ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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今回は後書き次章予告を書きますので、今回は前書きに!
今話で長かった(時間的に)10章は終わり、次回は番外編はなしで、すぐに11章に入ります! 

それでは10章最終話、どうぞ!


第14話 終わりから始まりへ

 ──ハレ、アメの救出に成功し、残る目的はディヨン・アバンセの撃破だけだ。

 

 最下層への移動は本当ならば黒歌とフリードと合流した方が確実なんだろうけど……妙な胸騒ぎが俺の足を急がせている。

 

 鎧を纏いながらアメとハレを背負い、歩きながら黒歌と通信を繋げていた。

 

「黒歌はメルティを保護できたのか……ありがとう、流石だ」

 

『もっちろん♪ 今からイッセーの方に向かおうと思ってるけど……』

 

 黒歌は俺に一応指示を仰ぐ。……ディヨンの読めない点を考えれば、間違いなく合流は必須だ。

 

 でもおかしいんだ──今まで執拗にこちらを煽っていたディヨンの声が、一つも聞こえない。

 

「黒歌はフリードと合流し、地上を目指してくれ」

 

『……やっぱりそうだよね。明らかに可笑しいよな。あの変態男が、手駒全部やられて黙っているとか。それに戦力が少なすぎにゃん。クリフォトの増援も、結局はクロウ・クルワッハだけだったし』

 

「──それに感じるんだ。終焉を」

 

『──エンド』

 

 この戦場において、エンドは一度俺の前に姿を現している。敵対することはなく、そして自身をミリーシェと名乗った。

 

 そして戦争派をひどく軽蔑もしていて……あれからあいつの姿は確認できていない。

 

「あいつは近くにいる。本当はハレとアメも黒歌に預けたいけど……今は一刻を争う──必ず戻るから、俺を信じて動いてくれ」

 

『……怪我したら、強制子作りの刑にゃん』

 

「──おいなんだそれは! って黒歌、通信を切るな!! ……あいつなぁ」

 

 黒歌が一方的に通信を切断するものだから、俺は頭を抱える。

 あいつはやると言ったら必ずやる。ケガをしたら最悪、変な薬を飲まされて一年後にはお父さんだ。

 

 ……高校生でお父さんは洒落にならないから、一方的に倒そうと心に決めた。

 

「……あの、イッセー……さん?」

 

「ハレ、たどたどしい」

 

「な、慣れないんだから仕方ないよ! 僕だって」

 

「──わたし」

 

「……な、長いこと僕だったから、染みついたんだよ。ってそうじゃなくて──僕も戦えます。それに僕たちをこんなにしたあいつに、文句言わないと気がすみません!」

 

 ハレの声しか聞こえないが、しかし今までとは違って不安な声音は聞こえない。

 ……ハレとアメのことは帰ってから色々と相談しよう。そのためにも目の前の問題を全て解決する。

 

 そして最深部に辿りつき、目の前の大きな扉に手をかけた。

 

 ドアノブなどはなく、鋼鉄の扉は酷く重い。

 

 ……よしめんどくさい、吹き飛ばそう。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost』『Explosion!!!』

 

「ちゃんと捕まっとけよ、ハレ、アメ!! 破滅の龍弾(エクスティンク・ドラゴンショット)ッ!!」

 

 長らく使っていなかった属性付加の魔力弾! ……ここ最近火力任せの力押しが凄まじかったから使ってみたけど、やっぱりこれも威力は高い。

 

 頑強な扉を蹴散らし、土埃の粉塵を薙いで視界を良くすると──

 

「どういうつもりか、教えてくれよ、ディヨン・アバンセ」

 

 ──俺もこれは、例え敵であるディヨンであったとしても聞かないといけない。

 俺の目の前に広がる光景は、ひどく凄惨なものだ。

 

 ディヨンの部屋は何か数多くの檻と、数え切れないほどの薬品に囲まれる異様な部屋だ。

 でも今は、檻の大部分は消失するように大きく欠けている。まるで何かによって消しとばされたように。

 そして主人であるディヨンも、俺たちには目もくれず、室内の真ん中で奥を呆然と見ていた。

 

 ──部屋の奥は、闇で包まれていて何も見えない。

 

「は、はは、ははははは……なんなのだね、君は本当に──化け物め」

 

 その言葉は俺に向けられたものではない。

 ……この奥にいる奴が誰なのかも、分かっている。これだけ判断材料が揃っていれば断言できる。

 

「女の子に化け物ってどういうこと~? ほんと君ってどうしようもない屑だよねぇ」

 

 ──闇の中から、ゆっくりとエンドが現れた。その身体には黒い靄のようなものを纏っていて、辺りのものを消失させている。

 

「あ、イッセーくん!! それにその子たちも助けられたんだね!? 流石だよ、ほんとカッコいいよね~──待っててね、すぐにそいつ、終わらせるから」

 

「待て、エンド! そいつにはしかるべき処罰を」

 

「──待たないよ、こいつはいらないもの」

 

 俺の静止も空しく、エンドは黒い靄でディヨン・アバンセの身体を包み込んだ。

 あの靄はまずい。あれは間違いなく、フェルの力の逆のもの──終焉の力。その効力は消失特化で、触れたものを一瞬で消し去るものだ。

 

「あははははは──こんな幕引きかぁ。予定ではね、兵藤一誠くん。君からハレとアメを取り上げて、君たちから逃れて新たな研究に没頭するつもりだったんだけどね……本当に呆気ない幕引きだ」

 

「……君、不快だからもう話さないでね」

 

「赤龍帝でもなく、意味の分からない理不尽にやられるなんて──本当に人生って、面白いなぁ……」

 

 靄はディヨンの顔までもを包み込んで……そして靄が晴れる頃には、ディヨンの姿かたちは跡形もなくなくなっていた。

 

 それを俺たちは茫然として見ていることしか出来なかった。

 

「さぁて、これでイッセーくんを取り巻く面倒事は固唾いたね。それじゃあ私と一緒に──」

 

 ──その時、突然、大きな地震が起きた。まともに動けなくなってしまうほどの激しい揺れ。しかもその揺れの発信源は……俺たちのいるこの部屋の真下だ! 

 

「あれれぇ、なんだこれぇ」

 

『きっとあの人間の最後の足掻きだろうね。主、終焉のオーラを身体に纏わせな』

 

『Force!!』

『Domising!!!』

 

 エンドは胸元の黒金の宝玉が輝くネックレスから終焉の力を引き出し、アルアディアの指示通りに靄を身体に纏わせた。

 

「フェル、力を貸してくれよ!?」

 

『Force!!』

『Reinforce!!!』

『Infinite Booster Set Up──Starting Infinite Booster!!!!!』

 

 

 俺は即座に鎧に創造力を用いて神器強化し、神帝化を果たす。

 

 そこからはいつもの流れで無限倍増を発揮し、魔力をエンドと同じように纏わせて、天井から降る瓦礫から身を守る。

 

「ハレ、アメ、俺から絶対に離れるなよ!! ドライグ、守護龍を展開できるか!?」

 

『守護覇龍の影響で11体全部は無理だが、二、三匹なら問題ない!!』

 

「じゃあ展開して、もしかしての時に備えさせてくれ!! フェルは──っくそ、そうだった!!」

 

 未だ眠りから覚めないフェルに悪態をついてしまう。

 黒歌とフリードたちを先に戦線離脱させてて正解だった! 

 

「……ディヨンの最後の悪意なら、絶対にぶっ潰してやる」

 

 過去最大の紅蓮の龍星群(クリムゾン・ドラグーン)をぶち込んで、それで終わりにしてやる! 

 

「敵はどこから現れる……っ。真下か、それとも──いや、これは俺が空けた大穴からか?」

 

「そうみたいだねぇ、イッセーくん──ここは協力しなーい?」

 

 するとエンドはいつの間にか俺の隣に立って、顔の周りを包んでいた靄を少しはがし、そう言った。

 

「……俺は、お前の思い通りにはならないぞ」

 

「もちろん、それでこそ君だよ。だけどこの状況を生き残るためにも、戦力は一つでも多くがいいでしょう?」

 

「──お前のやり口、ほんとあいつみたいだよ」

 

 この強かなふるまい、頭の回転の速さはミリーシェの面影がある。

 

 ……完全に信じるわけではない。でも──この一瞬だけは、エンドを信じる。

 

「じゃあ最終決戦だ♪ アルアディア、この建物を全部、消すよ!」

 

『主は本当に派手好きだな──了解した』

 

 エンドの神器から更に黒金の靄があふれ出て、四方八方を覆う。そして少しずつ壁を、機械をを、檻を消し飛ばしていった。

 

 建物を消す役目はエンドに任せて、俺は一撃必殺の力を蓄える一方で、フリードと黒歌に連絡を取る。

 

「黒歌、フリード、地上に逃げたか!?」

 

『──イッセー!? うん、私はフリードたちを回収して今は地上にいるにゃん!! だけど──ドルザークが私たちの目の前で地下からの光に充てられて、怪物の卵みたいなのに吸収されたにゃん!』

 

「……吸収? ……ともかくお前たちは安全なところに退避していてくれ!」

 

『イッセーは!?』

 

「俺は──最後の敵を倒して、それでこの戦いは仕舞だ」

 

 俺のその言葉と共に、天井から月明かりがさしこんだ。

 

 そして俺たちの視界には、全庁150メートルほどの大きさの怪物がいた。

 キメラのような容貌は歪で、まるでディヨン・アバンセの研究の集大成のようにいろいろなオーラが感知できる。

 

 天使、堕天使のオーラや聖なるオーラ、ドラゴンや魔獣……あらゆる種族の力をつぎ込んだ生命体の卵を、最後にドルザークを吸収することで生んだのだろうか。

 

「……だけど完成はしてなかったんだろうな。それぞれの力が相反していて、ほころびだらけだ。無理やり形を成しているに過ぎない」

 

「ハリボテだね──きっと君の一撃で終わる。だけど」

 

「あぁ。ドルザークがいる。あいつもたくさんの人を傷つけただろうが、それでもディヨンに利用され続けた子供の一人だ。だから」

 

「──うふふ、私はイッセーくんの考えを尊重するよ。要はイッセーくんの一撃からそのドルなんとかくんを守ればいいんだよね? なら」

 

『Force!!』

 

『Demising Weapon!!!!』

 

 フォースの音声と共に、今までとは違う音声が流れる。

 今までは黒金の靄だったものは形を成して、エンドの手の平で鞭のような形になった。

 

 ……終焉のオーラで出来た武器。その力は簡単に想像できる。

 

「触れたものを消失させる武器か?」

 

「せいかーい♪ 流石だね──終焉消装・鞭の形だよ。これで少ない個所を消すように削り取りながら、あの中で囚われているドルなんとか君にたどりつける。その状態で武装状態を解いて、私の今みたいに靄で身体を包んで、繭状態にすれば君はただ力を放てばいい」

 

「……俺の本気の一撃を耐える前提なんだな」

 

 だけど俺は知っている。

 俺が覇龍状態の時に放ったロンギヌススマッシャーを、エンドは至近距離で余波を浴びても怪我の一つで済んだ。

 

 ……俺の紅蓮の龍星群は今や、ロンギヌススマッシャーに近い威力を持っている。それを直撃しても守りきれるのだとすれば──エンドに俺のおおよその攻撃は通用しない。

 

 それに静かに戦慄する。だけど今は、それを考える時間はない。

 

「……安心してよ。君の一撃でも完全には耐えきれない。やっぱり余波で怪我はするよ」

 

「……心を読んでくれてありがとよ。だけどフォローになってねぇよ──その作戦が一番ドルザークを救える。それで行こう」

 

 俺は手の平の照準を、ドルザークを内包する怪物に向ける。オーラを込めて、小さな球体を作っていき、それを更に大きくするため倍増のオーラと魔力を込めた。

 

 渦を描くようにオーラは循環する。

 

 ──エンドも行動を開始した。鞭をしならせて怪物の身体をえぐっていく。鞭の先端が体表に触れた瞬間にに身体には穴が開き、そして怪物の中心へと終焉のオーラは到達する。

 

「──見つけた。アルアディア、武装変更」

 

『Demising Weapon Change!!!』

 

 フードのせいでエンドの口元しか見えないが、彼女の舌なめずりをして予定通り力を使う。

 ──怪物は苦しんでいるのか、形容しがたい叫び声を轟かせた。

 

「──こいつで北欧の悲劇は終わりだ」

 

 紅蓮の球体は、俺の身体を遥かに凌ぐ大きさとなり、光輝く。限界まで出力を込めたからか、球体は破裂寸前だ。

 

「──紅蓮の龍星砲(クリムゾン・ドラグーンキャノン)!!!!!」

 

 ……その一撃は、怪物を覆い、そして──北欧戦線における、戦争派との闘いに終止符を打った。

 

 

 

 

 

「終章」 子供たちの幸せ

 

 

 ──戦争派との、北欧を舞台にした戦いは兵藤一誠の一撃によって決着した。

 戦争派の戦力はリーダー、ディヨン・アバンセの科学力による改造生物や兵器、そして最大戦力として実験体とされていたメルティ・アバンセ、ディエルデ、ティファニア、ハレ、アメ、ドルザークのみとされ、それ以外は劣勢と知るとすぐに逃亡を図った。

 

 子供たちについてはメルティ、ソラ、ハレは兵藤一誠が保護し、ディエルデとティファニアはフリード・セルゼンが保護をする。

 

 そして最後、キメラに取り込まれたドルザークは同じく子供たちの一人で英雄派のクー・フーリンによって保護され、当の首謀者であるディヨン・アバンセは謎の存在、エンドによってこの世から姿を消した。

 

 ……当記録は兵藤一誠による情報提供の元、北欧の主神オーディンが記録する──……

 

 

 

 ──英雄派の隠れ家の一つにて、ドルザークは眠っていた。

 彼の傍にいるのは英雄派のクー・フーリンであり、彼の傍を片時も離れない。

 

 彼女もまたドルザークと同じく改造され、実験動物とされた人間の一人だ。ドルザークはもはや人間と呼ぶことが難しいほどに身体をいじられて、普通に生きていくことが難しい。

 

 ……彼はスラム街に生まれ、そして多くの人々を殺したシリアルキラ──―にしたて上げられた。

 

 5歳の頃にディヨンに引き取られ、元にあった人格を壊され、そして狂暴な人格を埋め込まれ、ディヨンに忠実であるように改造されたのだ。

 

 クー・フーリンはそれを知る唯一の存在だ。

 

「……ドルは昔っからホントに世話が焼けるよ──やっと僕のところに帰ってきてくれた」

 

 ──なぜなら、彼女は同じくスラムで生まれたドルザークの姉だから。

 もちろん血縁関係はない。だが毎日を生きていくために二人で徒党を組み、まるで姉弟のように二人で幼少期を過ごしたのだ。

 

 その頃のドルザークは、やんちゃで世話が焼けて──血のつながりのないクー・フーリンを本当の姉のように慕い、いつも彼女のために戦っていた。

 

 そして……本当ならば彼女が受けるはずだった実験を、ドルザークはディヨンに懇願して自分に施した。

 

「……僕がこうして生きているのは、ドルのおかげなんだよ──絶対、ドルは僕が元に戻してあげる。これからはずっとそばにいるから」

 

 クー・フーリンはドルザークのドラゴンの鱗が目立つ手を躊躇なく握り、涙を流した。

 

 ──彼女が英雄派に派遣された本当の理由は、ドルザークから引き離すためだ。壊された元の人格はそれでもなお彼女のことを愛しており、ディヨンの目的に支障をきたす可能性があったのだ。

 

 だから引き剥がされ、そして彼女は──クーはクー・フーリンと名乗り、静かに爪を研いでいた。いずれドルザークを取り戻すために。

 

 ……それを知るのはジークフリートと曹操だった。曹操はジークフリートを彼女の目的のために此度の戦いに派遣し、加えて晴明の秘密を握る任務を言い渡した。

 

「……クー。彼の人格は消えていない。微弱だけど残っているはずだ──赤龍帝の仲間にアーシア・アルジェントと呼ばれる少女がいる。彼女は心までも癒す能力を持っている。そして彼女は例え敵であろうと、事情を知れば手助けするような性根だ」

 

「……分かってる。僕はドルのために生きる──それと同じくらい、英雄派のみんなのことも大好きだから。だから最後までみんなの力になるよ」

 

 クーは涙を浮かべながら、満面の笑みを浮かべてそう断言した。

 ──ジークフリートは曹操から受けたもう一つの任務、晴明についても既に情報を掴んでいた。

 

 今回の戦いで晴明は空を飛んで先に戦線を離脱した。加えて今、この場に合流してはおらず、別勢力と合流したと通信を受けた。

 

 ……クリフォトだ。つまり晴明の異常性には、クリフォトのリーダー、リゼヴィムが関わっている。

 

 更に言えば、戦争派の研究施設から得た研究情報から、晴明がディヨンによって改造を受けていることも発覚している。

 

「……曹操。僕たちも、選択の時は近いよ──君の正義は、本来は兵藤一誠と共にあるべき正義だ。それでも君が禍の団(カオス・ブリゲード)に所属する理由は、晴明なんだろう」

 

「──あぁ。その通りだ」

 

 ──部屋の隅から、曹操は現れる。

 ……曹操はこの北欧の戦いに参加していないように思われていたが、実際には彼も北欧に来ていた。

 だが兵藤一誠の前には現れず、ただ一人でリゼヴィムを警戒していたのだ。故にリゼヴィムは北欧に来ることが出来ず、戦いは最悪の結末を迎えることはなかった。

 

「……この戦いにも、エンドと呼ばれる終焉の少女が現れた」

 

「それは、本当かい?」

 

「あぁ。ディヨン・アバンセを殺したのは彼女だ──彼女は兵藤一誠に異様な執着を見せている。彼のためならば、誰であろうと敵に回す。そしてそれを実行できるほどの力を保有している」

 

「……君の禁じ手で、勝てるか?」

 

「……分からないね。それに覇輝を以てしても、彼女相手だとどれだけ通用するか分かったものじゃない」

 

 英雄曹操が危険視する存在は、二つ。

 クリフォトの頭目、リゼヴィム。そして終焉の少女、エンド。

 今回の戦いを曹操は彼の持つスキルの一つ、鷹の眼如き視野と隠密性にたける動きで常に把握していた。

 

 ……そしてエンドの力を見て、背筋に悪寒が走った。兵藤一誠の最強格の一撃必殺技を、彼女はもろとももしないのだ。

 

 現にドルザークは大した傷もなく、ただ意識を失っているだけ。

 

「……ともかく今は力を蓄えよう──大丈夫、俺たちは強い。俺もジークを筆頭に、ヘラクレスも覚醒の芽が芽吹いた。ジャンヌもゲオルクとの修行で実力を伸ばしている。不安要素はレオナルドと晴明だが、晴明の問題さえ解決すれば俺たちはどんな相手でも負けないさ」

 

 曹操は爽やかな笑みを浮かべた。その断言はあまりにも頼りがいがあり、ジークフリートは曹操に永遠についていくことを誓う。

 ──彼を慕っているからこそ、悔やまれる。兵藤一誠が人間の頃に曹操と出会っていれば、志を同じくして共に歩めたことを。

 

 ……少しずつ、英雄派はまとまりつつある。曹操を中心に、志が一つになっていた。

 

 

 ―・・・

 

 

 フリード・セルゼンとガルド・ガリレイは目の前の洗礼を前にして、苦笑いを浮かべていた。

 フリードが救った第三次聖剣計画の生き残りの子供の一人、白髪お下げの少女、イリメスがディエルデとティファニア兄妹をジト目で睨んでいるからだ。

 

 フリードさえも手を余すイリメスは、普段はおとなしい。しかしフリードのこととなると少し怖くなる年頃の少女で、彼が連れ帰った二人の品定めをしているのだ。

 

「あ、あの……ふ、フリードさん」

 

「──お兄ちゃん」

 

 ディエルデが困りに困ってフリードに助け舟を求めると、即座にイリメスは声を出す。

 なおティファニアは怯えていた。

 

「フリードお兄ちゃんってよびなさい」

 

「え、でも」

 

「それがフリードファミリアのルール」

 

「おいマテ、なんだその不名誉な仮名は。イリメスちゃん、いつそんな名前を──」

 

「フリードお兄ちゃんは黙ってて」

 

「あ、はい、すんません」

 

 なかなかいい年の青年が、弱い12歳の少女に封殺される。なおガルドはとても利口なため、無駄口をたたくと恐ろしい目にあうことを理解しているため、黙ってみていた。

 

「私たちはみんな、フリードお兄ちゃんに助けられて、みんなお兄ちゃんが大好きなの。二段階下の好感度だけどガルドおじいちゃんも好き」

 

「「は、はい」」

 

「だからちゃんとお兄ちゃんが好きじゃないと、仲間にはできないの──っていうか、まずは自己紹介でしょ?」

 

「で、ディエルデです!! 特技は聖剣を使えることだ!!」

 

「て、ティファニアです!! 特技は聖剣になることです!!」

 

「ディーくんとティファちゃん……イリメスはかわいい子が好き」

 

 するとイリメスはもはや怯えている兄妹を抱きしめた。

 

「イリメスはファミリアの妹分たちのボスなの。ルールはイリメスが教えてあげる! そして私たちは家族になるの!!」

 

「か、家族……と、とても甘美な」

 

「お、お兄ちゃん、やったよ!! 家族が増えた!!!」

 

 家族愛に飢えているのか、ディエルデとティファニアは目を輝かせた。

 そしてイリメスをまるで憧れの上司のように見つめている──その光景はまるで、

 

「新興宗教の洗礼みたいっすねぇ」

 

「はは、可愛いものだよ。…………はは」

 

「おいじいさん、明らかに間があったよね、今のかすれた笑い。全然思ってないっしょ、そんなこと」

 

 フリードは既に生まれた子供たちの上下関係を見て、もう黙って見守ることにするのだった。

 ──今は日本への帰りの船の中。かなり時間はかかるが、飛行機と違い身分の証明の偽装がしやすく確認作業が緩いため、この方法を取った。

 

 既に自分たちとは違う方法で日本へ帰っている赤龍帝眷属とは既に別れており、子供たちを頼むとお願いされたところだ。

 

「……まぁ、うちのガキんちょ共はみんな馬鹿だから、何も考えずに済むっしょ。子供らしくさ」

 

「君は本当に……」

 

「あ、なんか言いたいことがあるなら聞くっすよ? 変なこと言ったらぶっ飛ばす」

 

「──天邪鬼だねぇ」

 

 外道神父、フリード・セルゼンは妙な生易しいガルドの視線に、「へっ」と笑い飛ばし──満面の笑みを浮かべるディエルデとティファニアを優しげな眼で見つめていた。

 

 

 ―・・・

 

 

 ……戦いが終わって、みんな疲れているように用意された宿で眠っていた。

 

 今回の戦いは本当にいろいろなことが起きたので、俺も本当は眠ってしまいたいが……それの整理のために起きている。

 

 ──結果としていえば、俺たちは誰一人かけることなく、勝利した。だけど勝利の余韻に浸っているほど、良い状況でもない。

 

 ……最後、ディヨンに止めを刺したエンド。彼女は最後の戦いで手を貸してくれたが、戦闘が終わりを告げると忽然と姿を消した。

 最後まで読めない存在だった──だが問題は、エンドの防御壁は俺の戦力の一撃をもろともしなかった。

 

 ……今のところ、彼女が俺に敵対していない。むしろ表面的には好意的にさえ思える。彼女がミリーシェの欠片を持つ、限りなくミリーシェに近い存在であることも認めよう。

 

 だが……何か、彼女からは嫌なものを感じるんだ。

 

 そして次──安倍晴明だ。

 

 朱雀が今回、晴明と戦い、そして勝利した。そこまでは良い──だが彼は、悪魔の翼を生やしていたらしい。

 

 それはつまり、彼が転生悪魔であることに他ならない。ならば彼を悪魔化した上級悪魔がいるはずだ。

 

 ……彼が英雄派にいるということは、つまり彼は主から離反したということ。おそらく彼を悪魔にした存在は、既に死んでいるはずだ。

 

 これは調べる必要がある。家に帰ったら、アザゼルに相談するのとサーゼクス様にも協力を仰ぐつもりだ。

 

 あとは……俺の部屋にあるベッドで眠る、ハレとアメ。そして床で眠るメルティの件か。

 

「……本当にどうしようかな」

 

『保護するというなら、日本に連れて帰る他あるまい。もちろん、彼女たちが望めばの話だが』

 

「だよなぁ……理想的なのはあるんだけど、俺からお願いするときっとあの子たちは拒否できないだろうから」

 

 本当に困った。そうドライグと思案しながら話していると──床で眠っていたはずのメルティが、いつの間にか足に引っ付いていた。

 

「……犬だな」

 

「──無論だな。メルティに埋め込まれた魔獣の宝玉は、ヘルバウンドの宝玉さね。不吉の魔犬は元をたどれば犬さ」

 

「──!?」

 

 俺はメルティが突然饒舌に話し始めたことに驚いた。

 ……だけど、すぐに気づく。これはメルティの人格ではなく──ヘルバウンドのものだ。

 

「……ヘルバウンドの意識が残っているのか?」

 

「話すにはメルティの身体を貸してもらわないと難しいけどさ。……礼を言うさね、メルティを救ってくれて」

 

 ヘルバウンドは俺にそう言った。

 ──そもそもヘルバウンドも、ディヨンによって無理やりメルティに核を埋め込まれた一種の被害者だ。その彼女はメルティを名前で呼び、どこか慈愛のようなものを感じさせる。

 

 まるでドライグやフェルが俺に向けるようなものだ。

 

「……お前にとって、メルティは大切な存在なのか?」

 

「…………もちろん最初は憎しみを抱いていたさ。あのディヨン・アバンセに。我輩の意識は奴によって抑え込まれ、メルティはただのキラーマシーンとなっていた。だが──あんたさんの赤い力が、メルティの呪縛を解き放ち、そして我輩の意識を取り戻させてくれた」

 

「俺の?」

 

「そうさね。京都の戦いで、既にメルティの呪縛は消えた。そしてこの北欧で、再びディヨンによって同じ洗脳をされ──それでもメルティは負けなかった。大まかな指示には従うけど、以前よりも洗脳は弱く、あんたさんの猫のおかげで完全に解き放たれた」

 

「……メルティは、今はどんな状態なんだ?」

 

「……赤ん坊と同じさ──我輩は、この子の全てを知ってる。この子は本当に純粋で、なんでも吸収してしまう。だから父になんの疑いも持つことが出来なかった。それを利用され続けることが本当に腹が立つさね。……本質は我輩と同じ犬さ。本能で従い、本能の赴くままに動く」

 

 ヘルバウンドは床で、まるで犬のような座り方をして、上目遣いで俺を見つめた。

 

「この子は、あんたさんに懐いている。何も持たないこの子に、生きる意味を与えてはくれないか?」

 

「生きる意味、か……メルティとヘルバウンドの本質は、つまり主君に仕えることって言いたいんだな」

 

「……ああ、その通りだ」

 

「──俺の下僕悪魔になりたい。そう言っているんだな」

 

「──然り」

 

 ……考えていた理想的な解決作だった。

 メルティが俺の眷属になれば、彼女の居場所は出来て、俺が保護する理由にもなる。彼女の罪はディヨン・アバンセによるもの。

 

 そしてその保護観察として俺が彼女を引きとり、そして正しい道を導く。それで彼女のテロ行為の罪は、軽くなるはずだ。

 

「……ヘルバウンド、メルティは起こせるか?」

 

「あぁ、暫し待て」

 

 するとヘルバウンドは目を瞑った。数秒ほどすると、メルティがいつもの眠そうな半開きの目をこすりながら、目を覚ます。

 

 視線を右左を向いて、そして目の前にいる俺に向かって首を傾げた。

 

「……イッセー、ここはどこ?」

 

「──言葉、普通に話せるようになったんだな」

 

 今までは単語単語を区切って話していたものが、今までよりも自然なものとなっていた。

 恐らくヘルバウンドが覚醒したのが原因だろう。俺は椅子から立ち上がり、そしてメルティの傍で腰を屈めて目を合わせた。

 

「……ヘルバウンドは分かるか?」

 

「……メルティの、中にいる……ママ」

 

「そうか──俺は結果的に、お前の父親に引導を渡した。もうお前は自由だ。どこに行ってもいいし、好きに生きれる」

 

「好きに……分からない」

 

 きっと、どうやって生きていけばいいか分からないんだろう。

 今まで誰かの命令で生きてきて、確立した元の自我を取り戻しても、何をすればいいかも分からないんだと思う。

 

「メルティは、パパの言うこと聞いてた。……パパは、メルティにいっぱい、痛いことした。命令した。……愛してなかったと、思う」

 

「……っ」

 

「──でも今は、あったかい」

 

 メルティは、すっと俺に身体を預けた。反射的に彼女の身体を抱き留めて、メルティは俺の胸に顔を埋めた。

 

「……あったかいところに、居たい。あの猫さんとか、イッセーのところは、ぽかぽかする」

 

「そうか──俺の傍にいると、戦わないといけなくなる。もちろん俺は全力で仲間を守る。それでも傷つくこともきっとある」

 

「……あったかいところを守るためなら、傷ついても良い」

 

 メルティは半開きの目をはっきりと開けて、今までとは違い覚悟のこもった瞳をした。

 

「──イッセーたちの傍にいれるなら、何にだってなっても良い」

 

「あぁ──メルティ、俺の騎士になってくれないか?」

 

「──了承」

 

 メルティは過去の喋り方で、でも過去からは考えられないくらいの感情に満ち溢れた表情で、そう頷いた。

 ──俺はメルティも悪魔の駒の、騎士の駒を授けた。それをメルティはキュッと握り、そして温かな赤い光と共に駒はメルティの胸の中に浸透するように消える。

 

「──イッセー、さん。今、何をしてたんですか?」

 

 ……俺たちの会話で起きたのか、ハレとアメが起きてこちらを見ていた。

 

「悪い、起こしちまったか?」

 

「いえ……今のは」

 

「……あぁ。メルティを悪魔に転生させたんだ」

 

「……悪魔」

 

 ハレとアメはそれぞれの反応をしていた。ハレはどこか悩むような表情を浮かべており、アメは俺をまっすぐ見つめていた。

 ……ハレとアメの願いは知っている。二人で幸せに、平和な日々を過ごしたい。

 

 だけど俺の人生は危険と戦いばかりだ。俺といることで、二人の平穏はまた崩れる可能性は十分にある。

 

 だから俺は彼女たちが平穏で暮らせる場所を与えて、別れた方が良い。

 

 ──だけど俺の心が、この子達と一緒にいたいと思っている。一緒に暮らして、面倒を見たいと思っている。

 出会って最初から抱いていた謎の親近感は、出会って確信に変わった。俺はこの子達を、大切に想っているんだ。

 

「……ハレとアメはこれからはずっと一緒にいれる。俺が出来ることは、その環境を与えることだ──二人はどうしたい?」

 

「……僕は、アメと一緒に生活できるなら──あ、あなたの傍にいるって、選択肢は」

 

「アメもハレに賛成。アメも、イッセーの傍にいたい」

 

「──俺は戦いを呼んでしまう。二人の願う、平穏からはかけ離れている」

 

 俺は残酷だろうが、そう言うしかない。俺の傍で生きることとは、そういうことだ。

 

「俺の人生には戦いが付きまとう。きっとこの先も、幸せの約束はできるけど、平穏でいられる約束はできない」

 

「──し、幸せの約束は、してくれるんだ」

 

「ハレ、お顔真っ赤」

 

 ……俺、結構残酷なことを言ったつもりなんだけど。何故かハレは照れていて、アメはそんなハレをニヤリと笑いながら突っ込んでいる。

 

「ま、真面目に聞いてくれ。命の危険を減らすのなら、俺からは離れるべきだ。だから」

 

「──だからあなたの善意を利用して、自分たちは安全な場所で何も知らないふりをする。……そんな恩知らずなことは、僕もアメもできません!!」

 

「右に同じく」

 

 ハレはベッドから降りて、俺の目をまっすぐと見ながらそう断言した。

 

「……ディヨン・アバンセから奪われた記憶が、戻りました。もちろん全部じゃないけど、本当のお母さんやお父さんのことを思い出した──二人は受けた恩は必ず返す。そう私たちを育ててくれた」

 

「きっとイッセーが助けてくれなかったら、私たちは死んでた。だから──」

 

「「()たちは、あなたのために生きたい!!!」」

 

 アメとハレは、声をそろえてそう言った。

 ──メルティと同じで、覚悟の籠った目だ。その覚悟に、俺は応えなければならないよな。

 

 ……俺は懐から悪魔の駒が入った木箱を取り出し、綺麗に詰められている兵士の駒を全て取り出す。

 

「──俺は眷属を、家族と思っている。永久に近い人生を、二人三脚で歩んでいく仲間だ。だからこそ、生半可な覚悟な人を、下僕にはできない。自分を大事にできない人を、家族にはできない」

 

 箱ごと二人の前に突き出して、話し続けた。

 

「ここからは俺の願いだ。もちろん悪魔にならなくても君たちの安全は保障する──でも俺は、君たちの支えになりたい。だからもしも君たちが俺の仲間になってくれるなら、この箱を受け取ってほしい」

 

 ハレとアメは顔を見合わせる。

 ──万年に近い永久を生きる悪魔。ただ生きる分には長すぎる人生だ。だからそんな簡単に選んではいけない。

 

 ……それは俺にも言えることなんだろう。上級悪魔になって本当に少しの時間しか経っていないのに、俺は女王を残す全ての駒を託してしまった。

 

 でも後悔はない。この二人が俺の大切な仲間になってくれるのなら、俺は──

 

「ハレ、8つもあるけどどうしよう」

 

「うーん、4つずつでいいんじゃないかな?」

 

 ……ハレとアメは、箱から駒を取り出して、互いに四つずつ手にしていた。

 

「……あのさ、俺、今結構勇気ふり絞ってお願いしたんだよ!? そんな呆気なく……」

 

「……アメは最初から答え決めてた」

 

「わ、私はそりゃあ迷いましたけど──アメとずっと一緒に入れるなら、答えは一つです。そのためなら何でも切断します!!」

 

 ハレは神器を取り出して、両手で握ってそう息巻いた。

 ……はは。なんだ、最初っから変に悩まず、ストレートに言えば良かったって話かよ。

 

『相棒のそういう気の遣うところを、彼女たちも信じてくれたんだよ──ただ兵士の駒四つで足りるだろうか。俺の見立てでは、二人とも神滅具クラスの神器だ。相棒の潜在能力を反映した悪魔の駒なら、大丈夫だとは思うが……』

 

 無理な時はその時考えるさ! 

 

 ……俺はふと、気になった。二人はディヨンが死んだからか、彼に奪われていた記憶を幾らか取り戻したと言っていた。

 

 ……二人のラストネームについてだ。眷属にするにも、二人の本名を知らなければならない。

 

「……二人のラストネームは思い出せたか?」

 

「あ、はい! それは思い出せてます!!」

 

「アメも」

 

 俺はホッと胸をなでおろした。

 そして二人は声を合わせて、

 

 

 

「──ハレ・アルウェルトです!」

「──アメ・アルウェルト」

 

 

 

 ──……その名前を聞いた瞬間、音が聞こえなくなる。

 

 アルウェルト……そのラストネームは、俺にとって重要な名前だった。

 

 その名前は、ミリーシェのラストネームだ。

 

 ……そうか、そういうことか。金髪、少しの癖っけ、蒼い瞳──全てはミリーシェを連想する要素だ。

 

 俺はこの二人に、最初からミリーシェを重ねていたんだ。

 

「ははっ」

 

 つい、笑ってしまう。

 ──ミリーシェと血縁がある。そりゃあどうにか二人を守りたくなるはずだよ。

 

 俺は二人を抱き寄せた。

 

「は、はれ!?」

 

「……イッセー、大胆」

 

「俺はお前らを絶対に幸せにするからな! 絶対に俺から離れんなよ、チクショー!」

 

 ──北欧の地で、ミリーシェの血縁者との出会い。運命としか言いようがなかった。

 ……そして一つ、確信を持つことが出来た。

 

 ……エンドは、曲がりなりにも戦争派に対しては明らかな敵意を向けていた。もしかしたら、あいつは自分の時代を超えて存在した親戚を、守ろうとしていたんじゃないか。

 

 あいつは身内にはとことん甘い。昔からそうだった。

 

「……もう、仕方ないなぁ」

 

「まんざらでもなさそう」

 

「あ、アメ!?」

 

「……メルティ、仲間外れ悲しい」

 

 ──感動的な場面のはずが、いつも通りの女難の流れ。

 だけどちゃんと紹介しないとな。

 

 

 ──こうして、俺たちの北欧での出来事は幕を閉じた。

 

 

『赤龍帝眷属』

 

 王  兵藤 一誠

 

 女王 ────

 

 戦車 ティアマット

 

 騎士 土御門 朱雀

 

 騎士 メルティ・アバンセ

 

 僧侶 黒歌

 

 僧侶 レイヴェル・フェニックス

 

 兵士 ハレ・アルウェルト(兵士4個分)NEW!! 

 

 兵士 ソラ・アルウェルト(兵士4個分)NEW!! 

 

 

 ―・・・

 

 俺たちは北欧から日本に帰り、そして色々な人たちに頭を下げたり、お願いをしたり……色々と騒々しい日々を過ごしていた。

 

 眷属のみんなにはハレとソラ、メルティが仲間になったことを伝え、まずは相談もなく眷属にしたことを怒られて……三人の可愛さに、みんなすぐに受け入れた。

 

 メルティは黒歌に特に懐いており、ハレとアメはチビドラゴンズやオーフィスとも打ち解け、今では兵藤家にもなじんでいる。

 

 あれから1か月の月日が経ち、季節は完全に冬になる。

 

 部長たちに北欧でのことを伝え、修行も苛烈になり、俺も新しい新技がとうとう形になった。

 

 ……その間、気味が悪いほどに敵に動きはなく、アザゼル先生たちも血気になって敵の本拠地を探すことに躍起になっている。

 

「……平和だ」

「イッセーさん、なんだかおじいちゃんみたいですよ?」

 

 俺はソファーで隣り合わせで座るアーシアに、ふとそんな軽口をたたかれてしまう。

 ……久々の二人きり。アーシアは相変わらず癒しの化身だ。

 

「……いや、こんな平和がずっと続けば良いってさ、思っただけ」

「そうですね。……あ、インターホンが」

 

 俺よりも先にアーシアがインターホンの音に気が付いた。

 ……なんだろう、荷物とかは特に何もないはずだ。誰かが遊びに来たのか? 

 

「アーシア、俺が行ってくるよ」

「はい! あ、でしたら私はお茶でも淹れてますね!」

 

 アーシアの淹れてくれる紅茶は絶品だから、俺はすぐにインターホンを相手を終わらせてリビングに戻りたくなる。

 

 だからか、俺はリビングにカメラ画像を見ずに、すぐに玄関に向かってしまった。

 

「はいはい、誰です──か」

 

「──イッセー、むかえにきた」

 

 ──俺の視線の下には、リリスが立っていた。オーフィスとは瓜二つの容姿の彼女は、俺が出てくるや否や、俺の手を握る。

 ……悪意はない。俺も油断していた。この子は禍の団の一員だというのに、俺は何一つ警戒することもできなかった。

 

「リリス、どうし──」

 

 ……そこから際は記憶はない。

 だた後頭部に感じたこともないような鈍痛が響き、少しずつ俺の意識を奪っていく。

 リリスは光のともらない目で──嗤っていた。

 

「──イッセーは、リリスのもの」

 

「あ──…………」

 

 目の前が真っ暗になった──……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、三大勢力に激震が走る。

 

 目下、三大勢力最高戦力の一人、赤龍帝の兵藤一誠が姿を消した。

 

 その原因もすぐに判明する。玄関を録音するカメラにその全貌は映っていた。

 

 ──禍の団、クリフォトの中心人物、リリスの急襲。そのリリスを前に兵藤一誠が敗れ、そして連れ去らるまでの一部始終が鮮明に映っていた。

 

 ……誰一人としてリリスの駒王町への侵入に気付かなかったのだ。

 

 …………そして誰一人として、リリスの変貌ぶりに気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 ──平穏もつかの間、禍の団との最終決戦は間近にあった。

 

 

 ──三大勢力、クリフォト、英雄派。様々な勢力が入り組んだ戦争が、目前まで近づいていた。





――それは終焉の幕開け。


進んだ秒針は決して戻らず、戦いは混沌となる。


強さを求めた青年の、悲しい真実


戦いの先にあるものは――笑顔であると、彼は信じている。



Original Chapter ―――家庭訪問のベビードラゴン



やべぇことになった。リリスが、イッセーを連れ去った。すまねぇっ!!――アザゼル
三大勢力の支柱の一人は、謝り、彼を取り戻すために動き続ける


奪われたのなら、奪い返すの……私はあの子の、主だもの――リアス・グレモリー
強くなった彼女は、冷静で居続ける。


リリスちゃんがどうにも勝手な行動が多いねぇ~――リゼヴィム・リヴァン・ルシファー
リリスの独断は、彼を以てしても予想外であった。


決めたよ、みんな。俺たちは禍の団から抜ける――曹操
人類の最後の砦は、人類を守るために戦う


心配しなくて、彼は自力で戻るさ。そういう男だ、俺のライバルは――ヴァーリ・ルシファー
そういう彼は、誰よりもライバルを信じていた


我、グレートレットに会いに行く――オーフィス
彼女は友達を守るために、意地を捨てた


傷だらけになっても、帰ってくれば私がどんな傷でも治します。だから……死なないでくださいっ!!――アーシア・アルジェント
彼女は彼らの生命線だ


僕は親友のために戦う。それだけだよ――木場祐斗
親友を救いに行けない歯がゆさを、彼は一身に受ける



――兵藤一誠不在の三大勢力。


そんな彼らを悪意の象徴は見逃すはずもなく、戦争は始まる。



悪いが、私たちは独断でイッセーを救いに行く。異論は認めない――ティアマット
最強の戦車は、弟を救う算段をつける


兄さん、決着をつけましょう――龍宝院朱雀
宝玉の騎士は、無残な兄の姿を見て、心を殺す


イッセーの匂いはこの鼻で覚えてるニャン――黒歌
赤龍帝眷属切手のイッセーマニアは、距離が離れていても関係ない


……メルティも、イッセーの匂いは好き――メルティ・アバンセ
メルティよ、それは今は関係ない





――囚われの兵藤一誠。


彼を救い出すが、向かう敵は最強格のドラゴン、リリスだった




イッセーはリリスのもの、だれにも、リゼヴィムにもだれにもわたさない――リリス



一体こんな醜悪な存在を誰が救うと? あぁ、生きていくのは辛い……誰か、俺を殺してくれ――安倍晴明



歪んだ少女と、歪んだ青年。その二人を救うことが出来るのは、ただ一人だ




理不尽に負けてんじゃねぇ。生きることを諦めてんじゃねぇ。助けてほしいなら、そう言え!!!!!――兵藤一誠





例えどんな状況でも、彼は決してぶれることはない。


敵であろうと救う。その姿は――英雄だ。


そうして始まる戦争。


そしてその陰で蠢く、一人の少女



君は私が救って見せる。私は君のことを愛しているの――終焉の少女・エンド





第11章 家庭訪問のベビードラゴン



これは、命の物語である。

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