高みを行く者【IS】   作:グリンチ

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2013/10/1 原作七巻を手に入れたので、簪さんの口調を変更。


1-4 君は俺に似ている
5-1 更識簪


学年別タッグトーナメントは六月末に行われる。

今日で六月も中旬なのでトーナメントは大体十日後。

タッグペアを探して、満足のいくコンビネーションをするための練習期間が短すぎる気がするのだが、何を考えているのだろうか。

教師側から誰か、恐らく生徒会関係者と組めと言い渡されると考えていたので、何か知っている可能性の高い本音に聞いてみた。

ナギと癒子は、例の噂関連でさっさと教室に向かっていった。

頼む、止めてくれ、これ以上傷を広げないでくれ。

 

「今日には告知されると思うけど、今度のトーナメントは二人組で行うらしいだが、俺は誰と組むのか決まってるのか?」

「ん~、私何も聞いてないけど~」

「そうなのか? てっきり隔離されるものと思ったんだが……」

 

IS適性の高い本物の軍人が来たことで、潤の警戒レベルも下がっていた。

織斑先生が主導で行っていた二十四時間体制の監視も一時的に終わり、今回無闇に束縛しない事には、潤にも友好の輪を広げて欲しいという教師心があった。

しかし、そうなると誰と組むべきか。

 

「本音、組まないか?」

「おぐりん優勝したいんでしょ? りんりんと組むのがベストだと思うよ? 優勝間違いなし」

「それは――そうだろうけど……。 いや、奴とは組まない」

「う~ん、おぐりんの予測で私と組んだ場合優勝できる?」

「ラウラがどこまでパートナーを意識して戦うかで変わるが、かなり厳しいとは思っている」

 

本音の実力は、高くもなく低くもない、下手ではないが、あくまで普通の範疇を出ない。

何回か授業で教えてわかっていることだ。

もし、箒レベルで戦いの心得がある生徒をラウラが選んだ場合、恐らく不利になる。

代表候補生レベルを選べば言わずもかな。

そうなれば、潤も代表候補生を選べばいいのだろうか。

 

遠距離射撃型、イギリス代表候補生、セシリア・オルコット。

中距離及び近接格闘型、中国代表候補生、凰鈴音。

万能型だが第二世代、フランス代表候補生、シャルロット・デュノア。

 

今回は、タッグと決まっているが対ラウラに限って直接対決で勝たねばならない。

故に、ラウラと当たる所で、こちらの事を考えた戦闘をして欲しいが……。

ダメだ。 こいつら色々濃すぎる。

セシリアは主導権を取りたがる口で、ラウラと戦う場面でも自分を出してしまうだろう。

鈴は、共感現象を利用すれば勝てるし事情を察した動きをしてくれるだろうが、それは鈴の成長できるチャンスを無くしてしまう。

それに、最近リリムの侵食が進んでいる。

少し距離を取らねば鈴が消えてしまいかねない。

シャルは相談すればなんとかなりそうだが、戦闘以前の所に問題がある。

 

「と、なれば篠ノ之に頼むか? だけど、あいつもあいつで濃いもんなぁ……」

 

一夏に木刀で殴られた話、教室で潤とラウラに並んで仏頂面で孤立する姿を思い出す。

話、通じる相手だろうか、不安だ。

 

「おぐりん、相手に困ってるの?」

「そうだな、ラウラとの直接対決を許してくれて、相手が代表候補生でも問題なく戦えて、そんなに自己主張の強くない生徒。 いないものか……」

「もう全部ピンポイントだしかんちゃんに頼んでみれば?」

「かんちゃん? ……更識簪か。 ……ありだな、ちょっと四組行ってくる」

「いってらっしゃーい。 ――うん、おぐりんなら、きっと何とかしてくれるよ、おじょうさま……」

 

かんちゃん、四組クラス代表、更識簪、以前アリーナでキーボードを操作していた女子。

日本代表候補生でIS学園で最強と自称する生徒会長の妹。

どちらかというと内向的なイメージがある。

しっかり事情を説明して、話し合えば同意を得られる余地はあると思う。

 

一年四組。

トーナメントの噂のせいで、妙に視線が集まっていたが、目的のクラス前までついた。

上級生はどうすればいいの? 知りません、優勝できなかった男子を、優勝者同士で話し合ってパイの取り合いをしたらどうしょうか。

受賞式での発表? 俺を景品替わりにするのは諦めろ、今回俺は全力で行くぞ。

空気が抜けるような音がして、扉がスライドして開く。

 

「ああっ! 一組の小栗くんだ!」

「え、うそうそ! なんで!?」

「よ、四組に御用でしょうか!?」

 

なんだこの、登山に来たら野生の鹿を見つけた小学生達のような視線の集まり方は。

元々考えてみればこのクラスで男一人で所属することになっていたらしいが。

もしそうなったら悲惨な事になっていたかもしれない。

誰だか知らないが、更識簪と同室になるのを防いだ人に感謝したい。

 

「……更識に話があるんだが」

「更識さんって……」

「『あの』?」

 

海割りよろしく女子の壁が開く。

その直線状、クラスの一番後ろの窓際席に、彼女はいた。

 

「じゃあ、そういうことで」

 

不思議と絡み付く視線を背中に窓際まで移動する。

よかった、真中中央とかじゃなくて。

 

「………………」

「久しぶりだな」

 

クラスの端っこで、メガネを何故か光らせてキーボードを操作している。

画面が見当たらないが、恐らくは眼鏡がその役割を果たしているのではないだろうか。

内側に跳ねる癖毛、虚ろにも見える目、どこか人を寄せ付けない雰囲気。

アリーナでもそうだったが、何か作っているのだろうか。

この関数設定……、射撃や、マニピュレータは弄っていないようではあるが。

軌道生成? ZMPの設定でもしているのか?

千年メンテナンスしてなかったパワードスーツを使い物にした前歴があるので、ISのプログラムなら少なくとも1年の誰よりも長はある。

 

「更識」

 

今になってようやく気付いたのか、なにやら眼鏡をきらりんと輝かせて顔を上げた。

なんか、妙に変な雰囲気を感じる、これは、お、オタク臭?

なんでこんな発想がいきなり出てくるのか、魂魄の能力は未だ謎多き能力である。

 

「……なにか用?」

「月末の学年別トーナメントだが、織斑先生の話では二人組で行うらしい。 そこで頼みがある」

「頼み……?」

「俺と組んで、優勝を目指さないか?」

 

未だ明かされていないはずの学年別トーナメントの変更点。

周囲で聞き耳を立てていた四組みの女子たちに波紋が広がった。

 

「……なんで私? お姉ちゃん、……あの人に何か言われたの?」

「いや、会長とはまだ面識がないが」

 

何故か恨みがましい目で見られたが、その感情は潤には慣れっこである。

魂魄の能力者は、その業の深さ故にキ○ガイばかりである。

 

「……そう。 でも、イヤよ……。 あなたなら、組む相手には……困らないはず……」

「それが、な。 優勝を目指すために、条件に合致するのが更識だけだったんだ。 お前しかいないんだ、頼む」

「…………」

 

不思議な間だった。

更識は潤の瞳を捉えて離さない、潤も瞳を逸らせば断られるんじゃないかと思って目線を逸らさなかった。

キーボードを叩く音も途切れ、そのまま二分程黙って視線を外さずにいた。

 

「……わかった」

「そうか、ありがとう。 それじゃあ、放課後テスト用アリーナに来てくれ。 フィンランドの技術者たちには話をつけておく」

「……わかった」

 

それから教室を出るまで、相変わらず簪はキーボードでの打ち込みを続けていた。

潤の専用機、ヒュペリオンの初動テスト。

脳波コントロールシステムでISの動作を補助するというかつてない試み。

そのため、いきなり衆人環視の前で行うのではなく、テスト用アリーナで行うことになっていた。

更識にデータを見せることもないだろうし、教師陣も何人か立ち会うと聞いているので生徒一人加わる位問題ないはず。

 

「……じゃあ、また」

「ああ、放課後な。 それと、そんな軌道生成の設定したら三歩目には転倒するぞ」

「――――――えっ?」

 

扉が閉まる直前に見えた、少し驚いた表情がほんの少し面白かった。

 

 

『そんな軌道生成の設定したら三歩目には転倒するぞ』

 

よくよく考えてみれば、確かにこの設定には無茶がある。

でも自分の姉ならば、こんなミスして指摘されることも無かっただろう。

もしくは、小栗潤が、姉と同様特別な才能を持った人間なのだろうか。

軽く頭を左右に振って考えを打ち消す。

更識簪から見た、小栗潤はある種複雑な存在だった。

飛行機事故の顛末、代表候補生ならその特異性は誰でもわかるだろう。

中型といえど、ジャンボジェット機クラスの大きさを着陸支援するには、僅か五cm未満のズレしか許されない。

それ以上の角度誤差を起こせば、片翼が滑走路に接触して大惨事になったことだろう。

それのシビアなコントロールを迷いなく実行したということは、あの起動制御が可能だ、という自信があったのだろう。

出来て当然だとしても、もしミスをすれば百人程の人命が重圧として彼の精神を締め付けただろう。

 

代表候補生なら出来る人は数多くいるだろう。

 

しかし、もし日本代表候補生の自分でも、彼と同じ状況下に置かれたら、同じことはしなかっただろう。

初めてISに触れた初日で、許容誤差数cm、失敗すれば百人ほどの人命が失われる可能性がある。

まともな神経をした人間に出来ることとは思わない。

そんな鋼の精神が、羨ましく感じる。

そして、それだけの人間が、上ずった声を上げるアナウンサーの言葉を借りるなら『英雄的行い』をした彼がどんな人間なのか興味があった。

アリーナで潤の監視を虚さんから頼まれたとき、気になったので話をしてみた。

 

『それにヒーロー像で見られるのも嫌だしな。 俺は、他の何でもないただの俺でいたい』

 

その台詞が、簪の感情を嫌でも震わせる。

常に姉というレンズを通して見られていた自分。

ヒーローというレンズを通して見てしまった自分。

嫌だと知っていたのに自分がそれをしてしまったことに、いささか恥じらいを覚える。

 

本当のヒーローなんていないのかもしれない。

自分を助けてくれるヒーローなんて……。

それにしても――『私にしか出来ない事』、か。

その表現の仕方は、悪いものではない。

他の誰でもなく自分だけが出来ること、机に座りながら、先ほどの潤の台詞が簪の頭の中で反芻される。

何故か分からない気持ちになって、簪は頬をうっすらと桜色に染めた。

 

 

 

 

 

一組ではクラスの右端からくる妙な威圧感、訓練された代表候補生ならわかる殺気と敵意でやけに静かだった。

話しづらいとか、そういう次元ではなく、少しばかり温度が低いようにも感じられる。

ラウラと潤、二人共軍人の経歴があり、その迫力は本物だったので誰も改善させることができなかった。

そして、潤の隣の席という最も近い距離で笑いながら潤に話しかけて、昼食時には纏わりついて食堂まで誘える本音は、クラスに一つ伝説を残した。

結局誰も触れることもままならないまま、時間は放課後を指し示す。

 

「……所で、なんで優勝したいの?」

 

二人並んでテスト用アリーナに向かう。

戦闘に備えた作りで無いので、テスト用アリーナは普通と比べて小さくまとまっている。

IS学園が新世代ISのテストとなる場所に丁度いい場所であることが関係して、こういう場所が作られたらしい。

 

「ちょっと、ドイツの代表候補生とすれ違いがあってな……」

「……すれ違い? ……それだけ?」

「まあ、難しい問題でな。 本当はラウラは正しいんだ。 人類文明を飛躍的に発展させたのは、紛れも無く戦争という大きな力の流れにある」

 

理性の面から嘆かわしいが、二十世紀以降の科学技術発展には戦争による軍事技術の革新があったのは事実だ。

戦争に勝つには、武器や装備といった技術力が一つのポイントになる。

そのポイントを生み出すのは工業力だ。

工業力が優れているということは、高度の工業化社会が実現でき、人々の暮らしが近代化し、豊かになっていく。

綺麗ごとは言わない。

潤が汚い側の人間だからかもしれないが、事実を否定したりしない。

 

「……じゃあ、なんで?」

「正しい事を、正しいと叫んでも、絶対否定される。 そういうことだ。 それに、ラウラや俺みたいのは先鋭化しすぎる」

「先鋭化?」

「行くところまで行けてしまうんだ。 そうだな……、少し脱線気味になるが、あいつは、織斑先生みたいになりたくて、そのために努力もしている。 そこに、少しも妥協していない。 それは凄いことだって、あいつを尊敬するよ。 努力し続けられるのも立派な才能さ」

 

何かを思い出すように独白を続ける潤。

その顔を見ていた簪は、一つ彼について学んだ。

怖いとか、根暗とか、そんな風に言われているけど、喧嘩している人の事を尊敬できるくらい大人な人だと。

 

「だけど、あいつには無いんだよ。 織斑先生みたいになった後にどうしたいのかが」

「……みんな、そんなこと……分からない」

「その通りだ。 だけど、俺たちは先鋭化しすぎているって言っただろ? 分からないけど、進めなさそうだと思っても、普通なら立ち止まるところでも、どんどん足を進めてしまう。 無理だと思っても、辛くても、苦しくても」

「……なるほど」

「そうして進んでいくと、何時しか地獄の淵までたどり着く。 あのままじゃ、あいつは手遅れになる所まで行ってしまう。 誰かが骨を折ってでもブレーキにならなくちゃいけないんだよ。 止めなければ、その最終地点には重い後悔か、死しか残らない。  誰かが例え、その道に行くのが誰であろうと、そんな終わり方は見たくないんだ、二度とな」

「…………」

「俺も一度通った道だ。 きっと誰より上手に受け止めて見せるさ。 俺とあいつは似てるから」

「小栗くんって……、意外と…………熱いところもあるんだね」

 

それ以降、二人共に話すこともなくなりテスト用アリーナに向かって歩みを進めた。

所で、会長と思わしき強烈な気配がついてくるんだが、簪は気づいていないのだろうか。

この感情、簪と仲良さそうにして嫉妬してる? 簪の身を案じてる? なんなのこの姉妹。

 

更衣室でパトリア・グループ特注ISスーツを着込む。

耐G及び耐電も考慮した、初動に限れば世界最速の機体に乗ることに備えたスーツ。

格納庫には一つの新型機と、パトリア・グループの担当技師達が待ち受けていた。

その殆どは充分にテストされていない機体を、学生に渡すことに不安を感じているようだった。

それも無理もない。

小栗潤は企業に属する専門のパイロットではない。

理論上危険がないというだけで、一度もテストをしたことのない機体をただの学生に乗せるのだ。

 

「先日お送りしたPDAで理論的なロジックはおわかりと思いますが……」

 

そして、更に彼らに危機感を持たせている要因。

人類史上例を見ない、機体そのものを脳波でコントロールできるシステムの利用。

最初に潤が使っていた打鉄・カスタムのデータで、脳波を観測するシステムが計測不能になっており、潤の適性が高いのも知っているが。

そんな技師の不安を他所に、潤はさっさとヒュペリオンのコックピットに乗り込みISを起動させる。

 

ナノマシン生成機オールグリーン

可変装甲はスタンバイ状態で機動

脳波コントロールシステム、待機状態

 

「ヒュペリオン本体は正常起動しました。 脳波コントロールシステムが待機状態ですが、どうしました」

『脳波制御は未知の制御方式で、現在ロックしてます。 カタパルトから出て広いところに行ってから解除してください』

「了解。 小栗だ、【ヒュペリオン】出るぞ!」

 

形だけで急速発進出来ないカタパルトから出て、小学生のグランド程度のアリーナへ出る。

空中には訓練機用の打鉄を装着していた。

何時ものようにキーボードを取り出した簪を諭して、一緒に出てもらった。

この短期間でリリムと同様に誰かとコンビネーションを磨くのは難しい。

下手に組んでも足を引っ張り合うことは請け合いなので、お互の癖と武装の詳細を知って状況判断に阿ることにする。

こういう戦闘状況の場合、プライベート・チャネルで常に近距離で話せる環境は非常にありがたい。

 

「訓練機なのか。 クラスメイトの話では専用機があると聞いていたが」

「……白式に、……白式に、あれに手を取られて、……開発凍結中」

「なんか、すまん」

 

教室でZMPの設定やらしていたということはISのプログラムを作っているのだろうか。

まさか一人でやっているのだろうか、なんとも無謀なことだ。

しかし、人の領域にズカズカ踏み込む気もないので、何かあっても簡単な補助程度を手伝うだけにしよう。

 

「その打鉄は標準装備か?」

「うん」

「そうか、打鉄のプリセットは頭に叩きこんである。 では俺の装備だな」

 

殆どの武装は説明を必要とするほど複雑ではない。

1回の使用で、代表候補生の実力があれば特性がわかる程度の代物でしかない。

しかし、潤も使ってみないと勝手の分からない代物がある。

 

EEGARA、潤命名フィン・ファンネル―――

BT同様ビット型の武器で、相手の死角からの全方位オールレンジ攻撃が可能。

ビットの制御を脳波(EEG)で行うために二つ扱えれば上出来な仕様であるが、潤が極めて稀な空間把握能力を宿しているため開発に至る。

装備数は十二基で、攻撃以外にも防御用として使用することもできる。

これを別名、『アルミューレ・リュミエール』と呼ぶ。

 

「さて、脳波制御必須の兵器か……。 まあ、兵器の前に起動実験だな」

『それでは脳波コントロールシステム起動実験開始します。 ……救命班待機! ヘリの準備もしとけよ!』

「ちょっと待て、何をさせる気だ」

『嫌だなぁ、脳波コントロールシステムの起動実験ですよ』

「いや、さっき救命班がどうのこうのって」

『さあ、逝きましょうか』

「……あの、小栗くん?」

「――OSや可変装甲を見るに脳波制御はこの機体では必須。 やるしかない、逝くしかないんだ」

「なんか、にゅ、ニュアンスが……」

 

息を吐きだした。

重々しく、懐かしさすら覚える息の吐き方。

心を占める弱音を塞ぎ、自分が強化された研究所での光景を、戦友の死に際の声を思い出す。

自分と同じ道、その道に行くのが誰であろうと見たくない。

ラウラと戦う場面に間に合うかどうか等、決まっていないが……。

 

「やってくれ」

『プログラム班、強制解除!』

 

 

 

「あ――――」

 

 

 

変化は劇的で、どう例えればいいのか。

頭の中に、赤くなるまで熱した鉄の棒を捩じ込まれた様な痛みが突き抜ける。

瞬く間に全身の制御が効かなくなり、視点はブラックアウト。

この、症状は――ダウンロードの暴走?

 

「小栗、くん?」

 

今までダウンロードしていなかったコアが、強制的にダウンロードさせてくる。

なんで、これ、ダウンロード、知ってる、させる……。

喉奥から大量の虫が出入りするような不快感が迸る。

 

『小栗さん? どうしました?』

「あ、ああ、アアアアぁぁぁ、ああぁぁあ――――」

 

潤の意思を無視して、ヒュペリオンは潤にダウンロード強制し続け、機体は勝手に空を滑り――。

素人もここまで酷くないと言わんばかりの軌道を描いて、墜落した。


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