なんとか投稿できました。
3月7日の時点でインターネットが停止して3月15日まで投稿できない、という内容は前言いましたよね?
28話をなんとか書き上げて予約投稿したかったのですが、無理でした。
一応諦めずに書いてみるので3月16日に覗いてください。多分いけるはず……
では、どうぞ。
「赤奈さん。赤奈さんは私のことどう思っています?」
それはごく淡々としたものだった。
内容とは矛盾した無関心な声音。しかし、赤奈には十分すぎる威力だった。彼は凍りついたように動けない。
意味を測りかねているのだ。そして、どの答えが正解なのかも。
「僕は……僕は、君のことを…………」
赤奈はグッと言葉を詰まらせた。同時に、胸中で、自らをこれ以上ないほど叱咤した。
ここだ。ここで間違ってはいけない。
口先三寸ではない。これから天使という一人の少女と付き合っていくのに嘘は要らない。
気持ちを素直に、己を真正面から向き合ってありのままの自分で答えればいい。
それがどのような結果でも自分は決して後悔しないはずだ。
だから、赤奈は微笑んだ。
「僕は君のことを好意的に思ってるよ。それで、もっと仲良くなって本当の意味で心の許せる友達になりたいと思っている。これは嘘偽りのない僕の気持ちだ」
その瞬間。
とうとう彼女の瞳から一滴の涙が零れた。
それは少なからぬ衝撃を赤奈に与えた。
言葉が詰まり、何も言えなくなる。
しかし、それでも後悔はなかった。これがどんな結果を招こうとも赤奈には受け止める覚悟があるからだ。
「だ、だったら……だったら、なんで……」
天使は涙を拭わなかった。代わりに銀糸を震わせたような繊細な声が聞こえる。
しかし、それも一転、天使は重い怒気の含んだ声で叫ぶ。
「だったら……だったら、なんで逃げたんですか! あの後、置いていかれた私がどんな気持ちになったか、赤奈さんに分かりますか!?」
激しい炎の中に潜む、鋭利な刃が赤奈の胸を抉った。
置いていかれる。一人になる。孤独になってしまう。
それは赤奈の中にあるトラウマを思い起こさせた。
『お兄……ちゃん』
あの時の事故が頭の中を駆け巡る。
辛く、悲しい事件だった。
あの日を境に赤奈は度々発作を起こすようになり、長い入院生活が始まった。
「…………ごめん。ごめんね」
まるで幼子をあやすような穏やかな口調だった。
俯いた顔から僅かに覗かせる悲痛な顔に天使の瞳が、一瞬、後悔に怯む。
しかし、すぐに激昂が飲み込み、感情が限界まで爆発した。
「そんな言葉が欲しいんじゃありません! 私はただ、アナタに――――――」
いけない、と思った。しかし、止められなかった。激情の込めた視線を赤奈に向け、わななく唇でその先を告げた。
「アナタにキスをして欲しかっただけなんです! あんな形で奪ってしまったから! だから!」
前半の台詞の威力のあまり後半の言葉は聞こえなかった。
赤奈のどんな言葉でも受け止める覚悟は木っ端微塵には四散した。途方もない衝撃で今も頭が真っ白になったままだ。
「私はアナタが気絶している時に唇を奪ったんです! だから、やり直そうと、思ったのに…………アナタは!」
天使の激情はまだ静まらない。自分の感情のコントロールは出来っていないように見える。
「……な、何を言って…………」
ようやく乾いた喉から呻くような言葉が出た。
ここまで言っても分からない、察しの悪さに天使の感情がついに限界を超えた。
「つまり、私は、赤奈さんのことが好きなんですよ!」
――気分は最悪だった。もっと雰囲気のいい時に言うべき言葉をこんな苛立ちと増悪に包まれたまま言うなんて――最悪だった。
それでも、一度暴走した心は止まることを知らない。
「なのに、赤奈さんは私を置いて逃げ出した。分かりますか!? 好きな人にキスを断られて、好きな人に置いていかれる気持ちが!? 寂しくて、辛くて、泣きたくなるんですよ!!」
天使の声がフロアに響くたび、赤奈の黒い瞳から感情が失せていく。
ついに最後の一言を聴き終えた時には、赤奈は顔を少し俯かせた。すべてが停止したような数秒ののち、色を失った瞳が揺れ、たった一言だけ発せられた。
「……ごめん…………」
ほんの半日二人で過ごした時間、傍にいた赤奈は子供のように瞳を輝かせていた。今、その光は消え、代わりに深い暗闇がひらがるのを見て、天使の胸に悔恨の刃が深く突き刺さった。
「もう……放っておいてください。さようなら、です」
それ以上赤奈の顔は見れなかった。
逃げるように背を向け走り出す。その状況は奇しくも先程の赤奈の姿と同じだった。
虚ろな瞳でその背中を見送る赤奈。今にも床にへたりこんでしまいそうだ。
――――ああ、僕何やってんだろ。女の子を泣かせて。しかも、追いかけないなんて……最低だ。……でも、もういいや。これで。
自己嫌悪もバカバカしくなるほど虚無感が胸の内を覆った。
何も考えたくなかった。これ以上どうにかできるとも思えなかった。だが
――――なんで、彼女は僕のこと、好きになったんだろ……?
そんな主張が脳内で渦巻く。どれだけ心を無にしても消すことはできなかった。
そして、気付く。
天使は自分と恋人に見られるのは嫌。天使は自分とキスするは嫌。だから、天使を置いて逃げるのが正しい。それが彼女のためになる、そう思っていた。
しかし、どれも自分で勝手に決めつけ、その先の――天使の気持ちを考えていなかった。
違ったのだ。天使は自分と恋人に見られても嬉しく思い、キスすろことも自分から望んでいた。なぜなら、天使は赤奈のことが好きなのだから。
ほとほと自分に嫌気が差した。だが、それは感情が復活する兆しでもあった。
あんな形で想いを告げさせてしまった。しかし、それでも告白は告白なのだ。だったら、自分のやるべきことはひとつだ。
赤奈は深く両目を瞑り、音がしそうなほどに見開くと両足に力を込めた。
今はやるべきことをやろう。言葉だけではない。行動を起こす。だから、まずは走らなければ。
はい。お疲れ様でした。
やー、今回も重い重いw
作者が根暗なせいか作品も暗い感じになってしまう(笑)
次は赤奈が頑張るはずなんで多少は明るくなる……はず
後、27話は出だしまで書けてます。
では、感想や誤字脱字の指摘待ってます。