【暗殺者】……【拳神】……。なんかいい案ありますでしょうか?
・修行と千客万来 の巻
ロックスターという頭が率いる海賊団をラオウが屈服させて早2週間。……現在、彼は無人の冬島にこもっていた。
「何時まで俺たちは……」
「この俺の体が回復するまでだ」
そう言って約定どおり延命の秘孔を突く。……フリをする。
最初の交易船での邂逅にて、30日経つと死ぬ秘孔を突いたことで『1週間に一度』食料などをラオウに供給させることを彼らに約束させた。真っ先に探させて持ってこさせたのは、ワの国から輸出された『道着』。心身を鍛え直す意味で持ってこさせたものだった。
尤も、約束というのは優しい言葉を用いた話であって、もし来なければロックスターは肉塊と化す。事実上の脅迫であった。
船員の中には『そんなペテン、インチキを信じるか!従えるか!』と言う者達も当然いたが、そいつらにはゆっくりと数分間、肉体に猛烈な痛みを感じさせる秘孔を突いたり。肩や腕、足などの一部の筋肉が爆散する秘孔を用いて、己の肉体が壊れる恐怖、痛みを味あわせ、体験させた。数人がそれによりのた打ち回った後は、船員全員が従う様になった。
こうして一見、恐怖を以って下僕としてこのロックスター海賊団を扱っているが、交わす言葉は少ないが、不思議とそこまで悪い関係でなかった。
一回目に現れた時、『寿命を伸ばす秘孔』と言って突いた秘孔は実のところ『秘孔の効果を解く秘孔』だった。そもそも経絡秘孔は何度も他者に見せるものではない。
それに、あとから聞いた襲撃の理由。
『まともな交渉が出来ないから、一度相手を制圧した後にきちんとした取引を申し込む』という彼らのやり方をラオウは嫌悪していなかった。
同じアウトローとは言え、『暴力こそ正義』として、皆殺しの上で何もかも略奪していた世紀末のモヒカン集団に比べたら、きちんと己の立てた秩序、ルールの中に従い、生きているのだから。
何より、ラオウは状況、境遇、運命に抗おうとする人間を好いている。……むしろ、そうでなければならないとすら思っている一面がある。
船長のロックスターは己の弱さに、力不足に悔しさを覚え泣いていた。
一団の中には『人質として、船長が戻ってくる保証としてここにいる』と言って10名近い者が無人島に残り、ラオウの修行を……ラオウが持つ技術を盗もうと、目をギラつかせながら見ている者がいた。
過去においては『妹を死なせた神に復讐をしたい』と言った者に技を盗むことを許し、そのために付いて来るのを認めたラオウだ。彼らの魂胆は分かっていたが気していなかった。
そんな彼らをラオウが無下に扱うことをしようとなど思わなかった。むしろ歓迎さえしていた。
ラオウの修行は座禅などでの『気』の練り込み。
あるいは『気』を使わず純粋に肉体のみ、特に指を使って木の根もとに穴を掘り、飛び上がって木に一本拳を叩きこむ。不安定な場所に片足のみで数時間立つ。そして型稽古。……などといったごくごく初歩の。傍目から見れば尤も退屈に見えて、最も重要な基礎鍛錬のみであったが、それを見よう見まねで、彼らは彼ら自身の戦いに使う術を模索していた。
そうして、また一週間が過ぎようとしていた頃、客がやってきた。
白ひげ海賊団:二番隊隊長『火拳』ポートガス・D・エースだ。
ロックスター海賊団の面々は、こんなに若くして海賊の中でまさに天上人とも言える者の訪問を受けること、強さと立ち位置に畏敬を覚えずにいられなかった。
そんな者達を尻目にラオウは修行の一環として自身の拳、貫手、蹴り足のみで掘り抜いた今現在仮屋としている洞穴で、挨拶はそこそこに済ませエースにこの訪問を問いただす。
「用向きは何だ?俺は今、修行中だ。」
「……」沈黙するエースにはどうも覇気がなかった。
「再戦を急かすならば、あの強敵[とも]の病も癒えてないだろう。……先の話だ。」
ここでラオウの言う【強敵[とも]】とは……病気持ちで話題がエースではないのだから、その上と言ったら……まさか白ひげ?などと想像をふくらませる後ろに居る者達はヒソヒソと話し合う。
「………」
なんとも意気消沈した。そんな表情を浮かべるエースに、ラオウは背景を無視しつつ待つことにした。
「……………4番隊隊長のサッチが死んだ。」
「ふん」
『顔は知っているが、大した会話はしていない男だ』と、ラオウは興味が無いとばかりに続きを促す。
「…原因が…あんたが『殺しておけ』といったティーチの仕業で、だ」
「そうか」
やはりその反応は実に素っ気無いものである。そもそも『後悔すればいい』と言い切ったのだから。ラオウにとって本当にどうでもいい話だ。
噛み合わせが狂っているというか、歯切れ、進みが悪い会話をしているところで、ラオウは外に気配を感じた。しかも、白ひげに近いかなり強力な闘気を持っていると見込んだ。
「ラオウとか言うヤツはここにいるのか?……?あれ……エースじゃないか。なんでここにいるんだ?」
そこに現れたのは隻腕の剣豪、『四皇』【赤髪のシャンクス】だった。
あれ?
ロックスター達がいつの間にか拳王様の配下のようなものになってる……。本当にただの下僕のつもりだったんだけど……なんという拳王様の不器用なカリスマ。止められない。^^;
拳王軍猛将のバルガとかザク、リセキはラオウのこと本当にしたってたし……。
時間軸は原作ルフィ達がGLに入ろうとしている辺りと見てください。初頭手配書を白ひげに見せていることと、黒ひげがドラムを潰したのを考えると、サッチを殺したのはこのへんでしょうし。
エースがホントに落ち込むとトコトンまでな子になってしまいました。間違ってるかもしれませんが、私はこういうふうに見てます。
一方のラオウは要点はとっとと伝えろ。という性格ですから、内心腹を立てています。