天使がなくしたもの   作:かず21

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遅すぎる明けましておめでとうございますに今年もよろしくお願いします。

もう、3週間ぶりの投稿ですはい。

タグに1週間更新つけてるくせにです。

そんなダメな作者ですがこれからもよろしくお願いします。

では、どうぞ。


バス

         6

 

 神谷川総合病院は人里離れた比較的山奥に位置する。

 なんでも先代院長が空襲で焼けた荒地を買取、山を開拓。そして、今の規模まで押し上げたそうだ。

 そのおかげで広い院内は緑に囲まれ、療養にはもってこいな環境だ。ただ、いかんせん山奥なので最寄りの街まで車でも30分はかかる。

 それはバスも同等――あるいはバス停がある分それ以上の時間を要する。

 故に赤奈は30分もの時間、天使と気まずい時間を過ごさなければならない。

 せめて、人がいれば少しくらいこの空気を緩和できたかもしれない。が、どういうことか、土曜日の昼間だというのに乗客は二人を除いて誰もいなかった。

 どうしてだろう? と疑問に思い、なんとなしに曇った窓に目をやると答えはあった。

「あ、雪……」

 赤奈の内心を代弁するように天使が独りごちる。

 なるほど、と赤奈は一人納得した。

 雪が降るくらい寒い日にわざわざ外に出ようとする者はそうはいない。だから、二人しかいないのだ、と

 さっきも言ったが、この状況は赤奈の手に余る。

 どれだけ明るく振舞っても彼の本質は友達のいなかった少年なのだ。

 この不安定な空気の中、天使にどう声を掛けて良いのか分からない。

 どうにかしたいがどうにもできない自分が腹ただしかった。

 それでもめげずに打開策を練っている赤奈の裾が不意に引っ張られた。

 おずおずと振り返るとこれまた赤奈に負けないくらい小さくなっている天使の姿が。

 赤奈にしか聞こえないか細い声で呟く。

「…………座りましょう。いつまでもこうしていると怪しまれます」

 そんな大げさな、というツッコミをぐっと堪え、素直に頷く。

 赤奈は天使を引き連れ、後頭部の座席へと移動した。

 そのまま赤奈は窓際の席を取り、微妙な距離を開けて天使も座った。

「「……………………」」

 二人分の沈黙が重なる。二人して何を話せばいいのか解らないのか?

 しかし、そんなことはなかった。なぜならそれはすぐに破られたからだ。

 先に口火を切ったのは意外にも天使だ。

「さっきのことなんですけど、ね。その、別に、――するつもりは微塵もなかったんです。ただ、赤奈さんを困らせたかったというか、恥ずかしがっている顔が見たかったというか…………ああ、もう私何を言ってるんだろ」

 天使は顔をブンブンと振り、落ち着きを取り戻そうとする。

 赤奈は黙って続きを待った。天使が何か大切なことを伝えようとしているのを察したのかもしれない。

 やがて、心の整理がついた天使は赤奈の耳元にごく微かな声で囁いた。

「つまり、私はもっと赤奈さんと仲良くなりたかったんです」

 普段の彼ならその小学生じみた理由についつい笑ってしまうところだっただろう。

 しかし、彼は笑わなかった。

 なんとなくだが、笑っていい話ではない気がしたからだ。天使の蒼い瞳がうっすらと滲んでいるのが原因だろう。

「そっか…………僕も君と仲良くなれたらいいな」

 そういえば、と赤奈は入院する前の記憶を思い起こす。

 昔、妹にちょっかいを出していた男の子がいた。今なら彼の気持ちが解る。

 彼はただ妹の気を引いて、仲良くなりたいだけだったのだ。

 やはり、自分の見立て通り天使は外面は大人振っても、中身はまだまだ幼い。

 その姿が今はいない妹とかぶり、つい昔のクセで天使の頭を撫でてしまった。

 怒られるだろうなー、とどこか他人事のように考えるが、予想と反して天使は嫌がることなく受け入れた。むしろ、気持ちよさそうに目を細めてさえいる。

 その仕草ですら妹と似ていたので、つい常套句まで口にしてしまう。

「どう気持ちよかった?」

「なんですかそれ。…………やっぱり、赤奈さんはいやらしいですね」

 流石に返事までは被らなかったか、と赤奈は内心苦笑する。

 さらに天使のいつもの鋭さのないどこか寝ぼけた様子に口元が自然と緩んだ。

「赤奈さん」

 天使がやや上目遣いで遠慮がちな声を発する。

 赤奈は慌てて口元を引き締め「どうしたの?」と返した。

 天使は眠たそうに目をこすりながらボリュームの小さい声で言った。

「昨夜あまり眠れなかったので、肩を、借りていいですか?」

 衝撃的な文句に赤奈は耳を疑った。

 なぜなら、普段の――とはいっても昨晩しかない付き合いだが――天使なら絶対に言わない台詞だからだ。

 ――――友達って男女の恥じらいも取り払うの!? というか支えが欲しかったら頬杖なり背もたれりを使うなりすれば…………

 余計なことことをグダグダ考えている内にポン、と微かな重みと仄かな熱を肩から感じた。

 己の肩を覗けばブロンドの少女が穏やかな寝息を立てていた。

 ガーッと体温が急上昇していき、体が金縛りにあったかのように動かなくなった。

 どうにか落ち着くため南無阿弥陀仏を唱えるが、規則正しい寝息が聞こえる度、平常心はいとも簡単に崩れる。

 結局、赤奈は目的地に着くまで一ミリも動けなかった。

 ただ、彼は密かに思った。。

 ――寝顔がかわいい、と




はいお疲れ様でした。

いきなりですけどストックの話です。

自分は、まずノートに下書きして次にpcに書いてストック完成という流れでやってます。

一応、次の話までのストックは作ったのですが、その次の話は下書きすら出来てません。

ので、22話がちゃんとできるかまだわかりません。

これからはストック出来てる出来てないの報告も入れていきたいと思います。

という話を頭の片隅にでもおいていただいたら幸いです。

では、また来週にお会いしましょう。

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