大海賊時代に降臨する拳王 我が名はラオウ!!   作:無機名

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 今回は世界の中心マリンフォードを目指している割に、ノンビリと道草食っている拳王様です。

 核戦争から時を得ずして、世紀末覇者として恐怖でこの世を統一する。ラオウのやった事業を文章にすれば短い話。

 しかし内容をみれば、短期間の間に大軍団を結成し、覇権をほぼ手中に収めんまでに軍団を急成長させる。
 その間に格闘家達を葬ったり、新しい拳の体得にいそしみ、外伝の設定では葬った格闘家たちから集めた拳法の集大成【ラオウの系譜】を残す。これら全てを同時進行で行いながら、王としての威厳と尊厳を磨き続ける。

 そんな世紀末で誰よりも多忙な日々を送った拳王様だから、多少ノンビリしてもいいと思うのです。
 しかし、原作主人公達はどんなペースでGL前半部を渡ってるんだろう……。原作開始から一年経ってないようだし……。


第11話

 噂が流れた。

 『世界最強』の異名を持つ男が、名も知れぬ風来坊に引き分けた。―――『最強』たる人物は老齢だ。ありうるかもしれない。

 最も、その強さを知るものであればあるほどデマだと思われていた。

 しかし、日が経ちただの噂話ではなく事実であるらしい。これに世界は色めき立った。【白ひげ】の異名を疎ましく思っている他の海賊、特に四皇【カイドウ】が『頂点は力を落とした。』そう思い『新世界』で四皇同士の抗争が起きる。

 それを海軍が大将二名を均衡を保つために出撃させ、なんとか鎮圧。これがニュースになる。

 

 尤も、事実はラオウとの引き分け以降、体調が良くなった白ひげが自ら蹴散らし、海軍は後始末を行った。……これが真相であるが、そこはやはり治安を守っている者達、スポンサーである世界政府を立てての報道であった。

 

 これらの騒動の原因は謎に包まれた人物であるとなれば、追わずにいられないのが人の性である。

 その人物に真っ先に行き着いたのはやはりと言うべきか、直接遭遇した海賊を除いて専門の調査機関を持つ世界政府だった。

 

 

・手配 の巻

 

 

 新聞がアラバスタの内戦が終えたことを報じた頃。ラオウが【赤髪海賊団】の船を降りてから2ヶ月近く経っていた。これまで彼がしてきたことは単純である。―――晴耕雨読。

 別に実際、畑を耕していたわけではない。この場合の『畑』とは彼の拳によって駆逐された憐れな海賊たちだった。

 

 降りた島から、再びレッドラインを目指している折、商業施設が発達した小さい島:アルコル島に着いたのは交易船であるが故に必然だった。

 そこでラオウは不愉快なものを見た。あの世紀末での荒廃の極みの世でありふれていた光景。

 要は『女は犯し、男は殺す』そんな光景。

 

 かつてラオウが組織した軍隊:拳王軍はこの世界の海賊の部類で言えば、秩序維持を行なっている海賊『ピースメイン』に当たる。

 あの世紀末の世界で、彼が一時期戦線を離脱せざる得ない重傷を負ったときは、彼の忠臣に統治した村々で暴走を始めた末端の兵を誅殺させていたほど厳しいものだった。

 

 そしてまた、こちらで出逢った【白ひげ】【赤髪】二人の大海賊は、ラオウの在り方と似通っていた。そのため、暴力で欲を満たす。その在り方の海賊が大多数であると分かっていても、荒れてしまったのは仕方が無いことだったのかもしれない。

 

「なんだぁ?お前は?邪魔する奴は死―――」[ドスッ!]

 

 言葉を言い切ること無く、額に指一本の指弾を叩きこまれ、そのまま停止し黙りこむ。外套を頭まで被り、それが何事もなかったかのように道の真ん中を歩こうとする者を海賊たちは取り囲む。

 

「おうおうおう、俺達を誰だと思ってるんだ」「殺す―、殺す―」「ぎゃはははは、死にたいアホなヤツ発見!!」

 

「……何処であっても、下衆はいるものだな。」

 

 その言葉に気色だった海賊団は、侮辱をくれた者を殺さんと各々の武器を振るう。武器で切り、突き、刺し、撃ち……一斉にありとあらゆる方法で私刑を下した。―――はずだった。

 よく見ると外套に血が噴き出た色合いを見せることがない。次に起きたのは各々の武器が砕け散った。鉄砲の弾ですら外套に穴を開けるのみで、地面に転がり落ちていた。唖然とすると同時に最初に額を小突かれた男が血煙を上げながら消し飛ぶ。

 気を取られた者達が次に見たのは、外套を被った男がその腕を振るったところだった。

 

「ぬんっ!!」

 

 裏拳の振り回す凄まじい風圧に、その場の者達は思わず腕で顔を庇い目を閉じる。暴風が止んで目を開くと、誰一人何も起こっていなかった。

 

「な、なにもね、え゛!?」「ぎゃはははは、空振りガよ゛っ?」「ばッ!?」「ゲッ!!」「ばぼあ~」

 

 ボロボロになった外套がズレ落ちる。この男、ラオウがやったことはただの裏拳ではない。闘気を拳に込め、空振りの暴風でそれをまき散らしたのだ。

 ほんの少しでも闘気を纏うか、受け流すことが出来れば、ただの暴風。だが、それらの技法を持たない者には正しく死の風だった。飛ばされた闘気で点穴を穿たれ、無残に飛び散るのみ。

 

「おい!貴様!俺の部下に何をしてくれてんだ!!俺様は「賞金首だろう。捕まって金にでも成るがよいわ。」ぐ……ぬ」

 

 名乗りをあげようとした船長らしき男はラオウに向けて気勢をあげようとするが、威圧感と共に発せられた言葉にあっさりと切られる。

 

「こっ……の、脳みそをぶちまけやがれ!!」

 

 そう言って両手に持った棍棒をラオウに叩きつけようとする。

 それより遙かに早く、ラオウの左ストレートが〈メゴッ〉という音と共に顔面にめり込み、動きを止められる。さらに踏み込み、打ち込んだ拳を捻ることでアッパーに変わり、腕力で10メートル近く上空に吹き飛ぶ。そのまま男は地に落ちる感触を味わうこと無く気絶した。

 

「ふん―――片腹痛いわ。」

 

 憐れにも血反吐を吐きながら、錐揉み回転をしつつ地面に落下した男を眺めラオウはつぶやく。同時にラオウは疑問を覚えた。

(……この島は白ひげの船から降りた島と同じ様な様相。しかし、住民に気概がない。)

 程なく疑問は解ける。

 

 辺りは静寂に包まれていた。すると、長らしきものが指示を飛ばす。叩きのめされた海賊を治療を命じた。

(なるほど、"惻隠(そくいん)"か。)

 そう考えたが、表情は明らかに怯えだった。

 続けて長は、ラオウに『早く出ていってくれ、金を払う。報復が怖いんだ。それに待ってれば海軍が来る。』と言い始めた。

 

「―――貴様、何故媚びる。何故おのれで戦わん。物は奪われ、妻が、娘が、女たちが陵辱され、男は殺され、何故それを黙認する?」

 

 ラオウがそう言うと。今度は、『あんな海賊達でも商売に成る。付き合わなきゃならない。アレは大海賊団なんだから、あんたに報復に来るぞ』などと脅しさえ始めた。

 

「ほぅ……それは【四皇】か?」

 

 大海賊と聞いて色めき立ったラオウだが、返答は"否"。最近『新世界』に来た大海賊団を率いたルーキーらしい。

 期待を裏切られ、落胆する。

 そしてこの手の者には何を言っても、このまま死ぬまでその精神の根から奴隷だろうと考え、『―――もういい、好きにしろ。』と吐き捨て、立ち去ろうとする。

 ―――そこで服の袖を引っ張られた。見ると、10を超えたぐらいの少年が俯向きながら歯を噛み締め、何かを言いたそうにしている。

 

「・・・何だ。」「―――たい」

 

 その様子から何を言わんとしているか。ラオウにはなんとなく分かった。だが、はっきりと言わない限り、意志を示さない限り何かする気は無い。

 

「聞こえんな。」

「強くなりたい!―――もう沢山だ。このまえ母さんが殺されて、今日は姉さんが連れて行かれそうになった。父さんは何時も『逆らっちゃダメだ。海軍に任せろ』そう言ってばかり……。そんなの嫌だ。俺はこの島を守りたい」

「名は?」「……リュウ」

 

「……よかろう。拳を教えてやる」

 

 こうして島のものに拳を教える事になった。

 ただ北斗神拳は教えない。伝承者で無いラオウには教える資格が無い。しかしそれ以外のラオウの知る武術・拳法。例えば南斗聖拳などならば、いくらでも教えることが出来る。

 最初教わりにくる者はリュウのみだった。しかし、報復に来た海賊をラオウがただ一人で蹴散らしていく内、教わりに来る者が増えた。

 その修練は過酷を極めたが、この現実に不満を持つものは多かったらしく、その執念から落伍者は無いままに島の者は上達した。一方で修練に参加しない者はラオウが倒した賞金首の金を使って、島の防御施設を作るようになった。

 

・・・・・・

 

 そして2ヶ月ほど経ったある日。島に珍客が訪れた。黒服を着込んだ初老の男だ。

 

「CP(サイファーポール)です」

「……下郎、なにか言ったか?」

 

 それは稽古の場となっていた場所に現れた。島民の稽古を終え、その後の瞑想を妨げられたために苛つきを見せるラオウを無視し、慇懃無礼に男は続ける。

 

「『世界最強の海賊』と引き分けたとされるラオウ。

 貴方を我々は脅威であると見なすとともに、味方として引き入れたいとも考えています。CPに、『世界政府』にご協力願います」

「断る。俺はな、奴隷ではない。犬猫でもない」

「そうですか。では……」

 

 言うやいなや、黒服の男は六式[剃]で間合いを詰める。

 

「[指銃]」

 

 必殺の一撃で心臓を一突き。『任務完了』と黒服の男:ラスキーは思った。

 

「ふん、面白い技だ。」

「ッ―――[剃刀]」

 

 [指銃]を放ったが目の前の男の筋肉は疎か、皮膚すら突き通せていない。

 体力の衰えで現役最強、CP9ロブ・ルッチには劣るだろうが、日々の研鑽で他の現役世代の連中に負けると思ってない。

 もし、完全な初見があれば【白ひげ】ですら討ち取れると思っていた。

 

「[嵐脚・乱]」

「足で飛ばす斬撃……。南斗白鷺拳の様な技だな。腕でやらんとは―――笑止。」

 

 そう言って目の前の標的ラオウは腕から連撃の斬撃を繰り出す。足と腕では、振りの早さにどうあがいても差が出る。あっさりと数で負け、更には斬撃単体の威力でも劣り、ダメージを受ける。

 現役を引退して指導員となった己に何故司令が下ったか。ラスキーはやっと分かった。

 ―――噂は事実だったと。指令は勧誘と暗殺であったが、暗殺など不可能だと。選ばれた理由は戦闘の後、生き延びて、逃げ延びて情報を持ち帰るべきなのだと。

 逃げなければならないと、空中を高速移動して逃げようとする。だが、判断を下すにはもう遅かった。

 

「[秘孔・気舎(きしゃ)]」

「!?な、何をした……しかも貴様!!」

 

 技を[月歩]をコピーされたらしく、追いつかれ両肩に[指銃]のようなものを突き入れられた。ラスキーは思うやいなや異常に気づいた。

 体がしびれて動けない。

 

「貴様の技を、目的を全て話してもらう。[秘孔・新一(しんいち)]」

 

 何が起きてるかわからないが、海軍秘匿の武術を、何もかもを喋らされる。自決しようにも出来ない。恐怖しか感じない。

 

・・・・・・

 

 次の日

 

 宿屋で目を覚ましたラスキーは疑問を持った。(何故―――この島にいるのだろう?)来た過程は覚えているが、何のために来たのか分からなかった。

 昨日の記憶がすっぱり抜け落ちている。それ以前の記憶に虫食いがある。そして体が重い。

 

 とにかく本部に戻り、報告時に待っていたのは解雇であった。首を捻るばかりでそのまま彼は隠居生活に入ることとなる。

 

 

 ここまでで判明したのは、人を爆散させる。人の記憶を操る。2つの能力を持ち、その戦闘力は【白ひげ】とすら引き分ける拳法家:ラオウ。

 

 政府はこの事実を受け入れ難く思いつつも、海軍に指名手配を依頼する。

 ただし、その技能が一体何なのか。その疑問を晴らすために生け捕りであることを条件に含めた依頼に海軍は頭を抱える事となる。

 

 

 WANTED!【拳皇:ラオウ】―――賞金額3億―――

 

 

 世界はデタラメな初頭手配額と、その額にして【ONLY ALIVE】―――生死問わずで無いことに、生け捕りであることに驚くこととなる。

 




 アルコル……名前の元ネタは北斗七星の8つ目の星、いわゆる死兆星です。
 住民は怯えて待つばかりの、経済だけで従順・秩序の死んだ島:アルコル島。拳王様の指導により島に危害を加えようと訪れる者は滅ぶ脅威の島と変わりました。

 あれ~、のんびりしてもらうつもりが、仕事してる拳王様……。ホントにストイック。
 偶然息子と同名の子供が『強くなりたい』と言って来たからついつい面倒を見てしまった。そんな面もありますが……これはいつの間にかラオウの国を作ったもの同然。
 こんな拳王様ありえないでしょうか?私的には有りだと思ったので書いてみました。これにて拳王様は『世界の敵』認定です。
 ただ、政府はまだ七武海に勧誘しようとか考えております。

 六式を覚えたことで、拳王様の移動が楽になりますね。面倒なので基本船で移動ですが、非常時に場所を問わなくなりました。
 ちなみに、私の中で 南斗聖拳>(技が出来る部位を限定してる壁)>六式 です。
 いちいち足だの腕だので出来る技が限定されてるなんてありえません。腕で出来るなら足で出来て、逆も当然出来ないと極めたことにはならない。
 るろ剣の安慈和尚の二重の極みと同じです。

 ラスキー…20年前のオハラ襲撃の時の戦闘員です。CP9のカリファのオヤジ。政府の奴を殺すのはマズイということで記憶を消されました。下郎の命はいらない。というのが大きいのですが。
 経絡秘孔など知らない政府はラオウが2つの能力を持っているのではないかと思っています。

 二つ名は【拳皇】になりました。四"皇"に匹敵する"拳"法家……拳皇です。アドバイスくれた方ありがとうございます。

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