装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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夏休みでも一夏は多忙3

一夏が作った料理を見て五人はショックを受けた。

あまりの出来に女のプライドを打ち砕かれたのだ。

 

(((((ま、前から料理が上手だと思ってたけど、ここまでなんて!?)))))

 

一夏の料理はプロのそれであり、実際にお金をもらっているのだから比較にならないのは当然と言えば当然だが・・・・・・

 

「何固まってるんだ、五人供? 早く食べないと冷めるぞ」

 

俺は固まっている五人にそう言うと五人はいきなり慌て始めた。

 

「い、いや、今は手持ちが・・・」

「押しかけといて何ですけど・・・」

「いや~、あっはっはっは・・・」

「ご、ごめん一夏・・・」

「すみません、一夏。つい衝動的に動いてしまい」

 

皆申し訳そうになっていた。

よくよく考えれば招待されたのは真耶だけで箒たちは勝手に付いてきただけだ。そこで料理を振る舞ってもらうのはどう考えたっておかしいのだ。

 

「何言ってるんだ? 板長から話は聞かされただろ。遠慮せずに食べてくれ」

 

そう言って勧めるが、皆物怖じしていた。

目の前にある料理はどう見たって高額の物だ。それをタダと言われてもさすがに腰が引ける。あのセシリアでさえさすがにタダとあっては気が引けるらしい。

 

「そういうがなぁ~」

「さすがにタダというのは・・・」

「気が引けるわよ・・・・・・」

「だよね~」

「・・・・・・」

「だから気にするなって。お代は俺持ちなんだから」

 

「「「「「で、でも・・・・・・」」」」」

 

さらに勧めても腰が引けた五人からは良い返事をもらえない俺は仕方なくネタばらしをする。

 

「俺の給料なんてそもそも無いんだしな」

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

さすがにこのことは山田先生も驚いた。

 

「給料が無いってどういうことですか、一夏君?」

「いや、別に労働基準法違反とかそういうわけじゃないんですよ。俺から断ってるんです」

 

俺の発言に皆が息を呑んだ。

 

「俺がこの店で修行してたのは茶々丸さんのせいですし、俺自身お金に不自由はしてませんしね。政府から毎月給金が振り込まれるんですよ。(約五十万)高校生にこんな金額渡されても困るというのに・・・・・・何より、俺自身修行としてここに来てるんです、お金なんてもらえませんよ」

 

そう言うと全員顔を真っ赤にしていた。

 

((((((か、格好いい!!))))))

 

「なので俺が働いた分のお金は浮いてるんで多少減っても問題ないんです」

 

俺がそう言うとやっとみんな緊張がほぐれたらしい。

 

「そ、そこまで言うなら・・・・・・」

「い、いただきますわ」

「そう言うなら・・・・・・」

「それじゃいただくね」

「い、いただきます」

 

やっとみんなが食べる気になってくれたようだ。俺はさっそく料理の説明に入る。

 

「今日は鯛尽くしにしてみた。汁物に潮汁、それと鯛かぶら、鯛飯に鯛の刺身と鯛の琥珀揚げ、箸休めに浅漬けの香の物、以上です」

 

今日は良い鯛が入ったと聞いてさっそく使わせてもらった。

みんな早速箸を付けて口に運び入れると、驚嘆の声を上げた。

 

「う、うまい!? この鯛飯は鯛の出汁がよくご飯に染みこんでいる」

「このスープも凄いですわ!? シンプルに見えて深い味わいですわ」

「この揚げ物も凄いわよ!? 鯛の身と餡の味わいが絶妙よ」

「この鯛の煮物も凄く味が染みてて美味しいよ!?」

「ここまで美味しいものを食べたのは初めてです!?」

「やっぱり美味しい~。一夏君のお料理は本当に凄いですね」

 

そこまで褒めてもらうとやはりと言うべきか照れてしまうな。

 

「でも、ここまで凄いと女性としてはプライドがずたずたになってしまうんですけどね・・・・・・」

 

山田先生がそう言うと箒達は心にショックを受けたらしく沈んでしまった。俺は何も言えず苦笑するしかない。

 

「一夏、ちょっといいか?」

 

苦笑している俺を板長が呼びつける。

俺は気を引き締めてお言葉を待つことにした。これから言われる評価を聞き逃すまいと真剣に構える。

板長はその場を離れるよう言ったが、山田先生達が妙に目を輝かせて評価を聞きたいと言いだし、板長は引け気味ながらにこの場で言うことにした。

 

「鯛飯はあと気持ち少なめに醤油を減らしたほうがいい。若い人には丁度いいかもしれんが、お年寄りには少しだけ強く感じたかもしれん。と言っても三滴四滴程度の差だがな。刺身の銀皮剥がしは見事だった、文句は無い。琥珀揚げはもう少しだけ衣を薄くしろ。その方が鯛の身のふんわり感が出やすい。潮汁はあと二秒早く昆布を取り出せ、その方がより味がくっきり出る。香の物に少しだけショウガを加えたのは良かったぞ。鯛でだらけがちになる味をすっきりさせるのには丁度良い」

 

全体的に見て悪くは無いが、まだまだ甘いといったところだ。

 

「前よりさらに腕を上げたな。しかしまだ甘い所もある。もっと精進するように」

「ありがとうございました」

 

俺は丁寧に礼を言うと、板長は板場へと戻って行った。

 

((((((こんなに美味しいのにまだ甘いってどれだけなんだ!?))))))

 

板長の言葉を受けた一夏を見て六人は驚愕に顔が固まっていた。

 

 

 

 

俺はその後も皆が帰るまで相手をした。(軽い食事を取ったりして)

夕方からは又地獄が始まるのだ、早速気を引き締めていこうと意識を集中させていく。

しかし皆が帰った後にきたのは板場の皆からの質問攻めと茶化しだった。

そのせいで俺は皆から山田先生との仲を冷やかされ(まだわからないって言ってるのに)、板長に怒鳴られるまでこれは続いた。

そんなに顔に出やすいのだろうか? 

そう考えている内にまた板場は地獄と化していく。

あぁ、いそがしいったら仕方ない。

そう思いながら俺は板場で魚をさばいていくのだった。

 




次回はついに告白回!?

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