「・・・・」
俺は思わず目の前の光景に言葉を失っていた。
これは何だ?
目の前には津波に飲み込まれて今まさに海底に沈んでいく船。
一刀両断されてすでに航海できる状態ではない船。
何より信じられないのは
「早くも八対三になったねー。」
「今の船には強い奴ぁいなかったのか?ったく、つまんねえな。」
これをやったのは、たった2人の男たちということだ。
こんなことを一瞬でできてしまう目の前の男たちは人間なのか?
元々、レイリーさんから、エドワード・ニューゲートと“辻斬り”の話を聞いたことはあった。
“嵐”と“地震”が激突した、とか何とか訳が分からない話だったから適当に聞き流してたのだが・・・。
うちの船長と副船長も化け物じみた強さだし、何度かやりあった金獅子も同じくらい強い。
だが、俺はそんな猛者がこの海にゴロゴロいるわけがない、そう思っていた。
そうだとすると、こいつらは何なんだ?
1人は悪魔の実の能力者で間違いないだろう。
だがもう1人は何なんだ?
ただ空を斬っただけで、直線状にあった船をブッタ斬っちまった。
「スパロー君。」
「!?ハ、ハイ!!」
唐突に呼ばれた俺は飛んでいた意識を戻し、自分を呼んだ男を見る。
自分と同じ普通の人間のはずなのに、その実力は天と地ほどもある。
「全速前進する。他の呆けてる皆さんを覚醒させて。あと、大砲が来ようが何が起ころうがたたっ斬るから心配すんなって言っといて。」
「ハイ!!」
俺も鍛えればこの男のように強くなれるのだろうか。
「シキの親分!!」
「ああ、わかっとる。」
手下たちは目の前の光景に息をのんで操作を忘れている。
一番槍をとられたのは気に食わねえが、一度あいつらの実力を見たかったから丁度良かったのかもな。
しかし、海軍将校が乗船していなかったとはいえ、あいつらたった一回の攻撃で海に沈め、一刀両断するとは。
一応あいつらの実力は予想していたつもりだが、それを良い意味で裏切ってくれるとは・・・。
「中々おもしれえじゃねえか。」
あいつらに目をつけたのはどうやら間違いじゃなさそうだな。
是が非でも傘下に収めたいところだ。
「親分」
「おう。」
指示を出し船を前に進める。
とりあえず今は協定通り、目の前の敵を倒すことにするか。
「ほぅ…」
「ガッハッハ!!あいつらやるじゃねえか!!」
レイリーは何故か黙っているが、俺はおもしろくって仕方がねえ!!
初めて会った時はよく分からない奴だと思っていたが、あいつら結構強えじゃねえか!!
シキの奴はムカツクからブッ倒したくなるが、あいつは純粋に1対1で戦ってみてえな。
それに、あいつはまだまだ強くなる!!
俺のカンは当たるんだ!!
というか、何で斬撃があんなに威力が出るんだ!?後で聞いてみっか!!
「ロジャー。ご機嫌なところすまないんだが、そろそろ俺たちも戦闘に参加しないか?」
「おお、そうだな!!全速前進!!海軍をつぶすぞ!!」
あいつとは良い仲になれそうだ!!
「さてと。」
とりあえず、相手の頭数は減らしたから後は順次潰していくだけだろう。
他の海賊団はそれぞれ別の船に衝突し、それぞれ戦闘がはじまっている。
いきなり、大規模破壊技使っちゃった俺としては少し後悔している。
いや、いきなり全滅じゃつまんないじゃん。
手ごたえのない相手と戦って勝つのも一方的なので少し相手を選びたいと思います。
「というわけでエドワード、どこかに強そうな奴はいない?」
「そうだな。」
白ひげの鋭い視線が鋭くなり、それが艦隊の一番奥のほうに鎮座する2隻の軍艦に向く。
「あの2隻の軍艦・・・、あそこに強え奴がいる、ような気がするな。」
「なるほどね。」
確かに、その軍艦を囲むように他の軍艦が守っているように見える。なるほどあそこに、ボスがいるって考えていいわけね。
「お二方!?敵艦が接近してきてるんですけどー!?ついでに大砲つきー!!」
気づいた時には他の軍艦がこちらに接近してバカスカ大砲をうってきているところだった。
「あー、とりあえず斬るか。みんな大砲の弾はまかせた。」
本当はすぐにでもボスクラスと戦いたかったが、贅沢は言ってられん。
甲板で軽く助走をつけると、思い切ってジャンプ。
「さあて、誰がいるかなー?」
いきなり飛び移ってきた俺に一瞬驚いた海兵の皆さんだったが、俺を取り囲んで一斉に銃を構えてくる。
「貴様“辻斬り”だな!?」
「いかにもたこにも。」
「問答無用だ、うて!!」
掛け声とともに弾丸が大量に発射される。
ま、俺には意味ないんだけどね。
「ホイッ!!」
ヒュッ
虎丸を一振りして、自分に向かってくる弾丸をすべて斬り伏せる。
「球をすべて斬っちまった!?」
「構わない打ち続けろ!!」
「させると思う?」
海兵たちに高速で接近した俺は一撃で全員を沈黙させた。対して俺はあまり疲れていない。だって、傷一つないんだもん。
「ふう、案外弱かったな。」
「おりゃああああああ!!」
「うおおおおお!?」
つい今まで俺がボーッとしていた場所に、金棒が撃ち込まれた。
「あぶね!!何すんだお前!!」
「それはこちらのセリフだ!!よくも部下達をぉぉぉぉぉぉぉ!!」
そいつは、俺に斬られて気を失っている海兵を見て号泣している。
何なのコイツ?
「う〜ん、何かモブキャラっぽいけど、どうでもいいや。あんた強そうだし付き合ってやるよ。」
「調子に乗るな!!この海軍准将ワッペン!!海賊などに負けはしない!!」
あらま、今のガープとゼンゴクと同じ地位の人か。じゃあ、少し本気を出していいよね?
「覚悟!!」
「“旋風スクランブル”!!」
「!?おぼぼぼぼぼぼぼぼb」
“旋風スクランブル”に巻き込まれたワッペンとやらはそのまま船のヘリに激突し、そのまま海に落ちて行った。どうやら、同じ准将といっても、その強さはピンキリらしい。
「まあ、別の強いやつを探すか。」
早くも蹴りがついてしまった自分の戦場をさっさと去ろうとしたその時、
「待て」
後ろから声が掛けられた。
振り返ると、そこには、髪を全体的に伸ばした貞○みたいなやつがいた。いや、貞子はゴーグルはつけないか。というか、身体が常にフラフラと動いていて、なんかイラッとくる。
しかし、よく見ると、腰にそりが激しい日本刀をつけている。こいつ剣士か。
「へえ、いつからそこにいたんだ?ぜ~んぜんわからなかったぜ」
「…私はずっとここにいた。“辻斬り”グンジョーと見た。」
「そういうお前は?」
「私は“柳木”のマツ。海軍本部少将だ。」
「…いいねえ。」
少将クラスか。初めて少将とは戦うな。しかし、中々おもしろそうじゃないの。
「・・・いざ、勝負だ。」
「望むところ!!」
お互い剣を構え一気に走りだした!!