装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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さあ、これから楽しい寮生活だ

放課後になり、俺にはさっそくやることができた。

オルコットと戦うための作戦会議? いや、それも大切だが、それよりも重要なことだ。こと俺自身のことなら尚更だ。

携帯を取り出し、ある人に電話をする。画面には『パンツ教授』と出ている。

 

『やあ、一夏くん。元気そうで何よりだ。早速だが・・・人は何故パンツを穿くと思うね?』

「そんなこと知りませんよ、ウォルフ教授! そんなことより俺がIS学園の戦闘行事に全部強制参加するように日本政府に持ちかけたのは教授の仕業だろ!」

『そんなこととはなんだ、そんなこととは!人が何故パンツを穿くのか? それは人が生きている限り、絶対に湧く疑問だろう。君の師匠は私に一つの答えを見いだしてくれたのだぞ。私は弟子の君にも期待しているのだよ。幸い君は今IS学園にいるではないかっ! 少女のパンツ脱がせたい放題ではないか、うらやま「くたばれ、変態っ!!」』

 

今のでわかった。完璧にあの教授の差し金だ。

そのせいでこんな目にあっているというのは非常に腹が立つ。別に戦闘する分には文句などないが、俺に伝えなかったのはわざとだろうよ。

後で師匠に言って、きっついお仕置きを受けてもらおう。俺ではどうにもできない変態だが、師匠なら絶対にどうにかできるはずだ。あの変態教授も師匠には一目おいてるらしいし。

 

俺はそう思いながら電話を切ると、箒が近づいてきた。

 

「何故こんなことになっているのだ!」

 

箒は機嫌悪そうに俺に聞いてくる。

 

「そうは言ってもな~、あちらさんが勝手に言ってきたことだし。武者たるもの、挑まれた勝負はたとえ負けそうなものでも応えるのが当たり前だからな」

「いくらおまえがその、何だ、劔冑? とかいうのを使えるからって勝てるわけないだろ!相手は代表候補生なんだぞ!!」

 

箒の言いたいこともわかるが、もう受けてしまった勝負だ。今更どう言ってもかわらない。

それよりも箒に俺が弱いと思われてることのほうが俺には少し悲しいぞ。

 

「おまえ・・・俺が勝てないと思ってるだろ」

「当たり前だ!テレビの映像は見たが、あの映像で戦ってたのはお前じゃないだろ」

 

ああ、そう思われてたのか。

箒が知ってる俺は、6年前の篠ノ之流剣術の道場に通っていた俺だ。あの時はまだ剣の重みも知らない子供だったからな~。我ながら恥ずかしい。

映像に映ってるのは吉野御流合戦礼法を使う俺だ。技術体系から何まで全て違うものだから、昔を知ってる箒には別人に見えるんだろう。

 

「そんなに心配なら、一つ行っとくか?」

 

俺は剣道場のほうを指し、竹刀を振るふりをする。

 

「いいだろう。どれほどの腕前になったか試してやる」

 

そうして俺は箒と一緒に剣道場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

私は一夏を侮りすぎていた。

 

剣道場に着て三十分。

今私は床で大の字に寝転がり、汗だくになりながら息をぜーはー、ぜーはー、と切らせている。

一夏のいる手前、こんなだらしない姿など見られたくはないのだが、そんな余力など無かった。

対して一夏は汗一つかかず、息も切らしていない。

 

「大丈夫か、箒?」

 

心配して聞いてくる一夏に嬉しく思ってしまい顔がにやけそうになってしまうが、それを堪えて仏頂面をつくり「大丈夫だ」と答える。

 

「俺の強さはどうだった、お気に召したか?」

「ああ、十分に。でも・・・・・・篠ノ之流剣術じゃないんだな」

「まぁ・・・ちょっとあってな・・・・・・」

 

一夏が言葉を濁したことが、少し悲しい。もう同門とは言えないのだな。

 

 

疲れ切った私に、スポーツドリンクでも買ってこようか、と聞く一夏に応えようとしたところで校内放送が入り、内心、この二人っきりを邪魔されたことに腹が立った。

 

『一年一組の織斑君、一年一組の織斑君。至急職員室に来て下さい』

 

「悪い、箒。呼び出されたから行ってくる」

「呼び出されたなら仕方ない。行ってこい」

 

そうして一夏は職員室に行き、私は剣道場に一人になった。

 

 

 

 

 

 

「一夏く、げふんげふん。織斑君織斑君。寮の部屋が決まりましたので、今日からそちらで過ごして下さい」

「どういうことですか、山田先生?俺は一週間は自宅通いと聞いてたのですが・・・・・・あと顔が近いです」

「ああ!すみません」

 

職員室についてこのやり取り。急なことに頭がついていかない。

 

「今朝方急に決まりまして。織斑先生からも「あいつの荷物なんて家には特にないから、すぐにでも引っ越せる。だから問題ない」とおっしゃっていたので」

 

我が姉ながら、なんと横暴なことか・・・・・・悲しいことに事実だが。

 

「本当は私の部屋にしようとしたんですけど、織斑先生に睨まれてしまって・・・・・・」

「何か言いましたか?」

「い、いえ!何でもありません」

 

山田先生はひとしきり慌てた後に体勢を立て直し説明する。

 

「織斑君の部屋は1025室です。同室の女の子がいるので、変なことしちゃ駄目ですよ! あ、私にだったらいくらでも・・・・・・」

 

同室の女の子がいるのか。後半は小さくて聞こえなかったが、大体は分かった。

 

「先生、分かりました。それじゃ寮に行くんで、失礼しました」

 

俺はそう言って職員室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「ここが俺の部屋か」

 

目の前の表札は1025となっている。先生にもらった鍵のナンバーと同じである。

たしか同室の女の子がいるって話だったな。挨拶はしっかりしなくては。

しかし漫画やドラマなんかでは、こういうシーンでよく女の子の着替えやらシャワーを覗いちゃたりする場合が高確率である。それでは印象も最悪になってしまうのは必須。

同室になる人とは友好的な関係を気付きたいものだ。

 

「正宗」

『応』

 

念話のように正宗に話しかける。

帯刀の義をした劔冑と仕手は、精神的にもつながりをもつ。こうした念話や視覚共有なんかも可能なのだ。

 

「正宗、部屋の中の様子を調べてくれないか?視覚共有(目)や聴覚共有(耳)はいいから」

『仕方ない御堂だ。間分かった』

 

正宗は寮の外にいることはわかっている。たぶん寮の屋根か壁にでも張り付いているだろう。

 

三分後くらいに応答がきた。

 

『現在、中のおなごが湯浴み中のようだ。終わり次第また連絡をいれよう。御堂が覗きなどする卑劣漢でないことを、我は喜ばしく思うぞ。あの悪しき妖甲の仕手ではどうなっていたかわからんからな』

 

余計なお世話だ。師匠は・・・たぶん覗かないだろ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

そうして俺は二十分後に正宗の報を受け、室内に入っていった。


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