大海賊時代に降臨する拳王 我が名はラオウ!!   作:無機名

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ああ、一日書けませんでした申し訳ない。orz

さて、ここにバトルジャンキーが二人居ます。起きることと言ったら……。


第9話

・稽古 の巻

 

 

「昨日、親を超えるって言ってたけどよ……。なら、どうすればゴール・D・ロジャーを超えたことになると思う?」

「答えを持たん。俺は拳法家として死合うに足る相手を求めるのみ。」

 

 翌日、誰よりも早く起床し鍛錬を開始したラオウを見つけたエースは、バツの悪そうな顔をしながら聞く。

 しかし、ラオウは無関心とばかりに手近な3メートルほどある岩に人差し指を立て、爆発的な気を一瞬で叩きこみ粉砕する。

 粉々にされた岩の欠片を拾い、握力で握りつぶすと『ふむ』と頷き回復に満足した表情を浮かべる。そしてその顔をしかめてエースに顔を向け言う。

 

「……うぬがここに来た理由。そんな話をしに来たのか?」

「あー、そうだった……。」

 

 いつの間にか目的を忘れ、まるで外れた話題をしていることを思い出し。エースは苦笑いを浮かべる。

 

「仲間を殺したティーチを隊長として追ってる。それで、ヤツがあんたのところに来たりしてないか。と思って……。」

「ない。」

 

 末弟ケンシロウ程ではないが、基本的にラオウもまたコミュニケーションを取るのは積極的でない。大抵が要点だけで済ます。関心がなければなおさらだった。

 ――尤も、興味・関心がある場合、自然現象すら真っ青なことになる……例えるならば大津波と言ったところだろうか。

 

「やっぱそっか、付き合いの長い俺らでも判らなかったティーチを見抜いたあんたに接触するんじゃないかと思ったんだ。」

「……下衆は潰すだけだ。」

 

 あまりに簡潔でわかりやすい返答にエースは肩を竦めて「もっともで……。」と言い荷物を置いてある洞穴に向かう。

 

 

「奴が……なぁ……。」

 

 ラオウの後方から聞こえてきたのは深刻な表情を浮かべた"赤髪のシャンクス"の声だった。

 先程から気配を絶ってエースには気付かれないでいた。ラオウは気づいていたが、害意は無さそうなので放って置いていた。

 シャンクスの苦い表情もほんの少しで、ラオウが破壊した岩をしげしげと眺めると。

 

「それにしてもすごいなぁ。まさか覇気を叩きこむだけで岩を粉々にしちまうとは……これが北斗神拳?本調子ならもっとすごいのか?」

 

 そう言いながら真剣ではなく、ついさっき作ったような、木を削った匂いが残る木剣を実に楽しそうな表情をしながら弄ぶ。

 ラオウは『覇気』という言葉が気になったが、流派の誤差のようなものだろうと納得し、挑発に乗る。――曲がりなりにも【四皇】稽古台にこれ以上は望めない相手なのだから。

 

「――ふん、隻腕で真剣を持たん男を制すくらい造作も無いわ。」

「これは病み上がりのリハビリに対するハンディのつもりなんだがなぁ―――ッ!」

 

 言うやいなや、拳と木剣が激突する。シャンクスが剣に込めた覇気、ラオウの闘気のぶつかりで普通ならばありえない轟音が鳴る。

 

(ホントに重い覇気を叩きこんで来やがる……真剣で同じ事やっても切れそうもないな。)

(まさか剣に"気"を纏わすとは……しかも、一点鐘を弾くほどとは。)

 

 双方に驚きが走る。

 木剣とは言え、その気になればそれで斬鉄をしかねないシャンクスの剣だ。その拳の硬さはおそらくは鋼鉄よりも遙かに固いだろう。その覇気と練度に驚く。

 ラオウの驚きはシャンクスの倍はあった。そもそも北斗神拳は己の拳と体に気を纏わすが、武器に纏わすことはない。そして【北斗一点鐘】:打点から"気"で体を伝い点穴を穿つ技を使ったが、シャンクスが木剣に纏わせた"気"で弾かれてしまったのだから。

 ――それも一瞬。すぐさま互いに次の行動に移る。

 

 無手の者が武器を持つものに対するセオリー、『距離を詰める』とばかりにラオウは高速で前進する。

 しかし、その眼前に飛ぶ斬撃が迫る。

 

「ぬえぇい、剛掌波!!」

 

 掛け声と腕の一振りでラオウのいる範囲の斬撃はかき消される。

 そして覇気の弾丸がシャンクス目掛け飛ぶ。

 

(うわ……バケモノかよ。能力者でもないのに、覇気と体術だけで斬撃をかき消すなよ!覇気をそのまま塊で飛ばすってアリかよ!?)

 

 闘気弾をかわしつつ、そんなことを考えたシャンクスは構えを変える。

 仮に真剣であってもこの相手を斬殺するのは―――致命傷を与えることさえ、その覇気の使い方と海軍の[鉄塊]のような体術による防御力の高さで難しいだろう。出来ても削っていく様な戦い方にしかならないとシャンクスは悟った。

 最強の攻撃力を有す"悪魔の実"の能力と、強力な覇気を持つ白ひげならばなんとかなるかもしれない。だがシャンクス自身には無理だ。

 ましてや今は木剣。かと言って今更『真剣を使います』……これはシャンクスのプライドに懸けて言えない。

 

 ―――ならば、海賊としての戦い方で制す。

 

 ラオウは攻めあぐねていた。最初のぶつかり合いの時に、この男も白ひげと同じように剛を持って敵を倒す戦い方だと思った。ならば簡単だ。さらなる剛拳を持って討ち倒せばいい。

 

 だが、戦い方が二合目からガラリと変わった。当たりそうで当たらない、動きを封じる様な牽制の斬撃。ラオウが間合いを詰めるといなす。躱す。

 かと思えば、突然急所を狙うような攻撃で防御を取らせ、その間に有利な位置に移動する。そんな掴みどころのない戦い方に変わった。

 

 いわゆる、難剣[なんけん]である。

 

 長年に渡る……今では語りぐさの【鷹の目】と【赤髪】の決闘。

 これが何故、決着が付かなかったか。理由はここにあった。【世界一の剣豪】と呼ばれる【鷹の目】、その膨大な基礎はシャンクスを上回っていた。数戦もすればその基礎の応用で対応が出来るはずだった。

 だが、シャンクスには伝説の海賊団の見習いとして戦ってきた過去・経験がある。子供だから大人に庇われたところもあったが、それでも少年の彼よりも遙かに大きく、力が強く、技を持つ相手といくらでも戦った。戦わざる得なかった。むしろ格上としか戦ってこなかった。

 

 普段の稽古相手でさえ、遥か彼方の腕前を持つ、海賊王の右腕【冥王】シルバーズ・レイリーだ。

 

 その環境の中で身についたのは、基本に忠実な、素直な剣風ではなく。変則的な攻めや技、意表をつく変幻自在な技を出して制す―――難剣。

 

 だからこそ、基礎では勝る【鷹の目】に対応と対策を練られても、それを覆す手段を用いる。そんなイタチごっこが長く続くことになった。

 それは片腕を失っても、そのハンデをもってしても【四皇】と呼ばれる実力者までシャンクスを押し上げる要因となった。そうは言っても片腕のみだ。攻撃のバリエーションは減ってしまい。【鷹の目】から飽きられてしまったのも事実である。

 

 尤も、【四皇】と呼ばれるまでになってからは、久しくそんな戦い方をしなければならない相手と戦っていなかった。それをせざる得ないラオウに対して舌を巻いていた。

 ―――だが、後少しだ。木剣ももう持たないが後少し……。

 

 

 ラオウは違和感を覚えていた。

 腕は良い。技のキレもさすがだ。その難剣から攻撃しづらい。しかし、向こうの攻撃がラオウには通じない。こちらを降参させるような攻撃には至らない。木剣なのが最大の要因だ。

 ならばこの稽古は終わりのはずだ。かと言ってラオウからそれを言う気はないし、決定打を躱されて当ててない。何より相手が何か考えている以上、乗らざる得ない。

 

 ふと、ラオウは気付いた。自分はある一点にのみに立たされていると。地面は散々シャンクスが飛ばしてきた斬撃で辺りの土は緩められ、周りの木もシャンクスの飛ばした斬撃による切り傷、ラオウの放った闘気による打撃の跡が残っている。

 ラオウの打撃を外したのは動きまわるシャンクスが躱したからだ。だが、何故シャンクスの飛ばした斬撃は辺りの木にも食い込んでいる?―――これはまさか、罠か!?

 

 その結論にラオウが至ったのとほぼ同時にシャンクスは笑みを浮かべ、仕上げとばかりに一本の木を蹴る―――後は木々がラオウの逃げ道を塞ぎながら、ドミノ倒しで倒れこむばかりだった。

 

・・・・・・

 

「あーあ、まさか躱されちまうとはなぁ。しかも覇気を攻撃・防御だけじゃなく移動にまで使うとは恐れいったよ……はぁ、こっちの負け。」

 

 お手上げ。とばかりに手を上に挙げる。最後の一手を軽功術を使った飛翔で躱したラオウにシャンクスはため息しか出ない。あの不安定になった足場をものともしなかった。木剣も砕けだ。手立てがもう無い―――負けだ。

 

「うぬの武器が真剣ならばもっと早く出来ただろう。俺の負けよ。」

 

 ラオウが今思い出したのはあの暴力のみが正義の世界。そこで海をわたる時に力になってもらうことを約束した海賊の言葉だった。

 

『固体を砕くことはできても、液体は砕けない』

 

 例えば、樽の中に硫酸を入れて相手に投げる。こうすれば、たとえ樽が砕かれても中身が相手に掛かる。―――そういう手には気をつけろ。こう言われたのを思い出していた。

 そしてモノの見事に『海賊の知恵』と呼ぶべき、それと似通った手段に引っかかってしまった。回避出来たのは直前で気付けたからにすぎない。

 

「―――なぁ、ウチに入らねぇ?」

「俺は拳法家だ。興味が無い。」

「そりゃあ残念だ。……リハビリは終わりだろ?適当な島に送るよ。」

「……助かる。」

 

 二人の戦いで起きた騒音を聞きつけ、遠くから見守るしか無かった【赤髪海賊団】の面々とエースが来るのを見ながら、二人は呑気なものだった。

 




 はい、シャンクスの剣風をおもいっきり捏造しました。こうでもなければ能力など持ってない少年は絶対に命を落してたと思いますから。ルフィの一件で腕を失ってからは尚更。

 ラオウは鋼鉄を切断する真空斬りが出来る【風のヒューイ】の攻撃を傷一つ負わずに殴り殺してますから……拳王様の防御力はデタラメです。燃えた石炭1,800(訂正:1,000~1,700℃)を握力でクラッシュさせても無傷、火傷すら負わない方ですからね……。でも、なぜか【海のリハク】の建物ごと爆発させるのはものすごいダメージを負ってるのが不思議。

 さておき、無類無敵の拳王様でも上手く動かれると追い込まれてしまう。というのをうまく表現出来たでしょうか?今回のシャンクスの手はラオウの知り合い、赤シャチさんの策を参考にしました。

 まったり頑張ります。

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