高みを行く者【IS】   作:グリンチ

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【一 言】
ヒロインに楯無と簪さんを・・・

というコメントを見て会長は知ってたけど妹のキャラはよく知らなかった。
アニメでも一期は出ないようだし、見送ろうと思ってキャラ画だけでも見ておこうか、と思ったら……。

ナニコレ、簪チャンカワイイデスヨ ペロペロ(^ω^)

気づいたら本編に出てた、何を言ってるかわから(ry



2-4 強化なかったら死んでたんだけど

1.一夏とセシリアが子供じみた口喧嘩をする

2.「そこまで言うなら決闘だ」「おう、かかってこい」

3.よし、織斑、オルコット、小栗で決闘だ

 

「何でですか?」

 

この流れで突然自分の名前が出てきて不自然に思わない奴はいない。

二人でヒートアップしていたのに、急に三人目が湧いて出てきた。

 

「小栗には昨日話したが、お前ら二人には専用機を用意する事になっている」

 

当然話の方向性が変わったが、専用機の話になるとクラスメイトが騒ぎ出す。

現在のISのコア数は四百六十七。

コアは篠ノ之束博士の独自の開発であり、完全なブラックボックスとなっているため量産が出来ない。

当然この数を上限ありきとして各国家、企業、組織、機関が開発、管理を行っている。

正確な残り数は分からないが、軍事用、開発用、運用中の物、訓練用の物を考慮すれば、今後専用機が割り当てられる人数は二百個を切るかもしれない。

国防の要となるIS、その専門的知識を習得する学校が世界に一つしかないのも、コアの数を一定数必要とする事に所以するのだろう。

 

「お前らは特例として、データ収集を目的とした専用機が用意されることになった。 織斑のはほぼ完成の形を見ているので近々の内に届くだろう。 小栗は昨日プロジェクトがスタートしたばかりだが、六月末に仮完成、二ヶ月で微調整して九月には仕上がるだろうがそれまで待て」

「……それが何故俺が参加する理由に?」

「『世界中が唖然とする画期的な浪漫機体を作る!』と言っていてな、装備、装甲、OS等全てを専用設定にする為に生のデータを寄越せと急かしている」

「そういうことですか」

 

なんか不思議な言葉が聞こえたが、一夏も小栗もIS関連の人間からすれば目を離せない存在である。

コアの取引はアラスカ条約で禁止されているものの、男二人のデータはどの組織も待望している。

割とこれがいけなかった。

世界中から注目されれている以上、開発陣も搭乗者も下手を打てば一生笑いものになる。

パトリア・グループ社は、変態機体開発企業の看板に恥じ入ることのない最高の機体を模索した。

その第一歩が彼の操作の癖を知ることであり、もう一つの情報を取得するためにわざわざデータ取得専用システムを搭載した打鉄・カスタムまで用意している。

そのデータ収集を兼ねるということだろう。

 

 

 

さて、昼休みである。

 

 

 

昼食を一緒にと一夏に誘われたものの、既に送られている打鉄・カスタムを受け取りにアリーナに向かわねばならない。

昨日の今日で専用システムなぞ用意できるのか、と疑問を口にしたら、千冬すら言葉に詰まり『『こんなこともあろうかと!』というのは技術者としての浪漫がどうのこうのと』と言って閉口していた。

そこでようやく潤も感づいた。

彼らは独自の美学に従って生きている。

以前何度か遭遇し、その度に煮え湯を飲まされていきたタイプの人間たち。

彼らは総じて常識の枠を破壊し、予想だにしない行動をとるという、割と潤の苦手なタイプの敵であった。

今回は味方だが。

 

格納庫っぽい場所で真耶から打鉄・カスタムを受け取る。

待機状態は黒い腕時計。

 

パトリア・グループが鋭意開発している専用機のように待機状態にできるシステムは未だ完成を見ていない。

なんでも拡張領域を膨大に喰うらしく、もし搭載しようものなら残りの空きでブレード一本しか積めなくなるらしい。

 

「えっと、ISは今待機状態になってますけど、小栗くんが呼び出せばすぐに展開できます」

「今、ここで展開してもいいですか?」

「ええ、申請はしておきましたから。 ただしアリーナには出ないでくださいね」

「わかりました」

 

腕時計を受け取る。

 

不思議な高揚感が全身に迸る。

 

暖かいようで、急かされているようで、もし許しが出ているならば飛び出したいくらいに鼓動が早まる。

 

 

「同じコアを使ってくれているのか――」

 

 

このコアは、あの飛行機で纏ったコアと同じ、

 

待っている、喜んでいる、歓迎している、知りたがっている。

 

 

皮膜装甲展開

スラスター正常作動

ハイパーセンサー最適化

EEG観測システム開始

初期化開始、及び初期化処理記録開始

最適化処理開始、及び最適化情報記録開始

 

「は~、ほんとに動かせるんですね」

「い、いや、そうじゃなきゃここにいませんから」

 

潤の装備した打鉄・カスタムを見上げて真耶が呟く。

意識しなくてもISは三六〇度見渡せるようになっているので、どんな小さな音でも拾えてしまうのだ。

 

「それでは、私もご飯食べてきますから、小栗くんもほどほどにして休んでください」

「ありがとうございました。 もう少し体に馴染ませてから休みますので」

 

浮足立って帰っていく真耶をセンサーの端で見送くった後、ゆっくりとISを体に馴染ませていく。

ちょっと逆立ちしてみたり、ホバリング状態で格納庫内を回ってみたり、そこそこの速度で発進停止を繰り返す。

 

で、

 

「何か用か?」

 

真耶が来る前から1人でキーボードを操作している女子がじっとこちらを見ていた。

打鉄・カスタムを装備した頃からチラチラ見ていたが、真耶が居なくなったあとは一時も目を離さない。

 

「…………四組クラス代表……更識簪」

「小栗潤だ」

 

水色髪、眼鏡の女生徒は四組クラス代表と名乗った。

 

「……飛行機事故……興味深かった……おかしなほど機動制御が上手くて……一般人にはとても思えない……ヒーローみたい」

「ヒーローなんて誰が好き好んでなるか。 それに、なりたいからなれるってもんじゃないだろう。 何時の間にか誰かにされるものさ、ヒーローなんてものは」

 

かつて夢を見た自分が居た。

たった一人を守りたいから剣を取った。

何時の間にか力ばっかりついてきて、想いは置き去りになった。

百人を救うため一人を殺す英雄よりも、百人なんて気にもならずに知人一人に全力をかける人で居たかった。

 

「……そう、なんだ」

「それにヒーロー像で見られるのも嫌だしな。 俺は、他の何でもないただの俺でいたい」

 

その言葉が何かに触ったのか、何かを言いかける。

何を渇望する様な、悲しいような、妙な感情で何かを言いかけた。

だが、そこまで。

言葉を飲み込んで再びタイピング作業に戻る簪。

潤もそれ以上は何も言わず、ISを待機状態に戻すと格納庫を去った。

 

 

そのまま午後の授業もつつがなく終わり、放課後に入る。

一夏は昼を取っている最中に、箒からISを習う約束を取り付けたらしく一緒に剣道場へ向かうらしい。

今回も熱烈に誘われたが、今日は潤も予定が入っている。

 

予定といっても、大層なものでなく、平たく言えば体力測定である。

 

若返った。

病院で寝てた。

これまで全力で体を動かす機会がなかった。

 

例えデータ収集のためだけとはいえ勝負事を行うのである。

自分の体力の限界や、筋力の加減を知らなければ不安で仕方がない。

グランドの申請は千冬に出し、快く許可が出た。

ついでにタイム測定を引き受けてくれるらしいが、丁重に断ろうとして却下された。

教官肌の笑みが、過去の畜生肌の誰かにダブって見えたのは、潤の悲しい直感だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうことだ!」

「いや、中学校は部活してなくて……」

 

一夏は箒にボコボコにされていた。

夕日が沈もうとする時刻まで剣を合わせ続け、今また剣を捨てた一夏を糾弾している。

一夏は三年間、親が居ないことを理由にバイトをし、帰宅部に所属していたため腕が鈍っていた。

どうもそれが彼女には気に食わなかったらしい。

周囲からは『織斑君ってさ、実は結構弱い?』とか、『本当にIS動かせるのかな?』等と非難がましい声までかけられる始末。

 

「潤に頼めばよかった……」

「何か言ったか!」

「い、いえ、何も!」

 

潤も色々忙しいのは分かっているが、なぜか避けられている印象を受ける。

昼食も、放課後も、ISの訓練話もなかなか乗ってこない。

せっかく男同士、知識とか基本的な事とか一緒に学べれば良かったのだが、まあ無理を言いって迷惑をかけるのも戸惑う。

代案として幼馴染の箒に頼んだのだが、何故かISを教えてもらう筈が剣道の稽古になった。

寮に向かって二人で歩いていると、グランドから一夏にとって聞きなれた怒声が耳に入った。

 

 

「そらぁ! どんどん速度が落ちてるぞ! 気合を入れろ!」

 

 

真っ赤な顔をして全力で逃げ……もとい走る潤。

嬉々として怒鳴り声をあげながら追い散らす千冬。

色々ドン引きしている、おそらく陸上部。

 

「一夏……見なかったことにしよう」

 

 

――よし、1500m走は四分十九秒。 十五歳でこれだけ出せれば上出来だ!

 

――十分休憩後、100m走を計測する!

 

――っち、酸欠で気絶してる! 陸上部、酸素缶と水もってこい!

 

 

「……箒。 そうだな、そうしよう」

 

この日、仲の悪かったルームメイトは完全に意志統合できた。

 

 

 

それから三日後。

悪夢ともいえる陸上関連のテストを終え、久しぶりにIS学園の外に出向いてショッピングに行った潤の姿があった。

日本政府から支給されている奨学金で、生活用品の買い物をするつもりである。

着替えの種類といい、剃刀といい、石鹸といい、現代の流行なんて全く知らない老人だってもっといいものを選ぶだろう。

日曜大工用品・生活雑貨のフロア。

買い物は目覚まし時計。

実際使うのは潤ではなく、隣のベットで時間ぎりぎりまで寝続ける眠り姫(布仏)。

あと五分、あと五分と延々繰り返しては寝続けるので、これが鳴ったら最後、という最終防衛ライン用目覚まし時計をご所望である。

一度直接起こそうと肩をゆすってみたら、たわわに実った胸部装甲が肩の揺れに連動してプルプル動き、『これはセクハラで訴えられたら負ける』と確信して以降やってない。

 

「おおっ、でっけえバール」

 

周囲を確認してフルスイング。

ずっしりとした重量感。

いざという時に備え、鈍器として最適だったが、お値段は9900円。

数少ない奨学金を、無駄には使えないので名残惜しそうに陳列ラックに戻したところで、潤の身に異変が訪れた。

平日の夕方、日曜大工コーナー、人気はないにも関わらず、妙な視線を感じる。

敵意や、悪意の類でないことは潤にもわかっているが、日本人にしてはやや高い身長の男子が居るからという理由だけでない事も感じ取っている。

しきりに辺りを見回ますと、纏わりつく視線が消える。

どこかで見たことのあるような水色の髪をした女生徒の背中を見て取れた。

 

「……まあ、いいか」

 

無難に時計を買い、お菓子を好むナギ、癒子ペアにみやげを買って帰る。

清○軒という店の和菓子は、潤の平成世界にもある馴染の店。

ふくよかなおばちゃんから紙袋を頂き精算を済ませる。

 

「またか」

 

周囲の客、主に女性から受けている好奇心に属する興味関心とはまた違った何かを探るような視線。

そして視界の端にちょっとだけ映ってはすぐ消える水色髪の女生徒。

IS学園の生徒で、顔見知りの簪とはまた違う印象を受ける。

ちょろっと映ってはすぐ消える。

その影はIS学園行きモノレールに乗るまで潤に付きまとった。

後日、布仏にそれとなく話したら生徒会長とのことらしい。

 

 

 

それから更に四日後。

一夏は箒に叩きのめされ続け、潤は千冬に打ちのめされ続けた。

なまじ男二人共にどんなに厳しくしてもついていける土壌があり、二人にとっての悪夢の原因だった。

 

そして決闘当日。

 

試合順は『一夏vsセシリア』、『セシリアvs潤』、『潤vs一夏』、の順番に決まった。

ISの戦闘は三六〇度展開されるセンサーで集中力を大幅に使う。

使う時間が長ければ、体はともかく精神力が原因で疲労する。

連戦させる集中力が低い奴を前後に別ければ、自然とこの組み合わせになる。

 

 

第三アリーナ・Aピット。

クラス代表決定戦当日、潤と一夏、そして教官役の箒がISアリーナピットで待機していた。

一夏のISは未だ届いておらず、生徒三人の直ぐ近くに見える大きなハッチから直接搬入さるらしい。

届いたら即乗り込んで、即座にフィールドへ飛び立つ事になる。

 

「ところで、潤の腹筋すげぇな。 どうやって鍛えたんだ?」

「覚えてない。 気づいてたらなってた」

「触っていいか?」

「やめろ、男に触られていい気になるか」

 

ボーイズトークに飢えていた一夏がここぞとばかりに潤に話しかけあしらわれている。

実は二人とも結構な疲労状態。

妙なテンションになった一夏、不機嫌な潤。

避けられそうで避けられなかった事態である。

不意に空中にウインドウが出現し視線が集中する。

映っているのは青空に負けないくらい、青々としたIS。

ブルー・ティアーズ、セシリア・オルコット、空を悠然と飛ぶ敵機に想いを馳せていると――。

 

『織斑くん、織斑くん! 織斑くんっ!』

 

上部に設置されたスピーカーから上ずった真耶の声が響く。

 

『来ました! 織斑くんの専用IS!!』

『織斑、直ぐに準備をしろ。 アリーナを使用できる時間は限られている。 ぶっつけ本番でものにしろ』

 

通路奥から運搬されてきたのは、織斑一夏専用IS。

現れたのは純白。

『白式』と名づけられた、白いISだった。

 

『それが織斑くんの専用IS『白式』です!』

 

その姿を白日の下に晒した自分の愛機に見惚れる一夏に、千冬が後ろから声をかける。

一夏は純白のIS、白式に身を預けていた。

 

『フォーマットとフィッティングは実践でやれ。でなければ負けるだけだ』

「了解だ、千冬姉。 箒、潤。 ――行ってくる」

「ああ、行ってこい」

「悔いを残さないよう全力で行け。 ついでに勝ってこい」

 

仲間内から激励を背に受け足を進める。

カタパルトに脚部を固定し、ゲートが開き全ての準備が整った。

射出された白式は危なっかしくも空中に浮遊し、ブルー・ティアーズと向き合った。

何気なく一夏の動向を見守っていた教師二人だったが、目を合わせると潤に声をかけてきた。

 

「小栗、お前は打鉄を装備してプライベート・チャネルを開け。 話がある」

 

千冬の言葉に疑問の声を上げたのは箒だけだった。


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