大海賊時代に降臨する拳王 我が名はラオウ!!   作:無機名

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 世界最強と引き分けた拳王様……。その後の話。今回、拳王様はお休みです。


第5話

 ・驚嘆する世界 の巻

 

 どんな場所でも、如何なる時代でも、どの世界でも、弱った獲物を狩る……死肉を漁るハゲタカの様なものは存在する。

 

 丘の中腹に突っ伏している男がいる。

 その周りを賞金稼ぎが取り囲んでいた。後は各々が持っている剣でその男を突き刺せば、名誉が転がり込むはずだ。なにせこの弱って気絶している男は、ついさっき『世界最強』と相打ちだったらしいのだから。

 どんな形であれ、その首をとったならばそれだけで快挙である。

 10名には満たないグループ。そのリーダーらしき男が半死人の周りを取り囲んだことを確認する。

 

「……よし、やれ!!」

 

 合図を待っていたとばかりに全員が剣を挙げ、斬りつけようとする。

 そこで体勢のまま全員固まってしまった。経った時間はタップリと約15秒ほど、その光景をリーダーが訝しんで見ていると、異常が起こり始めた。

 

 一人目は頭の形が歪み、そのまま頭部が爆発。二人目は四肢がネジ曲がり、全身が捻り切れた。

 3人,4人,5人……囲んだ全員が、異常としか言い用のない光景が起こった末に無残な死を遂げた。骨を綺麗に残したまま内蔵がその体ごと爆散しているものすら有った。

 

 死神の拳を使う者は、たとえその意識が無くとも死をもたらす。

 

 ――かつて62代伝承者が無意識・無想で放った別の形の『究極奥義』と呼ばれるものだった。

 

 

 

 チェリーパイをたらふく食べている男が酒場にいる。事は済んだかと、その連絡は今か、今かと待ちわびていた。好物を食べている最中だがイラツキを隠せていない。

 一団の中で10年単位にわたって己の本性を隠したまま目立たず、かつ、その中で必要なくはならない程度で居座ってきた。信頼もそれなりに得てきた。だが、先日海で拾った男は誰も見破ることのない本性をあっさりと見極め、自分のことを船長に向かって『殺せ』と言い切った。

 

 誰も見破ることのない仮面の中を見極めたのだ。

 弱った今こそ……弱った今、それ以外無いだろう。――アレは危険だ。

 その眼光を思い出すだけで恐怖が蘇ってきていた。好物のチェリーパイの味が何も感じられないでいた。

 

 一団の長が『一騎打ち』で受けた以上、その構成員である自身が手を出すことが許されることはない。そして男が属する戦闘部隊の隊長があの男の伝言を、目を覚ました長に伝えたとき、上機嫌に『手を出すな』と厳命していた。

 

 手が出せない――ならば、野盗にでも、賞金稼ぎにでも狩られたことにでもすればいい。

 

 曲りなりに『新世界』と呼ばれる、強者のみが集まる海域で賞金稼ぎをしている連中だ。そいつらに『気絶して動けない美味しい獲物』があることを伝える。

 やったことはそれだけだった。

 

 再び暴食を開始し始めたところで酒場のドアが開く。入ってきたのは男が情報を流した一団のリーダー。それを機嫌よく迎えようとしたが、顔を見るなり飛んできたのは罵声だった。

 

 曰く『あんなバケモノどうしろと言うんだ』『あんなの人の死に方じゃない』『お前が自分でやればよかったじゃないか―――』半ば狂乱に等しいそれを適当にはぐらかしながら、その死に方という情報を引き出すと、最後に『済まないな、裏で侘びの代金を払おうじゃないか』といって裏路地に引っ張り込み、頭を踏みつけて殺した。これで証拠は隠滅。周りの気配の確認は怠っていない。

 

(くそ、やっぱりアレは勘違いじゃなかった)

 

 こっそりやろうと思えば、この男自身出来ないことはなかった。だが、最初に船に連れ込まれた時、害意・殺意をほんの少しでも男に向けるたび、闇の深淵を覗きこんだ気分を覚えた。だからこそ慎重を期して他人を使ったのだ。

 

(だが、今に見てろよ)――力だ。力さえ入れば。

 

 ますます力に対する妄執は強くなるばかりだった。それは、この時から時を得ずして得ることになる。

 

 

 

 白ひげ海賊団はその船長が『世界最強』の異名を持つのに加え、それを慕う部下の隊長格は皆、平均的な海軍本部の将官と戦える戦闘力を有する。トップレベルとなれば大将とすら戦える。それが故に否が応でも注目を浴びている。

 故に、いつの間にかその船に乗り込んでいた男が、突然とある島で『世界最強』と戦い、引き分けた。そしてその男にはどんな背景もない。と来れば驚かずにいられる者は皆無だ。

 

 

 世界の海を管理している海軍本部、そのトップ元帥の部屋で、その部屋の主は腐れ縁と以外、言いたくないが、実力は誰もが認める。そんな悪友を怒鳴り散らしていた。

 本題は先日指名手配された悪友の孫。

 

 この悪友の息子はすでにどうしようもないほどの危険人物・賞金首となっている。

 だからこそかつて『孫が産まれた』と、言われたときは『育て方を間違えるんじゃないぞ』と言っておいた。そのはずなのに、忠告したはずなのに…それはそれはめでたく。モノの見事に世界のゴロツキに仲間入りである。

 『ぶわっはっはっは!!』と豪快に笑い転げているこれが……なんだってこれが『英雄』なんだか。

 

 その説教を中断せざるえないほど、慌てた剣幕で情報官が『白ひげ』の情報を持って来た。

 そして、それを報告書なんざ碌に読みもしない悪友に読み聞かせながら読むと、更に頭痛の種が増えた。と元帥は頭を抱えるばかりだった。

 

 それに対し『ほれみろ、うちの孫なんざマダマダじゃい!』などと、訳の分からないところに胸を張っている。……そんなこのどうしようもない『なんちゃって英雄』に一撃を叩き込む元帥だった。

 

 




与えたトラウマと存在を知られる拳王様と言ったところでした。

……うん、なんだってアレが『英雄』なんでしょうね。
戦闘力だけで言えば、そりゃあ、ロギアのサカズキをぶっ殺せるような発言してたから高いのでしょうけど……。

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