ハイスクールD×D ~優しいドラゴンと最高の赤龍帝~   作:マッハでゴーだ!

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第12話 それぞれの物語

 たぶん、俺は全部分かっていたんだ。

 オルフェルさんの一連の行動の意味も、この人が今、俺たちの目の前に立ち塞がっているのも悪意なんてない。

 この決して俺たちの宿敵なんてものではなく、味方どころか既に仲間といってもいい。

 ……最初、この人と出会ったときは完全に敵だったのに、不思議なものだよな。

 いつの間にか俺たちの輪の中に自然と入って、その存在に心地良さすら抱いていた。

 眷属の皆はオルフェルさんに懐いていたし、たぶん俺も……

 なんかさ? 俺にとってオルフェルさんって兄貴みたいなものだったんだ。

 俺は一人っ子だったから本当の兄貴ってものを知っているわけではないから、一概にはそうだって断言できないけどさ。

 それでも俺はオルフェルさんには頭が上がらなくて、認めて欲しくて、褒められたら無性に嬉しかった。

 相手は男なのに頭撫でられたときは異様に心地よくて……俺にとって、やっぱりオルフェルさんは兄貴だ。

 こんな兄貴がいたら俺はたぶん幸せだったんだよな。

 ……俺にはオルフェルさんの過去の記憶の断片がある。

 それはとても悲しい悲劇で、それでも折れなかったオルフェルさんの強さを知っている。

 でもあの人の弱さも知っている。

 あの人の強さは弱さと表裏一体だったんだ。

 いくら力が強くても、その心の奥底にある闇は黒く、あの人を蝕んでいた。

 ……やっと実感できた。

 あの黒い赤龍帝は、―――俺たちの辿るかもしれなかった可能性なんだ。

 オルフェルさんはもしかしたら、ああなっていたのかもしれない。

 俺だってああなる可能性はゼロじゃない。

 ……そんなあいつを、俺たちは打ち破った。

 俺たちの示し出した答えを掲げ、黒い赤龍帝を倒した。

 ……だけど、まだ終わっていない。

 俺は確かにオルフェルさんを尊敬してるし、敬愛している。

 ……だけど、男として負けたくねぇ!!

 あの人はすごい! そんなことは誰よりも俺が理解してる!!

 だからこそ、俺はあの人に勝ちたい!

 俺よりも遥か高みにいるオルフェルさんと同じ頂きで、同じ光景を見てみたい!

 だからここから先は喧嘩だ。

 赤龍帝 兵藤一誠は、赤龍帝 オルフェル・イグニールに挑戦する!

 俺の体は既にボロボロで、この鎧を纏えるのだって奇跡みたいなものだ。

 もしかしたら戦いにすらならないのかもしれない。

 ……それでもいい。ここで挑みもせず、もう二度と会えないかもしれないこの人を見送るのは嫌だ!

 ……俺はこの世界の兵藤一誠だ。

 だから、俺がこの人を元の世界に送り返す!

 

「喧嘩ってものは、意地と意地のぶつかり合いだ。互いに譲れないものがあるから、譲歩なんてせずぶつかり合う―――一誠、俺とお前の決戦にはふさわしいだろ?」

「……わかりやすいのは良いですね。俺、馬鹿だから―――それくらいの方が、やりやすい!!」

 

 だから難しいことは考えない。限界は目に見えているのなら、何も考えず俺の全てをあんたにぶつける!

 

「いくぜ、オルフェルさん!!」

『Jet!!』

 

 俺は背中のブースターからオーラを噴出し、俺と同じように鎧を纏っているオルフェルさんへと特攻する。

 ドライグ! 俺の鎧の制限時間はどれくらいだ!?

 

『……ざっと見積もると、五分だ。むしろそれほどの余力が残っていたのが幸いしたな、相棒』

 

 ……五分。それが俺がオルフェルさんと戦える時間か。

 ―――短い。俺はもっと、このヒトと戦いたい。だけどそんなことも言ってられないんだよな。

 だったらこの五分を後悔しないように全力で立ち向かう!!

 

「うぉぉぉぉ!!!」

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

 

 拳を振りかぶり、鎧より度重なる倍増の音声を響かせてオルフェルさんへと拳を振るう!

 完全な真っ向勝負の拳!

 対するオルフェルさんは、迎え撃つように拳を放つ!

 

『BoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

 

 オルフェルさんもまた倍増の力を使い、俺と拳を交わす……ッ!

 籠手と籠手が激しい金属音を響かせるほど力は拮抗し、辺りで一陣の風が通り抜けるような衝撃を伝える。

 ……ただこの拮抗だけで、このヒトの強さが身に染みて理解できる。

 ぶれない体の中心線、決して緩めることのない力、一撃一撃が本気の拳。まるでサイラオーグさんを相手にしているような感覚だった。

 どれだけ殴っても、ぶつかって行っても決して諦めず倒れないと思わせるほどの迫力。

 ―――オルフェルさんの本当の怖さは、もしかしたらそれなのかもな。

 

「一誠……ッ! もっとだ! お前を全て、俺にぶつけろぉぉぉ!!!」

『Blade!!!』

 

 オルフェルさんは籠手よりアスカロンを引き抜き、それを軽やかなモーションで横薙ぎで振るう。

 ……速いッ!! 流石のオルフェルさんの俊敏性だけど、それに関心している場合じゃねぇ!!

 

『Blade!!!』

 

 俺もまたアスカロンを瞬時に引き出し、籠手から剣が生えるように出現させる。

 それをオルフェルさんの剣の軌道に合わせるように構え、その剣を受け止め―――ッ!?

 オルフェルさんは突如剣を籠手に収め、体を捻らせるように回転してそのまま踵から回し蹴りを俺の横端へと放った……ッ!!

 ぐぅっ!? ったく、ホント戦闘センスが半端ないな、あんたは!!

 

「―――無刀・断罪の刃」

 

 オルフェルさんはどこからか刀身のない刀の柄を取り出し、それに魔力を注ぐ。

 そこから紅蓮の刃が生まれ、オルフェルさんは俺へと近づいてくるッ!!

 ―――手札の多さも、あんたの強さだもんな!!

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

 

 体に掛かる負担も、今は全部我慢だッ!!

 あのヒトを越えるためには、それくらいしないと話にならないッ!!

 一瞬だけでも良い! オルフェルさんでも反応できない速度で、一直線でも良いから動いて見せる!!

 

『Jet!!!!!!』

「いけぇぇぇえ!!!!」

 

 俺は倍増の力を全て背中のブースターからのオーラの噴出に回し、一瞬という速度でオルフェルさんに特攻する。

 流石のオルフェルさんでも突如の特攻に反応が遅れ、俺はその拳をオルフェルさんの腹部へと放つ……!!

 拳は完全にオルフェルさんを捉え、減り込むようにピシッ、というような亀裂音を響かせた。

 

「がっ!? や、るなぁ……ッ!! 一誠!!」

 

 しかしその優勢もオルフェルさんのオーラの噴出で消え失せる。

 激しい紅蓮のオーラによって俺はオルフェルさんの元から衝撃で後方に飛ばされ、更に追撃といいたいように幾つかの魔力弾が放たれた!

 俺は飛ばされながらそれを確認すると、手元に小さな赤い球を形作る。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!』

 

 更にそれに倍増の力を加え、球体を勢いよくその魔力弾へと放つ!!

 

「ドラゴンショットォォォォ!!!」

 

 オルフェルさんの魔力弾とぶつかり合う俺のドラゴンショット。

 二つの力は互いに威力を相殺し合い、そしてやがて消えて―――ッ!!

 俺は本能的に防御態勢を敷くと、すぐさま激しい衝撃を受ける……ッ!!

 

「―――透過の龍弾(クレアボヤンス・ドラゴンショット)

「まさ、か……魔力弾を放ったと同時に、透過している魔力弾を放ったのか?」

 

 ……そうとしか考えられない。

 それにしても、今のは効いたな~~~ッ!

 もう俺には鎧を修復するほど余裕はない。今の攻撃で鎧の右肩部分は完全に吹き飛ばされて、肩からも違和感を感じるほどだ。

 ……俺はオルフェルさんの方を見る。

 オルフェルさんの腹部には鎧はなく、その鎧も修復するつもりがないのか、そのままにしていた。

 ―――つまりオルフェルさんだって、もう余裕はないんだ。

 実質的に黒い赤龍帝とまともにずっと戦っていたのはオルフェルさんだから、当然っていえば当然だよな。

 

「……ドライグ、あと何分だ?」

『……そうだな。ここから相棒が行動を起こして一分程度が妥当だろう。あれから五分も経っていないが、何分、力を考えもせず使ったから当然だな』

「ま、そう言うなって!―――ドライグだって、この戦いを楽しんでるんだろ?」

『―――当然だな』

 

 ……残り一分、か。

 ならさ……もう、次の一撃で終わらせよう。

 一分も要らない。

 そうだな―――10秒だ。カウントテン……ほら、ライザーと戦ったときと似てるだろ?

 

『……そうだな。ならばカウントテンだ―――トリアイナを使おうか、相棒』

 

 はは……上等だ!

 いくぜ、ドライグ!!

 

「行きます、オルフェルさん! これが俺たちの全力だ!! ―――龍星の赤龍帝(ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)!!!」

『Change Star Sonic!!!!!!』

 

 俺は鎧をパージし、極限まで鎧を軽量化させて光速でオルフェルさんに近づくッ!!

 オルフェルさんの反応が遅れているのを確認すると共に、更に鎧を変化させる!!

 

『Change Solid Impact!!!!!』

 

 鎧を戦車化させ、装甲は重厚なものとなる。

 そして拳を振りかぶり、肘の撃鉄を何度も打ち鳴らし、そして鎧から『Boost!!!』と音声を何度も鳴らせて力を倍増する!!

 

「うぉぉぉぉぉお!!!!」

 

 ―――オルフェルさんの顔面のフェイスに、拳を直撃させる。

 オルフェルさんはそれを避けることが出来ずに攻撃をまともに受け、そしてマスクは消し飛ぶ。

 拳はオルフェルさんを直実に殴り飛ばす。

 ……だけどその時、俺はオルフェルさんの顔を見た。

 

「―――強いな、お前」

 

 ―――笑っていた。

 オルフェルさんは嬉しそうに、……本当に心の底から嬉しそうな顔をしながら笑っていた。

 

「だからこそ―――」

 

 ……オルフェルさんは流れるような動きで首を曲げ、俺の拳を紙一重で避ける。

 その頬は拳圧により切り傷のようなものが生まれ、血を流させる。

 

「お前は、俺の全てを以て倒すよ」

『―――Reinforce!!!!!!』

 

 ―――オルフェルさんの胸元には、いつの間にか創造の神器が発現されていた。

 そこからオルフェルさんの体全体に白銀のオーラが供給され、その各所が若干変化する。

 

『―――Infinite Booster Set Up…………Starting Infinite Booster!!!!!!!』

 

 その音声と共に、オルフェルさんの鎧からは『Boost』の音声が度重なるように鳴り響き、いずれ音の分別が出来ないほどの速度に達する。

 オルフェルさんの拳には紅蓮のオーラが集まっていき、そして俺は理解した。

 

「―――これが俺の、全力だぁぁぁあああ!!!!!」

 

 オルフェルさんはコンパクトな動きで拳を振りかぶり、身を屈める。

 俺の体はその動きに反応することが出来ず、オルフェルさんはその叫びと共に―――拳を振るった。

 ―――ッッッッッッッ!!!?!!!!?

 ……下から放たれるアッパー。

 俺は意識が、朦朧とする。

 鎧のマスクはいとも簡単に決壊し、そして程なくして限界を越えた鎧は解除された。

 俺は宙から落ちていく。

 ……そっ、か。

 俺……負けたんだ。

 

「くっ、そ~~~……。いけるって、思ったんだけどな……」

 

 その事実に、不思議に俺は満足感を抱いていた。

 意識はほぼ失いかけで、でも俺はこの勝負を全力で臨めたことがどうしようもなく嬉しかった。

 ……俺は朦朧とする意識の中、オルフェルさんへと手を伸ばす。

 この手はオルフェルさんには、届かなかった。

 だけど―――近づくことくらいは、出来た……よな?

 

「―――あの拳、確かに効いた。一誠」

 

 ……伸ばした手が、オルフェルさんに握られる。

 

「オルフェル、さん……。俺、あんたに……、ちょっとくらいは、近づけた……かな?」

「……さあな。近づくとか、近づかないとかじゃなくて、お前はこのまま前に進んだ良いと思う。その真っ直ぐな拳を、想いを、馬鹿さがお前の強さだ。この世界の『兵藤一誠』だ。だから―――お前は強い」

「―――ありがとう、ございました……ッ!!!」

 

 意識が暗いまどろみに落ちて行く。

 その中で―――俺は俺は確かなものをオルフェルさんから受け取ったのだった。

 次に起きた時にはもうこのヒトはいない。

 だけど、それでも―――

 

「また、戦ってください……。オルフェルさん……」

「…………。―――ああ!! その時は、また真っ向からぶっ倒すからな!!」

 

 ……はは。

 やっぱ……敵わないな、このヒトには。

 そう思いながら、俺は意識を……手放した。

『Side out:兵藤一誠』

 ―・・・

 ……正直に言えば、めちゃくちゃ無茶をした。

 一誠の方も限界は目に見えていたけど、それでも無茶をしないと俺は勝てないと悟っていたんだ。

 自分の方が消耗しているとか言い訳なんて出来るはずもないし、何より―――一誠のひたむきな拳に、体が勝手に反応したんだ。

 魔力だって空に近かったし、何より鎧を神帝化なんてさせて、後でフェルにどれだけ叱られるのかたまったもんじゃないな。

 ―――一誠は、俺の腕の中で意識を失った。

 俺は一誠を静かに地面に下ろし、少し無理をして癒しの神器を創り、一誠の治療を施す。

 そして……すぐさま俺に近づいてきたリアスたちに、一誠を差し渡すようにその場から離れた。

 

「「「「「「「イッセー(くん)(さん)!!!!!!」」」」」」」

 

 グレモリー眷属はすぐさま一誠の元に駆け寄り、その状態を確認する。……も、既に傷一つない一誠を見て安堵したのか、すぐさま俺の方を見て来た。

 そこには怒りという感情はなかった。

 

「……悪かったな、お前たちの一誠を倒してしまって」

「……そうね。一誠が倒されてしまったということは、それは私達にはもうあなたを止める手段はないということ。……もう、帰ってしまうの?」

 

 するとリアスはそんなことを尋ねて来た。

 ―――おいおい、敵って宣言した俺にそんなことを聞いてくるなよ。

 俺はグレモリー眷属に背を向ける。

 

「ああ。俺がここに来てから、もう1週間近く経ってるからさ―――そろそろ帰らないと、俺の仲間たちが悲しんじゃうからさ」

「オルフェルさん……」

 

 するとこの世界のアーシアや小猫ちゃん、それ以外の面子もまた寂しそうな顔をしていた。

 ……ほんっと、困った。

 

「―――そんな辛気臭い顔するなよ。帰りにくくなるだろ?」

 

 俺は歩みを進める。

 俺の目線の先には観莉を寝かしているタイムバイクがあり、俺はそちらの方に向かって歩を進める。

 

「俺には俺の世界があって、お前たちの世界はここだ。そもそもこの状況が異常事態で、俺はこの世界の異物なんだ―――消えるのは、当たり前なんだよ」

「……そんなこと、僕たちも分かっているさ―――でも、やっぱり君は僕たちの仲間になってしまったんだ。だからかな? ……どうしようもなく、別れるのが寂しい」

「……もう二度と会えないなんて、寂しいです……」

「君とはまだまだ剣を交えて、教えて欲しいことがあるんだ」

「私だって、オルフェル君のことお兄ちゃんみたいにおもってたんだから!!」

「……私と同じ虐めっこ性質がある同志と別れるのはもったいないですわ」

「き、綺麗なイッセー君が帰ってしまう……」

 

 おいおい、言いたい放題だな。

 ……まあ寂しい気持ちがないわけじゃない。

 こいつらと過ごしたのは10日間っていう短い期間だった―――だけどその時間は決して忘れることが出来ない濃厚な日々だった。

 戦いに明け暮れたし、たくさんのことがあった。

 それでも、俺はこの時間が楽しかったと断言できる。

 

「―――フェル」

『……全く、主様はまた優しい神器を思いつきますね』

『Creation!!!』

 

 俺は頭の中に神器を思い描く。

 ……それは白銀の本。

 俺がこの世界で得た、思い出の全て。

 それが映像として写真のようなものが動くってだけのものだ。

 俺はそれをあいつらの方に投げつける。

 

「……オルフェルくん、これは……」

「……思い出だよ。俺がこの世界で創った思い出。この記憶は俺の中で永遠に生き続ける―――ありがと、平行世界のグレモリー眷属」

 

 俺は振り返らず、歩み進める。

 

「たぶんもう会うことはないと思う。それでも、やっぱり別れの時はこの言葉を掛けたいんだ」

 

 どれほどあいつらから離れたかは分からない。

 それでも俺はあいつらに声が届くと信じて―――

 

「―――またな!」

 

 そう、言葉を掛けた。

 ……そして俺は、タイムバイクの元に到達する。

 

「……全く以て、こいつから全てが始まったんだよな。アザゼルと俺の夢も、まあ大概にしないとそろそろ怒られるな」

 

 俺はバイクを少し撫でて、そう呟いた。

 

「んんん~~~っ」

 

 ……っと、その時、眠っていた観莉が大きな伸びをして起きる。

 

「んん……あ、おにいちゃんだぁ……」

「おはよ、観莉」

「うん、おはよ~……あれ? なに、このおもちゃ?」

「これか? これはな……って、観莉に説明しても意味ないか」

 

 俺は観莉の頭を撫でて少し苦笑する。

 ……そうだな、観莉にはありえないほどの迷惑をかけてしまった。

 今度、絶対に何かの形で償わないといけないな。

 

「ぶ~、みりにはおしえてくれないの~?」

「ごめんごめん―――ホント、悪いけどもう一回眠っていてもらえるか?」

 

 俺は観莉の頭を続けて撫でると、次第に観莉の瞼はまた重くなったのか、閉じていった。

 ……前に一度、ロスヴァイセさんに教えて貰った暗示が上手く働いたようだ。

 

「っと、よし」

 

 俺はタイムバイクに跨り、観莉をしっかりと体に固定する。

 そして神器を起動させ、神器に搭載されたAIを呼び起こした。

 

『二名の搭載を確認。機能の選択を行います。当機に搭載された機能は時間旅行(タイムトラベル)となりますが、この機能を使用しますか?』

「いや、俺らがするのは平行旅行だ(パラレルトラベル)だ」

『当機にはそのような機能は搭載されていません。これより時間旅行(タイムトラベル)をかkkkkkkkkkkkkk―――外部からの干渉を確認。当機、平行旅行(パラレルトラベル)を開始します』

 

 ……タイムバイクがシークエンスを開始しようとしたその時、突如俺たちの足元に碧色の魔法陣が展開された。

 それは俺たちがこの世界に来た原因となったアイの魔法陣である。

 ……なるほど、俺たちを無事に届けるってわけか。

 

「っし、んじゃ行くか―――」

「―――ははは。忘れていないかい、平行世界の赤龍帝」

 

 ……………………?

 その時、俺たちの上空より何か涼しげな声が届いた。

 

「……は? ヴァーリ?」

「実に素晴らしい力だったよ、君の覇龍は―――さぁ、戦おうっ!! あの力を俺に存分に味あわせてくれ!!」

「いや、だから何を言って―――」

 

 ……唐突に、俺は思い出す。

 この世界において、ヴァーリと初めて会った時のことを。

 俺と戦おうとしたヴァーリに言った、俺の台詞を。

 

 ―――ヴァーリ。もしこの要求を飲んでくれるなら―――全ての問題が片付いた後、お前と戦ってやる。

 ―――全ての問題が片付いた後、お前と戦ってやる。

 ―――お前と戦ってやる。

 ―――戦ってやる。

 

 ………………………―――忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!

 やばいやばいやばいやばい、一番面倒なやつのことを忘れてた!

 いや、これは洒落にならない!!

 戦闘狂のヴァーリのことだ、何があろうと戦おうとしてくる!

 もうシークエンスに入っているタイムバイクだけど、これを逃せばもう二度と戻れないかもしれない!?

 

「さぁ、始めよう!! そんなものに乗らず、早く―――」

「……悪いですけど、そんなことはさせませんよ―――魔の鎖(グレイプニル)

 

 ―――突如、ヴァーリは極太の鎖によって拘束される。

 ……あれは、グレイプニル?

 俺たちがロキ戦の時、フェンリルを抑えるために使用した鎖であり、そして……それを扱うアイは、俺の前に突如現れた。

 

「……アイ」

「あなたたちは確実に元の世界に帰します。後はそれを起動させれば、自動的にあなたたちは元の世界に帰ることが出来るでしょう」

「……そっか。そっちはどうなんだ?」

 

 アイは俺の創った神器を片手に、何も言わずに笑顔で応える。

 ……そっか。

 ならこれ以上、何も聞かないよ。

 

「……二つほど、あなたに助言をしておきます」

 

 すると突如、アイはそう言ってきた。

 

「助言?」

「ええ。もしくは忠告と言っても良いでしょう―――良いですか? 超越者という存在には、絶対に気をつけてください」

「は? 超越者って、一体……」

 

 俺がアイにそう尋ねようとするが、タイムバイクは既にシークエンスを開始し、俺たちを光で覆っていた。

 

「もう時間がないです。そしてもう一つ―――彼女(・ ・)はあなたにとって、絶大な味方になる一方、全てを終わらせてしまうほどに危険です。だからお願いです。彼女(・ ・)から目を離さないでください。そして……大切にしてあげて」

 

 ……アイはそれ以上は語らず、そして俺たちは浮遊する。

 ……だけどその時、アイの視線は―――何故か、心地よさそうに眠っている観莉の方に向いていた。

 

「言いたいことはそれだけです―――さようなら、イッセーさん」

「おい、アイ! いったい何を言って―――」

「―――あなたに幸せがもたらされることを、平行世界から心より願っています」

 

 ―――視界が反転する。

 俺たちは光に包まれ、そして―――…………

 ―・・・

 

 

 

 

「終章」 それぞれの世界は、回り続ける

 

 ―――あの夢のような日々。あれから2週間近く経った今日、俺、兵藤一誠は自宅のベランダから空を見上げていた。

 既に事件の禍根はほとんど見受けられず、匙や花戒さんも傷が順調に回復し、数日前に退院したらしい。

 当の俺たちもまた傷は既に治っており、残っているのは『あのヒト』との記憶だけ。

 短くも楽しかったオルフェル・イグニールという男との記憶だけが俺の頭に残っていた。

 守護の極地にその脚を踏み込んで、優しい覇の力を体現したような存在だ。

 最初は全ての元凶と勘違いして敵対し、勘違いと理解して共闘し、そして最後は一対一の喧嘩をして……俺は負けた。

 良い所までは行ったと思ったんだけど、やっぱりあのヒトの力は別格だったな。

 

『まだまだ修行が必要ということだ、相棒』

「分かってるよ、ドライグ。……あのヒトと俺は、同じ存在だけどやっぱり別人なんだよな」

 

 俺は手をキュッと握り、それを実感する。

 俺にとってはあのヒトは憧れだった。

 でも憧れと共に、オルフェルさんは絶対に勝ちたいライバルのような存在でもあった。

 ……ホント、ズルいっすよ。

 ―――勝ち逃げとか、どうしようもねぇじゃん!!

 

『……ふふ。意外と負けず嫌いだな、相棒』

「うっせー! 男としても負けて、力も負けて! 俺があのヒトに勝てるのなんてホントエロだけじゃん!!」

『それを誇って言うなぁぁぁぁぁあああ!!!!』

 

 ドライグの叫び声が俺の中で木霊すが、俺はふと後ろに意識を向けた。

 ―――ふにょん……こ、これは……ッ!? このふかふかで俺を包み込むおっぱいはまさしく!

 

「り、リアス?」

「あら、気が付いたの? 残念」

 

 リアスはどこか小悪魔な表情をしながら、俺の顔をおっぱいに押し付ける! ありがとうございます!!

 ……ってそうじゃねぇ!

 

「ふふっ。ごめんなさい。イッセーが柄にもなく真剣な表情していたから、悪戯したくなったのよ」

「べ、別にこんなエロエロな悪戯ならいつでも大歓迎です!!」

「そう? それならもっとサービスして……」

「ま、マジっすか!?」

 

 ……それから、俺の大切な恋人と長らくしていなかった触れ合いを楽しむ。

 ―――そしてリアスは、見計らうように話しかけて来た。

 

「……考えてたのでしょ? オルフェルくんのこと」

「……はい。まあそんな難しいことを考えてたわけじゃなくて―――あのヒトの力って、なんで守護()龍なのかなって思って……」

 

 ……そう。俺が一番疑問に思っていたものだ。

 オルフェルさんの使った力は、優しいモノであり、決して覇ではなかった。

 それでもオルフェルさんは自身の力を覇龍と言っていたけど、俺はあれが覇龍とは到底思えないんだ。

 ……そうだな、あれを俺が名付けるんだとすれば、俺なら―――

 

「―――守護希龍。オルフェルさんはそっちの方が似合っている気がするんすよね」

「守護、希龍。……なるほど、全てを護る希望の龍。確かにオルフェル君を体現してる例えね」

 

 ……いつか、オルフェルさんはそのことに気付くのだろうか。

 それだけが俺は気がかりだった。

 

「~~~っし、んじゃ俺は一汗掻いてきます!」

「……ふふ。イッセー、私も付き合うわ」

 

 するとリアスは瞬時に魔法で自身の体にジャージを纏わせる。

 ……そうだな、偶にはリアスと修行ってのも良いかもしれない―――っと、その時に家のインターンホンが鳴り響く。

 

「珍しいな、客なんて……」

「そうね、とりあえず行ってみましょう」

 

 俺とリアスは共に歩き出す。

 っと、そこで俺は自室の机の上に置いてある、白銀のアルバムを見る。

 ……アルバムは少しずつ白銀の結晶を散らしながら、姿を消し始めていた。

 もしあの神器の光が、オルフェルさんのところに戻るのなら、俺はあのヒトに一言だけ届けたい。

 ―――次は絶対に負けない、守護希龍の赤龍帝!

 ……そう心で叫んだ時、アルバムは消え去る。

 そして俺とリアスは家の玄関に到着し、その扉を開く。

 そこには―――

 

「久しい、ドライグ」

 

 …………どうやら、また厄介な事態になるのかもしれない。

 俺はそう心で思いながら―――俺たちは、俺たちの世界で回り続ける。

『Side out:真紅の赫龍帝・兵藤一誠』

 

 ―・・・

 鳴り響くエンジンの音と、体に伝わる絶妙な振動が心地よさすらも感じさせていた。

 俺と観莉を乗せたタイムバイクがパラレルリープを開始させてから、結構な時間が経っている………、だけど一向に元の世界に戻れないんだよな。

 タイムバイクの表示はあと少しで到着するって出ているけど。

 ………ふと思い出す。

 この数日にもおよぶ色々な事柄を、俺は鮮明に思い出した。

 最初はわけもわからず平行世界に飛ばされて、化け物の相手をしたり、平行世界の俺自身と戦ったり……。

 得たものは大きく、思い知らされたことも大きかった。

 いわば俺の可能性の一つだったのが、黒い赤龍帝だった。

 ……いろいろと課題が出来たな。

 今の俺の守護覇龍は護ることに特化しすぎて、現状戦闘には向いていない。

 仲間に危機が迫ると発動できる力といいけど、もっと使い勝手が良く守護覇龍に敵わずとも追随出来るほどの形態がいるのは必然だ。

 ……なんて難しいことを考えるのはまた今度だな。

 ともかく今回の一件で俺はまた仲間たちから色々小言をもらわないといけないし、観莉のアフターケアについても考えないと。

 そもそも俺が消えてからどれくらい時間が経っているかもわからないからな。

 そして俺は皆に俺の経験した真実を包み隠さずに話さないといけない。

 平行世界の変態だけど熱い思いを胸に誇っていた兵藤一誠と、悲しみに明け暮れて覇を受け入れた俺の可能性の一つだった兵藤一誠のことを。

 

「って、まだつかないのか?」

『まあ相棒。気長に待つとしようじゃないか』

『ええ。話し相手ならば任せてください、主様!』

 

 ……まあそうだよな。うん、焦っても仕方ないし、それに―――そういえば、ここって次元の狭間なのか?

 

『まあそうだな。ここは次元の狭間で間違いないだろう。平行の時間軸を抜ける方法なんて、次元の狭間しかないだろう』

「なるほどな。……考えてみたらさ。今の俺がある理由の一つに、未だに礼を言えていなかった気がしてさ」

『お礼を? いったい誰に……』

「―――グレートレッドだよ」

 

 世界最強のドラゴンで、オーフィスの元宿敵である真なる赤龍神帝の王座に君臨する世界の王者。

 ただの所作で幾重もの魔物を屠り、そのブレスは巨大な空間をもろとも消し去るほどのもの。

 そして……俺にきっかけを与えてくれたドラゴンだ。

 

「あのドラゴンは全てを理解した上で、俺に道を指し示してくれた。……できることなら、また会って話をしたいよ」

『……そうか、相棒―――ならば喜べ。その願いはすぐに叶うさ』

「……は? ドライグ、何を言って……」

 

 俺がドライグにそう問いただそうとした瞬間だった。

 バチッ、バチッ!! ……突如、次元の狭間にそのような音が鳴り響いた。

 次元の狭間に空間を切り開かれたような穴が生まれ、そこから―――巨大な赤いドラゴンが現れた。

 ……俺は口をだらしなくあけたまま、声を失う。

 だってそこにいたのは

 

「ぐ、グレートレッド!?」

 

 俺の会いたいと望んでいた最強のドラゴンなのだから。

 するとグレートレッドはその巨大な肢体をこちらに向けて、翼を織り成してこちらに向かってきた。

 

『―――よう、久しぶりだな。イッセー』

「え、えっとその……お、お久しぶりです」

 

 俺はその威厳ある声音でつい下手に出てしまう。

 っていうか、この威厳はやばい。つい冷や汗を握ってしまうレベルだ。

 そんな反応をしていると、途端にグレートレッドは吹き出すように笑った。

 

『はははははははは!! そんなに畏まるなよ、イッセー!! 俺様がわざわざ来てやったんだ。お前はお前らしくしていれば良い』

「……それもそうだよな。悪い、グレートレッド!」

『それで良いんだ。お前という男は面白い。俺様が久しぶりに興味をそそられた存在でもある―――故に俺様はお前を気に入った』

 

 そしてグレートレッドは俺たちを乗せたバイクを指で掴み、自らの背に乗せた。

 

「グレートレッド。俺さ、あんたに礼が言いたいんだ。グレートレッドが俺を助けてくれたおかげで、俺は皆を守ることができた。前に進むことができた。だから―――」

『あ? 何言ってんだ。俺様はお前を助けてなんていねぇよ』

 

 ……するとグレートレッドはあっけらかんとした口調でそう言ってきた。

 俺はそれに対して反論を翻そうとすると、グレートレッドは俺を封殺するように話を続ける。

 

『お前の言う助けが、お前に託した俺様の力の『爪垢』のことを言ってんなら、それは見当違いも甚だしいぞ』

「でもグレートレッドがいなければ俺は今頃……」

『……んなもん結果論でしかねぇ。良いか、イッセー。確かに俺様の力はきっかけになったのかもしれない―――でもそのきっかけを掴んだのは紛れもねぇ、お前なんだよ。イッセー』

 

 ……グレートレッドは次元の狭間を浮遊しながら、そう話し続ける。

 

『お前は赤龍帝として真に近づいた。それはお前の中で変化があり、お前が自らの殻を突き破ったから。……どうだ? お前は自分の力で進化したんだ。過程に仲間の存在があろうが、補助があろうが関係ねぇ。お前は自分で進化して、そしてその手で仲間を護った―――それがお前の出した守護の真髄なんだろう?』

「……やっぱ、あんたには敵わないよ」

 

 俺は肩で息をするように力を抜いた。

 このドラゴンには全てがお見通しであり、俺の考えなんて全て筒抜けなんだろう。

 

『なあ、イッセー。ありがとうなんて言うな。俺様はお前だから力を貸した。お前じゃなければそんなこともしなかった。そんな悪い奴に、礼なんて言う必要はないんだよ』

「……何言ってんだよ、グレートレッド」

 

 俺はグレートレッドの言葉を聞いて、ついおかしくなった。

 ……だって、その言葉と行動は矛盾しているから。

 

「―――あんたは俺の仲間を魔物から救ってくれた。今も俺や観莉を助けてくれている。そんなあんたの、どこが悪い奴なんだよ」

『は? …………。―――ははははは!! こりゃ一本取られたな、イッセー!!』

 

 ……グレートレッドは俺の言葉を聞いて、大いに笑い飛ばす。

 その笑いを聞いて俺もついつられて笑ってしまい、ひとしきり笑った後、グレートレッドは浮遊をやめて空間に浮かぶ。

 

『……そうだな。ある意味、俺様もお前の影響を受けているのかもな。―――お前と関わりを持ったドラゴンは、みな変わっている。本来孤高で力の体現者であったドラゴンが、お前を中心に輪になり始めている。それはきっとお前が優しいドラゴンだからだ』

「…………」

『俺様は孤高に飽きたのかもな。この空間を漂うこと自体飽きてしまったら、もう俺には生きがいがねぇ。いや、そもそも生きがいなんてないんだけどな』

 

 グレートレッドは「だから」、と続ける。

 

『―――俺様はお前の仲間でいてやる。イッセー、ドラゴンファミリーの"兄"の席を空けて置けよ』

 

 グレートレッドは俺たちを次元の狭間に浮かばせて、そして自らは背を向ける。

 ……俺たちの前には空間が裂けた場所が出来上がっており、俺はグレートレッドの方を見た。

 

『……珍しくオーフィスが俺様に会うために次元の狭間に来て、何かと思えばお前を助けてほしいなんていうもんだからな。ホント、あのじゃじゃ馬はそんなときしかここにこねぇんだからな』

「オーフィスが?」

『ああ。だからお前は何の心配もせずに自分の居場所に帰れ。俺様はまた漂いながら、お前たちを―――』

「―――じゃあグレートレッドも、いつでも帰って来いよ。俺たちの元に」

 

 ……俺はグレートレッドの言葉を遮るように、そう言った。

 

「グレートレッドはたった今、ドラゴンファミリーの『兄』になったんだろ? どいつもこいつも俺の周りのドラゴンは役職を欲しがるから俺も諦めたんだ―――兄ちゃんの居場所は、弟の居場所と同じだろ?」

『…………あはははははははは!! なるほど、あの分からず屋が! 龍王が、天龍が!! お前を気に入った意味がよくわかった!! そうか、そうか!! おもしれぇな、おい!! 最高すぎるぞ、イッセー!!!』

 

 ……グレートレッドの、これまで聞いたことのないくらい純粋で楽しそうな笑い声だ。

 

『ドライグ!! それにフェルウェル!! 安心しろ、お前たちの主は何があろうが、この最強の赤龍神帝が護ってやる!!』

『おい、ぱっと出が出しゃばるんじゃない。相棒はこのパパドラゴンが守るぞ!!』

『全くです! 兄が親に勝てると思っているのですか?』

 

 いやいや、なんでお前たちが喧嘩腰なんだよ、ドライグにフェル!?

 グレートレッドはグレートレッドで可笑しそうに笑ってるしさ!?

 

『……何があろうと、最強は俺様だ。これは揺るがねぇ。どんな白龍皇だろうが、獣だろうが俺は何があろうと負けねぇ。―――だからこそ、お前は最高になれ』

「最高?」

『そうだ。お前は今よりも更に高みの、最高の赤龍帝になれ。最強の赤龍神帝と最高の赤龍帝。最高の肩書きじゃねぇか。……そうは思わねぇか?』

 

 ……俺はグレートレッドの言葉に頷き、そしてタイムバイクを動かす。

 

「それじゃ、グレートレッド。俺は行くよ」

『ああ、行けよ! イッセー、俺を心躍らせた意味を今度解らせてやる―――じゃあまたな(・ ・ ・)

 

 ……そして俺は狭間を抜け、光の見える空間に飛び出た。

 ―――その瞬間、俺の胸ポケットの中に入っている赤いチェスの駒が光り輝いたような気がした。

 ……それは以前、サーゼクス様から頂いた『王』の駒であった。

 ―・・・

『Side:三人称』

 荒野の焼け野原の真ん中で、その二人は目を覚ました。

 共にぼろぼろと比喩してよいほどに傷ついている、二人の男女。

 ―――この世界の兵藤一誠と、アーシア・アルジェントである。

 つい先ほどまで平行世界において死闘を繰り広げ、そして勝敗が決して戻ってきたのであり、そして……

 

「イッセーさん、起きてください。もう朝ですよ?」

「……ああ。アーシア」

 

 アーシア・アルジェントが兵藤一誠の肩を揺さぶると、か弱い声音で兵藤一誠が反応する。

 

「そうか……。戻ってきたのか、ここに」

「はい。平行世界の赤龍帝の手助けの元、帰ってこれました」

 

 彼は、一誠は覇の理を受け入れて復讐を糧に生きてきた。しかし復讐を果たしたと同時に自身にとり憑いた虚無感と後悔、そして闇に侵食されて暴走し、今回の一件を引き起こしたのだ。

 ……闇に関しては、平行世界の兵藤一誠たちとの戦いで幾分消えうせた。

 しかし―――それ以外は何も解決はしていなかった。

 復讐を果たそうとも、仲間はかえってくるわけでもない。

 後悔しても、前に進む道などもうない。

 それでも、彼は別世界の自分の言葉を思い出していた。

 

「―――足掻け、かよ。……無責任なこと言ってくれるよな、あいつ」

 

 その肩は震えている。

 瞳には涙が溜まり、それをアーシアに見せないために顔を腕で隠す。

 しかし―――アーシアはそれをさせず、彼を押し倒すように覆いかぶさり、乱暴に彼の唇を奪った。

 

「んっ……」

 

 ほんの少し息遣いが聞こえ、数秒と経たずにその唇は彼から離れる。

 その頬は赤く、しかし瞳は涙で濡れていた。

 

「また一人抱え込んで、隠すんですか……ッ? そんなの許しません。イッセーさんが泣くなら、私も泣きます。悲しみは一人では背負わせません―――それが、私が決めたこと。この覚悟は何があろうと、揺るぎません」

「アーシア。……アーシアは強いな。俺はこんなにも泣き虫なの―――っ!?」

 

 弱音を吐こうとした一誠に対して、アーシアはまた唇を己の唇で塞ぐ。

 先ほどの触れるだけのキスではなく、もっと深く繋がるように舌までもを進入させて、淫猥な水音を響かせるように……。

 有無を言わせぬ彼女の行動に、一誠は目を丸くして彼女を見た。

 

「……ごめんなさい。イッセーさんから、そんな弱音は聞きたくないんです。イッセーさんは彼の言葉を聞いたはずです―――足掻きましょう、イッセーさん」

 

 アーシアは艶やかに光り糸を引く唾液を口元から垂らしながら、彼を押し倒しながらもそう言った。

 その言葉に、兵藤一誠は不意にその言葉を最初に口にした男の在り方を頭に浮かべる。

 ……間違いを正し、その絶大な力を使うのは仲間を護るため。

 ……分かってる。分かっているんだ、と兵藤一誠は思っていた。

 彼は自分の進む道を、やりたいことを既に決めていた。

 でもその道が険しく、これまでの自身の背負って来た道よりも険しい道のりになることは理解していた。

 ……理解しているからこそ、彼はその一歩を踏み出すことができない。

 やりたいことを見つけた。足掻くことも構わない。

 それでもやはり怖いのだ、兵藤一誠は。

 何かを失うことが怖い。過去、ほとんどの仲間を失ったトラウマが彼を前に進ませることを止めているのだ。

 この道に進めばアーシアは彼についてくることは明白である。

 それを理解しているからこそ、彼の最後の愛しいヒトであるアーシアと共に歩くことを躊躇する。

 ……曰く、彼は優しすぎる。アーシアの弁であるが、それはまさに彼の躊躇を生んでいる。

 ……しかしだ。そんな思考は彼女は、アーシア・アルジェントは理解している。

 なぜなら―――彼女はずっと寄り添っていたから。

 彼が泣いているときも、戦っているときも、眠っているとかも、会話をしているときも、追われているときも……。

 彼女は精神的だとしても、肉体的だとしても、どんなことでも彼のために尽くしてきた。

 いつでも彼の隣にいて、彼を護るためならばどんな罪も厭わない―――それがアーシア・アルジェントの歩んできた道だ。

 恐らく何十年、何百年経っても変わらない彼女の想い。

 例え重くても、それを兵藤一誠が受け止めるのならば、彼女はいつまでもこの道を進み続けるし、その覚悟もとうの昔に持っていた。

 だから彼女は

 

「―――だから一緒に足掻きましょう。この体は、心はもうあなたのもの。地獄に落ちようとも添い遂げます。だから躊躇なんて必要ないんですよ?」

 

 このように断言するのもまた、当たり前のことなのだ。

 

「―――そっか。そうだもんな……。アーシアは俺のこと、なんでもわかるんだもんな」

「はい! 私はイッセーさんのことなら何でもわかります。……だから、私はあなたの傍から離れません!」

 

 アーシアの心からの満面の笑みを見たのはいつ以来だろう。その笑顔を見て、兵藤一誠は心を決める。

 彼はその場から立ち上がり、重たい体を気力で我慢して彼女に手を差し伸べた。

 

「俺はもう誰一人として俺たちみたいな境遇を受けて欲しくない。この力は、一度闇に堕ちたこの力はもう二度と元には戻らない―――その力を以って、俺は世界をこの目で見て歩きたい」

「……はい」

「世界にはさ、俺たちみたいに神器を宿したことによって人生を狂わされた子供がいる。そんな子供達を護りたい―――って、こんな綺麗事、今更似合わないか……」

 

 彼が少し暗い声音でそう呟いた瞬間だった。

 

「―――そんなことはない。そんなこと、あるはずがないだろう。兵藤一誠」

 

 ……突如、彼らに威厳ある低音の声が聞こえた。

 その声は二人からすればある意味で懐かしいものであり、ある意味では最も会ってはならない存在。

 その存在へと振り向き、そして一誠はその名を呟いた。

 

「―――魔王 サイラオーグ・ルシファー……。久しぶりだな、サイラオーグさん」

 

 ―――過去、レーティングゲームで兵藤一誠と拳を交わせたこともある漢。

 体一つであらゆる上級悪魔を凌駕して、その拳であらゆる不条理を突破してその高みへまで昇り詰めた悪魔。

 亡き魔王、サーぜクス・ルシファーの後を継いでルシファーの名を関する魔王となった漢……それがサイラオーグ・ルシファーだ。

 

「ああ。実に何十年ぶりか? お前がはぐれに堕ちて、もう二度と俺とは合わないと言って消えてから。もうそれほどの時間が経ったのだな」

「ああ。もう、それほどの時間が経ったんだ。……そんなあんたが、どうしてまた俺の前に現れる」

 

 一誠は隙を見せない。

 サイラオーグという漢が敵ではないということは誰よりも彼が知っていた。

 それでも魔王という立場から、彼がサイラオーグに警戒を解くことはない。

 

「良い殺気だ。お前はそれほどの重圧の中で生きてきたということは痛いほどに理解が出来る」

「質問に応えてくれ、サイラオーグさん……ッ!」

「……そうだな。―――理由? そんなもの、一つしかないだろう……ッ!!」

 

 サイラオーグは二人に近づいていき、一誠は更に警戒を強める……、ことはなかった。

 サイラオーグのその表情を見た瞬間、一誠は逆に警戒を解いてしまったのだ。

 涙を流すサイラオーグを見て……。

 ―――サイラオーグには才能がなかった。兵藤一誠にも才能がなかった。

 あったのはその体と拳のみで、ただ体を鍛えることが唯一強くなれる手段だった。

 ……サイラオーグは親近感のようなものを感じていた。

 自分と兵藤一誠は似ていると感じ、彼の痛みが自分の痛みのようにも感じた。

 彼が間違った方向に進もうとしているから、彼は何があろうと魔王になろうと決心した。

 でも魔王になろうと兵藤一誠を救うことが出来ず、他の悪魔の強行を止めることが出来ずに彼を別の世界に送ることになった。

 ……後悔を、していた。

 自分もアーシアと同じように全てを捨て、彼と同じ道を歩むことが出来なかったことを。

 魔王という立場を言い訳にして、そんなことをする自分が情けなくて。

 だから彼がここにいる理由に難しいものなどない。

 それは単純明快で、ただ彼は―――

 

「―――お前に再び会いたかったからに、決まっているッ!!」

 

 また彼と話したかったから。

 彼もまた大事な人たちを多く失った。

 自身の眷属を戦争で多く亡くし、母を亡くし、そしてリアス・グレモリーという従兄妹も失った。

 ……彼もまた、もう何も失くしたくない。だからここに来た。

 サイラオーグはむさ苦しいと自身でも感じながら涙を流し、一誠を抱きしめる。

 その行動に一瞬一誠も戸惑いを見せるが、すぐに理解した。

 彼も自分と一緒なのだと。

 

「……ありがとう、サイラオーグさん。それとごめん。ずっと迷惑を賭けて」

「仲間を失い、母を失い、お前たちまで失ってたまるか……ッ! 兵藤一誠、お前は俺の好敵手()だ! だからここから先、俺はお前たちを! 何があろうと味方でいる! 立場など関係ない!! 例え―――」

 

 魔王ではなくなったとしても、……っとサイラオーグが言おうとしたとき、兵藤一誠は彼から離れる。

 それはまるで、それ以上は言ってはならないと言いたいような行動。

 アーシアは一誠の行動を理解し、彼の隣に並び立って一歩、後ろに下がった。

 

「サイラオーグさん。あんたの気持ちはわかった―――だからこそ、あんたは俺たちの元に来てはダメだ」

「何故だ! 俺はお前たちを!!」

「あんたはサーぜクス様の後を継いだ魔王だ。そんな魔王が、自らの道を違えてはダメなんだ」

 

 そして背を向ける。

 

「俺たちは俺たちの道を進む。あんたはあんたの道を進む―――だからさ。あんたは俺たちを見守るだけでいいんだ」

 

 ―――屈託のない笑顔だった。

 ずっと笑顔を見せることがなかった兵藤一誠が、心からの本当の笑顔。

 それを見たサイラオーグは全てを悟った。

 …もう、自分は彼にとって必要がないと。

 もう彼が道を違えることはないのだと。

 サイラオーグは何も言わない。

 ただその背中を見つめる。

 

「俺は一人じゃない。―――ありがとう、サイラオーグさん」

 

 二人は歩き始める。

 険しいかもしれない道を、手を繋いで共に。

 ……彼の仲間は死ぬ間際、彼にたった一つのことを願っていた。

 それは復讐でも、自分たちを忘れないでなどということでもない。

 それはただ一つ―――

 

「また、いつか会おうな」

 

 笑顔で前に進む。

 たったそれだけのことだった。

『Side out:三人称』

 

 

 

 

 ―・・・

「汝、兵藤一誠は多くの功績を挙げ、冥界に多大な利益をもたらしている」

「故に魔王を代表して私、サーぜクス・ルシファーはこの名を以って、いささか例外ではあるがこの名誉を讃え、彼を上級悪魔に昇格させようとのことを決定した。これは魔王の名において絶対であり、普遍である。これは冥界における総意であり、撤回することはない」

「さて、下級悪魔・兵藤一誠。我々はそのように話を進めているが、この儀には最後、貴殿の明確な目標と上級悪魔に昇格することを受諾する必要がある。もちろん上級悪魔は爵位を持ち、下級とは比べ物にならないほどの重圧と責任がもたらされる。それを踏まえた上で私は君に聞こう―――応えよ、兵藤一誠」

「―――謹んでお受け入れさせていただきます、サーゼクス・ルシファー様」

「……その意気込みを申してみよ」

「俺には護りたいヒトがいる。それは昔からの大切な家族で、最初はどの家族を護るために上級悪魔になろうと考えました。でも今はそれだけじゃない。他に護りたい仲間がいる。救いたい人々がいる。変えたい現状がある。だから俺は―――私は上級悪魔になることを、爵位を持つことを望みます」

「……そうか。それならばよろしい。ならば―――この場を以て、現四大魔王の立ち合いの元、この者に爵位と共に上級悪魔に昇格することを決定と致す。賛成の者は立ち上がり、賞賛の拍手をしろ。反論のある者はそのわけを申してみろ。この私がそれを全て応えてみせよう」

 

 

 

 ―――パチパチと、拍手をするような音が鳴り響く。

 俺、兵藤一誠がこの世界に戻ってから数日後の今、俺は満を持してこの場に馳せ参じている。

 上級悪魔昇格の儀。四大魔王たちと冥界の重役が出揃った大きなホールの真ん中で俺は魔王を前に立ち、魔王の言葉を待っていた。

 ……拍手は次第に大きさを増していき、束の間の時間のあと巨大なものとなった。

 

「満場一致のようだな。ならばこの場において、私は―――兵藤一誠に爵位と名誉と領地を与え、上級悪魔への昇格を宣言する!! ……さぁ、イッセーくん。こちらへ」

「はい、サーゼクス様」

 

 俺はサーゼクス様の微笑ましい笑みを見ながら、壇上に上がりそこに用意されているチェスの駒を見る。

 色はまだ白く、それは複数あった。

 ―――8つの『兵士』の駒、2つの『戦車』『騎士』『僧侶』の駒、1つの『女王』の駒に、そして……石碑を前にする。

 俺はその石碑に手をかざし、左腕に神器をイメージして発現させる。

 ……この石碑は悪魔に対して上級悪魔として登録するものであり、更には『王』として記録を記すもの。

『王』の駒が存在しない故にある措置だそうだ。

 すると―――石碑が突然、輝きを辺りに撒き散らした。

 輝きは白いものから次第に赤に変わり、そして紅蓮に変わる。

 それは俺の魔力の性質である色。赤龍帝の鮮やかくも強い力のある色であった。

 石碑には俺の名が刻まれてゆき、次第に光は無くなっていった。

 ……そして俺は目を開けた。

 

「……貴殿の活躍を期待している―――赤龍帝・兵藤一誠」

「―――はい。その期待に応えられるよう、上級悪魔 兵藤一誠は精進してまいります」

 

 ―――そうして俺は上級悪魔となった。

 俺は壇上から足を一つ進め、俺の姿を一目見に来た仲間の方を見た。

 仲間は皆、笑顔を浮かべつつ大きな拍手をしており、その中で一人だけ涙を流す存在がいた。

 それは悲壮な涙ではなく、嬉し涙……だったら嬉しいな。

 俺は一つの駒を取り出す。

 そう、この場で俺はこの駒をすぐに使う。

 悪魔の重役がいるこの場でなければならない。

 

「―――黒歌」

「ッ! イッセー……ごめんね? なんか涙が止まらなくて……」

 

 俺は黒歌の目の前に立ち、その頭を撫でる。

 ……俺は黒歌と約束した―――必ず俺は上級悪魔になって、お前を救ってみせるって。

 その約束を今、叶える。

 俺は黒歌の手を引き、再び壇上に立つ。

 その行動に拍手で埋め尽くされていた場が静まり返り、俺は紅蓮に染まった僧侶の駒を高らかに掲げた。

 

「この場にお集まりの気高き爵位を持つ悪魔を前に、私は宣言する! 元最上級悪魔 ガルブルト・マモンの策略で指名手配されていた俺の家族! 黒歌を我が眷属にすることを!!」

 

 俺は黒歌を抱き寄せ、その場にいる全ての悪魔に向けて言葉を放つ。

 中には反論や中傷の声も聞こえるが、そんなものは殺気で黙らせる。

 場はひとしきりに静かになり、俺は改めて黒歌の頭を撫でる。

 そして少し体を屈め、黒歌と同じ視線にして話しかけた。

 

「俺は黒歌だからこそ、眷属になってほしい―――俺の眷属になってくれるか? 黒歌」

「……愚問にゃん、イッセー!!」

 

 ―――黒歌は次の瞬間、勢いよく抱き着いてきた。

 その頬は嬉し涙で濡れ、肩は震える。それを確認して、俺は黒歌へと『僧侶』の駒を与え、それは黒歌の体の中に浸透する。

 ……何の偶然か奇跡か、俺の持つ『僧侶』の駒の一つと兵士の駒の一つは変異の駒(ミューテーション・ピース)であった。

 一つの駒価値がどれほど大きくなっているかは知らないけど、今はそんなことどうでもいい。

 黒歌の体は駒の色と同じように光り輝き、そして―――

 

「……ありがと、イッセー。私はいついかなる時もイッセーの傍で戦うにゃん。私、黒歌は兵藤一誠の『僧侶』として、あなたに生涯を尽くすにゃ!!」

「ああ。よろしく頼む―――文句は言わせない。文句があるなら直接俺の所に来い! 俺はそれのために上級悪魔になった! 俺は力の権化とされ、あらゆる勢力から危険視され、滅ぼされた二天龍の一角、赤龍帝ドライグの力を宿す者、兵藤一誠! 俺はいつでも真正面からぶつかる!! ……以上が俺のこの場における宣言です」

 

 無礼なことは百も承知だ。

 それでもこれは必要なことなんだ。

 ―――平行世界で、俺は違う世界の俺と会った。

 その俺は変態で、でも仲間を大切に想って体を張り、努力を惜しまない奴だった。

 ……平行世界で、俺は最悪の可能性と会った。

 それは俺が下手をすれば辿り得た存在であり、悲しい宿命を背負った男だった。

 ……だけど俺はこの道を進む。

 平行世界の俺が前に進み始めているのなら、俺だって停滞しているわけにはいかない。

 俺たちは交わらないそれぞれの道を真っ直ぐに歩き、それぞれの未来に突き進む。

 ―――だからそれぞれの世界は、これからも回り続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―・・・

『まさか介入するとは思っていなかったわ』

「ん? そだねぇ~。でもやっぱりイッセーくんの紅蓮はいつ見ても綺麗だよね」

『……ほぉ。中々に思い出してきたようね』

「うん、アルアディア。まだ感情とかは芽生えてないけど、記憶だけならもうほとんど戻ってきたよ」

『それは結構なことね。……いつになったら、彼に会いに行くのかしら?』

「それはまだ♪ だってまだまだイッセー君を守るのに力が不足してるんだもん」

『……じゃあもう一つ質問をするわ』

「はい、質問者のアルアディアくん! 質問を認めよう!!」

 

 

 

 

 

 

『いつまで、《袴田観莉》の人格で彼と接するつもりだい? ―――ミリーシェ・アルウェルト』

「……さあ? だって私は完全に目覚めていないからね。中途半端に目覚めたから、袴田観莉の人格は今回、幼児退行しちゃったしぃ~。私という人格が大きくなったことで、あの子の人格にバグが起こったのかな? ……ばれなかったのは奇跡だね。アルアディアの宿敵がそのことに気付かなくて良かった♪」

『……フェルウェル。私には奴が何を考えているか分からない―――一体、どうして奴がオルフェル・イグニールを宿主に選ぶことが出来たのか』

「……そんな不確定で不安な奴にイッセーくんは預けられないな~―――いずれ、返してもらうよ。その力が私にはあるから。……ふふふふふふ、早く手にいれたいなぁ~、イッセー……くん?」


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