てっきりパワーバランス重視するべきという意見が多いと思ってたので……。
いっそのことケンシロウ伝のケンシロウのように胸の傷が原因で弱体化でもさせようか……。
感想や閲覧が思った以上に多くて驚いてます。がんばらないで頑張ります。
・接見 の巻
北斗神拳は暗殺拳である。人体に708あると言われる「経絡秘孔」を突き、敵を内部から破裂することを極意とする。
この拳法を最強とするのは、その技の強力さ、多彩な奥義もさることながら、相手の技を瞬時に解析し、盗むこと、「千変万化する戦いの中で奥義を見出し、常に進化を続けている」という点だった。そのため、体力・拳技のみならず英才教育にも力を入れる。戦闘中に敵の技の本質まで見切る末弟:ケンシロウほどではないが、ラオウ自身もそれを当然出来る。
その解析能力をフルに使い、それまでの会話などの流れからわかったことは、ここはラオウ自らが覇業を成そうとした199×年、核戦争によって滅びた世界ではないということ。
この海賊勢力は、『世界最強』と呼ばれる、目の前の男を頂点としたものになっているらしい。それらをラオウは理解した。
同時に、ラオウを囲む一団に多少の嫉妬を覚えていた。覇道を極めるために捨てたものがたしかに有ったからだ。
(……俺が統治した国には無かったものだ。この男にはフドウと似たものを感じる)
そして過去に暴虐の限りを尽くし『鬼』として恐れられ、唯一ラオウが恐怖した男。それが心惹かれた女によって改心してからは、背負った宿命の中で『山のフドウ』。あるいは孤児達を養って生きた『善のフドウ』とも呼ばれた男と似通ったモノを一団に見出していた。
そんなラオウの思考の沈黙を嫌ったか、案内したエースが焦れて質問を矢継ぎ早にしてきた。
「――で、あんたはなんであそこにいたんだ?」
「知らぬ。天の悪戯としか思えん」
「能力者か?」
「何の話だ?」
ラオウは本当に何の話かわからないが、エースを始めとした【白ひげ海賊団】の面々は、『能力者がそう簡単に、自らの能力をばらしたりするわけがない。』
そんな認識があるために、深く問い糾そうとは思わない。
「……拳法家といったな。さっきも聞いたが、大抵の剣士、海賊、俺自身もそうだったが……あんたは『世界最強』のオヤジに挑む気でいたんじゃ無いのか?」
そう言いながら向けてくるエースの威圧の"闘気"をラオウは『柳に風』とばかりに受け流しながら答える。
「……先ほどまでは、な。だが……老いと病に蝕まれた者と死合うことに意味が見い出せん。」
野望に塗れたその拳を封じようと、ラオウを追い詰めながらも倒れた師父リュウケン。ラオウが恐れた拳の持ち主、実弟トキ。
ラオウは、老い、あるいは病に蝕まれたために自らに匹敵、上回る技量・力量を持っていながら倒れた。そんな彼らを思い出しながら言い切る。が……
「――てめぇ!!」
ラオウの人生を知らない【白ひげ海賊団】の面々には、"覇王色の覇気"を収めて言ったラオウの言葉は、ただの侮辱としか映らない。一瞬で臨戦体制に移った者達の中から、文字通り気炎と共に手に炎を上げ、攻撃しようとするエース。
それをラオウは静かに構え、迎撃しようとする。
「やめろ」
威圧感を含んだ低い声と共に、辺りの険悪な空気は吹き飛ばされた。
「……エース。そいつぁ怪我人だ。俺らの飯の借りもある。
おい、拳法家とか言ったな。傷が癒えるまでは面倒見てやる。……オラァお前の言うとおり病気持ちだ。―――けどな、オメエに負けるほどヤワでもねぇ。覚えておけ」
(……老いても『最強』と言われるわけだ)
言葉とともに向けられた強烈な闘気に、思わず笑みを浮かべるラオウだった。
62代伝承者:霞拳志郎は若くして大学教授やってるほどですから、北斗神拳の教育は半端ないのですよね。
ちなみに炎を上げたエースにラオウが驚かなかったのは、炎使いと戦ったことがあるからです。
炎のシュレン、燐を用いて火を操る格闘家。アニメのCV:若本御兄様。後の映画版だと檜山修之……ホント豪華な声優さんを使ったキャラなんですよね。
出番は殆ど無いくせに……。