平和である。
雲雀恭弥は譲れる範囲だったらしく、特に何もなく平和な日々を過ごした。そもそもあれから雲雀恭弥に会ってないしな。調子に乗って咬み殺されるのはバカと私は理解しているのだ。それに何度も言うが、彼とは会いたくない。声に興味があるのは否定しないが、会いたいとは思わない。
慌てて周りを見渡す。またフラグを立ててしまったかと思ったがセーフだった。よく考えれば、モレッティの時も大丈夫だったな。あの時は原作知識があったおかげで会わずに助かったかもしれないが、元々私は主人公体質ではないのだ。考えたからといって会ってしまうわけがない。全て私の心配しすぎだったのだろう。
……その前にここには雲雀恭弥は来れないな。
簡単なことに気付かなかったのはこの私が珍しく小説を読んでいるせいだ。決して私がバカだからではない、と思いたい。……まぁ人目があるからと、マンガじゃなく小説を読んでいるので見栄っ張りというのは否定しないが。
それにしても遅いな……。30分ほど待ったのだが。もう待つのをやめようかと思う気持ちもあるのだが、結局気になると思うので待つことにする。それに、心配する兄から逃れてここに来たのだ。簡単に諦めるのはもったいない。
もう少し待つため再度本に目を通そうとした時、隣の部屋が騒がしくなった。どうやら待ち人が来たようだ。まぁ後30分以上は待たないといけないと思うが。といっても、今から私もお風呂に入るので30分ぐらいは問題ないのである。
そう、今私は銭湯に来ているのだ。ディーノとの約束を守るためである。原作通りに彼が沢田綱吉と会えていればここに来るとわかっていたので待っていたのだ。『予定を空けておくが会えるのかわからない』とは私のせいで原作がずれれば会えないという意味だったのだ。
無事に原作が進んだことに安堵し、ゆっくり浸かれると思いながら脱衣所から風呂場に進む。しかしふと足が止まる。……イーピンが居たのだ。1人でこっちに入るのか……。悩んだ末、声をかけることにした。
本音では子どもはあまり得意ではないし会話が苦手。さらにイーピンとはまだ接触したことがないのだ。1人でこっちに来たということは問題ないということだろうと思い、気にせず風呂場に行こうとしたのだが、なぜか沢田綱吉の顔が浮かび、気付けば足がイーピンの方へ向かっていたのである。
急に知らない人が目の前に来たのでイーピンは首をひねっていた。そして私は困惑していた。足が向かった時点で声をかけようと決意したのはいいが、中国語なんて話せない。いや、よく考えろ。原作でイーピンは沢田綱吉の言葉に恥ずかしがっていたじゃないか。日本語は理解できるはずだ。
「……私、沢田綱吉、知り合い。君の事、知ってる」
なぜか片言で話してしまった。イーピンが外国人だからだろうか。少し変だったが、イーピンは私の話が通じたらしく頭を下げていた。つられて私も頭を下げる。
「えっと……だから、一緒に入らない?」
私は進化したようで少し片言がましになった。イーピンの反応を見ると私を睨んでいた。嫌だったのかと一瞬思ったが、イーピンは慣れるまで照れて睨らむことを思い出した。ついでに照れると爆弾の危険性も思い出した。まぁ私は気の利いたことが言えるわけがないので問題ないだろう。
隣は騒がしがったが、イーピンは大人しく、予想通り私が気の利いた話題を出せるわけもなく女湯は静かだった。それでもお互いに背中を流したりしたので悪い空気ではないのだろう。本音はイーピンの手伝いをしようとしただけで私の背中は良かったのだが、イーピンがスポンジを持ってやる気満々だったのでお願いしたのだ。
イーピンが必死になって洗ってくれたのでお礼を言えば、普通に喜んでいた。短時間で慣れるとは裸の付き合いというのは凄いものである。妙なところで感心した。
お互いに体を洗ったところで事件が起きる。隣からランボが飛んできて湯の中で溺れていたのだ。イーピンがすぐに向かったが、体格の問題でランボを救えることは不可能だったようで私がひきあげる。
「が……がまん……。うわああああ!」
……どうしろというのだ。とりあえず、鼻水が湯に入るのは汚いので湯から遠ざける。その時に私の肌に鼻水がついた気がするので私も泣きそうになった。最終的にイーピンが洗ってくれたのにと、腹が立ったので強制的にランボの髪の毛などを洗う。手榴弾などが出て来たので、桶に入れておいた。全て洗った後に、ピンが抜けなくて良かったと今更ながら安堵した。その場のノリというのは恐ろしいものである。
私にされるがままのランボは泣き止み殿様気分になっていた。いろいろ面倒なのでツッコミはせず、風呂に浸からせることにする。ただイーピンと違い、ランボは暴れる危険性があったので脇に手をいれて動きを封じて一緒に入った。私もゆっくり浸かりたいのだ。
「ちゃおッス」
おい。なにナチュラルにこっちに居るんだ。君がこっちに来るのはまずいだろ。一応、肩まで浸かってるが近くに来ると見えるのだ。私の無言の訴えが聞こえたのかリボーンは男湯の方をずっと見ていた。
「ランボが戻ってこねーから、ツナがうるせーし見に来たんだ」
「……ああ。なるほど」
確かに見た目は子どものリボーンが女湯に行くしかなかったのだろう。彼は紳士らしいので若い女性は私以外に見当たらないのもあったと思うが。現に1度もこっちを見ない気がする。もしかしたら私の姿を確認した時から男湯の方を見ていたのかもしれない。
リボーンがこっちが見ないと信用できたのでランボを見る。リボーンに男湯に連れ帰ってもらおうと思ったのだが、「いやだ、いやだ。ランボさんはこっちで居るもんね!」とバタバタと暴れ始めた。小さいといっても力が強い。手を離してしまいそうだ。
「この位置で暴れるとまた溺れる」
私の言葉にランボが動きを止めた。溺れたのが少しトラウマになっているのだろう。
「リボーン、こっちで面倒みる。後で服とタオルだけ更衣室に持ってきてくれると嬉しい」
リボーンは「わかったぞ」と言って飛び跳ねながら男湯の方へ消えていった。……腰に巻いたタオルがよく落ちなかったな。
「え!? ランボの面倒を見てくれるって!?」
沢田綱吉の声が響き聞こえてきた。すると、「ガハハハ! ランボさん、こっちにいるもんねー!」と、ランボが負けずに叫んでいた。イーピンも何か言っていたが、私にはわからなかった。恐らく叫んだランボを怒っていると思うが。
「すいません! 本当に迷惑かけてすみません!」
沢田綱吉の謝る声が聞こえて、女湯に向かって頭を下げてる姿が想像できた。気にするなという意味で、ランボとイーピンに「肩まで浸かって100数えたら出よう。後でジュースおごってあげる」と言った。大きな声で2人で仲良く数え始めた。これで彼は安心しただろう。……2人とも100まで言えなかったのは計算外だったが。
風呂からあがりランボを降ろせば、脱衣所で走り回りだした。イーピンも追いかけ始めてしまったので困ったことになってしまった。私は追いかける気はしなかったので、バスタオルを広げて通り道をふさぐ。狭い場所なので上手く行くと思ったが、小さくてもマフィアらしく簡単に逃げられた。私は諦めて自分の服を先に着ることにした。何事も諦めが肝心である。
服を着ながらランボの服を発見する。リボーンが置いてくれたのだろう。仕事が早い男である。もてるはずだと、思った。
私が服を着終わるところでイーピンは我に返ったらしく、私に頭を下げてから身体を拭き始めた。どうやら自分のすることを思い出したらしい。ランボは追いかけっこの相手がいなくなり面白くなくなったのか、裸のまま椅子に寝転び始めた。
「イーピン、着替え終わったし先に飲んでいいよ」
私からお金を受け取ったイーピンは1人でも問題ないようで自動販売機の方へ行った。ふと横を見るとランボは慌てて服を着ていた。それを見て私は「自分で着れるのは偉い」と、褒めた。お世辞ではなく本心である。実際、ランボにどうやって着せるべきか悩んでいたのだ。ラッキーである。
イーピンは牛乳を買ってきたらしい。頭を下げていて聞いたことがあるような中国語を使っていたので恐らくお礼を言ったのだろう。お礼はいいので変わりに「サクラはオレが守る」といいそうな人を紹介してくれといいたかったが、中国語を話せないので諦めた。非常に残念である。白まんじゅうがほしい。
残念感を漂わせながらイーピンにすぐ戻るといい、私は着替え終わったランボと自動販売機に向かう。「ランボさんはブドウ♪ ブドウのジュース♪」という斬新な歌を歌っていたので紙パックのブドウジュースを買ってあげた。私はスポーツ飲料を選んだ。
一口飲んだので私は、ランボが大人しくジュースを飲んでる間に髪を乾かすことにする。イーピンにもドライヤーの使い方を教えてあげた。髪は少ないがやはり女の子なので気になると思ったのは正解だったらしい。丁寧に乾かしていた。ちなみにランボには勢いで拭いた。ジュースが飲み終わるまでの時間との勝負だと思ったのだ。
案の定、ジュースが飲み終わればまた暴れ始めそうだった。このままだとまた走り回る気がしたので慌ててリボーンにメールを送る。リボーン達はもう準備が出来ていたようで、「わかったぞ。外に出て待ってるな」とすぐに返事が来た。
イーピンに外に待ってるといえば自分でコートを着始めたので、私も自分のコートを着てからランボにコートを着せる。また暴れると面倒なのでそのまま抱き上げて外に出た。
外に出ると沢田綱吉の姿が見えたのでランボが私の腕から抜け出して走っていった。イーピンはランボをまた追いかけていった。本当に元気だな。私はかなり疲れた気がする。
「えーー!! ランボ達の面倒を見てくれたのって神崎さんだったのーー!?」
「……そういうことかよ。道理でリボーンが簡単に任せたと思ったぜ……」
沢田綱吉に抱きついたランボが私の存在を教えたらしい。イーピンはディーノに教えていたようだ。挨拶するべきだと思い、彼らのところへ向かうことにする。
「神崎さん、ゴメン! ちび達の世話してくれて……」
「すまん! オレが女湯に飛ばしちまったみたいなんだ」
ランボが女湯に現れた原因が判明した。ディーノは部下が居ないので銭湯でも何かやってしまったらしい。ありえそうなことなので驚きはせず、彼らに返事をする。
「気にしなくていい。それにイーピンは1人でも問題なかった」
沢田綱吉も迷惑をかけるのはランボと思うところがあるのか、抱き上げてるランボを見ていた。
「おっぱいあったー」
反応はバラバラだった。ディーノは急に空を見て、リボーンは平常心、イーピンは驚いて沢田綱吉は「なっ、なっ、なっ」と言葉にならないことを発していた。ちなみに私は熱いので恐らく顔が赤くなってるだろう。
「……気にしなくていい」
辛うじて言えたのは先程と同じ言葉だった。原作でもランボはそういう発言をしていたので、これは忘れていた私のミスなのだろう。もしくは女湯にランボを飛ばしてしまったディーノのミスである。沢田綱吉が気にすることではない。と、思う……。
「……じゃぁ」
もうこの場にいるのに耐えれなくなり、ランボ達の荷物を無理矢理押し付けて去ることにした。沢田綱吉の引き止める声が聞こえたが、立ち止まれないのは許してほしい。
足早に歩いていると、急に腕を掴まれた。集中して歩いていたので気付かなかった……。必死に掴まれた腕を振る。しかし、恐怖で力が上手く入らないし声も出せなかった。
「す、すまん! オレだ! ディーノだ!」
顔を見れば本当にディーノだった。この道は少し暗かったが月明かりで顔を判別するぐらいは問題なかった。つまり、私はかなり焦っていたようだ。思わず安堵の溜息が出る。
「危ないから送ろうと思ってよ。逆にオレが怖がらせちまったな……」
ディーノは気を使ってくれたらしい。彼らしいといえば彼らしいが……
「……送ってくれるのはいいけど、慣れない日本なのに1人で帰れるの?」
「あ」
これも彼らしいといえば彼らしいと思ったので苦笑いした。
「まっ……何とかなるさ。送るぜ」
これは確実に何時間も迷子になる。送ってもらった後、リボーンに連絡しようと思いながら、ゆっくりと歩き始めた。
「お前から会いに来るって言ったのに来ねーなと思ってたんだぜ。まさか銭湯で会うとは……。あの時、お前はエンツィオがツナん家の風呂を壊して、オレが銭湯に行くとわかっていたのか?」
ディーノの問いに悩む。なんと答えるべきかわからないのだ。
「……わりぃ。話さなくていいと言ったのに聞いちまった。今のはなかったことにしてくれ!」
悩んでる間にそういってディーノは立ち止まり私に向かって頭を下げた。『ボス』なのに簡単に頭を下げるとは……。それもまたディーノのいいところなのだろう。
「五分五分だ」
「え?」
「君が銭湯に行く可能性は五分五分だった。私のせいで君の運命をかえてしまったんだ。だからこの前、君に助言をいい少しでも戻そうとした。上手く戻るかわからなかったから五分五分」
「お前は……戻るほうに賭けたからあの場にいたってことか?」
ディーノの問いには返事をしなかった。彼は確信を持って聞いてると思ったからである。ふと公園に目が止まったので入りブランコに座ることにした。話が長くなる気がしたのだ。ディーノはブランコには座らず、もし私が漕いでも邪魔にならない位置で立っていた。それを見て兄とは違い大人だなと感心した。
「……なぁ、どうして戻らないといけねーんだ? エンツィオがツナん家の風呂を壊さなくていい未来でもオレは問題ねーと思うんだが……」
「どれがきっかけになるかわからない。細かいところをいれると私が知ってるだけでも――君は5回以上は死にかける。ボンゴレ10代目候補は数える気にもならない」
私の言葉にディーノは沈黙ししばらく風の音だけが聞こえた
「……全て話して回避すればいいは無責任な発言だよな……」
ディーノも気付いているのだろう。1つ歯車が狂えば、簡単に命を落とすかもしれない、そういう世界に生きてることを――。
「リボーンに聞いたか? 未来の私が姿を消したって。ずっと考えていたんだ。最近、あれは私自身が選んだ道かもしれないと思うようになった。……彼の顔を見れば許してもらえる気になるんだ。でも、ダメなんだ。私がわかることは少なすぎる。私の居ない未来が正常なんだ――戻そうと思っても1人の力では限度がある。それに私は自身の身を優先してしまう」
この前だって雲雀恭弥に負ければ自身の身が危険と感じ知識を使って好き勝手にやったのだ。私は自己犠牲という考えはもっていない。
私は平和にマンガを読めればいい。……今まではそう思っていた。
もちろん自己犠牲という考えは持ってない。しかし、マンガを読めればいいというだけではない。なぜか沢田綱吉の顔が浮かぶのだ。そのせいかわからないが、知識が足りないと思うようになった。
「……リボーンには話したのか?」
首を横に振りながら言った。
「彼に直接話す勇気は私にはない。彼にとって私は優先順位が低いからな」
私は沢田綱吉と話したりしているので、一般人に比べると優先順位は高いだろう。しかし、関係者の中では私は低い方だ。
「ちなみに沢田綱吉は論外だ。彼は幼く優しすぎる。そして力がない。だから君に話した」
まだ2回しか会っていないのだ。それなのにディーノに話したのは、我が身を優先したまでだ。彼ならば上手くリボーンに伝える可能性が高く、力があるので困ったときに何か手を打ってくれると思ったからである。
ザッという音と同時に私の視界に足が見えたので顔をあげた。ディーノが私の目の前に来たらしい。
「……なんだ? 君を利用しようと考えているから失望したか? 私は最初からそういう奴だぞ」
一体何を勘違いしていたのだという意味でディーノを見る。彼にしては珍しく眉間に皺を寄せていた。ふと頭に何かが乗る。ディーノの手のようだ。
「お前は子どもだろ。子どもが大人に頼るのは当たり前だ。……今まで1人でよく頑張ったな」
ガシガシと頭を撫でられたので下を向く。「お前……髪、ちゃんと乾かせよ!?」と叫んでいたのでタオルを頭に乗せれば、ディーノが四苦八苦しながら拭いていた。タオルの端を私が掴んでいたので拭きにくいと思うが、文句は一切言わなかった。
髪を拭き終わり、いろいろと落ち着いたので水分補給する。飲みながらスポーツ飲料を買って正解だったなと思った。冷たいのは我慢する。
その姿を見て慌ててディーノが自動販売機へ走っていった。何か温かいものを買いに行ってくれたのだろう。
「サクラ!!!」
兄の声が聞こえた。幻聴と思いたかったが、「とぉ!!」と言いながら駆け寄ってくるので本人なのだろう。
「サクラ! 心配したのだよ! いつまでたっても帰ってこないし……。ケイタイもマナーにしたままで気付かなかったのだろう?」
言われて気付く。カバンに入れっぱなしだった。
「こんな遅い時間に外に出るのは反対だったんだよ! いつでも出れるようにすると約束したから僕は許可したんだよ!」
兄が珍しく私を説教し兄のようだった。少し驚いているとディーノが帰ってきた。状況を理解したようで私の隣にたって「すまん!」と頭をさげた。
「君は確か――地面が趣味の人だね!」
兄の言葉に転びそうになった。そういえば、そういうことになっていたな。隣を確認すれば若干だが顔を引きつらせていた。この状況だとツッコミしにくいのだろう。
「……どういうことだい?」
「すまん。オレがこいつを引き止めてしまったんだ」
私が兄の問いに答える前に、ディーノが私の頭をガシガシと撫でながら謝った。
「違う。私が話そうと思って先に公園に入った」
本当のことを兄に教えれば「そうだったか?」とディーノは笑いながらガシガシと私の頭を撫でる。彼が手を離さないのはいい位置に私の頭があるからだろう。失礼な話である。もっともディーノが持ってるココアに釘付けになってる私の目もかなりの失礼だと思うが。
私の視線に気付いたのか、「わりぃ」と言いながらココアを渡してくれた。頭に手が乗ってることは許してあげよう。私は心が広いのだ。
「……そんなバカな。僕のポジションが……」
ぶつぶつと呟きながら兄が走り去っていった。
「お前の兄貴、どうかしたのか?」
「さぁ」
兄がおかしいのはいつものことである。しばらくすれば家に帰ってくるだろう。ディーノには兄のことは気にしなくていいといい、送ってもらった
別れ際、「いつでも連絡してもいいからな。一人でぜってぇ悩むなよ? なっ!」と、言いながらディーノがアドレスを渡してきた。
「ちょっと待って。君の部下の連絡先もほしい」
「ん? じゃぁロマーリオでいいか? おっと、その前にロマーリオのことはわかるのか?」
首を縦に振る。ロマーリオは知ってるので教えてくれるとありがたい。
私の返事をみてもディーノは驚きもせず教えてくれた。私は数週間後にディーノがケイタイを壊すことを知ってるので、これで問題ないと安堵する。そしてふと思ったので聞いてみる。
「……用がないのに連絡してもいい?」
「ああ! もちろんいいぜ!」
許可がもらえたので今度送ることにしよう。しかし、何を送ればいいのかわからないな。少し悩んでる間に家に着いたのでお礼を言う。すると、頭をまたガシガシ撫でられた。気付けば頭に手があるのでそれほどいい位置なのだろう。
念のためにディーノと別れる前に沢田綱吉の家を教えれれば理解しているようで安堵した。そういえば、1度も転んでないな……。
「どうかしたのか?」
私の視線に気付いたのかディーノが聞いてきたので「なんでもない」と答える。私はあまり信用がないようで「本当か?」と何度も聞かれてしまった。少し適当に返事をしだしたところで、やっとディーノは納得したようだった。
彼が1人で帰るのが心配で少し見ていようと思っていたが、ディーノは私が家に入るまでは帰らないというので「おやすみ」といい、家に入った。靴を脱ぎながらリボーンにメールを打っているとお母さんが駆け寄ってきた。
「遅かったじゃない。心配したのよ。 あれ? お兄ちゃんは?」
「さっき会ったけど、どこかへ走っていった」
お母さんは「サクラと会ったなら大丈夫ね」といいながらリビングへ戻っていった。私はいろいろと疲れたのでリボーンの返事を確認してすぐに眠った。
誰も兄のことを気にしなかったが、朝に汗だくになって帰ってきたのは家族全員で驚いた。
もう少しカットすればよかったかも。