大海賊時代に降臨する拳王 我が名はラオウ!!   作:無機名

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うん、やはりラストまでそんなに時間はかからないかと……。……思う。でも、拳王様を書くの楽しい。終わりたくなくなってきたのも本音です。


第6話

・とある海賊の不幸 の巻

 

 

 その始まりの理由はどうであれ『世界最強』の名を冠する者との死合いは互角と呼べるもので有り、愉しめた。

 ラオウは考える。ならば――

 

(海軍の者と死合うも一興か……あの強敵[とも]と渡り合って来た者達ならば。――あるいは、別の四皇)

 

 元々、ラオウが拳法を学び始めた頃は『弟を守る』『乱れた国の平定』が意志の源であり、強くなることを実感するほど『最強になる』『天下一になる』と代わり、その内に己の力を存分にぶつける事のできる相手・強者を求め、それらを全てまとめたのが覇業という野望だった。

 そのために、意志を曇らす情と愛から目をそらした。

 

 大事を成す中で小さな汚点は有ったが、それでも国の平定を成し遂げ、『道を誤ったときは、己の拳を封じろ』と約束し、その約束を守るために戦った実弟。

 その遺志を継ぎ最強の男と成った弟と――心の何処かで負けることを望んだとは言え、全力を以って戦った。そして敗れ――終わったはずだった。

 

 神の気まぐれか。それとも悪魔の悪戯であろうか?この世界に落ちた。ここは強者にあふれているのだから、シガラミはもう無いのだから、強者らとの死合いを求めずにいられなかった。

 

 しかし、己が頭目としてならばとにかく。誰かの下で海賊をやるなどラオウの性分からありえるはずはなく『拳法家として死合う』目的の中では組織の頭というのは不便だった。

 ひとまずは海軍の強者が集まっているであろう場所にして、世界を束ねる政府、全てが集中しているらしいマリンフォードに向かうことを、それらを見物に行く事を白ひげの船でこの世界を知った時にラオウは決めていた。

 

 白ひげの船で貰った服、着ていた服はあの戦闘の余波でボロボロになっていたので、その中でなんとか原形をとどめていた貰った金と、気絶から覚めた時に周りに転がっていた肉塊の傍らに有った財布を拝借し、町の洋服屋で購入した。

 

 現在のラオウの格好は黒シャツに革ジャン、革製のリストバンド、下はジーンズと頑丈な革靴。そんなラフな格好の上にマントを羽織っている。その格好は末弟が荒野を彷徨いている時のものと似通っていた。やはり血は繋がっていなくとも兄弟である。

 

 

 現在ラオウはレッドライン方向に向かう交易船に乗り込んでいる。身分証明を求められたが、係員の記憶操作を行い事なきを得た。海を行く船の中で、していることは瞑想をしながら、体力の回復を図っていた。

 

(体力はいずれ回復する。だがこの体をどうにかしなければなるまい)

 

 いくら北斗神拳を極め、超人的な体を手に入れても、傷がふさがっただけに等しい状態で『世界最強』と戦ったため、体にガタが来ていることをラオウは理解している。

 

 以前、重症を負った時。隠居した達人を回復の稽古台として戦ったが、こちらでそれに近い者を探すのは困難であり、見つけたとしてもその一期一会を考えるとあまりに勿体無い。

 そこで考えたのは人と会うことのない無人島で修行すること。だが、この船は交易船だ。そんな場所に人を下ろすわけがない。……降りることができても迎えがない。

 悶々と悩んでいると、突然船が何かにぶつかった振動が伝わってきた。

 

 

 なんとなしに甲板に出てみたラオウが見たものは、世紀末のあの世界と似通った光景だった。護衛をしていた番兵は叩きのめされ、船員がビクついている。海賊たちは船員に物資と荷物のもとに案内させようとしていた。

 

(……ふむ。)思いつけば行動は早く、まず手近にいる戦闘員らしきものの体に、即効性かつ強烈に目立つ死に様となる秘孔を打ち込む。

 

「あ、い、う……う、いあ……えあ"っ!!」

その叫び声と共に戦闘員は爆散し、海賊たちはラオウを下手人と、敵と認識して向かってくる。

 

(船を動かすには人を減らせぬ……儘ならぬな)

 血相を浮かべながら向かってくる海賊を見ながら、その制約に思わずため息が漏れていた。

 

 

 

 その海賊団の船長は何が起こったかわからなかった。いきなり部下の一人が奇声を上げた後に、真っ赤な血煙と化したのだ。

 続き、その周りに居た団員が数メートルの宙を舞う、水平に人が殴り飛ばされるなどの暴力の嵐に巻き込まれていた。

 

 襲った交易船にはちょっとした宝と交換で、水・食料をあちらが許す範囲で分けてもらおうと思っていた。だが、海賊である以上、まともな取引は望めない。ならば一度武力で制圧した上で、きちんとこちらの意思を伝え交渉する。それが彼らのスタイルだった。

 経験上、政府公認とは言えども、島と島の交易船ではその防備・兵力はたかが知れている。それを分かっているからこそ今回の襲撃だ。やはり軽いものだと考えていた中、異常な死が、そして暴力が船員を襲ったのだ。驚かずにはいられない。

 

 賞金額は一億にあと一歩と新世界側では低いが、曲がりなりにもこれまでグランドラインを立派に渡ってきたと言う自負がある。その死に様を引き起こしたのは『悪魔の実』であろうと目星をつけ、最近覚え始めた気合を矢に込め、周りにいる仲間に合図し男に一斉発射する。――仮に仲間のは通じなくても、自分のはこの状況を打破出来るはずだ。

 しかし全員、射た矢をそっくりそのまま射った本人の肩や腹に返された。

 

【二指真空把】投擲武器を二本の指で受け止め、それを相手に向かって投げ返す北斗神拳の奥義。

 

 周りの者は痛みに悶えるが、船長の自分までがそうなっては一団が瓦解する。矢が通じなければ剣。と斬りかかる。

 それもあっさりと二本指で止められ、目に止まらない速さで額に指先を当てられる。何も通じない――体が動かない。絶望感だけがその身を包んでいた。悔しさで、無力感で涙が溢れてきていた。

 指を離し、この暴君は静かに、低く、はっきりと聞こえる声で言う。

 

「貴様の命は一ヶ月――30日だ。さっきの者の様に死にたくなければ。俺の命令を聞かねばならん。名を言えぃ」

 

「ロ、ロックスター……」

 

 




 昇天して穏やかに成ったと言っても『別に拳王様は聖人ってわけじゃないよ』と言う回でした。ロックスターのファンの方、いたらごめんなさい。可哀想ですね……。書いててそう思いました。

 今回のラオウの格好はモデルのシュワルツネッガー(ターミネーター)を参考にしました。そういえばラオウvs大将って、モデルで言えばハリウッドスターvs日本の名俳優……。なんという胸熱な話なのでしょうか。

 強さについては1と2の折半で行こうと思います。ご協力、ありがとうございました。
 一人ひとりの大将との戦闘は悪魔の能力抜きならば優勢。能力を使われると一人はそれでも優勢、一人は五分、一人だけ不利になる。という形にします。まとめて戦うとかなりきつい。それでも、三人を同時に相手取り、戦線を支えるくらいは出来る拳王様です。――無想転生をまとえば瞬殺できますが……。

 ちなみに、拳王様が海をわたるのに泳ぐ必要など有りません。脅すこともできますが、北斗神拳をもってすれば記憶操作でなんとでもなります。ホントに北斗神拳は便利です。
 ロックスターについても記憶操作でお友達になればいいのに、いつもの慣れで脅しに走った拳王様でした。

 改めて考えると結構、ケンシロウとラオウって似通っているんですよね。
 外伝で拳王府の建設作業を3日でやらせるために、目の前で責任者の頭を潰して見せて作業員を脅したラオウ。北斗神拳の恐ろしさを知ってる飯屋のオヤジに孤児の面倒をみさせるために、一月後に爆死する秘孔をついて脅すケンシロウ。やっぱり兄弟って似通っていくものなのでしょうか……。

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