しかも短いっていうね。なんていうか全然まとまらないです。
次回もいつ投稿できるかわかりませんが、気長に待っててやってください。
では、どうぞ。
「お、気になる? 気になるよな。教えてあげてもいいけど。先に気にした方がいいのがあるんとちゃう? 赤奈君さっきから一言しゃべってないで?」
「――――っ!」
仁矢に気を取られ過ぎていた。
心の中で思いつく限りの罵倒を自分に浴びせ、意識のない赤奈の唇に耳を近づける。
まだ、息はあった。ただ、呼吸が浅い。このままでは時間の問題なのは明白だった。
何か何かと焦る思考を押さえつけ、打開策を練るが見つかりそうにない。
「ユ、ウ」
「赤奈さん! 意識が戻ったんですね」
弱々しく持ち上げられた手を握りしめる。
支えがなけれ崩れ落ちそうな手からは熱が一切伝わらない。ゾッとするような冷たさだ。
温めるように握りしめるが、それが何も解決しないのは分かっている。
「ごめん、もうだめみたいだ。体中かき乱されてるみたいで気持ち悪い」
「だ、大丈夫ですよ。なんとか、何とかしますから。だから、諦めないで、下さい」
途中で涙に誘われた。
溢れ出る気持ちが透明な雫に変わっていく。
首を動かす素振りを見せ――もう体を満足に動かせない――赤奈は精一杯微笑んで見せた。
「約束、守れそうにないや。傍に居て、君が強くなるまで……ゴホッゴホッ」
「赤奈さん! もういいですから喋らなくてもいいですから!」
目も眩むような激痛が喉元を過ぎ、鮮血の雫が宙に舞った。
赤い霧の向こうに涙と共に自分にしがみついているユウを見て、より一層わびしさが増した。
――泣き顔なんて見たくない。泣かせたくない。こんなにも彼女の事が……
もはや、言葉を発する余裕すらない。ほんの少し気を抜けば自分の命は間違いなく消える。
命の灯が消えるその前に伝えなければ。彼女を生かす言葉を。絶対に。
「――――――」
ユウが何か叫んでいる。
「――――――――」
すぐ傍に居るというのにその言葉は自分には聞こえない。
「――――――――――」
「ぁ……」
自分では喋ったつもりだが、音は出てない。いや、そもそも唇自体ろくに動いていないかった。
――頼むよ動いてくれよ。ほんの少し話せればいいんだ。誰でもいい。神様でも仏様でもいいから僕に、力を貸してくれ。
藁をもすがる気持ちで祈るように念じる。
祈りは――――――通じた。
『ほら、がんばって』
不意に耳元から声がした。
声の主に見当はついた。
今までずっと胸の内に生きていた幻想に赤奈はそっとお礼を言った。
力が湧いてくる。それでもなけなしの、スズメの涙ほどの力だが、今はそれで十分だ。
なにせ、たったワンフレーズの言葉なのだから。
15
「赤奈さん?」
ユウはぐったりと動かなくなった赤奈に必死に声をかけ続けていた。
諦めないで。死なないで。置いていかないで。
およそ考えうる懇願の言葉を並べ、必死に呼びかけ続けた。
彼女の献身的な姿勢が天に届いたのか赤奈の唇がはっきりと分かるくらい動いた。
しかし、それだけだった。
動いた唇は音を発することが出来ず、そのまま固く閉ざされた。
赤奈の想いは届かず、以降、彼はピクリとも動かない。どこか満足そうに微笑んでいる彼の顔を見ると、暢気に寝ているように感じる。
「赤奈さん?」
相変わらず、反応がなかった。
体に触れてみる。まだ、温かさはあったものの、生に必要である鼓動が全く感じない。
それが何を意味するのか分からない振りをして、震える声で話しかける。
リアクションがない。
次は強く揺さぶる。
彼は応じてくれない。
どこか冷めた自分がはっきりと宣言した。
日和 赤奈は死んだ。もう動かない。
「あ……ああああああああ」
残酷な事実を叩きつけられ、ユウは悲痛な叫び声をあげた。
どうしようもない感情の本流に呑まれ、ただただ泣き叫ぶ。でなければ、悲しみに押しつぶされてしまう。
しかし、心の中で喚く自分を嘲笑している自分が訊ねた。
お前がきっかけだ。お前に出会ったから彼の未来は奪われたんだ。何を泣いている。違うだろ。お前が殺したんだ。日和 赤奈をここまで追い詰めたのは間違いなくお前だ。
それは致命的なまでに的を得ていた。
ユウは復唱するように、事実を口にする。
私のせいで赤奈さんは死んだ。私に出会ったから彼は動かなくなってしまった。
だが、事実を受け入れるには、彼女の心はあまりにも脆かった。
耐え切れず、押し潰され――――
彼女は絶望した。