Muv-Luv Alternative ~もう一人のイレギュラー~ 作:レン・アッシュベル
Side優希
『状況終了」
通信機からピアティフ中尉の声が聞こえる。
「ふぅ・・・・終わったか」
ちらりと時間を見ると此処に来てから二時間近く経っていた。
初めの一時間は軽く慣らす為に仮想敵機の激震とか陽炎とかを不知火で相手をしていたのだが途中から博士の要望でヴォールクデータをやるハメになっていた。
結果は下層の手前で大破されてしまった。
「やっぱり反応速度が問題だな」
シミュレータから降りながら独り呟く。
実際問題俺的にはまだまだイケたのだがどうにもこの世界のノーマル・・・・戦術機は反応速度が遅い、結果的に俺の反射についてこれなかったOSがフリーズしてしまい要撃級に殴られやられてしまった。
ネクストに乗れれば苦労はないんだがあれは本来この世界には無い機体だ流石にハイブ攻略戦などは無理にでも参加するが乗れないのはきつい、何か対応策を立てなければ。
「(まぁそのへんはおいおい考えていくとして・・・・・)」
俺はシミュレーターを降りるとすぐそこで待っている博士たちのもとへと向かう。
先程はいなかった社もいるが特に気にしないように努める。
「それで、どうでしたか?」
俺が尋ねると博士は以外にも上機嫌で褒めてきた。
「どうもこうも何よあれ!あんな腕前の奴なんて見たことないわよ!」
その答えに俺は内心えっ?と、思ってしまった。
なぜなら反応炉破壊という目的は達成してないし途中でやられたのでよくてまあまあと言われる程度だと思っていたから。
そんな俺に博士は続けて
「あら?以外ね、もっと調子に乗ると思ってたけど」
と、言われたのでさっき思ったことを素直に話す。
「何?そんなこと気にしてたの?」
「まぁ、少しくらいの小言は覚悟してたからな」
「何言ってんだか、いい?ヴォールクデータの最高到達記録は中隊規模の編成で中層の到達がやっとだったのよ?その記録をたった一機で塗り替えといてそんなこと言ってたら嫌みにしか聞こえないっての」
それを聞いた俺は、ああそうだったのかぐらいにしか思わなかった。
正直な話あまり細かい設定なんて覚えてないからな。
「それであんたの階級についてだけど―――――」
その話題が出たので俺も姿勢を正す。
「そうね、私直属の少佐で行こうかしらね」
「まぁそれぐらいが怪しまれないギリギリのラインか」
「何よ不満?」
「いや、正直もっと低い所から始めるかと思っていた」
「それはないわね、こっちとしても兵器開発も出来てかつ衛士としての腕前は世界トップクラス。そんな人材を遊ばせておくほどの余裕はないのよ」
「じゃあありがたく頂戴しよう」
どうやら相当買ってくれたようだ、その分こき使われそうだが・・・・
「それにそれだけじゃないわ」
「と言うと?
まだ理由がある様なので此方も聞き返す。
「こっちとしても優秀な腹心は欲しかったところなのよ、幸いあんたの腕前はその階級に見合うものだからどうせならそのほうが動かしやすいと思ってね」
「ほぅ、なるほどね」
「そうそう、これあんたの身分証と階級章ね。部屋も用意したし今日はもういいわ、用があったらこっちから呼ぶから」
「ああ、ストップ博士」
話が終わると早速帰ろうとする博士、しかし俺は博士を呼びとめる。用件はさっき思いついたOSと俺のネクスト変わりの機体につけるAMSの件だ。
「?なによ」
「ああ、さっきシミュレーターに乗っていて思ったんだが――――――」
そして説明を終えると
「ふぅん、なるほどね、新OSとあんたの世界の技術か・・・・」
「OSのほうについては白銀に元いた世界のゲームについて聞けば良いものが作れるはずだ。AMSについては後でデータを出しておくから勝手に開発するが構わないか?」
「ええ、問題無いわ、それでA-01の被害も減るようなら一石二鳥だしね」
「性能については保障しよう、今の白銀は知らないが二度目の世界でもOSのほうは衛士の死亡率を世界規模で半減させたそうだからな」
「なら期待しておくわ、後は社を貸してもいいわよ、この子は優秀だからね」
「よろしくお願いします・・・・」
そう言ってぺこりとお辞儀をする社にそういえばそうだったなと思い出しながら
「こちらこそヨロシクな、社」
こうして俺の階級と今後の方針が決まった。
―――――――――――――――――――
あれからシミュレータールームを出た俺は現在、PXにいる。
何故か社もついて来たのだが・・・・
「合成サバ味噌定食を二つ頼む」
「あいよ。あら?みない顔だね?新人さんかい?」
「ああ、今日付けで此処に配属になった神夜優希少佐だ、これからよろしく頼む」
「へぇ~若いのに大したもんだね、アンタ!それと私のことは京塚のおばちゃんでもおばちゃんでも構わないから、堅苦しいのはダメだよ!!」
注文した俺に話しかけてくるのはオルタをプレイした人なら知っている京塚曹長こと京塚のおばちゃんだ。
彼女の階級など関係ない肝っ玉母ちゃんを思わせる台詞に俺は苦笑いしながら返す。
「そういうことなら――――――――これからよろしくな、おばちゃん」
「そうそう、それでいいんだよ。お、ちょうどできたね、どうぞ――――霞ちゃんもちゃんと食べるんだよ?」
「はい」
俺がそう言うと嬉しそうに笑ってサバ味噌定食を出すおばちゃん、ついでに社にも声をかけていた。
「さてと、席は・・・・お?」
社の分のお盆も持った俺は、どこか座れる席がないかきょろきょろしてるとちょうど視界に入った白銀がこっちを手招きしている。周りに何人かいるがよく見るとヒロインの面々だった。
「おーい、優希こっちだ!」
「ちょっ!!白銀!!相手は少佐よ!?」
白銀が俺の階級章に気づいてないのか普通に俺を呼ぶのを見たヒロインの一人、確か榊だったか?が、白銀を押さえている。
まぁ、階級なんて気にしないから構わないんだんがとりあえず社を連れてそっちに向かう。
「あ、けっ、敬礼!!」
バッ!!
「ああ、敬礼は構わないぞ、というかこれからも公の場以外ではしなくていい」
「はっ、はぁ?」
俺がそれを制すと間抜けな声を出す榊。他の面々も(白銀以外は)驚いてる様子だ。
しかしそんなことはお構いなしに社と座る。
「少佐って、凄かったんだな、優希」
「凄いと言っても普通にヴォールクデータをプレイしただけだがな」
「どのくらい行けたんだ?」
白銀が質問すると周りのヒロインズも興味深そうに此方を見る。
「ああ、下層手前で落とされたよ。もちろん一機で挑んだけどな」
「「「「「え!?」」」」」
最後にそう付け加えると全員が驚いて此方を凝視する。それに俺の言ったのが信じられないのか白銀が社に
「ほっ、本当か?霞」
と、質問するが社が普通にコクリと頷くとまた驚いて此方を見てくる。
「おれ、そんなに弱そうか?」
なんか全員に意外そうな反応をされたのが癪だったのでワザと不機嫌そうに尋ねると全員が
「「「「「いえっ、そんなことはありません!!」」」」」
と、綺麗にハモったので少しは溜飲も下がる。
クイックイッ
「ん?」
しかし、俺がそれを眺めて満足してると突然横から袖を引っ張られた。
横を向けば社が此方の目を見た後、自分の皿に視線を落とす。
つられて食器をみると人参だけがきれいに残っていた。
「(ああ、そういえば人参嫌いだったな)」
そう思ってみているともう一度此方を見てきたので苦笑いしながら箸で食べてやる。
その瞬間、今まで無表情だった社が嬉しそうに頭につけたウサミミをピコピコしながら微笑んだのであまりの可愛さに一瞬クラっときたが耐える。その時、
「少佐って・・・・ロリコン?」
「なんだと!?」
「こら!彩峰!!」
今まで黙っていた彩峰が突然そんなことを言ってきた、それを榊が咎める。
しかし俺は反撃にでる・・・・一人の犠牲を出して。
「彩峰訓練兵、それは違うぞ」
「?」
「ロリコンなのは俺じゃなくて白銀のほうだ」
「え!?」
俺が落とした爆弾に驚愕する白銀、周りの面子も白銀を不審そうに見ている。
「えっ?ちょ!?」
「何せこいつは着任した後すぐに霞に会いに言ったからな」
どさくさにまぎれて霞と呼ぶが実は結構焦ってたので気付かない俺。
霞は霞で水を飲んでいる。暢気なものだ。
「何言ってるんだよ?」
「なにって真実を彼女たちには知ってもらわないとな」
俺がそう告げると207B分隊のメンバーは
「白銀、アンタ・・・・」
「白銀、よもやそのような・・・・」
「はわわわわ・・・・」
「白銀・・・・・」
それぞれ白銀を酷く疑うような目で見る。
「待ってくれ!!違うんだ!!」
「さ、霞、今のうちに行こうか」←まだ名前で呼んじゃってるのに気付かない。
「はい・・・・」←意外と反応しない。
こうして俺は一人の犠牲を出したもののロリコン疑惑を消し去るのに成功するのだった。
白銀、ロリコン疑惑浮上。