と普通に挨拶しましたが、1ヵ月半何の報告もなくすいませんでした。
言い訳をするとテストが終わり小説を書いてたんですが、寝ぼけてデータをふっ飛ばしてしまい不貞腐れてました(おい)
で、1からやり直して、時間を余計に食わせてしまいました。
こういうことがないように気をつけていきたいです。
いつもよりちょっと長いです。
では、どうぞ
「お待たせしました仁矢さん。覚悟はできてますよね? 普段から僕に足蹴にされたいなんて言ってましたし、斬られても文句は言えないはずだ」
冬の夜にも負けない冷たく鋭利な音を奏で銀鱗が鞘から姿を現す。
赤奈は刀を突きつけ、かつての恩師と対峙した。
仁矢は斬られた片腕を握りつぶし、無理矢理止血していた。はっきりと憎悪を宿した三白眼が赤奈に向けられており、外見の凶暴さをより強く映し出している。
「仁矢なんて名前やない。ベヒモスや。覚えとき――――それに生憎やけど僕は本当はSやねん。だから、いじめさせてもらうで」
言うやベヒモスの手から黒い炎の塊が生成される。やがて、衣を剥ぎ取るように炎は消え、中から黒い片手直剣が生まれる。
それが彼の魔器なのは一目で分かった。本来の魔器でないハンドガンをああも見事に操っていたのだ。剣の腕前はそれ以上と見るべきだろう。
「この剣の名前はアッシュレッド。ワイの愛剣でな。力を失ってたから発現できんかったんやけど天使ちゃんのおかげでこの通りや」
アピールするように暗闇に紛れる漆黒の剣を振る。
即席の相棒である銀鱗は研ぎ澄まされた美しさを感じるがあれは真逆だ。禍々しいまでの狂暴さが見て取れる。間違いなく危険だ。
「それで病弱虚弱の赤奈君はどうするんかな? まさか、この僕と戦うん? 今まで喧嘩ひとつもしたことないやろ。やめとき絶対に勝たれへんよ」
最終勧告。従わなければ殺すと暗に伝える言い方だった。
確かに赤奈は今まで喧嘩などしたことがない。運動もあまりしないし、できなかった。温厚な彼は争いを好まず、喧騒とは縁のない生き方をしてきた。
そんな赤奈が怒りを覚えている、血が熱く滾り、頭が沸騰しそうな暴走一歩手前の興奮。
昨夜の天使にぶつけた無自覚な怒りとは違う。はっきりと反発する、逆らうといった暴力的感覚が全身を縛り付けて離さない。
だからこそ言える。自分を通すための意志を言葉に変えることができる。
「それがどうした。あなたは僕から大事なものを何度も奪った。それだけじゃない。今また僕の大事な人を傷つけた。それだけで勝算の計算なんて関係ない。勝つんだ! 絶対にあなたをここで倒す。たとえ、卑怯で汚くても、不意打ちだろが騙まし討ちだろうがなんだってして仁矢さん――――いや、ベヒモス。アンタをここで倒す! 絶対に!」
宣言どおり問答無用で暗闇の屋上を疾走した。体がバラバラになるくらいの加速感を味わいながらも距離を一気に詰める。
間合いを捉えると銀鱗を横なぎに払う。
目にも留まらぬスピードだったが、表情一つ変えず、いとも容易く下から跳ね上がった黒剣に弾かれた。
渾身の一撃を防がれ、バランスを崩した赤奈の隙だらけの腹部に丸太のような太い足が矢のように刺さった。
受身もろくに取れないまま、背中を地面に二三転こすり、半立ちのままフェンスがひしゃげる勢いで強打した。ぼろきれのようなフェンスに人型のへこみが生まれる。ダメージにより立つこともままならぬままフェンスに体を預ける。
視界がホワイトアウトし、意識が曖昧になっていく。ギリギリ現実にとどまれたのはユウから借りている銀鱗の冷涼な感触のおかげだ。
「赤奈さん危ない! 避けて」
夢見心地の脳内に天使のはっきりとした声が飛び込む。遅れて自我を取り戻し、視界が開けると黒い剣先が目前まで迫っていた。
「っう!」
運動神経が焼き切れんばかりの速度で首を傾けるが避けきれず頬に赤い一線が入る。
だが、敵の剣突きを避けることはできた。
お返しにがら空きの胴にカウンターを叩き込もうと腕に力を入れた瞬間、虫の知らせとでも言うべき直感が警告を発した。
視界の僅か端に映っていたアッシュレッドが空中に停止した後、首を狙って刃を剥いた。
それを見て無理矢理命令をキャンセル。斬りかかろうとしていた銀鱗に急ブレーキを掛け首筋を守るために間に割って入らせる。
「うっ! …………くっ!」
ギリギリ間に合ったが、想像よりもずっと強い力だった為、簡単に吹き飛ばされる。今度は横なので受け止めとくれるものはない。
しかし、今度は受身を取り、すぐさま立ち上がった。
「はぁ、はぁ、はぁ…………」
たった数秒の戦闘で息が荒れている。みっともなく肩を揺らしているのが悔しくて仕方なかった。
あれだけ大見栄切ったのだ。ここでやらねば男が廃るというものだ。
「情けない。まったく駄目やで赤奈君。本当に天使と悪魔の力が覚醒してるん?」
「どういう意味で……だ? 現に僕は、人間離れの身体能力を発揮しているはずだ」
「いやいや、あの程度じゃ想像の10分の一くらいしかないわ。まだ、君の力は不完全なままやな。その証拠にほれ、君にはないやろ? 僕ら悪魔の羽。もしくは天使の翼がな」
「………………」
実の所、赤奈自身思う所はあった。
ベヒモスの指摘どおり、人外の証明である翼の類がない。足りてない要素がある。ピースが半分欠けている。それを補うには何かが必要であることも分かっている。 しかし、その何かに見当がつかないから困っている。
ゆえに悩んでいても仕方ないからこうやって未完全なままで斬り合いに望んだわけだが、甘かったようだ。
認めるしかない。自分は劣っている。このままではベヒモスには決して勝てない。
だから、戦いの最中で見つけるしかない。残りの半分を。例え、雲を掴むような話であってもだ。
「だから、足りない何かを見つけるまで付き合ってもらうから覚悟しろ!」
「君の体には興味があるからな。可能な限り傷つけずに殺したるわ」
今度はベヒモスから動いた。
夜色を光らせ上段から振り下ろされた剣を、銀鱗で受け止める。強烈な衝撃に手首がじんと痺れた。
速くて重い。本来の自分ではけして返せない剣戟が今度は左から来る。
なんとか上から押さえ込んだが、それにより、ベヒモスとの距離が手の届く距離になる。
よもや、火を吐くとかしてこないよなと不安をよぎらせるが、代わりに熱い吐息が額を撫でた。
「少しは成長している見たいやな。ただ、やっぱり足りてないわ。こんなん簡単に返せるわ」
フン、と気合をこめる声と共に銀鱗が押し返された。
なんて力だ、と赤奈はそう思わざるえない。片手でこの力なのだ。もし右腕を切り落としていなかったら今頃自分はどうなっていたのか。想像するだけで恐ろしい。
「ほら、お腹がお留守やで」
腕が顔を覆い、胴体が敵に晒されている。その隙を逃すはずもなくベヒモスは猛然と斬りかかった。
刀での防御は間に合わないと判断し、左腰に備えられた鞘を素早く走らせる。
銀鱗に負けぬ凝った装飾の鞘だ。本来の用途とは違うが頼らせてもらうしかない。
一度目の攻撃は防ぎ、二度目でひびが入った。
だが、僅かな時間を防いだだけでも十分だ。可能な限り後ろに飛びまたも距離を取る。
「逃げてばかりやな。及び腰で勝てると思うなよ!」
優勢と知り突きの姿勢で赤奈の視界を黒い巨躯で埋めてくる。
だが、赤奈はただ逃げたわけではなかった。
赤奈は銀鱗の鞘を何を思ったのかベヒモスに投げつけた。
予想外の攻撃にベヒモスは思わずたたらを踏み、顔めがけて飛んできた鞘を迎撃する。
その隙に赤奈は爆発的な加速と共に巨体の脇腹を駆け抜けた。そして、抜き様にがら空きの背中に一太刀入れる。赤い血がまだらに屋上を汚した。
浅かったがようやくダメージらしいダメージを与えられた。それに目の前の悪魔羊の怒りに歪んだ醜悪な顔が何より心の重圧を軽くした。端的に言えばスカッとした。
「これでもまだ馬鹿にできますか?」
わざと敬語で煽り、フフンと顎を僅かに上げる。
煽りは十二分に効いたようで青筋を浮きぼらせながら歯軋りをした。
「…………ああ、せやな。舐めすぎたようや。ただのお坊ちゃんなんて考えは捨てたろやないか悪ガキ。腐ってもマリーの息子や君は。清純そうなのは外面だけの猫かぶりと考え直さなアカンことはよぉぉく分かったで」
アッシュレッドを上段に構えた。その構えにどこかデジャヴを覚えるが、すぐに思い当たった。
昨夜のユウが銀鱗の力を解放する前の構えに似ていた。銀の刀は金色に染まり、絶大な力を発揮したのは今でも覚えている。彼女が無意識に寸止めをしていなければ今頃自分は死んだことも気付かず幽霊にでもなってこの世を彷徨っていたかもしれない。
「赤奈君。この刀が黒いのになんでアッシュ『レッド』を名乗っていると思う?」
「そんなの……分かるわけないだろ」
アッシュレッドに赤黒い炎が燃え上がった。
それはまるで炎が――否、炎たちが叫んでいるように見えた。
「この剣は元々白かってん。でもな、人を殺し、その血を吸い上げることでこの黒さを手に入れた。つまりこれには人の怨念が宿っているんや」
「なっ……!」
炎が一際強く燃え上がり、弾けて消えた時死んでいった人々の断末魔が聞こえた気がした。
おつかれさまです。
いやー、久しぶりに戦闘シーンを書きました。おそらく一年ぶりのはず。
できばえが一番心配……だって、苦手ですし。
次はいつ投稿するだろう。冬休み中にはもう一度したいです。
では、感想や誤字脱字の指摘など大歓迎です。またお会いしましょう