天使がなくしたもの   作:かず21

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どうもかず21です。

先週言っていた通り21話は予告通り投稿できました。

でも、22話の下書きはまだできていないのでもしかしたら投稿できないかも……

では、どうぞ


デパート

「んー! はぁ~……よく眠れた~」

 バスから降りるなり天使は思いっきり背伸びをした。

 もう既に雪は止んでいたが、それでも道行く人々の吐く息は白かった。

 気温の低い中天使はイキイキしている。ぼんやりとした雰囲気はない。だが、いつもの鋭さも無い。

 なんというか普通の女の子らしい振る舞いである。

「ちょ、ちょっと待ってくれ……」

 遅れてバスから降りてきた赤奈は対照的にげっそりしていた。その理由は言うまでもあるまい。

 しかし、そんな訳を知る由もない天使は小首を傾げる。

 赤奈は弱々しい笑みを浮かべ「大丈夫大丈夫」とだけ言い、天使の横に並んだ。

「じゃ、行こっか?」

 天使を促し、バス停の前にそびえる大型のデパートへと入る。

 中に入ると思いのほか人がいた。

 人ごみといっても差し支えのない人数で二人は少々驚く。

「人がたくさんいますね。何かあるんでしょうか?」

「んー。ま、僕等がいたのはどちらかと言えば山奥だからね。ここは町だし土曜だからこれだけいてもおかしくないかな? もしくは何かのイベントがあるとか」

(それにしてもこの人集りは異常だ。何か特別な日なのか?)

 少し考え込むと隣から「あっ」と何かに気づいたような声が聞こえた。

「どうしたの? 何か見つけた?」

「い、いえ何も見ていません」

 あらぬ方向に顔を背ける天使。心なしか頬がほんのり赤みを帯びている。

 不自然に思い、赤奈は数秒前天使が向けていた場所に目を移そうとする。

 しかし、赤奈が顔を動かそうとすると途端に天使が慌て出して、

「わああああ!! 見てはいけません!」

 と、いきなり天使の両手によって目を塞がれてしまう。

「ちょ、毛糸が目に……イタッ! 目が痛いって! ごしごしはやめて。マジで」

「ごめんなさい! でも、見ちゃダメです。絶対見ちゃダメですからね!」

「分かった! 分かったから!」

 天使がそこまでして見せたくないものの正体は気になったが、それよりも目の方が第一だ。

(真っ暗な視界が徐々に赤ばんでいくのに戦慄を感じるよ)

 ようやく解放された赤奈は目の安否を天使に尋ねた。

 さりげなく壁になるポジションを選びつつも、天使は赤奈の黒い瞳を覗き込んだ。

「わぁ、ビックリするぐらい充血してます。ちょっと引きますね」

「いや、君がやったんだからね?」

 目を擦りながらツッコみを入れる。

「はい。ごめんなさい」

 口ではそう言ってるが、あっけからんとしている天使にその気はないだろう。

 はぁ~、と小さくため息をつき、天使を小突いた。

「イタッ! 何するんですか」

「いや、何となく……ね?」

「ね? じゃないですよ。全く……」

 その反応がまさに妹の『それ』だったため、赤奈の口元が自然と緩む

 と、同時に疑問が思い浮かんだ。

(あれ、なんだか昨日と違う)

 何が違うと問われるならやはり、天使だろう。

 出会った当初の物静かなイメージが徐々に取り払われていく。

 年相応の明るい女の子に、いやもっと言えば、誰かに似てきている気がする。

 いったいなぜそうなったのか。誰に似てきているのか皆目見当もつかない。

 しかし、何かが喉元まで押し寄せている。あと一歩で解りそうな気がする。

 だから、答えを探すために思考の海へと潜ろうとした時

「赤奈さん? どうしたんですかボーとして、考え事ですか?」

「! いや、何でもないよ」

 例によって人を惹いてやまない美声に現実へとログアウトする。

 集中力に自信のある赤奈は簡単に乱されてしまうのを不服に感じながらも腕へと視線を落とす。

 時計の針はとうにお昼時回っていた。

 しかし、朝食を摂って3時間くらいなので、あまりお腹は空いていない。

 ただ、天使はどうだろう? 売店で済ませたらしいがあそこはおにぎりや菓子パン等しかおいておらず、弁当の類い置おいていないはずだ。

 きっちり朝食を摂った赤奈と違って天使はもしかするとお腹を空かせてるのでは?

 そう考えると心配してしまうのが赤奈である。

 そこでベッドの上で何度もシュミレートしてきた台詞を一字一句かまずに言った。

「お腹空いてない? いいお店知っているんだ」

 何となく自分には似合わない台詞だな、と赤奈は思った。

「なんだか今のナンパっぽいですね。似合いません」

 それは天使も同じようでおかしそうに笑っている。

 どうにもいたたまれず、赤奈は苦笑するしかない。

「あと、急に黙らないで下さい。不安になっちゃいます」

「そんな大げさな」

「大げさじゃありませんよ。実際に人の魂を奪う悪魔だっているんですから」

「え、何それコワイ」

 そんなやり取りをしながら彼らはようやく歩きだした。




はいお疲れ様でした。

今回は少し短かったかもしれません。

後半のプロットを作ってみたんですが、ようやくゴールが見えてきた感じです。

といってもまだ20話以上先の話ですけどw

では、感想や誤字脱字の指摘などあればよろしくお願いします。

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