今回はいつもより早く投稿できました。
夏休みだから打つ時間が多くていいですねwクラブも休みだし
あ、それと、後書きにお知らせ(そこまで重要ではない気がする)があります。
見ていってください。
では、どうぞ
「!? なんだよ……それ」
思わずそう呟く。理解が、常識が追いつかない。
追い討ちをかけるように気付けば、少女の右手に一本の鞘が収まっていた。
どこか同情するような瞳を赤奈に向けながらも、新たに手にした鞘からそれを引き抜く。シャリーンと涼しげな音を立てて、引き抜かれたのは白銀の日本刀。
いつの間にか雲は通り過ぎ、月光に輝く刀身は吸い込まれるような美しさがあった。
柄は煌めかな細工が施されており、握りには黒い革がしっかりと巻いてある。
赤奈はこのため息が出る程の綺麗な刀に心を奪われた。故にそれを喉元に突きつけられても胸の奥がドキンと跳ね上がるていどで、むしろ刀の鮮麗さは混乱した思考を落ち着かせていく。
どちらかといえば赤奈としては、凶器を持っている本人が表情ひとつ変えてないことに戦慄を感じた。
ともあれ、幾分冷静になった頭で少女の正体と目的を推理してみる。
(刀の用途なんて一つだ。戦う道具。相手を平伏させるためのものでしかない)
では、いったい誰を?
(彼女が探していたのは僕。つまり、僕を殺すためだ。認めたくないけど認めろ。これが現実だ)
鋭利に光る剣先は動かず赤奈の喉元に突きつけられたままだ。動けば、おそらく赤奈の首は切り落とされるだろう。
だが、このまま何もしなくても殺されるのは明白。それならばと、呂律の回らない舌で言葉を紡ぐ。
「君の目的は僕を殺すことなのか?」
正直ダメ元だった。目の前の少女が答えてくれるとは思わなかった。
しかし、意外にも少女はすんなりと返答してくれた。
「ええ、その通りです。とある事情によりアナタを殺しに来ました」
抑揚のない声で少女は答える。そこには気負いも躊躇いも感じられない。標的を殺すだけ。作業を消化していくだけのことに思えた。
「ちなみに逃げようとしても無駄ですよ。その理由はわかっているでしょう?」
「……夜、病院に来たのは人の出入りが少ないから。暗殺には最適の時間だ。そして、巡回している警備員や看護婦さん達に見つからなかったのは、そういう能力に長けているか。この二つから考えるに君が相当危険な人だってことが分かる。そんな人から逃げられないのは明白だよ」
もっとも少しでも妙な真似をすれば自分の首は跳ね飛ばされる、と赤奈は付け足した。
「それに」
一度そこで言葉を切り、赤奈は少女の姿を思い出した。
3世紀頃の日本の衣服に似たワンピース。そして、すべてを包み込み慈愛の象徴である白い翼。
少し足りない部分はあるものの、少女の格好や人並み外れたオーラを統合し、記憶の図書館に参照する。
しばしの間の後、赤奈は少女の正体を看破した。導き出された答えはごく身近なもののようで遠いものだった。
ぶり返してきた恐怖からなのか、それとも少女の正体を導き出したからかは分からないが震える唇を抑え、一度もつっかえずに言った。
「君は人間じゃない。そうだろう? 天使さん」
赤奈はつっかえずに言い追え、内心ホッと息を吐きつつも天使の返答を待った。
少女――いや、天使は仄かに笑をみ浮かべたが、すぐに引っ込め、冷ややかに答えた。
「聞いてた通り頭の回る人のようですね。いかにも私は戦闘能力に長けています。そして、あなたの言うように私は天使と呼ばれる存在にあたります。とは言っても人間の記した聖書や本などとは色々と異なる点はありますが。では改めて」
ほんの少しの間の後、少女は言った。
「私は天使です。ある目的のためあなたの命を奪いに来ました」
本音を言えば、少女は天使ではなくただの一般人で翼もそれに似せた作り物やホログラムだと心の片隅で期待していたのだが、どうやら無駄だったようだ。
赤奈は部屋に備え付けられている時計に一瞬だけ目をやる。
――10時……32分。あと少し、もう少しで……!
さらに時間を稼ぐため、赤奈はどうでもいい内容で口を開こうとしたが、すんでで止めた。
暗闇の中でも淡い光を発しながら佇んでいる少女はその手に握る得物で赤奈を殺しに来た。
しかし、赤奈には、どうしても目の前の幼い天使が好んで自分を亡き者にしようとは思えない。天使とは、一般的に神の使いやら人を守護する者として認知されている存在ではないか。
だから、理由がある。赤奈を襲う理由が。それさえ知ればこの状況から脱する鍵になるかもしれない。
口にしようとしたくだらない話を引っ込め天使をここまで動かす核心を突いた。
「どうして、君は僕を、殺そうとするんだい?」
先程とは打って変わり、つっかえながら問う。
天使は無表情を崩し、厳しい顔を作った。言うべきかどうか迷っているようだ。何度も口を小さく開閉している。やがて「いいでしょう」と前置きし
「一言だけ言うならば――」
表面上は穏やかだが、確かに憂いの混ざった言葉が、部屋に響いた。
「私を取り戻す。そのためにはアナタを殺します」
それ以上は語らぬに及ばずと口を閉じ、刀を鞘に戻し、柄に手をかける。
「居合はこの国の古来から伝わる抜刀術だそうですね。なんでも神速の太刀で敵を斬るとか……これならば苦しまずに済むはずです。なので、動かないでください。狙いが狂いますから」
少女の親指が円錐形の鍔つばを弾いた。
変な話だが、絶命させられる自信が赤奈にはあった。
なのに、赤奈は微動だにせずあろうことにフッと小さく笑を漏らした。策はある。とっておきのだ。
流石の天使も何かあるのかと周囲を警戒する。しかし、特に変わった点はない。
「居合で僕を苦しまずになんて気遣いは無用だよ。なぜなら、その必要はないからね」
紅色の瞳は自信に満ちている。反対に天使の碧色の瞳が揺れる。
天使の反応を好ましく思いながら、赤奈は一人語りのように続けた。
「君はここに来るまで誰にもバレないように来た。裏を返すとバレたらだめなんだ」
温厚な彼にしては珍しく勝ち誇った笑みを浮かべ
「だから、僕は10時40分。この瞬間まで時間を稼いだ」
はい。長々と読んでいただきありがとうございました。
では、早速ですが、前書きでも触れた通り、お知らせがあります。
えー、気づいてる方もいますが、この作品の投稿されている時間は大体、夕方なんですね。
なので、改めて言うのもなんですが、これからは夕方の5~6時くらいに投稿したいと思います。
これは揺るぎません(多分)
で、曜日なのですが、夏休みは書けたらすぐの形で
通常営業時、つまり、長い休みが終わったりすると土曜から月曜にかけて投稿したいと思っています。
長々とすみませんでした。
では、感想など待っております。