Muv-Luv Alternative ~もう一人のイレギュラー~ 作:レン・アッシュベル
~白銀の部屋~
神様に送りだされた俺はゲームの画面で見たことのある白銀の部屋にいた。俺の目の前ではこの世界の主人公の白銀がのんきに寝てる。俺としては早く話が進まないと楽しくないので白銀をたたき起すことにした。
「おい、起きろ」
「ん~あと5分・・・・」
ゲームなどでよくあるセリフを放つ白銀にイラッと来たので強硬策に出ることにした。
「起きろこら!」
ボグッ!!
「ぐはっ!!」
腹に肘を落としてやるとたまらず目を覚ます白銀、正直主人公にこんなことをするのは気がひけたがやってしまったものは仕方がないんだ。
「ゲホッゲホッ!!っいきなり何するんだ!!!」
「良いから落ち付け白銀」
怒り心頭の白銀を俺が宥めようとするが白銀は結構怒っている。まぁいきなり攻撃されて起されればそんなものだろうが。
「いきなり殴っといてよくもっ・・・・・・痛ッ!!!」
俺につかみかかろうとしていきなり頭を押さえる白銀、おそらく記憶の流入が始まったんだろう。多分相当痛いはずだ、何せ前の世界の記憶が一気に流れ込んでくるのだから。
「痛ッ!・・・・これは?」
「記憶の流入が始まったみたいだな、思い出したか?」
一応聞いてみる。
「そうだ、確か俺、目が覚めたら違う世界に居て・・・・」
記憶を確かめるようにぶつぶつ呟いている白銀。きちんと2度目の白銀の様だ、こいつは。
「おっおいあんた」
「ん?何だ?」
「前の世界にはいなかったよな?さっきも記憶がなんとかって言ってたし・・・・何か知ってるのか?知ってるなら教えてくれ」
白銀にしては頭を働かせたようで俺の質問から俺が自分のことを知っていると判断して質問を返してくる。
「そうだな、まずは自己紹介からしようか、俺は神夜優希―――――」
そして大雑把に俺のことを教え、白銀については何故かループしたとだけ教える。
そして――――――――
「これからどうするんだ?」
俺がこれからどうするかを尋ねると
「やっぱり夕呼先生に協力してもらうしかないと思う、オルタネイティブ4を成功させて5を止めないといけないから」
「まぁ、それが賢明な判断だな、俺たちには戸籍も何もないしな」
さて、方針が決まったがここで一言言っておく。
「出発する前に一言良いか?」
「何だ?」
「お前が本気でこの世界を変えたいなら知識と力だけでは駄目だ」
「・・・・・・」
「今のお前に必要なのはなんだか分かるか?」
「それは・・・・」
「世界を変えるには『覚悟』が必要だ、例えどんな困難だろうと諦めない覚悟がな」
「分かった・・・」
俺の教えた必要なものを聞いた白銀は先程のまでの甘さの残る顔つきが消えた。
「正直に言うと俺もこんな世界は初めてじゃない」
「え!?」
「仲間が死んだこともあるし誰も救えなかったりしたことがある」
そう、前の世界に言ったばかりで甘さの抜けていなかった俺は仲間を救えなかったことがある。
ちょうど今のこいつの様に平和ボケが残っていると碌なことにならない。
だから自分の甘さが仲間や守りたいものを犠牲にすることにつながるということを知っていて欲しかった。
「だから改めて問おう、手にした力でお前の理想を貫く覚悟はあるか?」
再びの俺の問いに白銀は迷うことなく答える。
「ああ、もう誰も失わないように・・・・」
その覚悟を聞いて安心した、こいつはヘタレで有名だがやはり主人公なのだと。
「よし、じゃあ行くか」
「おう!ヨロシクな!!」
こうして俺たちは博士のもとへと向かうのであった。
――――――――――――――――
~基地~
今俺たちは基地前の坂を上っている。因みに俺のネクストは白銀の家の横にステルス状態で待機させている。いきなりあれに乗って行っても驚かせるからな。
そして、門の前に来ると門番の皆おなじみ伍長ズが話しかけてくる。
「お前たち、こんな所で散歩か?」
「マジかよ、物好きな奴らだな。通るなら身分証と許可証を提示してくれるか?」
(しかし何んとも気の抜けた門番だ。こんなだから博士がBETAを放ったりするんだ)
呆れながらも白銀とアイコンタクトを取りここに来るまでの打ち合わせ通りに動く。
「ああ、俺たちは此処の人間じゃないんだ」
「なんだと!?」
白銀が言うと此方に銃を向けてくる伍長ズ。しかし俺たちは慌てずに今度は俺が口を開く。白銀には前もって交渉ごとは俺に任せるように言ってあるので黙って一歩下がる。
「別に怪しいものじゃない、博士関係の者だ、何か命令が来てるはずだが?」
それを聞くと銃口を向けたまま相談を始める伍長ズ。しかし危なっかしい奴らだ、俺が敵ならこの瞬間に強襲を仕掛けるんだが。
そんなことを考えて待っていると黒人のほうの伍長が
「ちょっと待っていてくれ、博士に確認を取る」
その反応にかかった!と思いながら『鍵』について話す。
「その際に博士には『00』、『脳』、『150億』と伝えてくれ」
「何だそれは?」
「まぁスパイ対策の暗号みたいなもんだ、気にするな」
「そうか」
どうやら納得してくれたようで博士へと電話してくれる伍長。
しばらくすると電話を此方に渡して、
「博士がお前に代われとのことだ」
と言った。どうやら博士は見事に釣れたようだ。
言われたとおりに変わると電話の向こうから
「あんた誰よ?」
開口一番不機嫌な声が聞こえてきたので返事をしてやる。
「俺たちは第4計画について知るものだ、その件について博士に話がある」
「・・・・・信じられるとでも?」
「それこそまさかだ、さっき俺が伝えた言葉を忘れたのか?」
飽く迄強気に出る。この手の相手には下手に出ると主導権を握られる恐れがあるからな。
「・・・・・分かったわ、迎えを寄こすからそこで待ちなさい」
「了解、あなたが話の分かる人で良かったよ」
「フンッ」
電話が切れる直前にそう言ってやると向こうは小さく笑い電話を切るのであった。
意外とイケるぜ!!