ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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番外編4 龍神様とほのぼのです!

 俺、兵藤一誠は悪魔である。

 そしてドラゴンファミリーの一員である。

 ドラゴンファミリーっていうのは俺の使い魔であるティアこと、最強の龍王、”天魔の業龍”(カオス・カルマ・ドラゴン)ことティアマットが名付けた名称だ。

 ちなみにメンバーはパパドラゴンことドライグ、マザードラゴンことフェル、自らを姉ドラゴンと決め顔で語るティア、そして妹ドラゴンのフィー、メル、ヒカリ。

 そして最近、爆弾的な発言をして従妹ドラゴンとなった”無限の龍神”(ウロボロス・ドラゴン)のオーフィスが俺の家族とも言ってもいい仲間だ。

 さて、そんなオーフィスなんだけど今は俺の隣にいる。

 格好はいつものゴスロリ風のファッションで俺とオーフィスは今、休日を二人でのんびりと過ごしていた。

 駒王学園の騒動が終わってから既に4日・・・アザゼルが俺達、眷属の前に再び現れオカルト研究部の顧問になってから一日が経過している。

 ……オーフィスは現在、俺の家に9割くらい居候みたいな感じで居座っている。

 まあ俺は別に良いんだけど、実は母さんを説得するのにはあまり苦労はしなかった。

 母さんは実は人情深い人で、オーフィスの今の状態。……すなわちオーフィスが一人ぼっちなのが可哀想だっていったら、勝手に話を解決させて即答でOKって言ってきたんだ。

 後から聞くと、母さんは一人ぼっちを天涯孤独ってことだと勘違い(まあ実際にはあながち勘違いではないけど)したらしく、それでアーシアの時と同様に俺がオーフィスを助けたと思ったらしい。

 っということもあり、母さんの許しを得たことでオーフィスは俺の家に住んでいるってわけだ。

 そして今、俺達は家の縁側でゆったりとしていた。

 

「我、イッセーと遊ぶ」

「んん? どうした、オーフィス」

 

 俺は縁側で日差しに当てられてウトウトしていると、突然オーフィスは俺にそう言ってきた。

 確かに俺とオーフィスが二人きりで遊ぶことは今まで一度もなかったな。

 

「う~ん……。確かに暇だよなぁ~。部長は何故か知らないけど一時的に冥界に帰ったし、母さんは友達の人と食事、アーシアは今日はゼノヴィアと買い物に行っているらしいし……」

 

 そう、今日この家にいるのは俺とオーフィスだけなんだ。

 俺はオーフィスが隣にいてくれるだけで嬉しいし、オーフィスは俺の行動に興味深々で俺の後ろをいつもついてくる。

 傍から見たら小鳥が親について行くみたいな感じでどこか癒されるんだよ。

 オーフィスは見た目は可憐でか弱そうな女の子だからな。……その実、世界最強のドラゴンだけど。

 

「……我、イッセーとやりたいこと、ある」

「やりたいこと? 別に出来ることなら何でも良いけど……」

「なら我、イッセーと子づ―――」

「ちょっと待て、それどこから仕入れた情報だ」

 

 俺はオーフィスから聞いてはいけない単語を言いかけたので、オーフィスの口元に手を当てて言葉を遮るッ!

 オーフィスは何でも信じてしまう純粋な子なんだからそんなことを教える輩は許さないぞ!

 正直、見当はついているけど!

 

「我、イッセーの仲間、一人一人に聞いた。イッセーと何したい、そう聞いた」

「うんうん、それで?」

「ゼノヴィア、我に言った。女の喜び、イッセーの子供、産むこと」

「……いやいやいやいや! それ間違っているから!! その言い方ならこの世の全ての女が俺の子供を作ることが喜びになるからな!?」

 

 俺はオーフィスにそう諭して、そして心の中でゼノヴィアに少し後で説教をしようと考えた。

 全く……そう言えば祐斗が俺に最近、言っていたな。

 

『イッセー君、いいかい? 夜は気をつけた方が良い。むしろ部屋に鍵を何重にも施錠して彼女の魔の手から逃げるんだ。いいかい? これは親友としての絶対のお願いだ―――ゼノヴィアは本気で君の貞操を狙っているからね』

 

 ……うん、聞き流そうかと思ったけどあまりにも真剣すぎる表情に俺は素直にうなずいたよ。

 

「子作りダメ。……なら我、イッセーとデート、したい」

「ちなみにそれは誰の意見?」

「アーシア」

 

 ……うん、アーシア、俺は君の事を信じていたよ!

 今度思いっきり可愛がろう。……俺はそう決心したのだった。

 

「デートか。それなら全然いいよ?」

「ふふ……我、とてもうれしい」

 

 オーフィスの笑顔を見て俺まで嬉しくなる。……オーフィスはこのうちに来てから少しずつ表情が増えてきたんだよな。

 こうして見ると普通の女の子と変わらないし、なんかどうにか守りたくなる。

 守るっていうのは力とかそう言うのじゃなくて……。なんていうんだろう、悪い奴に騙されないように一緒にいたいって感じだな。

 

『龍神とデート、か。この世界でそんなことをしたのはお前が初めてだよ、相棒』

『流石は我が主様です。ですが最近の主様は頼もしすぎて、もう少し甘えてもいいと思います!!』

『そうだな。……なんと悲しいことか。いや、パパとしては子供の成長は喜ぶべきか……』

 

 ドライグとフェルが好き勝手言ってくれてるけど、とにかく俺は立ち上がって体を軽く伸ばす。

 

「じゃあ行こっか?」

「うん」

 

 そして俺達は支度を済ませ、そのまま外へと行くのであった。

 ―・・・

 俺とオーフィスはお昼前と言うことで喫茶店に来ていた。

 町はずれにあるどこかお洒落な喫茶店で、俺はここのマスターと知り合いだから頻繁に来てたりする。

 あとはまあバイトの子とも仲が良いしな。

 そして俺は喫茶店のドアを開けて店内に入って行った。

 

「あ、いらっしゃいませ~! 何名様ですか? ……ってイッセーくん!」

「おっす、観莉。久しぶりだな」

 

 俺は仲良くしている中学三年生のバイト少女、袴田観莉と軽く挨拶を交わした。

 ……相変わらずエプロン姿が似合っているな、観莉は。

 

「うん、久しぶり! っていうかあんまり顔を見せないもんだからちょっと寂しかったよ~!!」

「まあ色々あったからな。……それで席の方、いいか?」

「うん! 今の時間帯はまだ人が少ない方だしね! っと、今日は一人じゃないんだね?」

 

 観莉はオーフィスに気付いたのか、笑顔でそう尋ねてきた。

 

「我、イッセーの従妹。オーフィス」

「へぇ、オーフィスちゃんか! 可愛いね! イッセー君にこんな可愛い従妹がいるなんて知らなかったよ。あ、席に案内するね~」

 

 相変わらず明るく人懐っこい女の子だな。

 それで俺とオーフィスは観莉に連れられて席に座ってメニューを開いた。

 

「やぁ、久しぶりだね。イッセー君」

「あ、マスター。お久しぶりですね」

 

 するとこの店の主人である通称マスターが一枚のメニューを持って俺とオーフィスにニコニコした表情で話しかけてきた。

 マスターは非常に温厚かつダンディーな人で、どこか渋さを醸し出す髭と優しそうな表情だから昔はさぞモテていたんだろうな。

 この人の淹れるコ―ヒーは絶品で、しかも料理もお手頃価格でおいしいから隠れた名店って感じだ。

 

「はは、これは随分可愛い従妹だね。あ、これは私の新作でねぇ。……良かったら食べるかい? もちろん試作品だからお金はいらないよ」

「でも悪いですよ!」

「いいんだよ。こういうのは第三者の意見が欲しいからね。それにイッセー君との付き合いも長いし、遠慮なんて皆無だよ」

「……それならお願いします!」

 

 ……マスターとは結構長い付き合いだ。

 何せマスターは俺が小学生の頃からの知り合いだからな。

 修行帰りに偶々寄ったこの喫茶店でお世話になったのが俺とマスターの出会いだ。

 それからは周期的にこの喫茶店に来ているよ。

 

「あ、マスター! イッセー君と仲よさそうに話してるのはずるいですよ~~」

「はは。後で休憩がてらに話せば良いよ」

 

 マスターは温厚な表情で俺達に背を向けてそう言った。

 おぉ。……俺はこれぞ紳士だと思うな。

 俺が慕う数少ない人だよ、マスターは。

 

「じゃあイッセーくん! 後でまた来るからね?」

 

 観莉が元気いっぱいの笑顔を見せて店の奥の方に行った。

 ……そして俺とオーフィスは再び二人になる。

 オーフィスは俺の反対側のソファーにいるんだけど、何故かそわそわしている。……どうしたんだ?

 そう思っているオーフィスは突然立ち上がり、テクテクと俺の隣まで歩いてきた。

 

「イッセー。やっぱり我、ここ、一番良い」

 

 そしてオーフィスが座ったのは俺の隣ではなく、―――膝の上だった。

 これは今に始まったことではなく、オーフィスはどうやら俺の膝の上に座るのをお気に召したみたいだった。

 ちなみに同様によく俺の膝の上に座って甘えてくる小猫ちゃんはオーフィスに敵対心を持っているんだけど、まだ小猫ちゃんとオーフィスの争いはないことが唯一の救いか……

 そう言えばオーフィスはアーシアと良くお話をしているみたいで、アーシアは優しい子だからオーフィスの事を特に怖がってはいない。

 むしろ怖がっているのは……そう、俺の後輩にして両性の美少女?であるギャスパーだ。

 何やら龍神という響きが怖いらしく、オーフィスがいる時はダンボールに身を潜めて様子を窺っていることも良く見る光景となった。

 ……部長と朱乃さんは流石というべきか、大人の対応をしている。

 あとはゼノヴィアだけど、良くも悪くもあいつは表裏がないから、オーフィスとは上手くやれているだろうな。

 

「まあいいけど。……でも流石に料理が運ばれてきたら退いてくれよ?」

「我、そこでしたいこと、ある」

「……ちなみに何なんだ? あと誰の意見だ?」

 

 俺は一応、オーフィスに聞いてみる。

 たぶんそれも眷属の皆のしたいことを言っているだろうからな。

 

「我、朱乃の話し、聞いた。……我、イッセーに口うつ」

「うん、やっぱりストップ! っていうか朱乃さん、そこはご飯を食べさせてあげたいとかにしてくださいよ!!」

 

 俺はここにいるはずもない朱乃さんに向かってそう叫んだ!

 うぅ……どうも俺の願いはかなわない。

 皆、アーシアみたいなのだったら喜んでするのに……

 

「?」

 

 ああ、首を傾げさせて目を丸くしているオーフィスは可愛いな、もう!!

 俺はとにかくいたたまれなくなって純粋すぎるオーフィスの頭を撫で撫でしたのだった。

 

「……それ、小猫の言ったやつ。我、とてもうれしい」

「それって頭を撫でること?」

「そう。小猫、イッセー、一日中撫でまわされたい、言っていた」

 

 ……ああ、やはり二大癒しの存在は格が違う。

 俺の嬉しいことをピンポイントで突いてくるぜ!!

 ただ一日中ってところに若干疑問を持っているけどね?

 

「む……ならば我、イッセーにあ~ん、する」

「ああ、母さんの意見か」

 

 何故か母さんの意見ということは俺はすぐに見抜く。……だって他のに比べて普通すぎたから。

 でもおかしいな。

 母さんならもっとドンピシャでアウトな事を言ってきそうなのに。

 

「それならまあ良いけど……」

 

 俺は若干の不安を抱きつつもマスターの創作料理を待つのであった。

 そして俺は料理を待っている間にオーフィスから色々話を聞くことにした。

 

「そう言えばオーフィスが組織に献上した力の半分ってどれくらいのものなんだ?」

「……難しい。我、無限を関するドラゴン。表現、難しい」

『ふむ。……無限というのはな、相棒。元の力はそれほどないが、減るとどんどん力が追加されていく。簡単な例を出せば水を飲んで、また水をとめどなく淹れられると言う具合だ。オーフィスの力の絶対値は図りしれんだろうが、それでも献上した力は有限なのであろう?』

 

 ……ドライグの声が俺に響く。

 でもこの声はドラゴンの力を有する者なら近くにいれば聞こえるらしいから、当然オーフィスにも聞こえていた。

 

「そう。我の存在、それが無限。切り離した力、それは有限。力は所詮、力」

「そう言えばティアがそう言っていたな」

「……我の切り離した力、蛇を幾千も創れるほどのはず」

 

 ……幾千もか。

 流石はオーフィスの力と言うべきか、とにかく厄介だな。

 使用者の力を大幅に上げてしまうオーフィスの蛇。……こりゃあまだまだ強くならないといけないな。

 ―――っていけないな。

 せっかくのデートなのにこんな色気のない話をして……。難しい話はまた後だ!

 

「オーフィスはどこで従妹なんて言葉を知ったんだ?」

「我、ルフェイに教えてもらった」

「……ルフェイ?」

 

 俺は聞いたことのないような名前を聞いて少し疑問に持つけど……もしかして組織の一員とかかな?

 

「ルフェイ、とても良い子。本来、あの組織、いるべきではない」

「ふ~ん。……オーフィスが言うくらいだからそうなんだろうな。でもその子が従妹の存在をオーフィスに教えたのか」

 

 ……うん、一度会って一回くらいはお説教しても許してもらえるだろうな。

 あの発言のせいで俺はティアやら眷属の皆に色々されてるんだから!

 

「は~い、お待たせしました! マスターの気のままメニューです!!」

 

 元気活発な観莉の声が聞こえると思うと、盆を片手になれた動きで料理を運んでくれている観莉が笑顔でそこにいた。

 

「さて、私もついでにお昼……ってオーフィスちゃん! なんて羨ましいことをしてるの!?」

 

 そこで観莉はオーフィスが俺の膝上に座っているのを見て驚愕している。……ってお前、羨ましいって何だよ!

 ……それはともかく、観莉が持ってきたマスターの試作料理は試作とは思えなく位の完成度の高さだった。

 一見は何の変哲もないパスタなんだけど、パスタとソースが分かれていて、そしてソースは2種類に分けられている。

 

「む……イッセー、我、どう食べたらいいか、分からない」

 

 オーフィスは俺の膝の上でフォークとスプーンを両手に持って、目をきゅっと丸くしている。

 …………仕方ないなぁ、ホントもう。

 俺は自分のフォークをオーフィスのお皿に突き刺して、パスタを巻いてオーフィスの口元に持っていった。

 

「ほら、オーフィス」

「ん。……おいしい」

 

 オーフィスは素直にパスタを口に含み、少し表情を綻ばせて喜んでいるようだった。

 そして俺も一口……おぉ!

 流石はマスター、腕は確かだ!

 あっさり系のソースとクリーム系のソースだからバランスも取れてるし……これは売りだしてもいいんじゃないかな?

 

「ふふふ……イッセーくん! あーん♪」

 

 ……すると俺の反対方向に座った、休憩中である観莉がいつの間にか俺の隣に座って悪戯そうな表情で俺にパスタを巻いたフォークをさしだす。

 これはあれか。……俗にいうあーんだな。

 

「……なら我も」

 

 するとオーフィスまでもが俺に向かってフォークを差し出してくる。

 俺の仕草を見てパスタの食べ方は理解したのか?

 ……これは素直に諦めた方が賢明と思い、俺は素直に差し出されたパスタを食べたのだった。

 がしゃ!

 …………その時、俺の席のすぐそばにある窓の外からそんな音が聞こえた。

 するとそこには

 

「ぬぉぉぉぉおおお!! くそ!! なんて羨ましい状況だ!! ゴスロリ風の幼女と中学生のようなあどけなさを持つ美少女にあ~んとは、イッセーめぇぇぇええ!!」

「く、俺のスカウタ―が彼女のスタイルを示している! 中学生で86-54-79だと!? なんていうことだ!!」

 

 ……和やかな雰囲気が台無しになるような声を上げている、窓に張り付いて俺を見ている松田と元浜がそこにいた。

 その声と更に発言で観莉は突然、顔を真っ赤にして体を手で押さえた。

 ……ちょっと涙目だ。

 

「観莉、オーフィス―――ちょっと害虫処理に行ってくるから待っててな?」

「う、うん……イッセーくん」

「我、イッセーの健闘、祈る」

 

 二人に見送られて俺は席から立ち上がって外に行く。

 ―――さて、観莉を泣かせた奴はどこのハゲと眼鏡だぁ?

 ―・・・

 それから5分後、俺の元友人(松田と元浜)は遠く彼方の星となったので、俺は再び店に戻っていた。

 うん、良い仕事をしたよ。

 

「うぅ……。イッセーくんのお友達はえっちな人なのぉ?」

 

 うっ!?

 観莉の涙目での台詞が俺の心を抉る!

 

「あんなの友達じゃない! もう俺が守るから泣かないでくれぇぇ!!」

 

 俺の保護欲が爆発して愛でてしまうから!

 そんな子犬みたいな目をしないでくれ!

 

「うぅ……でもね? 私、ちょっときつめの下着つけてるからホントは89なんだよ……」

「うん、今その情報はいらないよね? っていうか泣いてたのって間違えられたから?」

「うん! 私、自分のスタイルには誇りを持ってるんだよね!!」

 

 観莉が胸を張って「えっへん!」と可愛く仰る。

 

「あ、でも見せるのは好きな人だけだから大丈夫だよ? あと触らせるのも!」

「…………」

 

 俺は確信したのであった。

 ―――観莉、お前は小悪魔だ!

 とりあえず、俺は観莉にデコピンをするのであった。

 

「こらこら、女の子がはしたないよ?」

 

 するとマスターが柔らかい笑顔で俺達の方に歩いてきた。

 

「あ、マスター! でもイッセーくんが守ってくれるって言ってくれたんです! デコピンも愛の鞭ってやつですね♪」

「それは違うと思うけど。……はは、イッセーくんも前途多難だねぇ」

「マスター……やっぱり貴方は他とは違います!」

 

 俺はマスターの気遣いに涙をホロリと流す!

 もう俺の良心はマスターしかいない!

 

「それでイッセーくん、ものは相談なんだが……。写真を撮らせてもらってもいいかな?」

「それは良いですけど……どうしてですか?」

「軽い宣伝みたいなものだよ。店の前のボードにお客様の写真を張ることにしたものでね。それに君は有名(・ ・)だからね」

 

 有名?

 俺は特に何もやっていないはずなんだけど……

 

「うんうん! イッセーくんは凄い有名だよ! うちの学校の女の子もたまに『駒王学園の木場様と兵藤様が凄くカッコいいらしいよ!!』って噂してるくらいだよ? お陰で駒王学園の倍率が上がって仕方ないよ……」

 

 ……そう言えば以前部長が言っていたな。

 去年の駒王学園の入学倍率、特に女子の倍率が昨年度の5倍を達したって。

 

「ま、まあまあ。それに勉強が困ったなら教えてやるから元気出せよ?」

 

 俺は観莉の頭を撫でてやった。

 元々駒王学園はレベルが高い学校だからな。……門をくぐるのは相当難しいと思うけど。

 

「ありがと! イッセーくん!」

 

 ……まあとびっきりの笑顔を見せてくれたからいっか。

 それから俺とオーフィスはツーショットでマスターに写真を撮られた。

 ちなみにオーフィスが俺の膝の上に座って俺にパスタ付きのフォークを向けているところだったのは後で知ったことだった。

 ―・・・

「我、手をつなぎたい」

 

 喫茶店を出た俺とオーフィスはぶらぶらと道を歩いていると、途端にオーフィスは俺の服の裾を引っ張ってそう言ってきた。

 たぶんこれも眷属の誰かの意見なのかな?

 

「オーフィス、それは誰の意見だ?」

「ギャスパー。吸血鬼、恥ずかしそうにそう言ってた」

 

 ギャスパーか……。まああいつらしい奥ゆかしさだな。

 あいつの場合は最近、よく俺の血を吸っている。……危うくそれで貧血を起こしかけたのは秘密だ。

 それ以外は普通に可愛い後輩で俺も良く面倒を見てやっている。

 

「そう言えば祐斗にも聞いたのか?」

「うん。でも我、木場の意見、もうしてる。木場、イッセーと遊びに行きたい、言ってた」

 

 眷属ではたった二人の男子だからなぁ。……ギャスパーは何とも言えないけど。

 とにかく、俺と祐斗は仲が良い。

 なんだかんだで一緒に戦ってきた奴だし、たぶん眷属の中で一番俺の動きについて来れるのは祐斗だ。

 出来る日はよく祐斗と模擬戦闘訓練を行っていて、最近のあいつの伸びは中々のものだ。

 

「夏休みは俺も鍛えないとな……。―――そうだ! オーフィス、俺の鍛錬に付き合ってくれないか?」

「鍛錬? それ、イッセーと一緒、いれる?」

「ああ。夏休みはずっと俺と一緒にいれる」

「ならする。我、夏、イッセーと過ごす」

 

 オーフィスは即答でそう言ってくれた。

 ……最近、俺は強者と戦い続けてきて何となく危機感があった。

 確かにコカビエルもヴァーリも退けたけど、仲間を守るためにはもっと強くならないといけない。

 それにヴァーリは恐らく、これから更に強くなるだろうからな。

 ……アザゼルにティア、それに加えてオーフィスが加わればかなりの鍛錬をすることが出来るな。

 これは夏休みが待ち遠しくなってきた!

 

『……やはり相棒の鍛錬は趣味化しているな。いや、趣味は喜ばしいことだが……』

『仕方ありません。主様は仲間を守ることで力を発揮しますから。……そうなるのも必然でしょう』

 

 二人が既に諦めに入っているけど関係ないな!

 ……さてと、これからどうするかな。

 娯楽施設はこの時間帯はどこも多いだろうし。……うぅ~ん。

 

「……我、連れて行ってほしいとこ、ある」

「連れて行ってほしい所?」

 

 するとオーフィスは珍しく自分から申し出た。

 オーフィスが自発的にどこかに行きたいと言ったのは初めてじゃないか?

 

「我、下着、欲しい」

「――――――うん?」

 

 俺は今、自分の耳を疑った。

 下着が欲しい? 何かの聞き間違いだろうな、そうに違いない。

 でも確信が欲しいな。……もう一度聞いてみよう。

 

「オーフィスは何が欲しいんだ?」

「我、下着、欲しい。何故なら、我、下着持ってない」

 

 …………さて、それから俺がした行動を纏めようか。

 俺はオーフィスを腕で抱えて全力で街を疾走。

 そして街の一角にある女性の下着の店を恥ずかしげもなく突入。

 ……恥ずかしさなんかそんなもんは捨てた。

 だってさ? ―――ノーパンノーブラってどういうことだよ!!

 どうしてティアはそういう大事な事を全然教えていないんだよ!!

 

「よし、オーフィス! 好きな奴を好きなだけ選べ!!」

「我、イッセーに選んでほしい」

「店員さぁぁぁんん!!! この可愛い女の子に似合う下着を選んでください!!」

 

 俺は近くにいた店員に向かって涙ながらにそう叫んだのだった。……店員さんはあまりもの剣幕に頷いて、オーフィスを連れて試着室に向かってくれた。

 ……でも問題は更に振りかかる。

 

「やばい……ッ! この場に男は居てはいけないッ!」

 

 そう、他のお客さんの視線がヤバい!

 そりゃあ女性のお店に男がいたら不審がるよな、普通!!

 ……ポンポン。

 俺はその時、後ろから肩を叩かれた。

 俺はそっちに振り向くと、そこには―――

 

「……やっほー、兵藤~。こんなところでにゃにしてるのかな~?」

「……桐生?」

 

 何故か私服姿の桐生藍華がいた。

 って普通に休日だから下着を買いに来たに決まってるか。

 

「ま、まさか。……兵藤、女の子の下着を台無しにしたからプレゼントのエロエロ下着を買いに来た、そういうこと!?」

「違うわ、このド変態がッ!!」

 

 俺は桐生の頭を鷲掴みにして、ギリギリと力を加えていく!

 

「ひ、兵藤ッ! 出会いがしらに頭ギリギリだめぇ!!」

「いや、今日こそお前を潰してやる! アーシアに変な事仕込む罰だ!!」

 

 ……数分後。

 

「はぁ、はぁ。……もう兵藤、女の子はか弱いんだからいじめたらダメよ? 最近兵藤に色々されて、なんか目覚めてきちゃったんだから」

「お前が卑猥なのがいけない。むしろお前はまだマシな方だぜ? ―――何せ、松田と元浜は星になったんだからさ」

「……御愁傷さまねぇ」

 

 あ、こいつ全く興味すら抱いてねえ。

 目を見れば分かる。松田と元浜はどうでも良いってことですか。

 そして俺は桐生の発言はスルーした。

 

「で、兵藤はここで何をしてるのかなぁ?」

「別に……従妹?の下着を買いに連れてきただけだよ」

「従妹? まああんたの従妹なら懐いてもおかしくないと思うけど」

 

 桐生は肩をすかしてやれやれとか言ってやがる。

 

「で、そのあんたの従妹があんたの後ろにいる子ってこと?」

「?」

 

 俺は桐生が見るに体を向けると、そこにはオーフィスがいた。

 ……下着姿で。

 

「よし、オーフィス。今すぐ試着室に戻ろうか!」

「嫌。イッセー、我の下着、見るべき」

 

 くそ! オーフィスの奴、是が非でも動かないつもりか!

 ……確かに良く似合っているとは思うよ。

 オーフィスの白い肌に黒い下着は栄えると思うし、子供っぽさが残るデザインとは思う。

 だけど、だけども!

 さっきから桐生のニヤニヤした視線がひどく不愉快だ!

 

「にひにひ……。なるほど、兵藤はロリもいけると―――兵藤、あんた見かけによらず雑食ね!!」

 

 ……後で星屑にするのは決定だ。

 

「……イッセー、興奮、する?」

「なんて事聞いてんだよ、お前はぁぁぁ!!」

 

 俺は近くにあった壁に頭をガンガン打ちならす!

 誰だ、無垢なオーフィスに間違った知識を与える奴は!

 

「ティアマット、言ってた。……下着は女の、ポイント」

「そうか、そうか―――とりあえず今度ティアは説教だな」

 

 俺はそう言ってティアを説教することを固く誓うと、そのままオーフィスの方をなるべく見ないように言った。

 

「に、似合ってるけどさ。……うん、似合ってるからとりあえず試着室で着替えてくれ!!」

「ダメ。まだ20着ある」

「それ全部買ってあげるから! 後で何でもしてあげるから!!」

 

 ……俺がそう言ったら、オーフィスと俺の間に沈黙が走った。

 なんだ? すっごく嫌な予感がする。……こう、言ってはいけないような感覚が俺を襲うッ!

 

「……我、イッセーに従う。約束、忘れるの、許さない」

 

 するとオーフィスは静かにトコトコと試着室に戻って行った。

 ……大丈夫だよな? だってオーフィスだから大丈夫だよな?

 

「兵藤、いい? 女の子にあんたは何でもしてあげるなんか言ったら、あんた大変な事になるわよ? ただでさえあんたは親しい女にはあり得ないくらい甘いんだから」

「……うん、今それを後悔してるよ」

 

 珍しくも桐生は俺を諭していた。……流石の桐生も俺の行動を哀れんだんだろうな。

 

「ま、兵藤は兵藤ってことねぇ~……。にしても可愛い子ね? 無表情が凄いけど」

「そうか? たまに笑うし結構表情は変わると思うけど……」

「そんな些細なとこまで分かるのはあんたくらいよ? まあそんなのが分かるから好かれるんだろうけど」

 

 桐生は最後の方を小さな声で言ったものだから俺はその声を聞き取ることが出来なかった。

 ……そうだ、これからどこに行けばいいか分からないから桐生に聞いてみるか。

 

「なあ、桐生。女の子が連れて行ってもらって嬉しいとこってどこかな?」

「にひひ。……私にそんなの聞くなんてどんな風邪の吹き回し~?」

「いや、桐生だって普通に女の子だろ? お前だって黙っていたら可愛いのに……」

「……………………へ?」

 

 すると桐生は突然、鉄砲玉を喰らった鳩みたいに目を丸くして、少し経つと顔を真っ赤にし始めた。

 

「な、な、なに言ってるのかな~? わ、私が可愛いとかそんなんあるわけないじゃ~ん!! ああ、もう兵藤訳わかんないな~~~!! ね、なんか暑くない、この店!」

「いや、普通に涼しいけど? それよりどうした? 顔、赤いぞ」

「べ、別に? 別に可愛いとか言われても嬉しくなんかないけど?」

 

 ……こいつ、もしかして

 

「桐生、お前……もしかして照れているのか?」

「は、はあ!? そんなわけないじゃん!! この天下の桐生、兵藤ごときに」

「……お前、可愛いな」

 

 俺は追撃と言う感じでもう一度、桐生に向かってそう言った。

 

「~~~~~~っ!!!」

 

 すると桐生は更に顔を真っ赤にして悶え始める!

 ははは! これが普段からの恨みの仕返しだ!!

 アーシアに変な事ばっか吹き込みやがって!

 

「ひょ」

「ひょ?」

「兵藤の鬼畜~~~~!!! この天然ジゴロ!!!」

 

 ……そんな不名誉な捨て台詞を吐いて、桐生は店内から凄い速度で走っていくのだった。

 これは……勝った!

 俺の完全勝利だ!!

 

『ふふふ。これが子供心か。相棒にも、息子にもそんな童心な心がまだあったなんてな……パパは嬉しい』

 

 ……うるさいよ、ドライグ。

 今のは普段からアーシアの暴走の原因となっている野郎への軽いやり返しだよ。

 っていうか普段からあんな卑猥なエロ発言している割にはあいつ、照れ屋な一面があったんだな。

 あんな表情を普段からしてたら男子にもっとモテるのに。

 

『……確かに主様は天然ですね、桐生さんの仰るのは最もです』

 

 フェルまでそんなことを言って。……っとその時、籠一杯に下着をいれているオーフィスが試着室から帰ってきた。

 

「我、帰還した」

「そうか、そうか。じゃあ早速レジに行こうか!」

 

 俺は気分が良いのでオーフィスを連れてレジに行った。

 …………俺はその後で後悔することになる。

 女の人の下着ってさ、思ってたより高かったんだ。

 ちなみに俺の持ち金は全て消えていったのは内緒の話だ。

 ―・・・

「我、最後に行きたいところ、ある」

 

 そんな台詞から俺はオーフィスに連れられてどこかに向かっていた。

 下着店から出て結構、時間は経っている。

 まあその日は二人でのんびりと過ごしていたんだけど、突然オーフィスは俺の手を引いてそんなことを言ってきたんだ。

 俺はオーフィスに連れられること数十分。

 

「ここは……オーフィスと友達になった公園?」

 

 そして俺が連れられたのはオーフィスと一緒にジュースを飲んで、友達になった俺の家の近くの公園だった。

 特に何の変哲もない公園。

 今はもう夕方で、その景色は俺とオーフィスが初めて会った時と似ている。

 そして俺はあの時と同じように、公園のベンチに座ろうとしたんだけど、何故かオーフィスはそれを止めて先にベンチに座った。

 

「……イッセー、我の膝、枕にする」

「ええっと……」

 

 俺はオーフィスが座りながら、自分の膝をポンポンと叩いているのに苦笑いをするしかなかった。

 たぶん膝枕の事を言っているんだろうな。……でもオーフィスの頼みだから断るわけにはいかない。

 

「じゃあお言葉に甘えさせて貰おうかな?」

 

 俺はそう言ってベンチに横になる。……オーフィスの小さいけど柔らかい太ももが俺の後頭部に感触となって伝わった。

 ……オーフィスの体は、冷たい。

 ひんやりしていて、周りは夏に近づいているから暑いはずなのにな。

 するとオーフィスは突然、俺の頭を撫で始めた。

 

「オーフィス?」

「……我、リアスに聞いた。こんな風、膝枕して、頭撫でたい」

 

 ……部長がそんなことを言ってたのか。

 確かに俺は最近色々あり過ぎて部長のことを少し蔑にしていたのかもしれない。

 俺だって意識していないわけじゃない。

 形式上、ライザ―との婚約発表の時にとんでもない台詞を吐いてしまったからな。

 部長の好意なんか、とうの昔に理解している。

 

「これで眷属の意見は一通りしたみたいだな」

「うん。でも我、まだ一つ、してないこと、ある」

「してないこと?」

 

 俺がそう尋ねると、するとオーフィスの顔が次第に俺の方に近づいてきた。

 俺は突然の事で何もできず、そしてオーフィスは―――俺の頬に軽くキスをしてきた。

 

「お、オーフィス?」

「…………」

 

 オーフィスは次第に俺の頬から冷たい唇を離していき、そして不思議そうな顔で俺を見ていた。

 

「……不思議。我、何故こんなにも暖かい? イッセー、キスした時、心が高鳴った。……ドキドキ、我、してる」

 

 するとオーフィスは自分の胸に手を当ててそう呟く。

 ……オーフィスは雛鳥だ。

 まるで生まれたばっかみたいに純粋で、無垢で、何も知らないような子。

 人の悪意も善意も、何も分からない。

 だから簡単に騙されて、組織なんかも創ってしまった。

 強いのに弱い。……まるで首に鎖をつけられて飼いならされているような感覚。

 それが俺がこの場所で初めて会った時に感じたことだった。

 でもオーフィスは俺と触れあう中で自我みたいな感情が芽生えて、組織を脱退した。

 力を切り離してまでして、俺の元に帰ってきた。

 ……俺が守らなきゃな。

 例えオーフィスがどれだけ強かろうと、俺がどうにかして守る。

 だってオーフィスは無敵ってわけじゃないから。……だから俺が守りたい。

 

「……その気持ちは俺も分からない。だからこれから、分かっていけばいいよ。…………俺はずっとそばにいてあげられるから」

「……我、イッセーの言葉、信じる」

 

 夕日に照らされたオーフィスの頬は、心無しか。…………赤く染まっていた。

 それが夕日によるものか、それともどうなのかは分かんないけど。……でもその笑顔は今までで一番、自然な笑顔だった。

 

「―――で、イッセー。……オーフィスに頬にキスされたみたいだけど、申し開きはあるかしら?」

 

 ……その怒気を含ませた聞いたことのあるような声が聞こえ、俺はその声の主の方向を見た。

 ―――そこには、皆が、いた。

 

「ぶ、部長? それに朱乃さんに小猫ちゃん、アーシアにゼノヴィアまで。……あ、ギャスパーも」

 

 ……視線の先の先頭から部長、朱乃さん、小猫ちゃん、アーシア、ゼノヴィア、そしてギャスパーはそれぞれの表情を醸し出しながらじっと俺を見ていた。

 嘘、なんでここに?

 部長とアーシアはともかく、ここは俺の家の近くの公園のはずだろ?

 

「いやね? 私はアーシアと共に街に繰り出してたんだが、その時にイッセーとオーフィスを見かけてね。まあつけさせてもらっていたよ」

「はう! イッセーさん、ごめんなさい!」

「……私はたまたまそこを通りかかっただけです」

「あらあら……私とリアスは冥界から帰ってきたところですわ」

「ぼ、僕はイッセー先輩のお家をお尋ねしようと思ったらこの公園でイッセー先輩を見ました!」

「…………ま、概ねこんなところよ―――それでイッセー、いつまでオーフィスの膝で寝転んでいるのかしら?」

 

 ……やばい。

 これは俺の第六感が逃げろと仰っている。

 

「ははは! イッセー、中々面白い状況になってんじゃねえか!!」

「うう……。僕の親友が、遠くなっていくよ」

 

 ……アザゼルと祐斗もいつの間にか女性陣の後方側にいた。

 アザゼルの野郎、俺の状況を嘲笑いやがって! って祐斗が泣いてる意味がわかんねえよ!!

 

「な、オーフィス。……この状況の意味が分かるか?」

「絶体絶命」

 

 ……うん、意外と分かっていたみたいだった。

 

「とりあえずイッセー? 積もる話もあるからお説教はまた後よ。とりあえずお家に帰りましょうか」

「……はい」

 

 俺はそう頷くしかなかった。

 ―・・・

 それから俺が部長に知らされたことは色々とぶっ倒れる位の衝撃的な事だった。

 まず部長と朱乃さんが冥界に行っていたのは、冥界にいる部長のお父様とサーゼクス様にあることで呼ばれたからだった。

 それは―――眷属とのより深いスキンシップ。

 そしてそれを解決するための方法としては、眷属同士の同居とのことらしい。

 うん、まあそこまでは良いんだけど問題はここからだ。

 その同居先……これが―――

 

「は、俺の家?」

 

 ……ということだったのだ。

 しかも手回しが早いことに、母さんには既にアポを取っているらしい。……っというより、母さんが友達と買い物をしに行っているっていうのは本当なんだけど、その相手が―――部長のお母様だったらしい。

 どうにも部長のお父様経由で俺が知らないうちに仲良くなっていたらしく、それで言葉巧みな感じで言いくるめられて、そして母さんは快諾。

 ……そういうことで眷属の皆の同居が決まってしまった。

 でも祐斗は騎士が女性と屋根を一つにすることはいけないと言ってそれを断っていた。

 ……ちなみにギャスパーは既に荷物をまとめていらっしゃる。

 

「……でもこのうちに眷属皆を入れることは出来ないわね―――リフォームをお父様とお兄様に進言しましょう」

「それならリアス、イッセーくんの部屋のベッドは……」

「当然、かなりの大きさにしておくわ」

 

 ……なんか俺の知らないところで計画が進んでいるような気がします。

 まあとりあえず頭が痛くなったから俺は自分の部屋に戻ってベッドに横になった。

 恐らく付いてきたであろうオーフィスはその隣で寄り添う形で横になる。

 

「イッセー、疲れた?」

「ああ……最後の最後で色々な事が起きたからな」

「……でもイッセー、嬉しそう」

 

 ……そっか、そんな表情をしているのか。

 たぶん、当たり前になったにぎやかさを今更ながら噛みしめているんだろうな。

 こんなにも、多くの人に囲まれたことはなかったから。

 昔…………。俺が兵藤一誠ではなかった頃のこと。

 

「オーフィス……また一緒に、遊ぼうな?」

「……我、そう願う!」

 

 ……龍神様は、ほのぼのとした表情でそう言うのだった。

 

 

 ―――ちなみにその夜の事…………

 

「よくもオーフィスに変な事教えやがったな!! ティア!! 戦じゃあ、おらぁ!!」

「い、一誠!? どうしたんだ!? お姉ちゃんにそんな……嘘!? レッドギアを使うのか!?」

「るっせぇ! 神帝の鎧じゃ、この野郎ォォォォォォ!!!」

 

 ……俺はティアとの鍛錬に置いて、色々な鬱憤を晴らすべくドライグとフェルの力を全力で使い、やつあたりのような鍛錬をするのだった。


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