天使がなくしたもの   作:かず21

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どうも、かず21です。

なんとか投稿できたw

完成したのはついさっきなんでだいぶ焦りました。

やっぱり下書き→本書きでは時間がかかるなw

では、どうぞ。


ミルワーム

 人ごみをくぐり抜けて――その間、下を向くことを強要された――赤奈は天使を引き連れてようやく目的地に辿り着いた。

「ここ、ここ。いやー、半年前と何も変わってないなー」

「はぁー、ここですか……」

 ただ案内された場所に天使は少々、いや、かなり戸惑った。

 なぜなら、たっぷり五分歩いて見えた先は錆びれたカフェテリアなのだから。

 道中、赤奈は「静かで人の少ない穴場なんだ」と紹介していた。つまり、それは単純に人気が無いという意味なのか。

 確かに曇りガラス越しに見える店内の人がけは疎らだ。しかし、見た目は完全に荒野に転がっている酒場である。

 こんな外装では来る客も来ないだろう。

 そんな場所に女の子を連れてくるなぞセンスを疑う。

 しかし

(赤奈さんらしいといえば――――らしいのかな?)

 どこか赤奈を知ったように思える自分が嬉しく思えた。

「ん、どうしたの? ニヤけちゃって」

「! い、いえ、何でもないです」

 赤奈は頭に疑問符を浮かべるが気にした様子もなく店に向かった。

 臆面もなく扉を開け、定番のベルの音と共に店に踏み込んだ。天使もそれに続く。

「これは……!」

 中に入るなり、天使は店の評判を改めなければならないと思った。

 外装とは異なり、内装は驚くほど整っていた。すべての調度品が見事な艶を纏い、木造の店内も手入れがよく行き届いている印象を受けた。

 何より流れてくるジャズが居心地の良さを醸し出している。

「こっちこっち」

 窓際の席を取った赤奈が手招きをしている。

 それに従い、席に着くと同時にウェイトレスがメニュー表を差し出した。

 受け取ったメニューを確認すると20種類にも及ぶ軽食やドリンクが並んでいる。

 正直、人間界に来て日の浅い天使はどれを選べばいいのか解らない。

 つい、ブラックコーヒーと言いそうになるが、今朝の一件を思い出し自粛。

 バス停でも言ったが、天使はもう少し赤奈と仲良くなりたい。

 まだ距離感のある二人の関係を進めるためにはまず、自分の意地っ張りを直そうと考えていた。

(私は変わらなくちゃいけない。もっと赤奈さんに好かれるようにならなきゃ……)

 そんな天使を他所にウキウキとメニューを選んでいた赤奈は注文を決めたのか呼び鈴を鳴らした。

 天使が声をかける暇もなくすぐにウェイトレスがやってきた。

「えーと、僕はココナッツミルクと――――あっ」

 そこで天使がまだ何を頼むかを聞いてないことに気付いた。慌てて注文をキャンセルする。

「ごめん。君の分忘れてた。何にする?」

 おい、とつっこみたくなるが、ここでキツく言っても良いように思われることはないだろう。

 ならば、ここはぐっと我慢すべきではないのか?

「そうですね……よく解らないので赤奈さんと同じのにします」

 結局、選択は赤奈に任せることに。無難な答えだし、何より赤奈の好みも知ることができる。一石二鳥だ。

「そう。じゃ、ここのオススメの品にしようかな? すみません」

 呼び鈴を鳴らさず、近くにいたウェイトレスを招く。

 それにしてもオススメの品とはなんだろう? こんな雰囲気のいい店なのだからおしゃれなデコレーションを施したケーキやダイナミックなボリュームを誇るパフェとかが出てきそうだ。

 そんな甘い期待を膨らませながら赤奈の言葉に耳を傾ける。

「ココナッツミルクとミルワームを二つお願いします」

「…………え?」

 余りにも違和感なく注文したからうっかり聞き逃しそうになったが、何か信じられない単語が聞こえた。え、何だって?

「……かしこまりました。ココナッツミルクお二つ。ミルワームお二つですね」

「え? え? それあるんですか?」

 復唱したウェイトレスは間違いなくおぞましい単語を口にしていた。

 そして、そのまま足早と去るウェイトレス。つまり、注文を受理したと?

 いやいやいや、おかしい。何がおかしいってミルワームが本当にメニュー欄にしっかりと記載されていることだ。

 ますます混乱していく天使。なんだ自分の常識がおかしいのか?

 天使はミルワームが何かは解らない。

 しかし、それは喫茶店に平然と並べるものではないことは名前の響きからして確かだ。

(一度冷静になろう。情報が圧倒的に足りない)

 大きく深呼吸して、単語の意味を天界から支給された携帯端末で調べる。

 

 ミール 麦やトウモロコシ等を引き割って粗い粉にした物。

 

 これは普通だ。オートミールという料理があるくらいだし、食べ物の名前としては普通だ。

 

 ワーム ミミズなどの足のない細長虫。

 

 ――おかしいっ……! 絶対におかしいですグーグル先生!

「あれ、どうかしたの? お腹でも痛い?」

「はい。これからそうなると思います。ミミズ奈さんのせいで」

「いや、何その土壌にいそうな名前」

「それよりもミルワームとは何ですか? 参考までにお聞きしたいのですが……」

「んー、そうだな。白くてヌルヌルしててウヨウヨしてるかな?」

「生ですか! まだ生きてるんですか!?」

「いや、そんなことないけど…………おいしいよ?」

「味以前の問題です!」

 それを口にしたら人としての尊厳を失ってしまう気がする。

 何としても注文をキャンセルしなければ。このままでは一生もののトラウマを背負わなければいけないくなる。

 天使は急いで厨房へ駆けつけようと席を立った時

「お待たせしました。ココナッツミルクとミルワームです」

 どうやら遅かったようだ。

 咄嗟に天使は目を瞑って苦難をやり過ごす。

 容器を置く音が途切れ、ウェイトレスの足音だけが聞こえる。

 しかし、その足取りが小走りなのを聞き逃してはならない。

「来た来た。これだよミルワーム」

 嬉々として容器のそれへと手を伸ばす赤奈。

 見てはいけないと解っているのに怖いもの見たさで天使は目を開けてしまった。

 視界に入ってきたのは白くて長細い何かが沢山――――――

 限界だった。天使は堪らずその場でしゃがみこんで

「きゃあああああああああああ!」

 店いっぱいに女の子の悲鳴が広がった。




はいお疲れ様でした。

なんか慣れないギャグ回でしんどかった……

基本シリアスな感じだし序盤でギャグやっとくか。

そんな軽い気持ちでやってこのざまだよorz

あと、ミルワームは検索しないほうがいいです。マジで気持ち悪かった。

余談ですが、揚げたりするらしいです。

では、今回はこの辺で。

なお下書きはまだ終わってない模様

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