天使がなくしたもの   作:かず21

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先週投稿できなくてすみません。

ただ、調子がいいのかもう次の話も出来かけています。

通常通り日曜にも投稿できるかも

一応覗いてくださいね。
ではどうぞ。


ゲームの説明

         9

 

 会計を済ませた赤奈は天使と合流し、5階へと向かうエレベーターに乗り込んだ。

 狭い個室には二人しかいない。どうやら他の客はもう既に上へと行っているらしい。

 それもそのはず。イベントのタイムリミットまであまり時間がないからだ。

 しかし、この調子ならばなんとか間に合いそうだ。

 それよりも赤奈は上機嫌な天使に疑問を抱いた。今にも鼻歌でも歌いだしそうである。

 そんなにこのイベントが楽しみなのだろうか? それにしては少々度が過ぎている気がする。

「どうしたんですか? さっきからずっとこっちを見つめて。ゴミでもついてます?」

「いや、ちょっと。気になることがあって」

 どうやら知らず知らずのうち天使を見つめていたらしい。

 いけないけない、と自制を掛けながら曖昧な笑みを返す。

「気になることですか? 赤奈さん。私気になります。その内容を教えて下さい」

 どこかで聞いたことのあるセリフだが、それこそ気にしてはならない。

 そうだな、と言葉を濁しながらも別に隠す程のことでもないと思い、内容を言う。

 それを聞いた天使は少しも考える素振りを見せず、すぐに答えた。

「多分、赤奈さんが奢ってくれたからじゃないでしょうか?」

「どういうこと?」

 赤奈は眉をひそめた。まるで理解できていないみたいだ。

「単純ですよ。奢る奢られるのは友達以上の関係じゃないとできませんよね。だから、奢ってもらって嬉しいんです」

「なるほどね。喜んでもらえて何よりだよ」

 二人は似たような微笑を向け合う。

 次いでチーン、と聞き慣れた音が聞こえた。

 エレベーターから降り、5階のフロアへと続く自動ドアを抜けた。

 足を踏みれた二人はしばらくその場で立ち尽くした。

「なんか……すごいね」

「はい。なんというか――場違いですね。私達」

 二人がそんな感想をこぼすのもそのはず。なにせ目の前に広がる光景は背中がむず痒くなるようなものばかりだからだ。

 イメージカラーなのか全体としてピンク色だ。

 そして、所々にあるハートの数々。オブジェクトから飾りまで多種多様なハートがフロアを埋め尽くしている。

 もしこのイベントの為に用意したのなら、その情熱を違うところに向けろ、と支配人に助言したい。

 あと、カップルの数だろう。ざっと見ても30組ほどいる。同年代のカップルがほとんどだが、夫婦のような人もいれば、犯罪だろ、という年の差カップルもいた。

 しかし、誰もがそれっぽい雰囲気を出している。

 恋人の振りをして参加する自分達なんてすぐバレてしまいそうだ。

 天使も同じようなことを思ったのか瞳に躊躇いの色が写る。

 しかし躊躇したのは一瞬だった。

「行きましょう。大丈夫ですよ。堂々としていればバレません」

 凛とした力強い声に励まされ、それもそうだ、と赤奈も踏ん切りをつけた。

 二人は真っ直ぐ受付へと進み、手続きを受ける。受付のスタッフは人の良さそう50台半ば程の男女だ。

「やぁ、お二人さん。ギリギリだよ。さぁ、早くここに二人の名前書いて」

「はい、お嬢さん。どうぞ」

 おっとりとした女性からペンを借りる。

「赤奈さんの分も書いておきますね」

 遠慮なくその提案を受ける。書き終えるまで手持ち無沙汰の赤奈は二人のスタッフと世間話に花を咲かせた。

 驚いたことにこのふたりは夫婦の関係であり、このデパートの最高責任者でもあった。

 なんでも今日は二人の結婚記念日だそうで、この日に合わせて企画したらしい。

 コンセプトは『愛の力』だとか。老夫婦は結婚してから40年、様々な障害があったが、どれも二人で乗り越えてきた。その経緯で今日は他のカップルの仲を深めるためにこのイベント企画したそうだ。

「ゲーム内容もそれに沿った内容だよ。がんばりなさい」

「あら、お嬢さんの方も書けたのね。それじゃ、少し待ってて下さいね」

 『受付終了』の看板を下ろし、老夫婦はその場から立ち去った。

 二人の背中が小さくなると、緊張の糸が切れ、ようやく一息ついた。

 天使も少し疲れた顔をしている。

「……案外、バレないもんだね」

「でしょ? 堂々としてればいいんですよ」

 慎ましい胸を張って言う天使だが、さっきまで一杯一杯だったのは顔を見れば分かる。

 どう指摘してやろうか、と思案するが突然、フロア内全てのスピーカーからキーンと独特の音が響いた。

 あちこち飛び交っていた私語が、ざわざわと静かな喧騒に変わった。周りの客がなんだなんだ、と周囲を伺いだしている。

 すると、ほんの少し離れたステージの上に派手な服装に蝶ネクタイで占めた男が立っていた。どうやら司会者のようだ。

 喧騒がピタリと止む。会場全員の視線がステージへと集中する。

 全員が自分に注目するのを確認すると司会者はマイクを口元に近付けた。

「本日はお集まりいただき誠にありがとうございます! それでは早速イベントを始めていくぜ!」

 ハキハキとした声が会場に響く。男のノリノリなテンションに釣られたのか一部の若い男性が歓声を上げた。

「まずイベントの流れを説明するぞ。ゲームの流れとしては1ゲームにつき一回くじ引きでお題を出す。ペアである二人でそのお題をクリアしていくんだ。もし、できなかった場合はその場で失格だから注意しろよ。何か質問はあるか?」

 誰も答えない。どうやら特に質問はないようだ。

 もっともこういう場で声を上げる者はそうはいない。

 司会者も元よりそのつもりだったのか特に気に止めた様子はなく、次へと進める。

「それでは早速一回目のお題を決めるぞ。今回のお題はこれだっ!」

 大きな箱に手をつこっみ、ガサゴソと弄る。

 やがて、大げさな仕草で取り出したのは一枚の小さな紙だった。

 嬉々として司会者が折りたたまれた紙を広げた途端、不満そうに顔を歪ませた。

 それを見て赤奈と天使は我知らずほっとする。

 あくまで二人は恋人の振りなのだ。ハードルの高いものを用意されても困る。

 しかし、司会者の様子から伺うにどうやそんな大したものではないようだ。

 司会者はさっきよりもローテンション気味で、内容を発表した。

「えー、少々をつまらいないが内容を発表するぞ! 第一回のお題は――――――――ポッキーゲームだ!」

「「………………え?」」

 二人の間抜けな声があたりの喧騒に飲まれた。




おつかれさまです。

実はもう少ししたら引越しをするんですね。

その時ネット環境が一週間ほど止まります。

だから、その時は投稿できないかもしれません。

ということを頭の片隅に置いておいてください。

感想や誤字脱字の指摘まってます。

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