クラスメイト K [本編&おまけ完結]   作:ちびっこ

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時期はサクラが中2。
2015年のひな祭りに書いたっぽい。


ひな祭り

 私にとって1年でもっとも嫌いな日がバレンタイン。もっとも面倒な日はひな祭りである。

 

 

 

 

 憂鬱だ。普段なら放課後に近づけば嬉しいはずなのに、気が重い。家に帰りたくない。

 

「はぁ」

 

 私が溜息を吐いていると、ツナがこっちを見た。彼は私の溜息に反応するのは仕様なのだろうか。……そんなわけないか。彼は周りをよく見ているだけだ。

 

 HRが終わるとツナが私のところへやってくる。が、話をする時間はないだろう。そういえば、去年も同じようなことを思った気がする。

 

「サクラ、迎えにきたよ!」

 

 私の予想通り、颯爽と現れる兄。なぜ当たり前のように教室に入ってくるのだろうか。雲雀恭弥は何をしている。

 

「咬み殺されるぞ」

「心配いらないよ、雲雀君の許可はとってる」

 

 おい、仕事しろ。そう思ってしまった私は悪く無いはずだ。

 

「さぁ、帰るよ! サクラ!」

 

 さっと横抱きにされ、運ばれていく。ツナ達に挨拶する時間も無かった。

 

 そして、どんどん小さくなっていく校舎を見て思った。……雲雀恭弥は許可したほうが風紀が乱れないと判断したな。それでいいのかとツッコミしたいが、悲しいことにその判断は間違っていない。

 

 私の足で15分かかるはずの家に、数分で到着した。揺れて気持ち悪くなったりすれば文句がいえるのに、兄がそんなミスをするわけもなく、私は遠い目をするしかなかった。

 

 毎年のことだ、もう諦めよう……。

 

 頼りになる父も今日は助けてくれないので、私は腹をくくった。

 

 

 

 

 

「さすがサクラだ。世界一可愛いよ」

「……ありがと」

 

 ほんの少しニヤけながら返事をする。

 

 普段の私なら、兄がまたバカなことを言ってると思うが、今は違う。鏡に映った私は自身でも結構可愛いと思うのだ。鼻歌を歌いたくなる。

 

 ひな祭りは毎年、母と兄の手によって着飾られる。

 

 面倒で憂鬱なのは間違いないが、これでも私は女だ。少しでも可愛くなれば、テンションがあがるのだ。……大丈夫、自身でも難儀な性格だとわかっている。

 

 ちなみに母が私に着物を着せ、兄が化粧と髪を結う。不思議なことに女の私や母より兄の方が腕がいいのである。着物を着せることもだ。しかしそれだけは私が断固拒否し、母がしている感じだ。

 

 パシャパシャと音がする中、両親にも褒められる。ちょっと笑えば、さらに眩しくなった。流石にやりすぎだったらしく、兄が父に怒られていた。これも恒例行事である。

 

 反省しカメラを一旦置いた兄は、スケッチを始める。もちろん誰も驚かない。動くなと言われないので、私は放置している。もう好きにすればいいと思う。

 

 出来栄えに満足したのか、次はケイタイを取り出した。今度はケイタイで写真を撮るようだ。慣れてはいるが、鬱陶しくなってきたので兄の方を見るのをやめた。

 

「……サクラ、外へ出かけよう!」

 

 兄の言葉に反応して私が振り向いたところを連続写真で撮ったようだ。音でわかった。恐らく最後は呆れた顔になっているだろう。

 

「疲れるから嫌」

 

 着物で外を歩くのは大変だからな。

 

「サクラが去年に引き続き、並盛の風景と一緒に撮らせてくれない」

 

 床をダンダン叩き、嘆く兄を見て、溜息を吐いた私の反応は正しいと思う。

 

 

 

 

 兄に手を引かれ、ゆっくりと歩く。兄は足場のいい道をちゃんと選んでるようだ。

 

「どこで撮るつもりなんだ?」

「並盛神社だよ」

 

 その距離なら大丈夫だろう。無理と思えば兄に横抱きされる前に、タクシーを呼ぼう。もちろん兄のおごりで。

 

 そんなことを考えていると、偶然ツナ達と会った。

 

「神崎……? すげー似合ってるのな!」

「う、うん! 可愛いよ! サクラ!」

「……詐欺だ」

 

 三者三様の褒め言葉をもらった。まぁ彼らもこれで女の化粧には気をつけるだろう。

 

 彼らと別れた後、無事に並盛神社で写真を撮り、家に帰った。

 

 残すはご馳走のみ。私は上機嫌だった。

 

 

 

 そろそろ寝ようかという時間に電話があった。ディーノからだ。

 

「どうしたんだ?」

 

 こんな時間にかけてくるのは珍しい。向こうは夕方ぐらいかもしれないが、こっちは夜中だ。余程のことがなければ、ディーノは電話をしてこない。

 

『……あ。そっちは夜中か……、すまん』

 

 どうやらドジバージョンのディーノだったらしい。

 

「大丈夫、まだ起きてた。それで何?」

 

 流石に起こされたら文句を言っていたが、ギリギリセーフだ。

 

『着物姿が似合ってたぜ』

 

 ちょっと待て。どういうことだ。

 

『桂から珍しく写真が送られてくるから、一瞬何事かと思ったぜ』

 

 兄の仕業のようだ。後でハリセンで殴ろう。

 

「削除よろしく」

『そういうなって。すげー可愛いじゃねーか』

 

 ダメだ。向こう大人で褒めるのは慣れている。言葉が続かない。

 

『今度はいつ着るんだ?』

「……来年」

『次は1年後かよ……』

 

 なぜそんなに残念そうな声を出す。外国人からすれば着物は憧れるかもしれないが、去年の正月に笹川京子達の着物姿を見てるだろ。

 

「き、君が頼むなら着てもいいけど」

 

 しかし口から出た言葉は違った。

 

『本当か!? 約束だぜ』

 

 違ったが、ディーノがそこまで喜ぶならいいだろう。ただ……――。

 

「君が頼めば、着物姿ぐらいいつでも見れるだろ」

『そうかもしれねぇが、オレはお前の――』

 

 途中で言葉が切れたので、首をひねる。何か緊急事態が発生したのだろうか。

 

「切ったほうがいいみたいだな。頑張れよ」

 

 ディーノが何か言う前に切った。マフィアのボスも大変だなと思いながら、私は眠りに落ちた。


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