大海賊時代に降臨する拳王 我が名はラオウ!!   作:無機名

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 前回、敵の能力・奥義・知略などに対する慢心、奢りで師父:リュウケン、南斗の軍師:リハク以来、ひどい目にあったラオウ様。今回でやっとシャボンディ諸島入りです。

 ……つまり、前々から書いているように、タグにあるようなアンチ・ヘイトがここから始まります(念の為)。
 ご了承ください。

 最後に、お好きな処刑用BGMをかけた上で読むことをおすすめします。


第23話

 シャボンディ諸島、60番グローブ・海軍駐屯、世界政府出入りがメインとなる地区の本屋。

 そこで、筋肉が服を押し上げているのがよく分かる。それほど屈強な男が、立ち読みをしている。

 

 ツー、ペらッ、ツー、ペらッ、つー…………。

 

 男が本を読み進める早さはとても早く、ページをめくるのに大体10秒かかってない。右手から肘にかけて包帯を巻いているが器用なものである。

 彼が居座って半日近く。先ほどまで哲学・文学を同様のペースで読みふけっていた。そして今、読んでいる書棚のジャンルは兵器・戦術・"悪魔の実の辞典"などを扱うコーナー。

 かなりの専門用語が使われている難解な本ばかりなのだが、そんな難しい本を読んでいるようなペースには見えない。

 

 黒いインナーシャツの上、前を開けて羽織っているポロシャツの背中には『MARINE』と書かれ、被っている帽子・正面にも同じ文字。そしてカモメを象ったマークが描かれている。その服装からして海兵の一般兵だろう。

 しかし、普通、将官未満の海兵は"悪魔の実"の能力所持者。あるいは秘伝武術である六式を身につけていない限り、武器―――大抵は銃を携行しているものなのだが、彼が持っているモノは足元に置いてある荷物袋だけ。

 先に挙げた右腕に加え、ところどころに絆創膏、湿布をつけていることから、戦闘に従事したのが見て取れる。だが、この男はなぜ職務を放り捨ててそこにいるのか。

 

「あ、あのぉ……海兵さん……?」

「…………」

 

 そんな得体のしれない者に店主がおずおずと話しかける。だが男は無言。店主が黙れば、あるのは本をめくる音だけ……。

 服装が世を守る海兵だからこそ、なんとか店主も話しかけることが出来ていた。そうでなければ、声をかけるなどありえない。というより、存在感が怖くて近寄ることなど出来ない。

 

 しばらく黙読していた男はおもむろに手帳を取り出し、本の要点を書き込む。そしてまた、続きを読み進める。

 さすがにこれは立ち読みどころではなく、万引き・泥棒にも等しい行為である。たまらず店主は大声を張り上げた。

 

「そのっ!うちの店は長時間の立ち読みはお断り―――!」

〈ジロ……〉

「は、はひぃ~。ど、どどどど、どうぞお好きなだけお楽しみください~(泣)」

 

 ただ見ただけ。別に睨んだわけではないのだが、その眼力に圧倒され店主は奥に引っ込んでいく。男は再び本に目を戻し黙々と本を読む。

 あるいは男がかぶる帽子からはみ出た銀髪、伊達メガネの奥にある鋭い目つきを確認すれば、その人物が初頭手配額で億単位の値段が付いたことに話題となった者―――そう認めたことだったろう。

 

 

・ 暴凶星と超新星、そして…… の巻!

 

 

「そうか、【拳皇】はそんなところに。―――いや、絶対に手出しはするな。

 監視は遠距離で……そうだ。…………ハァ。」

 

 海軍元帥:センゴクはその報告を聞いて、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべつつ交信を終える。

 今でも、世界最強の一角に数えられる彼であるが、その称号に似つかわしくないことに包帯を巻き、その腕を吊っていた。

 大事を取って……とは言え、そんな姿はここ20年近くありえたことではない。力なく椅子に腰掛けたその様子には、疲労の色が濃かった。

 

 昨日から一昼夜……ほぼ休息なしでようやく、港の大破壊をマリージョアにいる者達全員で片付けた。

 その作業と【拳皇】との戦闘による体力の消耗も半端ではないが、それ以上に気疲れが彼らに疲労をもたらしていた。

 これ以上復旧が遅れていたら、あの生まれながらに与えられた権力を振るうことに何の疑問も持たない……。それゆえわがまま。人のやることにケチを付けることが大好きな連中からのクレームがとんでも無いことになっていただろう。

 

 今の時点でさえ、『安眠妨害だ。砂埃がひどい……』といった苦情をまとめた書類の束に辟易していた。

 

 そんな片付けの途中、ガープが逃げ出そうとする。クザンが眠りこける……などなどのすったもんだの果て。なんとか一息つけたところで来た報告。

 それによると、大破壊の発端となった男は、自分たちを嘲笑うかのように海軍の駐屯地近くの本屋で読書と来た。

 しかも、その服装はいつの間にか盗んでいたらしい海軍の軍服……。なめられているにも程がある。

 

「オー~なんとか、片付いたねぇ~……センゴクさん。」

「……ああ、ところでガープは?」

「ガープさんは……

 『疲れた。【拳皇】についてはお前が聞いてこい。ワシはメシ食って、寝る!』

 そう言って、食堂で50人分近くのメシを平らげたあと、ご自身の執務室でイビキかいて寝てます。スモーカーに時間になったら起こすように言っておきましたから、しばらくしたら起きてきますよ。」

「……アイツは、軍の執務室をなんだと思ってるんだ?」

「いつものことじゃないかい……」

 

 海軍大将・黄猿:ボルサリーノが終了を確認。ガープがいないことに疑問を感じたセンゴクに青キジ:クザンが答え。大参謀:つるが、呆れ混じりのため息を吐く。あの【英雄】の奔放さには呆れ返る以外ない。

『修行のために、山を拳骨で粉砕してきた!!』……などと、とんでも無いことを言ったのは何時だったろうか。

 

「しかしねぇ~、センゴクさん。この手配書はやりすぎじゃないかなぁ~?」

 

 そう言って、ボルサリーノは新品の手配書を手に取る。

 そこには『Dead or Alive―――生死問わず。【拳皇】ラオウ:7億7千万ベリー』―――なんと、それまでの2倍をゆうに超える値段が書かれていた。

 写真もまた、先日の騒動のものに差し替えられ、その闘いを楽しむ笑みが実に恐ろしく写っている。

 普通、億を超えたらそう簡単に上がらないものなのだが、この値上がりは異常。

 

「これでも引き下げた方だ。上からは『10億以上―――』そう言われていたのだ。……だが、そんな値段を軽々とつけるなど、海軍の誇りにかけて出来ん!……ところで、クザン。傷の具合はどうだ?」

 

 値段についてはさておき、彼らがいうところの"覇気"―――ラオウの"闘気"の気柱を真正面から受けたクザンを見てセンゴクは問う。

 昨日、彼はラオウの南斗聖拳の性質を持つ―――いわゆる、切り刻む"闘気"によって傷だらけにされた。

 大概ロギアの能力者は、並の人間が即死の攻撃であっても傷つくことなど殆ど無く、たとえ傷を負ってもすぐ治るはずなのだ……。

 

「治りが悪いですね。普通、"覇気"の攻撃でも、すぐに治るはずなんですけど……ちょっとかかりそうです。……まぁ、予定には間に合うと思いますよ。」

「あんな次元の"覇気"使いだからね。その程度ですんで良かったと思うべきさ。

 むしろセンゴク、アンタはどうなんだい?」

 

 つるが相槌を打ち、センゴクに問い返す。

 海軍随一の知恵者である彼女の見立てでさえ、『【拳皇】の底を計りきれない』というのが結論だった。

 だからこそ、疑問が浮かぶ。『あの状況で、たとえカリがあっても、あの超一級の危険人物との戦闘の停止を命じたのか』……と。

 

「おれも問題ない。これから五老星のところに行く。貴様らはどうする?」

「お~、行きましょう~。」

「……そうだね。ちゃんと、あの命令の理由は聞かないとね。」

「…………」

 

 元帥センゴクにボルサリーノ、つる、クザンの順で続く。

 ひとまずこれで一段落。―――そう思っていたところに、とんでもない続きが起きるとは、予想だにしていなかった。

 

 

 話題の男―――ラオウは頭を悩ませていた。

 物見兼、腕試しに乱入しようと思っている海軍本部:マリンフォードが思った以上に厳しい場所だったからだ。

 

 ラオウは先日マリージョアで見た海軍本部の概要を思い出す。大将と戦うまでに一体どれだけの雑兵、ザコ共と戦わなければならないかと思うと大概だった。

 もちろんその気になれば、相手が"悪魔の実"の力を持っていても、それが"気"を扱えない者であれば何万いようとも、ラオウには問題にならない。

 

 兵士がただ銃を撃てる程度ならば、闘気をぶつけただけで昇天。多少の六式使いであっても、"覇気"を使えないならば秒殺。たとえ覇気を使えてもその練度が並程度ならば、1分も持たないだろう。

 しかし、最悪を想定するなら……。

 例えば、右腕に全治3日ほどの傷を食らわせた青キジ。彼の能力を考えれば、海に投げ出し、まるごと凍らす。そんなことが予想できる。

 あるいは、他の"悪魔の実"の使い手がコンビネーションを発揮したら。

 右腕にダメージを負ったことに加え、様々な敵の戦法。敵の本拠地という悪条件の中で浅略に出れば、それこそ20年程前に単独で海軍本部に突撃をかけて捕まった、舵輪の鶏冠をつけた海賊の二の舞を演じるだけ……。

 先日は、それらの危険性を感じたための撤退だった。

 

 これは、過去ラオウが覇業を目指す出発点。

 師父:リュウケンと死合いにおいて……師匠とは言え、老いぼれた麒麟に負けるはずがないと挑んだ。その結果、伝承者の秘奥義に一方的に血だるまにされる事となった。

 それでも、その時は幸運を掴み、辛勝。

 だが、それ以来、ラオウは相手が格下であろうとも相手の見極め、様子見を欠かさなくなった。

 あの師父との闘いの経験で得た慎重さ。これもまた、あの世紀末の荒野でラオウを覇者と呼ばれるに押し上げる要因となった。

 

 ましてや今は世界最強である【白ひげ】との決着を控えている身。だからこそ、とりあえず粗忽な行動は控えようとラオウは考える。

 

(―――だが、海軍大将は紛れも無く強者。こちらからではなく、大将だけをおびき寄せ戦うことは出来ぬものか……)

 

 そんな、どう考えても都合のいい。甘ったれた考えを頭を振って打ち消しながら、視線がねちっこい海軍の監視を撒く。

 遅くなった昼食を取るため、レストランがある24番グローブに向かっている途中のことだった。

 

 前方から、フルアーマーの騎士らしき者が看護師姿の女を引っ張ってきていた。

 

「お願いです。お願いですから、彼に手当だけでも。どうか、手当だけでも……」

「ちっ、いいから歩け。天竜人様に夫人として召し上げられておきながら下賎な下々民を気遣うな。」

 

 その言葉を受け、なお女は涙を流す。人はまばらなところだが、あたりの者は女性の事情を察し、いたたまれない表情を浮かべている。

 ラオウの―――北斗の者として鍛えられた聴力は、最低1キロメートル先のささやき声を聞き分ける。それらの会話も、当然、聞き漏らす事はない。

 その中で、ある単語に興味をひかれた。

 

「むぅ……」(……天……龍……?)

 

 騎士はゆっくりと近づく海兵―――ラオウの姿を認め、『なぜ海兵がこんなところにいるか?』―――そう、訝しみながらも制止を命令する。

 

「なんだ海兵、失せろ!私は天竜人様の撲、貴様に用はない。」

 

 常に天竜人の看板に守られたため、恐怖など滅多に感じないその鈍感さ。虎の威を借る狐でなければ、こんなことを言うことはなかっただろう。

 その騎士が吐いた言葉は、ラオウの怒りに触れるに十分だった。

 

「………………」[スッ]

「?何だそれは。聞こえなかったのか!?うせ……らぁべッ―――!!」

 

 眼前に指を突き出されたのを見た男は、わけも分からず、もう一度「―――失せろ」そう言おうとした。

 瞬間、指先に光が淡く見えたのがその騎士の最期に見た光景になった。

 

 男の肉体は爆散した。

 

 それは以前、ラオウが無人島で修行していたとき【赤髪】が見た―――岩を指一本から発した"気"で粉砕した技。

 今回、その破壊の対象は、岩ではなく人。その肉体は原型を留めず、残るのは血煙と肉片に塗れた鎧のみと化していた。

 

 この惨殺劇にあたりにいるものは皆、顔面蒼白。

 連れられていた看護師:マリィは先程目の前で婚約者が撃たれたことに加え、このむごたらしい殺人現場で精神が限界に達し、錯乱状態。どうしようもない程に震えていた。

 

「あ、……ああ、あ……」

「…………定神」

 

 その様子を一瞥したラオウは素早く鼻の下を点穴する。

 突いた秘孔は【定神(ていしん)】錯乱状態にある者を気絶させ、目覚めたときに落ち着かせるという秘孔。

 点穴が効き、女が伏した事を確認すると、ラオウはおもむろに変装に使っていた軍服を脱ぎ捨てる。

 そしてマントを荷物袋から取り出し、羽織った。

 

「おい、てめぇ『天竜人』の兵隊を手に掛けるってどういうつもりだ!?」

 

 そこに引きつった顔を浮かべながら、ピンク色の髪の女が怒鳴りかけてきた。そして、部下らしい者達が遠巻きにラオウを囲む。

 しかし、ラオウは動じない。むしろ疑問を返す。

 

「……女、『天竜人』とはなんだ?」

「はぁ?『世界貴族』だろうが―――じゃねぇよ!この島に『大将』呼び寄せる気か!?ウチラに迷惑を……」

「―――ほぅ、それで。その『天竜人』とやらを殺せば大将が出てくるのか?」

 

 会話から世界貴族の別称であることを知り、ラオウは苛立ちを覚える。

 しかし、同時に(殺すことによって『海軍大将』が自ら出張ってくるならば、好都合)―――そう考え、凶相を浮かべる。

 その考えはピンク色の髪を持つ女海賊、億単位の賞金額を付けられているジュエリー・ボニーですら埒外の考え。理解までに時間を要するほどのモノだった。

 

「……――――なっ!?……てめェ、正気か!!」

「うぬは海賊であろう。なぜ海軍如き恐れる?」

「相手は海軍大将だぞ?!わかってんのか??―――勝てるわけがないだろうが!!」

 

 それはボニーがよく知る海軍の。そして、大将の力への恐怖から出てきた。悲鳴に近い叫びだった。

 しかし、ラオウは淡々と返すのみ。

 

「勝てぬ……か。所詮、女の身ではそこまでか……。」

「ほ、本気で大将と戦う気なのか……い、イカれてる……。」

「―――そこの女を連れて行け。」

 

 そして、ぶっきらぼうに24番グローブを指しながらボニーに命令するラオウ。

 もちろん、ボニーが反発しないわけがない。

 

「ちょっ……なんで、あたしがそんなことを!?」

「所詮、貴様は力の前に忍従するのみであろう?もう一度、言う。連れて行け。」

「う……ぐ……。」

 

 ボニーは、彼女の一味の者共もまた、このほんの少しのラオウとの接触で、格の違いを感じたからこそ黙るしか無い。

 もはや彼女らに興味はないと、ラオウは持ち前の嗅覚と聴力、"気"の探知でそれらしい気配を感じ取ると、身を翻し1番グローブの方向へ駆け出した。

 

「『天』を名乗る者、か。―――よかろう。このラオウが見定めてくれるわ!」

 

 ボニーはその背を、見つめているだけしか出来なかった。その体が、重く、硬直していくのがわかった。そして、顔の熱が上がるのを感じていた。

 

「……ボニー船長。」

 

 そんな中、船長の身を案じた部下が声をかける。

 ありえないことを考えた。―――と、思わず頭を振って意識を取り戻したボニーは指示を出す。

 

「あんた達は出港の準備をしときな!……あたしはコイツを運ぶ。アイツはあのバカ助どころじゃない。海軍が―――大将が来る前にずらかるよ!!」

 

 船長の指示に、ボニー海賊団の部下達は慌てて行動を開始した。

 そんな一部始終を、更に遠巻きに眺めていた者がいた。【赤旗】:X・ドレークだった。

 

「ドレーク船長……」

「出港準備だけはしておけ。―――あれが【拳皇】。ニュースも、噂も当てにならんな。」

 

 ドレークが知っているラオウの噂。

 

『【四皇】に喧嘩を売った【拳皇】は、その力に追い落とされた"新世界"の脱落者。

 その過去よって七武海の候補に上がった。……そして、マリージョアで交渉が行われた。

 だが―――決裂。

 結果、英雄:ガープ、仏:センゴクと聖地・マリージョアにて闘い、そこでもまた【拳皇】は辛くも逃げ出した。』

 

 つまり―――力はあるが、あくまでも逃げ足のみの人物。

 それが、メンツを重んじる政府によって広められた噂であった。

 

 しかし、それらの噂は実際と違う事を確信する。

 それと同時に、世の不安をもたらさないために行われたのだろう情報操作が、拳皇の存在が、とんでも無いことになる予感をドレークは覚えていた。

 

 

 …………

 

 

 辺りが静寂に包まれていた。

 海賊"麦わらのルフィ"が天竜人:チャルロス聖を殴り飛ばした。

 あまりにもイカれた行動に、その場に居合わせた者達ほとんどが唖然と口を開くのみだった。

 

「悪い、お前ら…………。

 コイツ殴ったら、海軍の"大将"が軍艦引っぱって来んだって………………」

 

 事を起こした"麦わらのルフィ"が仲間に詫びたその時だった。入り口からマントを頭までかぶった男が現れたのは。

 その男――――ラオウは辺りを見回すと、入り口近くまで殴り飛ばされた天竜人に近づき……。

 

《―――ドグシャッ!!》

 

 ―――チャルロスの頭を踏みつぶした。

 

「……これが、"天"……だと―――?!」

 

 この凶行には、ニヤけながら"麦わら"の行いを見ていた他の海賊も、顔がひきつる有り様だった。

 そんな周囲のことなぞ気にせず、憤怒の気配を隠さず、ラオウはサングラスをかけた天竜人へ向けて歩き出す。

 そこでようやく衛兵達は正気に帰り、通路を歩く殺人犯に攻撃を仕掛ける。

 

「て、天竜人様に、チャルロス聖に―――!!」「貴様―――」

 

 しかし、ラオウの間合いに入った瞬間。

 彼らの頭部には次々と穴が、それも兜などにヒビ一つなく空いていく。

 

「どえっ」「ふぇっ」「衛兵、出会え~~~バラボぁ」

 

 その時点でなんとか体が動いた者は仲間がやられたため、あるいは恐怖に駆られて、チャルロスを殴り飛ばした"麦わら"などすでに無視し、皆、一様に叫び声を上げながらラオウに向けて一斉に飛びかかる。

 

「「「ぬおぅわ~~!!」」」

「ぴっ」「ぺっ」「ぱらペっ」「ちょ」「ひっ」「わっ」

 

 それでも次々に、左手一本指の指弾を容赦なく叩きこまれ、珍妙な叫びを上げて停止する。

 そして、ラオウは"天"を名乗るにはあまりにも何の素質も資質も、まして英気も感じないゴミを前にする。

 

「―――きさま、なめとんのかコラ!」

「へっ……あ……よくも息子を!!この世界の創造主の末裔の―――あでっ!?」

 

 歩く途中フードがはずれ、怒りがにじみ出る顔があらわになったラオウに臆すこと無くロズワードは銃を向ける。瞬間、銃は手からなくなっていた。

 その銃を持つ手を打ち払われていた。尤も、打撃自体は大したことは無く、ケガと言えるほどではない。

 

「珍妙な兜だな……何だそれは?」

「ぬうぅぅ、『海軍大将』と『軍艦』を呼べ!!目にモノを―――ぎっ!?」

「貴様は耳が聞こえないのか?……被り物はなんだ?そう聞いている。」

 

 復讐のため――と、周囲にいるだろう下僕に命令を下す途中、思わぬ痛みに悲鳴を上げたロズワード聖の左耳は切り落とされていた。

 その斬撃の余波で、ついでとばかりに頭部のシャボンは弾ける。

 

「おれ、飛ぶとも行ってないんですけど~~~。どわあああああああ」

 

 そこに、数匹のトビウオがオークション会場に文字通り飛び入り、それぞれから飛び降りる者達がいた。

 その内の一人、それがラオウの頭上に何か落ちてきたが、ラオウは視線も向けずに"闘気"の壁ではじき飛ばす。

 今、ハエにかかずらう気などラオウには毛頭に無い。

 

「あああああああ」《ドガシャッ》「う、ウソップ~~!?」

 

 どんなに鈍くとも。普通の人生を送ってきたならば、ラオウの存在、威圧感に恐怖を覚えるだろう。

 しかし、長い歴史で血に刻まれたその鈍感な精神は恐怖を感じることもなく、ただ罵詈雑言を吐く。

 

「貴様―――このわしに下賎な下々民と、同じ空気を吸わせるとは―――

《ドババ、どバ、ドバドドバババババ》……―――ひっ!?あがっ!!」

 

 言う途中、それまで停止していた衛兵達がわずかに身動ぎをすると共に、その全てが肉片と血煙になって爆散する。

 遅くながらやっと、その人生で初めて感じることになった恐怖に悲鳴を上げる間もなく、ロズワードは左こめかみに指弾を叩きこまれた。

 

「……息を吸いたくない……か。」

 

 ラオウは突き入れた指を軽く捻った後、それを引き抜き、ステージ……三人目の天竜人へ歩を進める。

 自分もまた何かされたと悟ったロズワードは、思わず声を上げる。

 

「き、貴様……何を―――ハガッ!?……ガッ……はっ」

 

 言う途中、異常がロズワードに振りかかる。息が吸えない。声を出すことは――息を吐くことはできたのに―――。

 困惑と焦り、苦しさにもがく男にラオウは静かに言い放つ。

 

「息を吸いたく無いのだろう?喘破〈ぜんは〉という秘孔を突いた。

 ――――息を吐けても、吸うことは出来ぬ。」

「そ、そん……な…………っは!」

《ドサッ》

「お父様~~~~ヒッ――――」

 

 ロズワードの娘―――シャルリア宮が、父親の死に悲鳴を上げかけるが、ラオウのひと睨みで黙らせられる。

 その威圧感に気を失うことも出来ず、ただ震えながら見ることしかできないでいた。

 そこにラオウは、まさに下の者に指図するように、手の平を向けて言う。

 

「女、うぬらが『天竜人』と、そのふざけた名を名乗る限り、このラオウが敵になる。

 ……それを語るがいい。―――む!?」

「天竜人を嫌うのはわかるが、あんまり、女性をいじめるものでは無いと思うがね。

 ―――若いの?」

 

 "覇王色の覇気"をぶつけてラオウの気を引き、同時に天竜人シャルリアの意識を飛ばしたのは、ステージに穴を開けて現れた老人だった。

 すかさず、残りの衛兵たち、隙を伺っていた者達がラオウに向け、一斉に飛びかかる。

 

 だが―――

 

「北斗劉家拳―――魔舞紅躁(まぶこうそう)」

 

 飛びかかった衛兵達は空中で静止。そして突風が吹き抜ける音とともに、一瞬で血霧の風と化しながら消し飛んだ。

 その惨劇、技名に老兵、冥王シルバーズ・レイリーは目を見開き、言葉を漏らす。

 

「―――っ!?北斗……だと……」

 

 




 ラオウ様、大暴れ。

 秘孔:喘破(ぜんは)北斗の拳、作中でケンシロウが使った、被害者を窒息させる秘孔です。
 書き始めた時から、これを天竜人に決めてやろうと思ってました。

 やっと、使うことが出来た。……後半が文章になってない気がする。相変わらず下手くそ。

 さておき、今までグダグダしてたので、話を一気に進めました。……ハハハ……乾いた笑いしか出て来ない。世紀末覇者、半端ない。

 師匠リュウケンに「そんな(天を握る)ことは神が許さぬぞ!! 」……そう言われれば「―――ならば神とも戦うまで!! 」こう言い返す、生き様を貫き通したラオウ様の前では、超新星などと呼ばれてても格が違う。
 ケンシロウが『ラオウの血は時代に飲まれぬ』―――そう言ってたけど、拳王は世界にすら飲まれない。―――ホント、どうしてこうなった!?
 書いている自分にも止められません。


 ボニーの口調、その他にまるで自信ナシです。指摘をいただいたらすぐに直そうと思います。

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