「シャボンディペナント、シャボンディ饅頭に、シャボンディアイス?どれもこれも限定商品ってか!!こいつぁ、人を馬鹿にしてやがるぜ!!というわけでオッチャン、シャボンディ饅頭とシャボンディアイスをおくれ」
「…はいよ」
訝しげな顔をされたけど、しょうがない気になるんだから。ただのクラーマーかと思ったか?全く失礼な話だ。
別にお土産にする人もいないので、その場でシャボンディアイスを口に入れてみた。
「うまっ」
何これ何これ!!この、何ともいえないモチモチ感、そして、口に広がる何ともいえない甘さ。でも、スタンダードな餡子みたいな甘さではない。なんつーの、新感覚。
「これ、俺好きかもしれない」
店先のベンチに座りながらアイスを食べつつ、シャボンディ諸島の街並みを眺める。ここら辺りは、比較的治安がいい地域なので、刀を抜く必要もないので背中に背負っている。
こんなにゆったりした気分になったのは、久しぶりかもしれない。前の世界では根暗だったこともあり、こんな賑やかな街でハイカラするのも初めてか…。
「新世界ねぇ…」
ぶっちゃけ、俺はONE PIECEの記憶は頂上決戦までしか知らない。それ以降、ルフィ達麦わらの一味がどうなったのかは知らない。
二年後、彼等は無事に成長できたのだろうか。
「ま、50年過去のこの世界にいる俺がグチグチいってもどうしようもないか」
でもでも、やっぱり気になるよね!!楽しみだぜ、魚人島!!ビバ、ビューティフルマーメイズ!!
悪いね、麦わらクン、そしてオカマになっているであろうサンジクン!!お先に楽園を堪能させてもらうぜぇ!!
「けど、深海にあるんだよね魚人島…」
俺は船を持っていないので、今、船着き場の近くである程度丈夫そうな船を見繕ってもらい、それをコーティング職人に頼んでコーティングしてもらっている。
大型のガレオン船ならともかく、荷物を積めば人が2、3人しか乗れないような小さい船だから、1日、2日たたずに完成すると言われた。
同時に呆れたような目で見られたけど。曰く、こんな船で新世界に突入しようとするなんて頭のおかしい奴のすることだという。
とりあえずそんなことお前には関係ねぇだろ、と文句を言ってベリー札を叩きつけてきた。
例え小舟だとしても、こちらには
「兄さん兄さん」
「は?」
誰じゃお前は、俺には兄弟も姉妹も
「あ…ども」
アイスにお茶…うん、まぁあまりいい組み合わせとは言えないけど、ご好意に甘えさせていただこう。
ズズズ…と、お茶をすすると、緑茶とはまた違った苦みが校内を満たす。
「ほゥ…」
「兄さん見ない顔だねぇ、観光の人かい?」
「あ、観光?いやいや、魚人島に行きたくてね」
「魚人島?はー、こりゃまた大変な場所に行くのねェ。あんな場所に行くのは、余程の物好きか、海賊みたいな悪党しか行かないわよォ?」
「俺、その物好き」
「ハハハ、冗談はよしとくれよ!!」
「いや、冗談かどうかは、そっちの受け取り次第だよ…おっと」
すると、通りの向こうから銃を持った制服を着た海兵がやって来た。
コートを目深に被り、顔を下に落して食事に集中していると、海兵は店先にいる俺を無視して右から左へと通っていった。
「ふィー、危なかった」
「…もしかしてお兄さん、賞金首が何かなのかい?」
おばちゃんが怪しい者を見るような目でこちらを見てくる。
俺はムズ痒いような感覚に襲われた身体をはたきつつ弁明した。
「え、それって俺が危険人物に見えちゃったりとか?ヤダナァ、よしてくれよ、こんな人畜無害そうな奴が悪いことなんかできるわけないじゃないの!!」
「ハハハ、自分で言ってちゃ意味ないさね!!…でも、お兄さんがいい人でも悪い人でも気を付けた方がいいわよォ?この島には、危ない場所がいくつもあるから、奴隷の取引、何て物騒な事をしている連中もいるくらいだし」
「へェ、その話、少し聞きたいね?」
やっぱり、餅は餅屋だね。
滞在期間は少ないとはいえ、情報はやっぱり欲しいね。
「兄さんやっぱり物好きな人だねェ…。いいかい?この島には未だに、奴隷文化が根付いてんのサ。まァ、確かにこの島は新世界に繋がる唯一の玄関口とも言っていいさね。人が来るし休憩施設とか、需要があるのは当り前さ。…問題はそこに違法な物品もまざって取引されてることなのヨ。魚人島が近くにある事だし、それも理由にあるのかしらねェ。ほら、若い人魚の娘って、美人が多いじゃない?」
「あ、それ言えてるかもしれない」
「それに、この島には天竜人の奴r、いや方々が…」
天竜人?…ああ、あの、だえー集団か。今まで忘れていたな。
たぶん、ONE PIECE読者は総じてあいつらの事が嫌いだと思う。俺もそうだったし。あいつらの初登場シーンを見て気分がムカムカしたことも思い出した。
「天竜人って、あの世界政府を作ったっていう?」
「そうそう、まァ、王族か何かは知らないけども、この島には頻繁にやってきてやり放題やっているわけなのよ」
「やり放題って、そんな海軍とか政府が黙ってないでしょ?」
「その海軍と政府がバックについているから、奴等の権力を笠にして好き放題やってるのよ…。全く、何もしないで手を咥えてみてれば、悪行三昧だし、手を出したら出したで大将が飛んでくるか、インペルダウンにブチこまれちまうし、やってられないよ…」
へえ、やっぱりこの時から好き放題やってるんだ。本当に救いようがないなあいつら。
海軍も正義をうたっといて、権力にはペコペコかいな。
ハッ、片腹痛いわ。
「おーい、いつまで表に出てるんだ、はやく接客せいよ!!」
「あ、御免よお父ちゃん!!…ハハハ少し長話になっちまったねェ」
「いや、大丈夫。こっちも中々楽しかったし。それじゃ、お茶はここに置いとくよ。ありがとうね」
「はいよ、また来てね!!」
アイスのコーンを口の中に放り込み、咀嚼して飲み込む。
団子は、まァいつか食べるか。
さて、俺はゆっくりと歩き出す。
やる事も済ませたし、もうここら辺の観光は結構。
シャボンディパーク…もいいや。大の大人が一人で行く場所ではないからな。
今からは、この島の影の部分に足を踏み入れさせてもらおう。
無法地帯?
大いに結構
「闇側の人間は自然にそう言う場所に集まる習性でも持っているのかねェ?」
時間はある。
焦らずいこう。
「お、おおおォおぅ?」
…というか、何かまだムズムズするような気がする。気のせいですかね?