 

「(助けてもらうのにこの少女を呼ぶ意味はあるのかしら?)」

 

 助けを必要としているなら自分だけでいいはずだ。

 特に、あの魔法少女に痛めつけられたなら。といまいち腑に落ちていない。

 

「そうだよ、鹿目まどか、それと美樹さやか」

 

 なぜ名前を知っているのかと、美樹さやかは疑問を持つ。

 確かにそれはマミも思った。でも魔法の使者と自称してしまうぐらい魔法の使者なのだから知っていて当然か?と納得。

 そして白い生物は二人に向けて言う。

 

「ボクの名前はキュゥべぇ。ボクと契約して、魔法少女になってほしいんだ!」

 

 キュゥべぇが笑みを浮かべてそう言うと、まどかとさやかの二人は若干戸惑っているようにも見える。

 だがマミはそんな二人と一匹構うことはしない。変身を解除してカバンから携帯電話を取り出した。

 すでに時刻はいつも帰っている時間。

 

「お腹空かせてるわよね」

 

 急いで帰ろうと頷く。後ろでキュゥべぇが二人に説明してあげて欲しいとか言っているが構いたくない。

 正直な話、今はユウの空腹の方が心配だ。

 しかし、二人の後輩は目を輝かせながらそのことについて聞きたそうにしている。

 巴マミは大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

 ―――私、魔法少女です。あと、ゾンビです。

 

 

 

 

 

 




あとがき

はい!とりあえず一話でした。
この調子でガンガン頑張っちゃいますからね!
舞い上がっちゃってますね。私!

ゾンビで魔法少女なマミさん。魔法少女にあこがれる二名。魔法少女な二人。
そして冥界人であるユウとの物語はこうして始まります!!

さて、一応悩んでるんですがこれゾンのキャラクターってもっと出した方が良いんですかねぇ~
ハルナが出る予定はとりあえず無いんですが、サラスとかトモノリも出したいってのもあって……

とりあえずこれからも頑張っていくのでよろしくお願いします!!
感想くれたら、それはとっても嬉しいなって♪

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