高みを行く者【IS】   作:グリンチ

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なぜにエピローグが平然と七千字程いってしまうのか理解できない。
四千字程にまとめようとした結果がごらんの有様だよ。


一期・エピローグ

※この手記を拾った方は、是非とも1030号室に届けて下さい。

 

 

We are the Pilgrims, master; we shall go

Always a little further; it may be

Beyond that last blue mountain barred with snow

Across that angry or that glimmering sea

 

 

新しい人生の幕開け、何度目だよ、を記念して立ち直るまでに限って手記を残すことにした。

 

 

くそったれな自宅で起きた後――得たものは少なく、失ったものは想像をはるかに超えている。

 

最悪の寝心地だったと思うが、IS学園より居心地は良かったと思いたい。

帰る途中、何かに誘われるように立ち寄った海外製品を取り扱っている店で、嘗ての戦友が吸っていた葉巻を見つけた。

目を凝らして見てみたが、本当によく似ている。

思わず店員を言い包めて購入し、――ちょっと後悔した。

美味いとは言えない。

思い出補正に任せて胸は高鳴ったが、悔しさばかり滲み出てきてどうやっても不味く感じる。 この事は忘れよう。

昼ごろにIS学園に到着した。 誰かに会うのが凄く怖かったので、スニーキングしたので誰とも会っていない。

何がこんなに怖いのか理解できない。

本音なら普通に接することが出来たので、大体本音と一緒に居た。 友達って素晴らしいね。

俺がふらっと出て行ったことに対する混乱は全く起こっていなかった。

本音に尋ねると、織斑先生が、小栗なら私の使用で少し出かけている、とそういう事にしたらしいといった貴重な情報を得た。

夏休みに入ってからあの疑似教官の言動が、こと俺に対して変な方向性を辿っていたので今さら驚かなかったが、何を考えているのか不安になる。

 

 

一日おいて次の日

 

日記と違うんだから毎日書く必要はないと割り切っていたが、余りに手持ち無沙汰なので二日目には続きを書くハメになった。

だって、陸上部の面々と会うのが怖いんだ。

起き上がって寝ている本音を観察して、この手記に適当な落書きをして、適当に本を読み、先に寝た本音を観察して一日が終わる。

ああ、そういえば昼食を取りに行くときに簪と会長に会った。

この二人が一緒とは珍しい。

簪に別宅で何があったのかしきりに聞かれた、恐らくキスした事だろう。 あの時の事は覚えていないのか。 相当酔っていたし、しょうがない。

酒の席でのことさ、気にしないさ、とだけ言って誤魔化した。 簪があたふたする様を見て少し和んだ。 会長がああいう性格なのも納得する。

俺が愉快そうにするのを見て、会長と簪が酷くびっくりしていた。

怖いからその反応止めてくれ。

 

 

何日たったか忘れた。

 

部屋から全然出ていない。飯を食いに行くときはスニーキングして購入、部屋で食べる。

簪には悪いが、暫くの間専用機の開発から外させてもらった。 どうにもそんな気が起こらないから本当に勘弁してほしい。

偶然俺が帰ってきたのを知ったナギと癒子が1030号室に襲来した。

誰が見逃しても俺は見逃さない。 あいつら俺をチラチラ見てびっくりしていると言うか、ぼーっとしている事があるのだ。

問い質したくても、返ってくる答えがどうなるのか怖いので、帰った後に本音聞いてみた。

なんか何時も不機嫌で、怒っている様子だったのが、ある日を境に無垢な笑顔を浮かべる様になったかららしい。

笑って悪いかと言ったら、そっちの方が良いと、本音は笑いながら言った。

 

 

織斑先生につかまった日

 

あの糞ウサ耳博士、織斑先生に全てをぶちまけていたらしい。

しかし、しかしだ。 奴も一人の巡礼者なのかもしれない。

先生の話を聞く限り、完全な悪ではないのだろう、ちょっと顔に四、五発ぶち込んだ後、膝を突き合わせて酒でも飲んで話してみたいもんだ。

その後は交渉材料として委員会に行ってもらおう。 俺の未来のための礎となるがいい。

これ以上、書くことは無いだろう。 過去を思いはせて紙に書くのは止めよう。

二学期からまた忙しくなりそうだ。

 

………………

…………

……

 

流石に三時前ともなれば食堂に人が居ないだろうと判断し、食料を得るためスニーキングしていたら千冬に見つかった。

今まで会長以外に見つかった事は無いのに。

 

「あ、どうも……」

「小栗か……。 もういいのか?」

「何がですか?」

 

警戒中の時はヒョコヒョコ顔を出して歩哨を行う、あのプレーリードッグの様な瞳で千冬が顔を覗き込む。

暫くの間そうしていたが、何かに満足したらしく、視線を外した。

 

「――なんとか、なったようだな」

「……ああ、そういえば、色々迷惑をかけたようで」

「今なら話せそうだ。 ――小栗、話がある。 ついてこい」

「えぇと、お断りする権利は?」

「無用な混乱が生まれそうな事を一つ見逃してやっただろう。 借りを返してもらう――よろしいかな、エルファウスト王国、特務隊Fanatic Force所属、小栗中佐殿?」

 

瞬間――千冬の肌を包んでいた夏の暑さは、その気温を感じさせない程の冷たい圧力に変化した。

一瞬で顔に浮かんでいた感情が、漂白されて何もなくなったかのような変化。

能面の様な顔には何も浮かぶものが無く、それでいてありありと殺意だけは誰が見ても分かる。

内に秘めていたとは思えないほどの、信じがたい圧力。

潤本人は嫌がるだろうが、戦士としての才能の表現、それは紛れもなく一級品の物。

しかし、その眼下に晒されるのは、『白騎士』として、『ブリュンヒルデ』として、世界的に戦乙女として名を残す女傑。

廊下を埋め尽くす殺意を受け流す。

 

「そういう話だ。 それと、私はお前の味方だ。 弾劾しようとも、非難しようともしない。 だから、その物騒な気配を抑えてくれ」

「分かりました」

 

廊下を埋め尽くしていた圧迫感が消えると同時に千冬は、少しだけ肩の力を抜く。

顔に出なくとも肌は粟立っており、緊張した場面だったと振り返る。

ISの様な起動兵器も無く、鍔迫り合う向こう側に敵が居る戦場において、輝かしい戦歴を残した接近戦のプロフェッショナル。

無線のような簡単に通信を行える手段がない場所において、自らも前線で戦いながら味方と連携して指揮をとることがどれほど困難か。

それだけでもリスペクトに値する。

 

「それで、生徒指導室ですか? 寮長室ですか?」

「そんな場所で話せる内容か? 私の家で、ゆっくり話そう。 酒くらいはあるぞ」

 

三時ごろになって私服姿となった千冬と共に車で移動した。

車の中では特に会話は起こらず、あっと言う間に織斑家に到着してしまった。

車を駐車場に止めてくると言う千冬を差し置いて、織斑という表札とその下のインターフォンを睨んで小休憩。

とりあえず千冬の家でもあるが、一夏の家でもある。

千冬のプライベート空間を侵食しなければ問題ないだろうと思い、取りあえず上がらせてもらおうと思いインターフォンを押そうとして、中から響く声に手を止めた。

入って大丈夫なのだろうか、『邪魔をするな!』と言ってISで攻撃されたりしないだろうか。

しかし耳を澄ませば、中から……完璧な造形だぞ、というラウラと思わしき声も聞こえたので、これなら大丈夫とお邪魔することにし、インターフォンを押して、躊躇なく玄関の扉を開いた。

 

「……ととっ、潤も来たのか」

「勝手に上がってすまんな。 ちょっと避けえぬ事情があってな」

「そっか、歓迎するよ。 喉乾いてないか、お茶でも入れるぞ」

「この調子ではまた移動確定だが、それは俺が決める事じゃないか……。 一杯冷たいのを貰っていいか」

 

この場にいる面々を考えると、千冬が考える話の内容は出来ないのは確実。

千冬が来るまで数分も掛からないだろうが、昼食を取り損ねているし、せめて飲み物だけでもと思ってスリッパをはいて、リビングへと向かう。

 

「皆、潤も来たぞ」

「おおっ、私の隣を譲ってやるぞ」

「潤が来た瞬間、ご機嫌になりやがって……。 さっきまでのむすっとした態度は何処に行ったんだよ」

 

織斑教官が過ごした家に興味を持ってやって来たラウラは、シャルロットも来ているという事で取りえず輪の中に入っていた。

周囲を威圧する雰囲気は相変わらずだったが、潤が来て一変、隣にクッション座布団を用意して誘い出した。

見事な変わり身の早さである。

 

「いや、悪いが、すぐさま移動することになりそうだ」

「なんでだよ? なんだったら泊まってってもいいぜ?」

「俺も用事があって来たんだ。 この有様じゃ、あの人がそう言いそうだからな」

「あの人?」

「なんだ、賑やかだと思ったらお前たちか」

 

あの人は誰だと思った専用機持ち達にとって、唐突に予想外の人物がやって来た。

織斑千冬、その人である。

 

「千冬姉、おかえり」

「ああ、ただいま」

 

潤の事は片隅に置いておいて、すぐさま千冬の傍に行く一夏。

右肩のカバンを受け取って片付け、昼食を取ったか否か、潤と同じくお茶を飲むか飲まないか尋ねる姿は執事の様でもある。

そこまで一夏と何気なく接していた千冬だったが、教え子のどうにも圧迫された雰囲気と、一夏の世話を羨ましそうに眺める視線に気づく。

 

「小栗、場所を変えよう。 良い場所を知っているから、案内する」

「ですよね」

 

バタンとドアが閉じる音がして千冬が出ていく。

予想通りに結末に潤はほんのり苦笑いを浮かべた。

 

「千冬姉と何かあるのか?」

「福音戦の事とか、病院での事とか、先日の無断外泊の件について、小言と説教を受けて罰を与えられる予定だ。 変わってくれるなら変わってやるぞ」

「うへぇ、勘弁してくれよ」

「ははっ、冗談だ。 真に受けるな」

 

にかっと笑って一夏を小突く潤。

千冬が居なくなって、やっと呼吸が出来る様になったかのように専用機持ち達が息を吐いたが、その光景を見て再び息をのんだ。

(セシリア、あれ何? 潤ってああいう風に笑って冗談を言う性格だったっけ? 僕の理解が追いつかない)

(いえ、わたくしに聞かれても……。 色々ありすぎて本格的に駄目になってしまったのでしょうか?)

(笑いながら冗談を言う性格だったけ? どんな心変わりかしら)

(そこはかとなく、小学生頃の一夏と重なるな)

 

「……一生モノのシェルショックを患ったと思ったが、吹っ切れたようだな」

「随分遠回りしたけどな。 ありがとう、もう大丈夫だよ、ラウラ。 ……それにしても、一夏」

「ん?」

「会長にしろ簪にしろ、癒子もナギも、セシリアやシャルロットと同じ反応するんだが、やっぱり変か?」

「入学当初の面影が全く無いじゃないか。 そりゃ、誰だってビックリするって。 でも悪い変化じゃないと思う」

 

爽やかに笑って背中を叩く一夏を置いておいて、鈴の方を見る潤。

――リリムの気配が、全く表に出てこない。

あの一件以来、死に際の心臓の如く、影響力を感じたり消滅したりを繰り返していたが、もう完全に居なくなってしまったらしい。

これでよかった、これでいいんだ、とも思ったがやはり悲しい物は悲しい。

 

「We are the pilgrims, master: we shall go.

 Always a little further: it may be

 Beyond that last blue mountain barred with snow,

 Across that angry or that glimmering sea」

「?」

「その詩は――」

「知っているのか?」

 

箒の問いかけに頷くセシリア。

『われら巡礼者は あの雪に縁取られた地の果ての青き山を越え 荒れ狂う海 輝く海をも越えて かなた遠くへ至らん』、出典はジェイムズ・エルロイ・フレッカーのサマルカンドへの黄金の旅。

この詩はイギリス陸軍、SASの戦死者の名が刻まれるヘレフォードの時計にも記されている。

また全てのSAS隊員が暗記している有名な詩で、鎮魂歌とも取れる詩である。

 

「小栗、別の場所へ移動するぞ」

「はい」

「一夏、今日は帰れないから後は好きにしろ。 ただし、布団が無いから泊まらせるなよ」

 

一夏に声を掛けられる事もなく颯爽と出ていく二人。

何故かその背中は良く似ていた。

駅から少し行ったところにある商店街の、その地下にあるバーに二人はやって来た。

夕方四時から翌朝八時まで開いているこのお店は、フランス製の調度品で統一された大人の社交場であり、千冬の行きつけの店でもある。

また、ここのマスターは教養深いのか、長年の経験深さからくるのか高級バーとも言える隠れた名店でもあった。

ここでいう高級というのは、単に酒や料理が美味いというだけではなく、訪れた人の秘密を守れるという事だ。

単に美味い料理を食べたければ、この高度情報化社会、いくらでも安くて優良な料理を出す店は見つかる。

しかし、そういう店では秘密を守れない。

 

「千冬さん、男連れとは珍しい。 春でも来ましたかな?」

「冗談はよしてください。 顔を見れば分かると思いますが、訳ありです。 奥をお借りしたいのですが」

「――どうやらそのようで。 ではどうぞ」

 

奥へ通されていく潤。

部屋にこびり付くまで重ねた酒の匂いが本当に懐かしかった。

マスターが黒ビールをビンで持ってきて、潤が未成年だと知っているのか定かでないが、コップを二つ持ってきて去っていった。

マスターが出ていくのを確認し、ビールを注ぐ訳でもなく、最初に千冬が口を開く。

 

「すまなかった」

「……」

「今なら分かる。 お前とあいつを戦わせてはいけなかった」

 

呆然とする潤の前で、千冬が頭を下げている。

リリム云々に関しては自分の非でもあった潤は、少しの間混乱した。

 

「UTが現れたのは、俺が原因です。 だから――俺が戦うべきでした」

「そんな事は言わないでくれ。 これは戦う場にすら居なかった私の出来る、最後の事なんだ」

「頭を上げて下さい。 もう、全部済んだことです」

 

その言葉を聞いて、千冬はゆっくり顔を上げた。

肉体も万全、戦う気概もある、そんな状態で生徒を前線に出すことに、彼女なりに追い目が合ったのだろう。

その目は真剣だった。

とりあえずコップにビールを注いで千冬に手渡した。

 

「……」

「頭を上げて下さい。 もういいんです」

「――流石に英雄と呼ばれる功績を残した事はある。 切替えが早いな」

「それは勘弁して下さい。 宛がわれたレールを走っていたら、英雄という名の駅しか残っていなかっただけですから

「それでもお前は英雄だよ。 私が何時までたってもブリュンヒルデで呼ばれているように」

 

喋りながら用意されたもう一つのコップにビールを注いでいる。

二人の間では、既に潤が未成年でない事だけは一致している。

 

「そうじゃなくて、英雄ってのはもっと、――こう上手くやるもんじゃないですか?」

「直接被害を受けるはずだった前線、前線の崩壊で失わるかもしれなかった後方、全て考えれば億近い人命を救ったんだ。 下手も上手いも関係なく、自分の命を天秤にかけ、身を切るような決断が出来るのが英雄だ、私は思う」

「せいぜい一分程度だけのインスタント英雄をよくそこまで持ち上げますね。 それともブリュンヒルデは目の付け所が違うのかな?」

 

お互いに皮肉を言いあい、千冬の乾杯の一言を合図にグラスを鳴らして酒を呷る。

静にグラスを傾ける両名だったが、大体半分ほどグラスを開けた時になって千冬の方から切り出した。

 

「私は何もしてやれなかったが、これから大丈夫か?」

「大丈夫、大丈夫ですけど、この世界の人間が皆優しいせいで、周りの反応が少し怖い」

「いや、言うのは憚られるが、お前が接した連中がアレだっただけだ。 これが普通なんだ」

「そこまで知っているとなると、随分深く理解しているようで……。 情報の出所は?」

「束からお前の魂によって得られた情報を、映像化されて渡された」

「またあの女か――」

 

潤の脳裏にヘラヘラ笑う、メルヘンチックな女性が浮かび上がる。

口にする言葉には棘が含まれているものの、その単語は以前より幾分緩和されていた。

 

「先生から見て、あれはどういう生き物なんですか?」

「付き合いの長い私にも難しい質問だ。 何せ掴み所がない奴だ。 ただ、束は興味のない人間にはとことん無関心だった奴だ。 そう考えれば『じゅんじゅん』という呼称を使い、お前の専用機にまで手を出したのには意味があるはずだ。 だが、こうまで辛辣な行動に出るのは、……確かに奴らしくない。 特別になりきれない、世界にたった一人だけの特殊、難しいな」

「しかし、奴は踏み込んじゃいけない所に踏み込んだ」

「確かにそうだ。 ――お前は、あいつをどうしたい?」

「あんなでも、友人の姉の友ですからね。 ただ、けじめは付けさせて貰いますよ。 けじめに命の保証はしませんがね」

 

にやりと笑う潤を見て、溜息一つ。

潤の過去を鑑みれば、一度敵扱いされた以上、何も無い、はありえないと判断する。

一方で潤の過去を知った以上、それもしょうがないと思える自分が居る。

後は当人たちの問題で、潤ならなんだかんだ言って命まで取らず、交渉材料として上手く使うだろうと思っているのもある。

 

「それより、映像、映像ですか……。 中々刺激的でしたでしょう?」

「今のお前が、時より笑顔を浮かべるのを知っているから尚更だ。 手術の場面ではゲーゲー派手に戻した」

「なら良い方じゃないですか。 俺なんか未だに水に浸かると体が固まります。 たぶん一生モノでしょうね」

 

千冬が飲み終わったのを見て、空になったグラスを黒ビールで満たしていく。

笑いながら言ったものの、言葉に震えを見た千冬がしまったという表情に変わった。

と言っても、潤の過去を穿り返すとトラウマ物の内容しか出てこない。

 

「ああー、鳳の事なんだが……」

「先生の家で会った時には、ほぼ完全に消滅していました。 リリムの適性が上書きに近いものだったので、シャルロットが転入してきた後から大分危険でしたが、もう大丈夫でしょう」

「そうか、寮監の私にとっては朗報だが、お前は寂しいんじゃないか?」

「どうですかね?」

 

重ねた時間はともあれ、共に大人である二人はゆっくり杯を傾ける。

一時間程飲んで、次第に酔いが回ってきた。

この数ヶ月の間に何を失い、何を得たのだろう。

失った物は多く、得た物は決して多いとは思えない。

新しい出会いがあって、少しずつ日常に安らぎを感じるたびに心の何処かで罪悪を感じていた。

壊れかけの人間モドキが、ラウラや簪の支えになる事に抵抗を感じた事もあった。

潤がこの世界に刻んでしまった何かが正しいのか、正しくないのかなんか分からない。

それでも――、確固たる意志で決断したのだけは覚えているし、出来る限りのことはやった、そう思う事が出来る。

誘われるがまま飲み続けていたら、最近ずっと襲い掛かる眠気に誘われ、自然と目を閉じた。

その潤の寝顔は、安らかな、憑き物が落ちた普通の寝顔だった。

 

……

…………

………………

 

 

手記の最後のページにこう記してある

 

 

われら巡礼者は、

 

あの雪に縁取られた地の果ての青き山を越え

 

荒れ狂う海、輝く海をも越えて

 

かなた遠くへ至らん

 

 

このレクイエムを、俺が見送った全ての友に捧げる

 

そして、俺が残せた全ての命に、幸多き未来があらんことを




次は二期プロローグからスタート。
今度は四千字未満でいけるはず。
2-1から普通通り五千~六千ほどで書いていきます。
終わりが近づいてきたらまた七千~一万文字くらいになるかもしれませんが。

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