この調子で行けたらいいなー
あと、絶賛放送中のブラック・ブレットにはまりましたw
いやー、面白い。ロリコンじゃないけどロリコンになりそうだw
原作買おうかな?
では、どうぞ。
引きちぎられそうな痛みにたまらず苦痛の声を上げる。
これはヤバイ。瞬時に赤奈は理解した。
今回の発作は今までに類を見ない激しさだ。本当に死ぬかもしれない。その前に常時、携帯している薬を飲まなければ。
隣で天使もヒステリックな悲鳴を上げた。
赤奈は思い出したように天使に視線を向ける。
突然、赤奈の尋常じゃない様子にパニックに陥っているようだ。必死の形相で赤奈さん!? と叫びながら体を揺さぶっている。そういえば天使に発作を見せるのは初めてかもしれない。知識と経験では大きな差異があったのだろう。
「く……ぽけ…………とっ…………」
どうにかして薬の存在を知らせようとするが、呻き声しか出せない。
いよいよ発作の波が強くなり、赤奈を更なる苦痛へと誘う。
まるで、それは体の中で激しい争いが起きているようだった。お互いに憎み、嫌悪し、怒りのまま暴れ回っている、戦争のような戦い。その戦いは赤奈が死ぬまで終わらない。永劫の闘争。
「あ、赤奈さん。例の発作で体が痛むんですね?」
どうにか落ち着きを取り戻した天使はうわずった声で尋ねる。
赤奈は首肯した。しかし、痛みに支配された体がうまく動いたかは解らない。
「分かりました。何とかしてみます。いえ、絶対に何とかします」
だが、どうやら伝わったようだ。天使の力強い言葉に萎えかけた心を奮い立たせた。赤奈は必死に重い唇動かし、薬の場所を伝えようとする。
しかし、掠れ声すら出なかった。もはや、体を動かす力は少しも残っていない。だんだん意識も朧げになってきた。本当に死ぬ――死神の鎌が赤奈の首を掛けようとした時、その声は聞こえた。
「赤奈さん。また、アナタを傷つけてしまうかもしれません。だから、先に謝ります。ごめんなさい」
そして、ブレスレットに触れ呪文を呟く。
「saint link」
天使がその名の通りの姿に変身する。
狭い空間のため窮屈そうな翼を折り畳み、赤奈の顔を覗き込む。
そして、天使の顔がゆっくりと急接近してきた。
思考する猶予すら無かった。
あっさりと二人の唇が今一度重なった。
――柔らかい。
ドキリ、と心臓が跳ね上がる。ついでに体が痙攣したように自由が利かなくなった。だが、別にどうでもいい。何もかもこの官能に身を任せたい。
息継ぎのために天使が唇を離す。そして、もう一度。
「ん……」
甘い声が口内から漏れた。
そして、驚いたことにだんだんと体の痛みが取れていく。
まるで天使の命の息吹が赤奈に注がれていくようだ。
長い長い口付けは一瞬の夜のように終わりを迎えた。
逆再生のようにゆっくりと唇を離していく。
天使の瞳が赤奈の脳裏に焼きついて離さない。
「赤奈さん。痛み……取れました?」
目元をうつ伏せ、尋ねる天使。赤奈も天使を直視することができず、見当違いの方向を向きながら、首を縦に振った。
「これが、私の天聖術です。擦り傷程度なら触るだけでいいんですけど、重傷や激痛、それに内傷はキ、キスが一番効果あるみたいで…………」
しどろもどろになりながら天使が説明をする。
まだ気が動転しているのか、赤奈は目を逸したきり、微塵も動かない。
天使もどう声を掛けたらいいのか解らないようで、手を拱いているようだ。
しばらくして、ゼンマイじかけの人形のように首を動かし、赤奈がようやく言葉を口にした。
「もしかして、死にかけてた僕を助けたのは君の力なの?」
その問いに、天使がうっと涙目になり、唇をわななかせた。それが肯定だとは、火を見るより明らかだ。
「………………やっぱり、経験おありじゃないですか。僕の前に誰かとしたことあるから効果を把握できたんだろ?」
途端に赤奈は表情を曇らせた。その言葉には棘を感じる。
天使は慌てて
「ち、違います! これは勝手にインプットされているというか、元から知ってるというか……ああ、もう! とにかく、これは生得的行動みたいな物なんです! 赤奈さんが思っているような事実は一切ありませんから!」
少し前と比べて優しい――その分必死だが――反論だったのは、赤奈の様子が少しおかしいからだろう。
天使の勘違いでなければ、拗ねているように見える。
しかし、天使の説明を聞いて、すぐにへにゃりと表情が崩れた。
「そっか。……そうだよね。ふふっ」
と、隠そうともせずに小さく笑った。
ひとしきり笑ったあと、赤奈は壁にもたれ掛かった。
今度はやけに上機嫌に見える。
――今なら、聞けるかな?
天使はしばらく躊躇したあと、思い切って口を開いた。
「あの……赤奈さん。妹さんの話を聞かせてくれませんか?」
「……急にどうしたの?」
「いえ、特に深い理由はないんです。ただ、私に似ているって言ってたから気になって」
契約者は赤奈に妹がいるとは教えてくれなかった。勝手な推論だが、もしかしたら何かまずい訳でもあるからかもしれない。
だが、それよりも自分の中で聞きたいという私情の方が強かった。赤奈が自分と妹を重ねているのは、何かを求めているからかもしれないと思ったからだ。
「仲はさ、とても良かったよ」
やがて、赤奈はぽつりぽつりと話し始めた。
「本当はさっきこの話をするつもりだったんだ。君の告白の返事をする前にね。この話を聞くと君は僕のことを嫌いになるかもしれない。それでも、聞いて欲しいんだ。僕が犯した大きな『罪』だから」
もう、赤奈から諧謔的な雰囲気は感じられない。
天使はその雰囲気を感じ取ったのか、気配を消すかのように押し黙った。ひたむきに赤奈に向き合う姿勢にも感じれた。
「…………もう随分昔の話かな。知っての通り、僕には一つ下の妹がいたんだ」
口にすると苦々しいあの記憶が蘇る。だが、この記憶に触れる度湧き上がる疼痛を、天使の眼差しが溶かしていくような、そんな気がした。
「妹と僕はとても仲良くてね。お互いにブラコン、シスコンなのは自覚していたよ……ただ、性格は僕と真反対でね。僕は、体が弱いのも相まって家に引きこもりがちだったけど妹は元気すぎるくらい活発だったんだ。だから、いつも外に無理やり連れてこられてはヘトヘトになるまで遊んだよ」
フフと天使が微笑む。
赤奈も微笑で返し、話を続ける。
「妹の名前はユウキ――結ぶに希望と書いて結希って言うんだ。結希はいつも僕の手を引いて色んな所に連れてくれた。我ながら情けないお兄ちゃんだよね」
――今もまぶたを瞑ればありありと思い出せるよ。
内緒で屋敷を抜け出し、私有地である裏山に探検に出かけていた日々を。毎日が新しい発見の連続だった。同じ場所でも、その日は兎がいたり、珍しい花が咲いたり、毎日が輝いていた。
時には街へ繰り出し――勿論こっそり――商店街を幼い二人で闊歩した。
またある時は、検査入院で、病院で寝ていた僕をたたき起こしたお転婆娘は、嫌がる僕を無理やり連れだし、肝試しをしたこともあった。どちらも後でバレ、こっぴどく叱られたけど。
それでも、楽しかった。ずっと一緒だと信じて疑わなかった。
はい、おつかれさまでした。
ようやく書きたいところまで来た気がする……
次は、いよいよ赤奈の過去についてです。
感想や誤字脱字の指摘待ってます。