大海賊時代に降臨する拳王 我が名はラオウ!!   作:無機名

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なんか、カウントが増えててびっくりデス。
評価も頂いてるし……。こんな駄文で大丈夫かなぁ……。

感想など待ってます。どんどん指摘してください。


第3話

 ・情報収集と晩酌での語らい の巻

 

 

 険悪に終わった白ひげとの会談からの夜……。

 

(何故閉じ込めぬ。見張りはいるが……)

 

 あの白ひげとの謁見の中、ラオウは傷が癒えたら船を下り、適当に一人で世界を巡るつもりであることを告げると、船長の白ひげは「そうかい、好きにしろ」と投げ遣りな答えを返しただけだった。

 そして粗末なものであるが、世界が滅びたあの世界と比べれば上等といえる部屋をあてがわれていた。

 その覇業の中でカサンドラという牢獄を作り、危険人物として実弟すら監禁したラオウにしてみれば理解に苦しむ話だった。

 だが、これ幸いと情報収集のためにこの世界の書物を何冊か読んだ。

 主に世界史と地理を中心に……。

 

(……胸の傷で経絡が乱れている。やはり"気"の巡りが少々狂っている。)

 

 片腕ニ指の逆立ち。二指禅をしながら、穿たれた胸の傷をはじめとした体の回復具合を確認し終える。

 あの接見の時、闘気を発散して威嚇していたが、死んだものは皆無。

 本来、ラオウの闘気はある程度の【気・オーラ】を纏わねば死んでしまうことが大概だった。しかし、誰においても失神するまでしか至らなかった。

 弟ケンシロウとの大死闘の果てに起きたこと故に仕方が無いと考え、同時にこの程度で済んだことに幸運を感じ、座を組み瞑想を行いつつ今後についてを考える。

 

(この世界は秩序が崩壊しているのか、していないのか…。

 199×年以前の不安定な世の中で核が無い世界とでも言ったところなのか?……ここを出て世界を回るとして、手早く路銀を稼ぐならば賞金稼ぎか)

 

 世界を占める『世界政府』その手駒の『海軍』『七武海』。敵対する『革命軍』。

 政府の縛りを振り切り、好き勝手に海を行き交う『海賊』。その頂点『四皇』。この一角に拾われこうして傷を癒せるというのは幸運だと言える。

 しかし『世界最強』と死合うことに愉しみは見いだせそうもなく落胆を覚えたラオウだが、知識として知った『悪魔の実』と能力者、巨人族、10倍の筋力を持つという魚人、そして海軍大将を知り、それらとの邂逅、戦いが楽しみになっていた。

 北斗神拳の道を歩み始めた少年の頃、かつて最強を目指していたその血が騒ぎ出していた。

 

「……いずれにせよ。この俺が何処ぞの軍門に下ることなぞ、ない!」

 

 閉じていた目を開き、気配のする方向に言い放つ。すると見張りらしき男は「ゼハハハハ」と不愉快な笑い声をあげながら去っていった。

 

 

 

(……あの覇気とオヤジを前にした胆力、それに見聞色も大したものじゃねぇか。)

 

 見張りをしていた男は、自分の野望のためにラオウを仲間に加えようと考えていた。同時にスカウトを拒否するならば、殺して海に投げ捨てようとも考えていた。

 だが、ラオウの隙の無さに舌を巻いていた。自分より歳下と見える男にあそこまでの使い手がいることに驚くばかりだった。

 

 

 

 ラオウは寝静まった船の甲板に出て空を仰ぎ見た。

 世界は変わっても北斗七星は変わることなく輝いている。

 

(――何処であっても、あの手合いの夜叉。人を喰らう鬼はいるものだ)

 

 自らが末弟・ケンシロウとの戦いに出向く前に片付けた、ラオウの―――拳王軍の権威を傘に地位と権力を以って欲望のままに行動しようとした者達。

 『人を喰らう鬼』と同じモノを先ほどの見張りから感じた。

 

(『このラオウは人を喰らう鬼を抑え、それらを束ねる【鬼喰らう鬼】』そうも言って多々を見てきたが、あの男は如何なものか。

 ……しかし、ヤツは俺の配下ではない。詮なきことか)

 

 そう開き直り、炊事場から拝借してきた酒を手酌で飲む。

 

「こんなところで何をしてるんだよい?」

「晩酌だ。『出歩くな』というなら閉じ込めるのだな」

「……ウチの船は客人にそんなことはしないよい。」

「――ふん、甘いわ。」

「酒が、かよい?」

 

 ラオウが賞金首の名簿を見た時に記憶した名前では――マルコと言う名の男は、ラオウの言う"甘い"が何を指すのかを理解して言っている。

 そして『俺らがいる前で暴れられるならやってみろ』そう言っているのだろう。そうラオウは理解した。

 尤もマルコ達、白ひげ一団は『どんなに強くても"オヤジ"に敵うワケがない』そんな船長に対する絶対的な信頼だった。

 

「……まぁ、いいわ」

 

 そう言って更に酒を飲むラオウ。

 その横顔を見て、マルコは疑問を口にする。

 

「なぁ、歳……いくつだよい?」

「……30には行ってない」

「え?……冗談かよい?」

「むぅ?……何がだ」

 

 その答えにマルコは思わず詰まってしまう。

 目の前の男が持つ覇気そして佇まいから、少なくとも『四皇』で年齢が最も低い『赤髪』に匹敵する実力を持っていると見ていた。そして、歳もそのくらいだろうと思っていたのだが、見込みをあっさりと外されてしまった。

 知らぬ間に思わずため息をマルコは漏らしていた。

 

「苦労してるんだな。と思ったんだよい……」

「ふん――おれの過去が気になるか?」

 

 この海賊船の中でこれはタブーだ。基本的に誰もが言いたくない傷を持っている。だからこそ海賊なんぞやっている。そして、白ひげ海賊団の長はそんな者達を『息子』と呼び、無条件で受け入れてくれた人物。それを分かっているマルコは言葉が詰まってしまった。

 

「ああ、知りたい」

 

 そんなことを打ち破るように聞いてきた者が居た。

 

「エース……」

 

 隊長といっても、まだ若いエースは白ひげに仇をなすかもしれない者。ましてラオウは自分が拾った漂流者だ。故に聞かずにはいられなかった。

 ラオウはそんな板挟みになったマルコを静かに笑い、口を開いた。

 

「俺の国は乱れていた。俺は平定のために人の欲望を刺激し、束ね。武力と暴力、そこから生まれる恐怖を以って全てを支配・統一しようとした。

 ……そして、意見を違えた弟達と戦った。」

「へぇ―――。すごいな。……それで?その弟とはどっちが勝ったんだ?」

 

 湧いて出た『弟』と言う単語を聞いて、エースは聞かずにはいられなかった。賞金首に手配された弟はいずれこっちに来るのだから。

 

 結果を聞かれ、ラオウは嬉しそうに微笑みながら、一言。

 

「――弟だ。」そう答えるとともにラオウは酒を飲み干し、二人の返答を聞くことなく部屋へ戻っていった。

 

 

「……なんで起きてきたんだよい?」

 

 ラオウが去り、寝ずの番であったマルコがエースに聞く。

 

「ティーチの奴が『あいつは仲間になりそうもない』……そう言って起こしてきたからな。何かするんじゃないかと思ったんだ。」

 

 見張りを放棄したティーチに変わって、ラオウの見張りを行おうと去っていくエースを見ながらマルコは思う。

 

(オヤジに喧嘩を売った時もそうだったよい。仲間を逃して自分だけ残って……きっと、エースが一番の親孝行してるよい)

 

 

 

 そうしてこの日から数日が経ち、四皇の縄張りに当たらず、海軍の所轄範囲にもギリギリ入らない。双方の緩衝地帯に当たる、ある島は災害に見舞われていた。

 

 




あとがきと言う名の補足、言い訳。そして、ちょっとした考え。

 ……というわけで、胸の傷が原因で拳王様の闘気(威圧)はランクダウンです。武装色に当たる攻防、見聞色に当たる気配探知のランクダウンはしない方向でいきたいと思ってます。ケンシロウを上回る北斗神拳が無い拳王様ってありえないですし。

 さて、見聞色についてですが、剛拳のラオウは見聞色を使えるの?と云う意見が有りそうです。
 しかし【無想陰殺】という『相手の気配を読み、殺気との間合いを見切り、無意識・無想に繰り出される必殺の拳』つまり、数多くの実戦によって培われた『敵の気配と殺気を読み取る能力』による技がある以上、出来ると思っています。


 些かラオウの性格が違いますが、これは頭髪を剃った後の劉宗武のように、心に落ち着きをそれなりに取り戻しているからです。……そういうことにしてください。
 乱暴が過ぎるところはありますが、苛烈な野望さえなければ足を怪我して崖から登れなくなった弟トキを引っ張りあげた様に、10人組手に負けたケンシロウの死刑を影では止めようとしていたように、ラオウは優しい人間だと思ってます。だからこそ、非道を行うときはこの上なく冷徹でもあるとも思ってますが……。

 ラオウの年齢は、北斗の拳・主人公のケンシロウは19から21、それより8歳上ということらしいので、二十代後半~三十代目前。……いくら強いからって20代で天下統一ってどれだけ強く、人望を集めていたのか……ただ、偉大としか言いようが無いですね。


 ここまで書いて思ったことなのですが、ケンシロウは甘く。ラオウは野望の中、非道で冷徹。
 この見方は『北斗の拳』でよくされてますが、自分はラオウのほうが肝心なところで甘く、人間臭い。そして不器用ながら(ジャギは際どいながら)兄弟を愛していた。そう思います。
 トキを殺してしまえば、覇業の障害であるケンシロウの成長は望めなくなる。しかし、こんな好都合を実弟ということを差し引いても幽閉で済ましてしまうし、恋人のユリアとの生活に逃避・埋没しようとし、北斗神拳伝承者の役割を放棄しかけた愚弟ケンシロウを無理矢理とは言え、行動させるためにジャギを使い、シンを誘惑してユリアとの仲を引き裂く。……ココらへんはラオウの狙ったことかはさておき、全てケンシロウの成長になっている。

 全てに対して受け身でしか無い救世主:ケンシロウ。考えた末に、矛盾があり悪行であるが人を束ね動かし、平定を目指し戦ったラオウ。
 この異世界トリップで『もし、ラオウではなくケンシロウが来たらどうよ?』仮にこう言われても、感情、情愛があっても意志が大して無く、悪党を叩きのめすだけ。
 ケンシロウ伝ZEROで言われていた渾名、『狼殺し』と共に付けられた『スーパーマシン』そんな受動的な、行動力がさして無い人物の話は描きにくいです。

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