高みを行く者【IS】   作:グリンチ

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日曜まで何とか続くかな?

2015 0302 19:20程 30万UA達成。
ここまでくると感慨深いものがありますね


2-3

水が顔スレスレに飛ぶたびに、会長にも勘付かれない程度だが身体を強ばらせる、そんな訓練が終わった。

強ばっても戦闘が可能なように、全身つかって顔に水がかからない限りは、精神的に鍛えて戦闘可能なようにしたが、やっぱり無理です。

入浴したとしても半身浴派で通っているし、普段はシャワーで事足ります。

会長が箒と一夏に先ほどの演習通りに動けと言われて、二人がISを展開して円運動を開始し始める。

一夏に対して、シャルロットとセシリアがアドバイスをしている。

箒が恋心にかまけて全力が出せなくなるのを危惧して、箒が被弾したらシャルロットかセシリアと交換、一夏が被弾したらペナルティー、と考えた訓練をするらしい。

女性を訓練させることなら会長の方が上手いと考え、簪の飛行訓練に付き合うために辞退する。

決して水が嫌でだからではありません。

飛行テストは第六アリーナで行う。

ヒュペリオンの超高速飛行訓練で使っている場所で、カレワラのテスト飛行でも用いたので、数回使用した経験がある。

その第六アリーナが他のアリーナと決定的に違うのは、空が完全に解放されていることで、学園中央タワーほぼ制限なく飛行することができる。

 

「待たせたな。 俺はヒュペリオンで出るから、何時でもいいぞ」

「う、うん……」

「私はデータスキャナー使って支援するから~。 いってら~」

 

相変わらずのタボタボな服、あまった袖、それで手を振って見送られる。

普通なら分からないだろうが、緊張しないように気使いしてくれているのが潤にはわかる。

それが分かるのが、少しだけ嬉しい。

 

「CPC、制御モジュール、スラスター、反重力、……オールグリーン」

 

第六アリーナのピットで打鉄弐式のコンソールを開いて、数値を確認して、最終確認をしていく。

初めてのテスト飛行だけあって、準備は万端でなくてはならない。

僅かなチェック漏れが大きな事故につながる。

独力だけならもうまだまだ時間がかかっただろうと、理論的には飛べるようになった機体を精査して感慨深くなる。

それに、このテストを終えた後の方向性もわかっている。

飛行テストの支援の為に来てくれた本音に、打鉄弐式の状況を確認するためにデータ開示を求められ、その結果色々な問題点を示してくれた。

今更テスト中止を言うのも憚られるし、潤には言っていないが、本音の機体構築に対するアドバイスはとても有益になった。

本音は整備課に入っても充分やっていけるだけの能力があり、そのアドバイスに従えば更に機動は完成に近づくだろう。

意固地になって、一人でいいと拒絶していたが、改めて目を見開いてみれば、優しくしてくれる人は沢山いる。

――手伝ってくれる二人のためにも、今日のテストは……やりきる。

 

「簪、大丈夫か?」

「ちょっと時間かかっただけだから、でも大丈夫……」

「そうか。 カタパルトから出た瞬間何かあったら、すぐ近くに俺がいるから迷わず突っ込んでこい。 抱きとめるくらいの余裕はある」

 

『抱きとめる』という潤の言葉に、恥ずかしそうに顔を赤らめてしまうが、プライベート・チャネルだったので気付く事はなかった。

腰を落として偏向重力カタパルトに機体の両足をセットする。

空中ディスプレイに『Ready』の文字が浮かび上がり、『Go』に変わった瞬間、一気に打鉄弐式を加速させて、第六アリーナに飛び出していった。

簪が問題なく上昇したのを見た潤も、安全と判断して追従する態勢に入る。

 

「いけるか?」

「……大丈夫、みたい。 これからデータをチェックするから。 その……なにかあったら……」

「大丈夫、俺がなんとかする」

「うん」

 

守られていることを自覚すると自然と笑みが溢れる。

緊張しているのかと思ったが、笑う程度の余裕があることが分かって潤も口元を緩ませる。

それも束の間、ヒュペリオンの速度を調整して打鉄弐式が急に機能停止しても大丈夫なように、やや後方下側で飛行を開始する。

機体制御は問題なく成功している。

反重力力翼と流動波干渉、空中での姿勢制御も問題なし、ハイパーセンサーやシールドバリアーは簪がチェックするしかないので知りようがない。

傍から見ている分には問題ないように見える。

しかし、何かの動作をしたらバグか何かが出たのか、機体ががくんと揺れて一度停止した。

 

「潤、ストップ」

「問題か?」

 

問いかけに答える間も惜しいとばかりにディスプレイを複数呼び出している。

各種パラメーターを確認して、問題の箇所を見つけ出したのか、小声で呟きながら左右のキーボードの入力を開始する。

 

「シールドバリアーを展開すると……。 PICが…………、展開のポイントを……、偏向重力推進角錐を……、脚部ブースターバランスを……」

 

入力と調整が完了したのか再び機体を上昇させる。

グニャと曲がった独特なモニュメントとして目を引く中央タワー、その外周をスラスター用いて細かに制御しながら加速してタワーの頂上にたどり着く。

ISのセンサーで簪の動向を探っていたが、別段問題なさそうな表情を見て安心した潤は、簪から目を離すと第三アリーナで猛特訓中の一夏を見る。

どうやらいきなり回避行動にまで気を使って訓練すると失敗するのか、箒はシャルロットに任せて会長と二人三脚で訓練をしているらしい。

しかし、何をしたのかしらないが円軌道を止めた白式は、制御を失って壁に激突してしまった。

きっと瞬時加速のチャージに集中して、基本的な操縦に対する集中力を途切れさせてしまったのだろう。

煙が晴れて、一夏の表情が見え――セシリアが近寄って心配した様な表情で語りかける。

勿論、箒とシャルロットもそれに続いていた。

 

「同じ男が出来た事が出来なくて、言われた事も出来ないで、幼馴染にまで心配される……」

 

会長に茶化されて、心配一転嫉妬から怒り出した三人を見て、逆に安心する。

もしかしたら、今日は手を引いて良かったかもしれないと潤は思った。

顔には出ないが、一夏はショックだろう。

それでも、同情されたりでもしたら、逆に惨めになる。

失敗や負けとは自信を打ち砕く最高の要素、この程度で心が砕けるとは思えないし、この程度で打ち砕けたのなら、専用機なんぞ持たずに姉に守られたままのほうがいい。

だけど、それだけは出来ないし、もしかしたらそんな事が考えられなくなる事態が起こるかも知れない。

自分側の、ドブとゲロと臓腑塗れの野郎が来るかもしれないのが気がかりでしょうがない。

 

「だが、一度も打ちのめされなかった戦士はいない。 皆立ち上がって、強くなったんだ。 だから、皆が通った道と同じ道を歩め。 強くなれよ」

「……やっぱり、お姉ちゃんが、き、気になるの?」

 

酷く不安そうな声色で、いつの間にか隣に来ていた簪から声をかけられた。

二つのキーボードで機体を調整し続け、到着前には殆ど飛行システムを完成させたらしい。

 

「会長より一夏だな。 会長は、なんというか気が合わん」

「そう、なんだ……。 あの、聞きたいことが、……あるんだけど」

「会長と二人で話した件だな?」

 

夕日で特徴的な水色の髪を染め、簪が頷く。

 

「あの人は認めたがらないが、きっと簪も巻き込まれるから話しとく。 ただ、知らんぷりしとけよ? 俺が小言を言われる」

「わかった」

「最近裏側がきな臭くなっている。 狙いは、『紅椿』、『白式』、『ヒュペリオン』。 来るとしたら一夏、次に俺だそうだ」

「……裏側?」

「マフィア、どこかの特殊部隊、金が目当ての傭兵、イメージはなんでもいい。 もっとゆっくり一夏の面倒を見たかったが、もう間に合わないところまで迫っているらしい」

 

更織家は裏方の仕事を防ぐ仕事、対暗部用暗部。

しかし、簪からはそういった臭いがあまりしなかったのだが、意図的に会長が仕事をさせていなかったのだろう。

ただ、PCの扱い方が非常に優れているので、ハッキングやクラッキングを担当していたのかもしれない。

――会長、今まではそれで良かったかもしれないが、妹を大事にすればするほど、逆に危険になることを忘れるな。

 

「尤も、会長と俺が前面に出る以上、当面ターゲット以外の連中の目の前でどうのこうのとはならないと思う」

「……それでなんで、潤があの人を鍛えなくちゃいけないの」

「なんで底冷えするような声色になる? IS使ってなかったらその頬こねくり回すぞ」

 

結局どうして会長が、一夏の強化に潤を宛がったのかよく分かっていない。

聞けば聞いたで、なんとなく『ピンッ』ときたで済まされそうな気がしてならないが。

確かに、他の候補生たちに任せるよりは、目に見えて成果がある。

元より部隊長だった潤の蓄積知識もあるし、勤勉な一夏の姿勢も関係しているし、それに、――変にしっくりくる感じがする。

芽がありそうなルーキーを気にかけるのは隊長の務めだし、しっくり感じは嫌ではない。

そんな事を考えながら、一夏の訓練を真剣な表情で見つめる潤を、簪はじっと見ていた。

潤が夕日に照らされる簪を見て綺麗だと感じた様に、真剣な表情をする潤に不思議な魅力を感じる。

海面に浮かぶ夕日の不思議な魅力に囚われ、このまま二人で此処に居るとおかしくなってしまいそうな気がして、了承も取らずに降下を始めた。

降下を始めた簪に気付いて、自らも機体を下げ始めた潤はおかしなことに気付く。

打鉄弐式の脚部ブースターが、右脚のみ光が強い。

 

「簪、脚部パーツなんだが」

「……なに――て、え……!? な、なにが――」

 

回線を開いて右脚の調子を尋ねようとした直後、問題個所の右脚から強烈なジェット炎が噴出する。

勿論片足のみ超高速機動時の様な有様になったISは、機体制御を大きく崩させ、縦回転しながらタワー麓に突っ込んでいく。

何とか機体を持ちなおさせようとディスプレイを起動させるが、浮かぶのはエラーの数々で、システム復旧には時間がかかりそうだ。

 

「潤、助けて!」

 

言われるまでもない。

スラスターに異常を見られた瞬間から準備はしていた。

しかし、なまじっか潤が機動に関する部分に手を加えていたので打鉄弐式の速度が尋常でない。

こんなことなら、簪が自発的に開発したと言う実績を邪魔しないように中途半端に手を貸すんじゃなかった、全面的に協力して完全を目指すべきだったと後悔するが、もう遅い。

その時、確かに、力強い心音と、子供の声を聞いた気がする。

耳から聞こえたものではなく、心の中に伝わるような感覚。

 

――ヒュペリオン!

 

潤の感情に従い、脳波を正確に感知するために、顎と後頭部から測定用の装甲がせり上がり、システムを起動させる。

両脚部、腰、腋の装甲が開き、脚部付近から姿勢制御を補佐するアンロックが量子展開。

腰から脚にかけて展開されたアンロックユニットに呼応するように、肩部アンロックユニットも、装甲を開く。

この間、僅か零コンマ五秒。

簪が地面に接触する間に――、落下による衝撃と速度を計算、衝撃力は衝突したときの減速過程で決まるし、物体や衝突する相手の材質によって全く異なる。

両足の関節と、背中に怪我が起こらないように、相対速度合わせてやんわりと、お姫様抱っこの要領ですくい上げる様にしてキャッチする。

生身だったらもっと問題がある、仮にもISでよかった。

 

「歯を食いしばって!」

「え!? うん!」

 

簪と共に強引にタワーから離れたが、暴走した打鉄弐式と、可変装甲を展開したヒュペリオンの推進力は尋常でなく、上手く切り返せない。

仕方なく地面に墜落するように着陸し、潤がブレーキ代わりになる事を選択。

バランスがちょっとでもずれれば大惨事になるが、飛行機事故でも行った事、出来な筈がない。

もう夕方で、アリーナを使用している生徒が少なくて助かった。

空中から墜落紛いの着地を行い、勢い余って地面を真っ直ぐえぐりながら停止するまで潤はそう考えていた。

 

「……怪我は、無いか?」

 

なるべく無傷で救出しようと思って、自分が下になるように体勢を調整した結果、簪に押し倒されるような体勢になった。

目と鼻の先にいる簪が頷いたのを見て、さっと顔色を確認――重症が無いようで一安心。

最初は両足、途中から左肩、すぐさま背中と、衝撃が凄かった潤は苦痛に塗れる結果になった。

 

「あ、あ……あの……、あの……っ」

「まずは退いてくれないか?」

「ご、ごめん!」

 

簪が潤から離れる。

 

『ちょ、ちょっと、信号がロストしたんだけど! 何が起きたの!?』

「はっ! 報告します! 一六〇〇時から一七〇〇時にかけて申請をしていた、更識、小栗、両名の飛行テストにおいて、事故が発生いたしました」

『事故!? 怪我してないわよね!? えーと申請書は……、これね』

「……共に目に見える怪我はありませんが、念のため保健室で検査を受けようと思っています」

『そう……保健室の先生には私から言っておくから、念入りにチェックするのよ?』

「了解」

 

嘘は言ってない。

肩の関節は目に見えない。

例え、ちょっと関節が外れていたとしてもだ。

 

「今、外に居ますから、歩いて移動可能です。 報告の詳細は後ほど」

『気を付けてね』

 

通信が途切れ、なんとも言えない雰囲気になる。

二人が地面を擦るように着地した跡が、生々しく線を引いて傷跡を残している。

開こうと思っても展開する系統でない可変装甲。

立平さんに聞いてもブラックボックスの範疇で手を入れられず、合宿の一件から一度も可変装甲は使えなかった。

ラウラに手伝ってもらって、あの時をなぞる様に何度も訓練したが、ウンともスンとも言わない。

ワンオフ・アビリティーじゃあるまいし、操縦者の精神状態をISとシンクロさせる必要があるとも思えない。

しかし、セシリアとの一戦以降、考察どおり感情をトリガーに可変装甲を制御できた。

地面に寝そべって、自機の可変装甲について考えていると、野次馬としてやって来た会長が顔をのぞかせた。

 

「派手にやったわねー」

「会長……、丁度良かった。 一夏居ます?」

「おう、居るぞ」

「手を貸せ。 足が痺れて上手く立ち上がれない。 それと、肩の関節が外れたみたいだから、はめるのを手伝ってくれ」

 

なんかお前、何時も怪我してるよな、とからかう一夏の手を借り、よろよろと立ち上がる。

可変装甲展開中の瞬時加速はご法度、……ご法度だが、すごく便利なので禁止するのを躊躇っていた。

役に立って何より。

一夏に肩と身体を支えてもらい、外れていた肩の関節を元に戻す様子を見て、簪の表情がみるみる変わっていく。

 

「……ま、また……また、駄目だった、ごめんね。 潤、ごめんね。 ……ごめんね」

 

こんなはずじゃなかった。

これじゃあ、あの時の病院と何も変わってない。

もう潤がボロボロにならなくて済むように、隣に立ちたかったのに。

本音と潤の、二人の期待に答えたかったのに。

そんな風に惨めな気持ちになって、目の前で痛そうに肩をさすっている潤に申し訳ない感情があふれてくる。

 

「泣くなよ、簪。 機体の整備には俺も手を貸したんだから気負いすぎるな、な?」

「……うっ、くっ、うわぁぁ……」

「明日はちょっと気分転換して、また明後日から二人一緒に頑張ろう、いいな?」

「うえっ……あ、ありが、うええ……、ありが、とう…………」

 

覚束ない足取りで移動し、簪の隣に座る。

最近まで感情を押さえつけていた人間は錯乱しやすいのかもしれない。

本音から見た潤も、こういう状態と同じだったかもしれないので、人の事は言えない。

何とか落ち着いてきたのを確認し、会長に目配りして、後事を任せる。

会長に付き添われながら第六アリーナへと帰っていく簪を見送り、怪我に対する意識の差を改めて考え直さねばと蜂起する。

 

「一夏、保健室まで肩を貸してくれ」

「やっぱり一人じゃ辛いか?」

「脳震盪でも起きてるかもな。 視界がぐにゃぐにゃするし、肩も上がらない。 動くことには動くから、痛み止めでも飲んで、暫く安静にしていれば大丈夫さ」

 

保健室にたどり着くと、タワーのチェックをしていた先生が待ち構えていた。

どうやら腰を落ち着かせることが出来ない性格らしく、教師二人に問題ないかチェックされる。

片割れの簪が、第六アリーナのピットに戻ったことを説明すると、速足で去っていった。

潤の手元にレポート用紙十枚分に相当する紙束を手渡し、怪我が落ち着いてからでいいと言われたが億劫である。

暫く一夏と喋っていたが、外が暗くなってきたのを合図に、身体チェック中に一夏が運んでくれた制服に着替えて保健室を後にする。

明日、何とか簪の機嫌を直さないとな、そう思いながら部屋に戻るべく移動して、やっとこ辿り着いたドアノブに手をかける。

 

「おぐりん、おかえり~」

 

入って仁王立ちしている本音が出迎えてくれた。

何故に仁王立ちと思ってよくよく見てみると、どうやら怒っているようだ。

何かしたか、と自問したが、今日の一件以外思い当るところが無い。

 

「お話があります」

 

ファンシーなパジャマと、普段ののほほんとした態度のせいで、どうしても怒られている感じがしないのだが、真剣な顔つきなので真面目に聞く。

着ぐるみパジャマ少女の目の前で正座する男、変な構図だが不釣合な程に真面目は崩さない。

 

「今日の事故か? 簪に怪我が無かったんだから――」

「違う。 おぐりんはさ~、自分の身体を大切にしなさすぎなんだよー。 今日はそれで怒ってるの」

「……といってもな、簪が怪我するよりずっといいだろ? 会長だって、俺だって、勿論本音だって悲しむだろ?」

「それはそうなんだけどさー」

 

何故だが知らないが、今の会話を聞いて、『それだよそれ』と言わんばかりに語調が変わる。

 

「おぐりんが怪我したら、同じくらいかんちゃんが悲しむって知ってる?」

「当然のことだ、勿論――」

「嘘つき」

 

どうも夏休みの一件以来、本音は潤に心を見透かす様な言動が増えている。

会長にも千冬にも、誰にも分からない筈だったのに。

 

「自分の身体なんて、どうでもいいって思ってるでしょ?」

「まあ、確かに……、未だに酷く損傷した四肢はパージすりゃいい、と思う事があるし」

「最後の方なんて言った?」

「何でもない」

「おぐりんはー、自分で思っている以上に皆に大切に思われているからね? おぐりんも自分が無傷なのに大切な人が怪我して動けなくなったら嫌でしょ? そんな当たり前の事、誰も教えてくれなかったの?」

 

確かに、過去の大部分のトラウマは、そんな事だったような。

それは、思った以上に苦い経験だった。

 

「……分かった。 以降、なるべく自分の身体の事も考えて動く」

「分かればよろしい。 それじゃ、ご飯食べに行こ!」

 

出来の悪い妹みたいで、漫画かアニメの親友役の様で、なんか包容力を感じさせる姉か母の様な本音。

女性として求める部分を、あらかた全部求めているような気がする。

そんな彼女とルームメイトで良かったと、一緒に廊下を歩きながら思った。

 


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