安価の結果elonaで地雷を書くという話になったので、容赦なく地雷要素を詰め込んだ。

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安価で募集したらelona書けという話になったので、息抜きに地雷っぽい話を。


ノースティリスは本日も地獄です

 既に周りは赤い血でべっとりとした酷い惨状になっている。それもそうだ。こうやって庭に住みついたモンスターを駆除するのが仕事だからだ。最初はかなり抵抗のあったこの光景だが、今ではかなり慣れたものだ。ただしロミアス、貴様だけは絶対に許さない。

 

 周りを見て確認できるモンスターは二体。子犬の洞窟で見た事のあるコボルドと、そして旅をしていればよく見かけるチンピラだ。このチンピラまでモンスター扱いされているのはなんだか少々可哀想だが、この世界は本当に頭がおかしい。もはや殺す事に抵抗はない。せめて次に這いあがった時は今までの所業は深く反省して欲しい。まあ、種族・チンピラという時点でこの生物に同情の余地も改心の余地も存在しないのだが。

 

 ともあれ、

 

「コボルドの方をよろしく」

 

「任せて!」

 

 ”ペットの少女”がアーティファクトである★落椿を片手に意気揚揚と返事する。既に少女の体はミンチになった敵による返り血で真っ赤に染まっている。あとで水でも投げつける事でそれは解決するとして、凶悪な武器を片手に、彼女はコボルドの首を一撃で落としに向かう。自分もチンピラを一撃で仕留める為に手に握った武器を振りかぶる。即ち、

 

 ダイヤ製のパンティ。

 

 もちろん女性もの。

 

 これは履くものではなく、

 

 頭にかぶるものでもなく、

 

 相手の顔面へシュートする。

 

 ぺちっ、と音を鳴らしてパンティはチンピラの顔面に張り付き、そしてチンピラの動きが停止する。そして次の瞬間、

 

「ウォォォォァァァァァァァァァァァァァアアア―――!!」

 

 チンピラが発狂しだし、そして爆発してミンチになった。何時の間にか手の中に戻ってきたパンティを強く握りしめ、コボルドの方へと視線を向ける。まだ終わってないのであればそっちを手伝おうと思ったが、その心配は必要なかった。低確率発動のはずの首落としを発動させたペットの少女は一撃でコボルドの首を落とした。

 

 そして案の定、死んだコボルドは殺された瞬間になってミンチになり、肉を落としていった。これで庭の掃除という仕事は終了した。コボルドの肉―――死体が運よく残ったので、それを拾い上げ生のまま食べ、丁度空いてきた腹の足しにする。もう少し肉が残ってくれれば戦闘で肉が手に入るので食料を買い込まないで済むのだが……まあ、欲を言ってもしょうがない。コボルドの肉を食べ終わったら体を振り、引っ付いた肉片やらを落とす。返り血はそのうち雨でも降って洗い流してくれるはず。

 

 パンティをポケットの中へと押し込むと、返り血で真っ赤に染まったペットの少女、イレーナが褒めて褒めてと言わんばかりにやってくる。血だらけの包丁を手に近づいてくる姿を見て、空を仰ぐ。

 

 ―――あぁ、ノースティリスは今日も地獄です。

 

 

                           ◆

 

 

 この大陸をノースティリスという。端的にいってこの世界は頭がおかしい。

 

 まず人を殺しても大丈夫。モンスターが出現する。井戸水を飲むとたまにエイリアンに寄生される。神様が存在する。ゲロを吐きすぎると死ぬ。なんというかこれマジなんだ、と言わんばかりに頭のおかしさが天元突破している世界だ。しかも死んでも一定時間経過すれば這い上がって蘇る事が出来るという時点で更に頭がおかしい。

 

 俺はこの世界を知っている。

 

 ノースティリス。ネフィア。―――elona。フリーゲームというカテゴリーに分類される自由度の高いゲームだ。かなり有名なので遊んだことのあるプレイヤーはかなり多いはずで、そして俺もそのプレイヤーの一人だった……とはいえ、そこまでハードなプレイヤーじゃない。ちょこちょこチートを使ったりして適度に遊ぶ、そんな感じだった。

 

 ある日突然船の上にいた事を自覚し、何故か洞窟で目覚め、ロミアス等のキーキャラクターを見かけたり。知識としてはここがノースティリスだという事は理解できたが、実際ここまで順応するまではかなり時間がかかった。elonaの定番と言えば開幕でロミアスとラーネイレを殺す事だ。何せこの二人はかなり優秀な装備を持っている。だからロミアスに酒を投げつけ、酔ったロミアスをラーネイレにけしかけさせてロミアスを殺すのは良くある手段だ。

 

 最初はゲーム感覚でそれをやって、激しく後悔した。

 

 このゲームは死生観がかなり緩い。街の人も、キーキャラクターも基本的に殺しても数時間後には蘇る。いわゆる”這い上がる”事ができるのだ。だがこの世界、死亡する時は体がミンチになるのだ。ゲーム感覚でほんの数秒前までロミアスを殺す気満々だった自分を殴りたくなった。ロミアスが酔った勢いでラーネイレを襲ったのまでは良かった。だがカウンターを食らってミンチになったロミアスの姿はリアルすぎた。

 

 目の前で人間がミンチにされる光景なんて一般人からすれば見た事はないし、トラウマ確定のものだ。体に降りかかる血と贓物を肌で感じてしまえばゲームだったという事を忘れてしまう。

 

 そこから洞窟に引きこもる事一ヶ月。

 

 洞窟から一番近い街へと行くのに数日。

 

 この世界に自分の価値観が追いつくまで、合計でかかった時間は半年以上もした。

 

 半年、たったの半年だ。

 

 十八年間築き上げた価値観は半年で塗り替えられた。

 

 今となってはカルマを変動させない程度であれば村人を殺す事に躊躇はしない。人肉を食べる事に迷いはない。スリはバレなきゃいいと思っているし、自分がペットとして少女を所持している事に違和感もない。少女をそのままにしていれば勝手に敵を皆殺しにする為に離れて行ってしまうためにロープで体を縛って、離れられないようにするときに出す軽い喘ぎ声にも慣れた。

 

 人間、環境に適応するのはかなり早いというものだ。

 

 ポートカプールへと戻ってくると雑貨屋の店主の肩を叩き、此方に視線を向けさせる。

 

「ん? お、アンタか。どうやら掃除が終わったようだな。これが報酬だ。また頼んだぜ」

 

 そう言って店主は此方の布袋を渡してくる。その中身は金貨とプラチナ硬貨、あとは装備だった。鑑定のスキルを習得していないのでこのまま自分が持ち歩いてもなんなのかは判断できない。早めに鑑定士の所へと持って言って見聞してもらおうとは思うが……どうせレアなアイテムは入ってないだろう。せめて神への貢ぎものぐらいにはなればいいか、と思う。

 

 手に入れたものを他の道具と一緒に、何でもアイテムが入る四次元バッグの中に放り入れ、今持っている金貨を確認する。それなりに集まってきた。今の所装備はまあ、いいものだと思っている。井戸がぶ飲みで一回エイリアンに寄生されたが、そのおかげでオーロラリング、幸せのベッド、そしてセブンリーグブーツと冒険には必須の装備を整える事が出来たし、武器はパンティとグレネードがある。発狂が通じない相手には投げつけて爆風で殺せばいい。だが問題は少女の方だ、落椿という殺傷力が凄まじく高い武器を装備させているが、少しずつ身体能力が武器に追いついて来なくなっている。

 

 食事に気を使って潜在能力を調整している此方とは違うという点が痛い。パートナーであり、ペットでもあるこの少女の強化は生存するためには必須なのだ。じゃりじゃりと金貨で軽く遊び、結審する。

 

「うん? どうしたの?」

 

「いや、そろそろお前も強化するべきだな」

 

「うん?」

 

 無垢な表情を向けてくる少女を改造する計画を思いつく。とりあえず支配者の杖を用意するのは現状願い以外では難しい。遺伝子複合機は既に用意してある。ともなれば、あとは材料の方だ。これはやはり―――ダルフィか。

 

 掲示板の方へと移動し、その内容をチェックする。ポートカプールはノースティリスの最西端だ。ここからダルフィへの距離はそう遠くないが、数日は必要だ―――セブンリーグブーツがなければ。本来数日が必要な所、セブンリーグブーツには移動を早くする魔術が込められている。これを使って依頼人と移動すれば一日で到着できる為、街へ移動するついでに護衛か輸送の依頼があれば楽なのだが―――あった。

 

 さっそく依頼遂行の為に依頼人へのコンタクトを取る事にする。

 

 

                           ◆

 

 

「そいつを置いて―――グワァァ―――!?」

 

 問答無用で顔面にパンティを叩きつける。ダルフィへの移動の途中で護衛を狙った暗殺者が襲ってくる。

 

「た、助けて―――!」

 

 とか言いつつも、護衛対象は武器を取り出してそれで暗殺者に襲い掛かっている。非常にアレな光景だが、これもノースティリスでは普通にある光景なのでノースティリスマジ魔境という事で納得できる。

 

「イレーナ、皆殺しだ!」

 

「はい!」

 

 笑みを浮かべて了承したペットの少女は包丁を片手に握り、それを一番近くにいた暗殺者の首に突き刺し、その首を落とす。どこからどう見ても放送禁止レベルの映像だが、やはり死体はミンチとなった。何時みても不思議な光景なので、手に握ったパンティを暗殺者の顔面に叩きつけて発狂死させる。……昔は間違えて護衛対象に投げつけて発狂死させたこともあったが、あの頃と比べてだいぶコントロールが良くなったものだなぁ、と思う。

 

「えい!」

 

 可愛らしい声を出しながら少女がまた一人ミンチにする。酷くグロテスクな光景が繰り広げられているが、それでも暗殺者たちは逃げる様子を見せない。それを一掃するためにも武器をパンティから手榴弾へと持ち替える。

 

「下がってください!」

 

「助けて―――!!」

 

 完全にバーサークが入って暗殺者を一人殺した護衛対象の事は無視し、少女を下がらせる。そしてその隙に手榴弾を投げ込む。

 

 見事的に当たった手榴弾は爆発し、周囲の暗殺者やらモンスターを巻き込みながらミンチにする。爆発を耐えきった暗殺者が一人もいない事を確認し、満足気に頷く。皆殺し完了。

 

「た、助かったぁ……」

 

「褒めて褒めてー!」

 

 この世界はやっぱり頭がおかしいなあ、と真っ赤に染まった少女と、そして肉片を微妙に被っている護衛対象を見ながら思う。

 

 

                           ◆

 

 

「ありがとうございました! ここで恋人が待っているんですよ! あぁ、早く逢いたいなあ……」

 

 そう言って護衛対象は報酬を渡し、頭を下げながらダルフィの街の中へと消えようとして―――近くにいた娼婦に掴まり、*ヤーン*な事をし始める。貴様今さっき恋人がいるとか言わなかったっけ。しばらくその光景を眺めていると別の娼婦に掴まった。あぁ、うん。ノースティリスは本日も平和です。

 

「うぉぉ―――! どっかの馬鹿が本の解読に失敗したぞ―――!」

 

「ファイアドレイクだぁ―――!!」

 

 激しくいつも通りの光景である。そういえばパルミアの王宮で手が滑って終焉を発動させてしまったが、もうパルミアは再生したのだろうか? 呪われた酒を投げつけてラグナロクを回収するまでは良かったが、遊び心で使った結果5回も死ぬ結果になるとは思わなかった。

 

 ともあれ、用事はそれではない。街中で発生したモンスターの対処は住民がやってくれる事を期待しつつ。街の北東、ブラックマーケットの横でひっそりとやっている店へとやってくる。店は露店風で、非常に普通の店に見えるが、その中身は違う。近づけば濁った色の瞳を持つ女店主が此方へと視線を向けてくる。

 

「誰が欲しい? それとも……」

 

 何、ではなく”誰”なのだ。

 

 ここは普通の店ではなく、奴隷商人の店だ。金額次第で客の要望に応え、奴隷を用意してくれる。安くて金貨1000か2000、高くて金貨6000程度。それがゲーム内での限界だった。だがここはゲームではなく、みみっちぃルールに縛られたりはしない。金さえあれば際限なく消費できるのだ。店主は隣の少女を見る。

 

「買取かい? その子なら5000までなら出せるよ」

 

 我がペットの意外な評価に驚き。だが目的はそっちではなく、

 

「レベルが高くスキルを多く取得している戦士、魔術師、盗賊を用意してないか? あと阿修羅が欲しい。爆弾岩の在庫があればあるだけ譲ってくれ」

 

 こっちの要求に店主は顔を歪めるが、此方は金貨の袋を取りだしてそれを足元へと投げる。店主がそれを開けて確認する中身にはこの半年で稼いだ金貨、5万ほどあるはずだ。その値段を見て、店主は目を見開く。

 

「戦争でもする気?」

 

「見てれば解る」

 

 店主が怪訝な表情を浮かべ、奴隷を連れ出しにその場から去る。その間にバッグの中から遺伝子複合機を取り出し、それを地面に置く。偶然拾った羽の巻物のおかげで軽くなったが、それでも十分にこれは重い―――職業が演奏家で良かった。

 

 ともあれ、遺伝子複合機を設置し、少女をロープから解放する。

 

「んっ、はぁ、はぁ……何をするの?」

 

 その最初の声は何だったのだと一瞬問い詰めたくなるが、鋼の理性を持ってそれを抑え込み、遺伝子複合機の素体サイドの部分に入る様に命令する。その指示を疑うことなく少女は従い、複合機の中に入る。そこで奴隷商が戻ってくる。

 

「なにそれ」

 

「遺伝子複合機」

 

「ふーん」

 

 興味なさげに応えた奴隷商は此方にだいぶ軽くなった金貨入れを投げてくる。それをしまうと、奴隷商の背後に続いてくる奴隷の列を見る。軽く目利きをするが―――悪くない。レベルもそこそこ高く、そして要望通りの奴隷たちだ。ぼったくってはないようだ。……まあ、信用がなくなったらどうにもならない商売だ。そこらへんはしっかりしているかもしれない。

 

 ともあれ、まずはエレアの戦士を捕まえ、

 

「お前はここに入れ」

 

 エレアは黙って従う。まあ、内心殺したいと思っているのだろう。が、奴隷契約で逆らう事も暴れる事も出来ない。

 

「……」

 

 遺伝子複合機の材料サイドに入れる。他の奴隷や奴隷商が見ているのを気にせずに、遺伝子複合機に近づき、そして確認する。

 

「ご主人様?」

 

 少女が此方を心配そうに見るが、心配する必要はないと伝える。

 

「お前を強くするだけから」

 

 遺伝子学などこの世界、elonaでは最も基本的な行動だ。ペットにしかできないのが残念な所だが、これを使ってペットを一気に強化できるのはいい。少女の頭を軽く撫でてから遺伝子複合機の扉を二つ共閉め、そしてスイッチをオンにする。

 

 一瞬のスパーク。

 

 次の瞬間にはエレアの戦士は消え去り、遺伝子情報だけが少女に刻まれ、少女が強化された。

 

 その光景をなんだかと理解していない奴隷たちが、その瞬間彼らは自分たちが消える事に気づいただろう。後ろから恐怖に引きつった声が聞こえる。―――勿論遺伝子複合機で消えた存在は戻ってこない、完全な消滅を迎えるのだ。死よりも絶対の終わりなのだ、これは。

 

「どうだ、強くなったか?」

 

 スキルを確認する分には増えているのが解るが、当の本人は首をかしげ、

 

「たぶん?」

 

「じゃあじゃんじゃん行こうか」

 

 ―――奴隷たちを全て材料に、唯一信頼できるペットを育成する。

 

 あぁ、今日もノースティリスは地獄だ。




 そのうちこの少女はヤンデレ化するんじゃないかなぁ。たぶんバリアントはelona+かな?

 続かない。


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