クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

39 / 153
マフィアランド

 私は根っからの引きこもり体質のようだ。豪華客船に乗ったとしても部屋から出ず、小説を読んでいると自身でそう思ってしまったのである。まぁ乗客がマフィア関係者というのもあるが。なぜなら目をつけられたくない私は外に出る時は変装をしなければならないのだ。変装といっても帽子とサングラスだが。ちなみに変装はリボーンが用意してくれた。リボーンが言い出した時は嫌な予感しかしなかったが、普通で驚いたのは今朝のことである。

 

 今日はやりでも振ってくるんじゃないかと失礼なことを考えていると、扉が開かれた。私は気にせず、そういえば戦争は起きたなと、のんきに思っていると「なんでーー!?」という叫び声が部屋に響いた。

 

「ん。ランボは寝させておけばましになるだろ」

「う、うん。そうだね。ありがとう」

 

 食べ過ぎて気持ち悪くなってるランボを沢田綱吉から預かり、布団をかけてあげる。時々、さすってあげればいいだろう。

 

「じゃなくて!! なんで神埼さんがここに居るの!?」

「リボーンがこの部屋を使えばいいって」

「もしかして……神崎さんはリボーン達と一緒に船に乗ったの……?」

 

 一緒に乗ったのは事実なので頷く。

 

「神崎さんも無断乗船ーー!?」

「違う」

「そっか! 神崎さんもお茶の景品で当たったんだね! ごめん、悪いけどランボの看病頼んでもいい!?」

「それは別にいいが――」

「ありがとう!」

 

 教えてあげようと思ったのだが、沢田綱吉は行ってしまったので諦める。念のために袋を用意してからランボの背中をさすってると大人イーピンがやってきた。

 

「ここ部屋ですよ!! 沢田さん!?」

「ラーメンは諦めろ。ここは10年前の世界だ」

 

 ずっとドアを叩かれるのもうるさいので教えた。すると、大人イーピンは私の存在にやっと気付いたようで驚いていた。

 

「サクラさん!? お久しぶりです。お元気でしたか?」

「私は元気だが、10年後の私が元気かは知らない」

「何言ってるんですかー、サクラさん!」

 

 大人イーピンは鈍感だったのを忘れていた。幼い沢田綱吉を見ても気付かず普通に話していたのだ。話が通じると思ったのが間違いだった。

 

「川平のおじさんのお家どこかわかりますか?」

「……さぁ」

 

 川平のおじさんという名を聞いて、チェッカーフェイスを思い浮かべてしまった。下手なことは言えば、意識もしくは存在を消されてしまうので知らないフリをするしかない。復讐者に目をつけられるのもまずいしな。

 

「早くしないとラーメンのびちゃうんです!!」

「時が解決してくれるさ」

 

 大人イーピンは私の話を聞いていないようで、慌てていた。もう私は面倒になったのでスルーする。しばらくすると、よくわからない言葉が聞こえてきた。いつものイーピンだったので時間が過ぎたようだ。

 

「あ。イーピン、ランボの面倒見てくれないか?」

 

 何かいいながら頷いていたので、私の言葉は通じていたのだろう。帽子をかぶりサングスをかけ、やっと私は部屋から出たのだった。

 

 

 

 

 

 

 少し歩き回ると目的の場所を発見した。ドアの前で少し悩み、ノックをしてみる。反応がないので周りを確認してから「沢田綱吉が大変だ」と言ってみる。

 

「10代目に何か!?」

 

 勢いよくドアが開かれて焦る。自身でも棒読みすぎると思っていたのだ。ここまでの反応されるとは予想外である。

 

「神崎!! 10代目に何かあったのか!?」

「さっきのはウソ」

「ウソ……だと!?」

 

 キレると思い、身構える。しかし、彼はキレずに安心していた。その姿を見て、少し罪悪感を覚えた。

 

「おまえ……何してんだよ。一瞬、誰かわからなかったじゃねーか」

 

 そういえば、彼はすぐに私と気付いたな。ますますリボーンの変装に気付かないのが謎である。

 

「いろいろあって。それより、リボーンが君の手続きもしてくれてるから隠れなくていい」

「リボーンさんが!?」

「ん。君の侵入に気付いていたみたい」

「さすが、リボーンさん!」

 

 真っ赤なウソである。船に乗るときに私がリボーンに頼んだのだ。沢田綱吉が原作通り走り回ってるのは恐らくだが、侵入者がまさか手続きしている人物と気付いていないからだろう。私が早く獄寺隼人に問題ないと伝えればよかったのだが、手続きが終えてすっかり忘れていたのだ。

 

 獄寺隼人が沢田綱吉のところに案内しろといったが、走り回ってると思うので1度部屋に案内をすることにする。闇雲に歩くのは勘弁なのだ。部屋さえわかれば1人で探して戻ってくることも出来るだろう。

 

 偶然にも部屋の前で沢田綱吉と会った。リボーン達も一緒に居たので、もうマフィアランドに向かってると知ったのだろう。タイミングが良かったらしい。

 

「うげっ!」

 

 前言撤回。タイミングが良すぎたらしい。そういえば、獄寺隼人は無断乗船の他にビアンキと会うのを避けるために隠れていたのだった。倒れてる本人も手続きしたことを知り、忘れていたのだろう。沢田綱吉は獄寺隼人に慌てて駆け寄っているのを横目でみながら、私はビアンキに近づく

 

「リボーンが私に用意してくれたみたいだけど、あなたに似合いそうと言ってました。せっかくなので、どうぞ」

「そうなの!? ……似合うかしら? リボーン」

「似合ってるぞ」

 

 私が持っていたサングラスをビアンキが一瞬で奪い、リボーンに見せていた。リボーンが話をあわせてくれて助かった。ウソだとばれれば、ビアンキに殺される気がするからな。

 

 

 

 

 

 

 船から降り、リボーンから新しく貸してもらったサングラスをかけ周りを見渡す。思っていたより子どもが多く驚いた。そして、帰りたくなった。人の多さに酔いそうなのだ。

 

「10代目! どこから行きましょうか!!」

 

 私と違って彼は元気になったようだ。残念ながら沢田綱吉は今から入島手続きだぞ。彼に答えを教えてもいいのだが、結局裏マフィアランドに連れて行かれる気がしたので教えない。相変わらず不憫である。そして、その不憫な後姿を見送ったので私はリボーンを見る。

 

「やはりサクラの目的はこっちなんだな」

 

 リボーンは私の目的に予想を立てていたようだ。2日ほど前に、私がリボーンに頼んでここに来たのである。目的を考えるのは当然な気もした。

 

「じゃ、行くか」

 

 そのためかリボーンは反対することなく、案内してくれるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 用意してくれたジュースを飲み、本を読む。時々、聞こえてくる沢田綱吉の叫びは気のせいだろう。しかし、あまりにも助けを求められるので顔を上げて答える。

 

「私には彼らを止めるのは難しい。頑張れ」

「そんなーー!?」

 

 そう叫んだ沢田綱吉は海に落とされていた。不憫である。

 

「それでこいつはなんなんだ? コラ!」

「おめぇに用があるんだ。 そうだろ? サクラ」

「厳密に言うと違う。君達にだ」

 

 2人揃って「オレ達に?」と返事をかえされた。姿が赤ん坊なので何とも奇妙な感覚である。

 

「疑問をもたれることなくヴェルデと常に連絡を取れるか?」

 

 2人は顔を見合わせから返事をした。

 

「オレは無理だぜ」

「オレも無理だな。あいつは自己中だからな」

 

 予想通りの答えだったので落胆はしなかった。それに本命はこれじゃない。これだけならば、リボーンに頼んで聞いてもらえばいい。私はどうしても今からする質問の反応をこの目で見たかったのだ。

 

「ヴェルデに何かあるのか?」

「無理ならいいんだ。それより、もう1つ聞きたい。この島のセキリュティを信用して聞く。――君達は呪いを解きたいか?」

「詳しく話せ、コラ!!」

「コロネロ、止めろ。――頼む」

 

 リボーンが珍しくコロネロに頼んだおかげで、ライフルは背中に戻った。

 

「サクラ、オレ達のためにおめぇが苦しむ必要はねーんだぞ」

「……ん、私は自身が1番大事だと思ってる。だから聞いておかないと動けなくて後悔する気がしたから言った。私は器用じゃないし、力もない――覚悟だって弱い。聞いたところで動けない可能性の方が高い。でも、しないより良い気したんだ」

 

 リボーンが私の顔をジッと見ていたが、私はコロネロを見て言った。

 

「リボーンが居るとしても危険なことを言ったのはわかってる。だから多少のことなら、自分以外のために知りたがった人の方が許せたんだ。……悪い」

 

 頭をさげて謝る。話せないことになのか、自身のせいで呪いが解けなくなるかもしれないからか、よくわからないが、謝りたかった。そして、すぐに顔をあげて2人の顔を見て言った。

 

「私は自身が大事だから、君達が幸せにならないと困るんだ。頑張ってくれ」

 

 なんとも他力本願である。しかし、リボーンはすぐに「わかったぞ」といい、コロネロはよくわかってないにも関わらず「いいぜ」と言った。

 

「……そろそろ助けてあげたほうがいい気がする」

 

 沢田綱吉の声が聞こえなくなってきたので教える。コロネロが助けにいってくれたようだ。それを見て、小さな声になったが「リボーン、ありがとう」と言った。

 

 私はリボーンを大人のように接したり、呪われた赤ん坊と言ったことがある。何か知ってると気付いてるにも関わらず、リボーンは1度も聞いてこなかった。いろんな意味を込めた私のお礼にリボーンは「問題ねぇぞ」と返事した。男前過ぎるだろと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 沢田綱吉の叫びを聞きながら本を読んでいると電車がやってきた。そろそろ砲撃の音が聞こえてくると思ったので、リボーンとコロネロの近くに移動する。

 

「どうした? サクラ」

「君達の近くが1番安全な気がする」

「え? 安全って?」

 

 沢田綱吉にも聞こえたようで質問されたが、内藤ロンシャンが降りてきたため話が流れる。そして恐らく戦争がおきて、私の言葉は完全に忘れ去られるだろう。

 

 音が凄いと思ってると、リボーン達は眠っていた。

 

「神崎さん、行こう!!」

「私はリボーン達が起きた時に、君達が向かったと教えるためにここに残る」

「危ないよ! 避難しなきゃ!」

 

 必死に説得するので困る。沢田綱吉の近くに居る方が危ないし、ウザイ奴もいる。城についても料理を作るのは苦手だし行きたくない。そもそも彼らが起きればすぐに終わるしな。

 

「私は足が遅いし、君達だけで家族の様子を見に行った方が早い」

「で、でも……!」

「それに砲撃が近くに落ちてきた場合、彼らは起きると思う」

「……そうかも」

 

 最後の言葉が決め手だったようで、沢田綱吉達は「気をつけてね!」といい走っていった。その姿を見届けた後、「起きてるだろ?」と言ってみる。

 

「よく気付いたな」

「なかなかの腕だぜ、コラ!」

 

 どう考えてもこの緊急事態に寝るほうがおかしいだろ……。彼らが寝たのは沢田綱吉の動きを見たかったと予想しているが。

 

「スカルにも聞いたほうがいいんだな」

 

 リボーンは君達という言葉にスカルも入ってることに気付いてるようだ。

 

「元々、期待はしてないけどな。それに彼が上手くやれるとは思えないし」

 

 スカルにはそういう種類の信用はないらしい。2人揃って頷いた。

 

「他の奴にも聞いてみるか?」

「……これ以上は怖い」

 

 ここに行けば会えるから聞いただけなのだ。引き際を間違えれば、未来が変わりすぎる気がする。リボーンも納得したらしく、何も言ってこなかった。

 

「どこか安全なところはあるか? リボーンと一緒に行き沢田綱吉と合流してもいいが、私は足手まといだろう。コロネロは上空から攻めるだろうし」

 

 私の言葉にコロネロが驚いていた。彼らが考えてる行動を言ったからだろう。リボーンが驚いていないのは慣れてしまったからだと思う。

 

「ここに残れ。オレが面倒みてやるぜ、コラ」

「助かる」

 

 コロネロが守ってくれるらしい。ここに飛んでくる弾を上空で弾を落としてくれるのだろう。私は暇なので本を読むことにする。コロネロが「なかなか肝が据わってる奴だぜ!」と言ったので本を開こうとする手を止める。

 

「君の腕を信頼してるだけ。ラルの腕を信頼してるともいうが」

 

 コロネロの戦闘シーンはあまりないのだ。どちらかというとラルの人柄と腕の方がわかる。そういう意味でコロネロは安心できるのである。

 

 そして、私の言葉を聞いて「下手なとこは見せれねーな」とリボーンがコロネロに挑発まがいのことを言っていたが、私は本を読みたいのでスルーした。

 

 

 

 

 

 終わったぜという言葉に顔をあげる。思ったより本が進まなかったな。

 

「お疲れ。あっちはもう終わってるはず」

「お前はどこまでわかるんだ?」

 

 コロネロは話の流れで私がいろいろわかることには気付いてるが、どこまで知っているか気になったのだろう。

 

「ルーチェやアリアの方がいいと私は思う。まぁ君が初対面の時にラルを口説き3ヵ月無視されたということはわかるが」

 

 コロネロの反応は微妙だった。恐らくそのことを知ってるからではなく、役に立たないことだったからだろう。私もそう思から気持ちは凄くわかる。

 

「あ。女子と風呂入るのは止めとけよ。ラルに会った時に伝えるからな」

「は、入るわけないぜ! コラ!!」

 

 笹川京子と入ることを知っているので言えば、なぜかコロネロは焦っていた。普段から入ってるかもしれないと思い、疑いの目で見ると更に焦っていた。……判断が難しい。これはラルに嫌われることに焦ってるからだろうか……。

 

「どっちでもいいか」

 

 興味がそこまでないので思考するのをやめた。コロネロが何か言っていたが、本を読むためスルーする。

 

 

 

 

 コロネロの説得?が沢田綱吉とリボーンが迎えに来るまで続いたので、沢田綱吉が気になり聞かれので教える。

 

「恋愛はほれた方が負けって意味だ」

「どういうこと? それに恋愛って勝ち負けとかじゃないような……」

 

 三浦ハルに似たようなことを言われるはずだぞ。というツッコミは我慢し、少年マンガの主人公は鈍感が多いしな。と思いながら温かい目で見る。

 

「な、なんでそんな目でオレを見るのーー!?」

 

 温かい目で見たつもりが、鈍感キャラ以外のマンガを探していたせいで遠い目になっていたようだ。

 

「ハーレムになるためにはしょうがない」

「意味わかんないからーー!!」

 

 真面目に答えたのにツッコミされた。理不尽である。

 




ハーレム=鈍感

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。