大海賊時代に降臨する拳王 我が名はラオウ!!   作:無機名

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 おまたせしました。
 これまでのらしくない、愛を知った、慈悲を持ったラオウでなく。覇者として生きてきた、鬼のラオウが出てきます。
 それと、戦闘が増えてしまいそうです。

 こうして一人でいる拳王様の言動がケンシロウっぽいセリフになることが多くなるというか。
 そこら辺に頭を痛めていたのですが、拳王様はケンの育て親のようなものだから、もう仕方が無いということに。殺人マシーンにはなりませんが……。

 文章……うまくならないなぁ……。


第17話

「行っちゃった。」「…そうだね。」

 

 拳の才と、意志に恵まれているとラオウが内心で評していたリュウ。北斗の秘孔医療術を学んだリュウの姉・オウカ。そしてラオウに恩を感じている者達。

 彼らはラオウを乗せ、島から去っていく軍艦を見送っていた。

 

「……帰ってくるかな?」リュウは少し悲しい顔を浮かべながら姉に縋る。

 

 まだ10才そこそこ。リュウは別れに不安を覚えずにいられなかった。

 

「どうだろうね。ねぇ、リュウは最後になんて言われた?」

 

 姉は質問を逸らし、問い返す。

 オウカは、ラオウが戻ってくると思っていない。それを弟に伝えるのを憚(はばか)った。

 

「『男なら強くなれ。……愛を心に刻み、哀しみを知り、背負え。』って言ってた。……よくわかんないよ。」

「うん、難しいね」静かにオウカは頷く。「―――他には?」と促す。

 

「『迷ったら蒼天を見ろ』って……。」

「『宿命の旅を楽しめ』っても言ってたよね?」

「……姉さん。『哀しみ』ってなに?」

「大丈夫、きっとそのうち分かるよ」(あの時、私を背負おうとしたんだからさ)

 

 オウカは嬉しそうに、リュウがラオウに弟子入りを求めた時を思い出す。

 そして、別れの時にラオウに撫でられた弟の頭をグシャグシャとこねくり回した。

 

「何すんだよぅ…」唸るリュウに、オウカは出来の悪い身内を持った親のような表情を浮かべて言う。

 

「さぁて、貰った指南書。見せてもらったけど、基礎だけでもたいへんだ。何年もかかるよね?」

「う、うん」

 

 元々ラオウは長居する気がなかった。

 だからこそ、この二ヶ月技を見せるだけ見せていても基礎を重点的に行い。同時に、勘と動体視力を養わせるための組手をかなり多く取った。―――それでも基礎は足ない。

 そのため、指南書には実戦を除いて最低でも1年間は柔軟、型稽古、馬歩等の膨大な基礎に費やすように指示されていた。

 そして、ラオウにとって期待値の大きいリュウは、基礎が他の者の倍はあった。

 

「と・こ・ろ・で、勉強もあったよね~?『あたしから医者を教われ。』だっけ?」

「・・・あ」

 

 指南書に書かれていない北斗神拳は当然ながら、指南書に書かれた南斗聖拳にも多少の秘孔の技がある。そして拳法は相手の肉体を破壊することを目的とするがゆえに、自らの肉体を作ることも主眼とする。また鍛錬前後に独自の漢方薬を処方することで、肉体の故障の回避、修行の効果を増す等の秘薬の調合がある。

 つまり、どうあがいても医術の知識が必要なのだ。ラオウはこれらについて言付けていた。

 それを思い出し『勉強はイヤ』と言わんばかりに逃げようと後ずさるリュウ。目だけは笑ってない笑顔を浮かべながらあっさりと逃げる弟を捕まえる姉。

 

「さぁ、今まで散々逃げてきた分。勉強、たっぷり教えるからね~」

 

 楽しそうに言う姉に、どんなに力が強くなっても年を経ても姉には敵いそうもない。捕まったリュウはそう思った。

 

 ラオウが居たほんの2ヶ月。アルコル島はそれまでの暴力・略奪に無気力でなすがままであった虚無に苛まれた日々から決別し、穏やかで自由な日常を手に入れていた。

 島でラオウが取った在り方は、宿命の下に敵対した末弟・ケンシロウの『民衆と共にある在り方』だった。

 

 

・荒らされる聖地(前) の巻

 

 

 数日の船旅の末、ラオウはマリージョアに到着した。

 ガープの船はそこらの船より遙かに大きい。つまり、船足はこの上なく速い。定期船などならば半月ほどかかるところが、わずか数日でのアルコル島から到着だった。

 

「……ここが世界の中心か。」

「いや、世界の中心に位置するのは海軍本部マリンフォード。ここはマリージョア。政治の中心だ」

 

 説明するのはスモーカー。随伴するコビーとヘルメッポ、スモーカーの副官・たしぎ、彼らはその街に目を輝かせている。

 

「ふん、そうか。」

 

 スモーカーは気難しい人物と印象を持ったラオウの案内をガープに任されていた。

 任じたガープは、『ラオウを連れて戻る』とセンゴクに連絡をした時から様子が変わり、船がレッドラインに到着するや、前半部"楽園"側に船を移送する手続きを副官のボガードに任せ、当人のガープは『政府に用がある。』と言い残し、我先に、足早に向かっていってしまっていた。

 

「ここからは、私が案内いたします」

 

 しばらく無言のままスモーカー達と歩き、マリージョア行政区に案内されたラオウは、引き継いだ政府役人に行政府の建物を案内される。

 そんな中、ラオウは苛立ちを覚え始めていた。突然立ち止まり、案内される道ではなく、あさっての方向に歩き出す。

 

「……不愉快な匂いだ。」

「お、お待ちを―――どちらに!?」

 

 予定された道を無視したことで慌てふためく案内人を意に介さず、ラオウは匂いがする方へズカズカと足を向ける。

 北斗の者は総じて、五感が比べものにならないほどに利く。

 

 少し歩き、目星をつけた部屋のドアを蹴破る。―――食べ物、飲料、酒類を辺りかまわず散らかしたその部屋に、予想通りの人物がいた。

 

「豚の匂いがすると思えば、やはり貴様か。」

「ゼハハハハハ。まさかお前がここに来るとはなぁ。ラオウ」

 

 不愉快な笑い声を上げる下衆を一瞥しラオウは、思わず臨戦態勢を取った【黒ひげ海賊団】の面々に対し、気を飲みにかかる。

 その放たれた野生の猛獣の動きをも止める闘気、息をすることも許さない覇気に硬直してしまう。

 

 その威圧に【黒ひげ】ことマーシャル・D・ティーチは冷や汗を浮かべながら宣う。

 

「…ハ、ハ……す、すげえ覇気だな。昔のオヤジに勝るとも劣らねぇじゃねぇか……」

 

 ラオウは請け合うこともせずに、威圧を向けなかった男。案内をしてきた男に近づき、胸ぐらを掴みあげる。

 

「おい、世界政府とやらはこのラオウを謀り―――挙句、試そうとでも言うつもりか?」

 

 七武海に任命されていない海賊が、指名手配されたラオウと同じようにマリージョアに居る。

 その状況から、ラオウは己が何を望まれているのかをおぼろげながら理解していた。

 

「そ、そそそ、それは、その……」

 

 その推察の的確さと、ラオウの怒りの形相に思わず、しどろもどろになる男。

 

「このラオウを試そうなどと、不愉快極まる。―――どうしてくれようか!!」

「ひ、ひぃ、もごは!!」

 

 恐怖のあまりに思わず逃げようと身を捩る案内人の口に、上顎の歯をへし折りながら、ラオウの指が突き刺さる。

 

「秘孔、上顎(じょうがく)。―――知ってることを全て吐いてもらおう。

 まずは、スパンダインとやらについて聞こうか……どこに居る。どこによく現れる?知らぬならば、知ることの出来る場所はどこだ?」

 

 ラオウにとって幸運なことに、この男はスパンダインの息のかかった者だった。

 先日、息子が犯した失態をはるかに超える業績。『世界最強の男と引き分けた男』を世界政府の組織に引き込む。それを確実にするために男はここに送られてきていた。

 

「ス、スパンダインさんは、先日入院した息子さんの見舞いを毎日欠かさず「――その病院とやらはどこだ?」この建物から2ブロック先に……な、なんでしゃべって……」

「……よかろう。」

 

 頭部に軽い突きが入り、その目から意志が消え失せ、棒立ちとなる。

 それら、あまりにも現実味のない光景に【黒ひげ海賊団】は、ただ唖然とするばかりだった。

 

 ラオウは、男を通路の端に寄せるように放り捨て、黒ひげの方を向く。

 

「『豚の皮を被った狼』だと思っていたが、どういうつもりだ。何故ここにいる?」

「ち、力を得るには、寄り道も必要ということだ。」

 

 先程から背を向けながらも、怒気を混じらせた闘気を油断なく向けるラオウに、冷や汗を流しながら答えるティーチ。

 

「ふん、狼ではなく残飯を食い漁る賎しいヤセ犬。己が道を自らの手で切り開けぬ愚物か、貴様は。―――くだらぬな。」

 

 ラオウは自身にとっての恥を、恥と思ってないこの下衆な男に一方的に言い放ち、もはや眼中に無いとばかりに踵を返す。

 案内人に「部屋に案内しろ。」と言うと、意志を剥奪されていた男はあやつり人形のように頷き、歩を進める。

 ラオウはそれに続き去っていった。

 

 

 

「……せ、船長……どうする」

「あぁ、マズイな……」

 

 ラオウの威圧感から解放された【黒ひげ海賊団】の面々は相談をはじめる。

 口火を切ったのは狙撃手:ヴァン・オーガー。好戦的な彼だが、ラオウの威圧感に圧倒され、何も出来なかった。

 病弱なドクQは泡を吹いてのびてしまっている。

 

 彼ら【黒ひげ海賊団】にとってまずい状況になった。 [火拳のエース]を捉え、それを政府に引き渡したことで七武海への道が開けたとおもいきや、連日豪勢な食事が出るだけで、政府関係者からは『待て』の一辺倒だった。

 

 これは『引き入れるかどうか悩んでいる』そう彼らも分っていたが、『エースを捕らえている以上、【白ひげ】と対決しなければならない。ならば、駒として自分たち【黒ひげ海賊団】は絶対に必要なはずだ。』

 そんな打算があったから、何もせず余裕をもって待つばかりだった。

 

「まさか、あいつも七武海に……?」

 

 操舵手のジーザス・バージェスがつぶやく。

 よりにもよって『白ひげと引き分けた男』が来てしまっては話が変わる。知名度が云々と言うどころか、実績が天と地である。

 こうして彼らと同じ対応を受けている以上、七武海の勧誘に応じたのだろうと感じていた。

 

「……しかし船長、それはどうでしょうか?」

 

 そんな重たい空気の中、海軍本部に侵入し交渉を行った過去を持つ、ラフィットがつぶやく。それに反応し、一同が彼の方を向く。

 

「船長から以前聞いた話では、あの男は人の下には付かない。……そうですね?」

「ああ、俺の前ではっきりと言いやがった。」

 

 その答えにラフィットは満足気にうなずき、続けて話す。

 

「先程、あの男は"スパンダイン"という者について聞いていました。つまり、船長……」

「ゼハハハハ、そうか、あいつはここを荒らしに来た。ってことだな!?」

 

「そう、そのとおりです」とラフィットが答え、彼らは悪巧みをはじめるのだった。

 

 

――夜――

 

「あれ?スパンダインさん。どうしたんです?」

「ご、五老星に報告があって…な。―――い、急いでいるんだ。と、通してくれ。」

「はぁ、貴方なら大丈夫でしょうけど…。」

 

 世界政府中枢の建物。その門兵は政府中枢に強いパイプを持つ大物を言われるがままに通す。

 しかし、いつもの尊大な態度と違う。どこか気の抜けた―――。機械的な。どこか虚ろな感覚をスパンダインから覚えた。それでいながらなぜか慌てた様に、首を傾げながらしばらく持ち場に立っていると、虫が肌に接触した程度の感触と共に突然睡魔が襲い、そのまま眠ってしまった。

 

「…………。」

 

 門兵に軽い一突きを入れた影は、それが眠ったことを確認し建物に入っていった。

 この日、スパンダインが目指す部屋までに出会った当直の見張りは、その悉くが原因不明で昏倒しているのが後に発見されることとなる。

 




 今回のメインは"黒ひげ"と"拳王様"のほんのちょっとの会話でした。(成立してないような気もしますが……)

 活動報告に強さについて書きましたので、それについての意見があればそちらにお願いします。

 今更ながら、拳王様はDBのようなことをワリと平気で出来るんですね。旧映画版の北斗の拳の描写見るともはや怪獣……。これ、最近知りました。

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