「な、何でここにお前達が・・・・・・」
来たという客に会いに行ったら山田先生と箒達がいた。
山田先生は千冬姉に報告しにいった際にいたこともあって店に招待した。あそこのことを知っているのはIS学園では山田先生だけである。なので箒達が知っているはずがないのだが・・・・・・
「「「「「「おぉ~~~」」」」」」
俺の姿を確認した六人はそんな歓声を上げる。
「調理服姿の一夏君も格好いいですね・・・・・・」
山田先生は俺を見て顔を紅くしてポーっとしながらそう感想を洩らしていた。
俺はそれを聞いて顔が熱くなるのを感じる。
「む、か、格好いいぞ、一夏!」
「まさにコックって感じですわね」
「様になってるじゃない!」
「とっても似合ってるよ一夏!」
「格好いいです一夏」
と箒達も俺に賞賛の声を掛けてくれた。少しばかり恥ずかしい。
「一夏、お客様をその場で立たせたままにしておく気か。早く奥座敷に案内なさい」
軽く後頭部を叩かれると板長がしれっと俺に言ってきた。
俺は慌てて皆を奥座敷へと案内した。板長に恥ずかしいところを見られてしまったことに酷く怖く感じる。後でお小言を言われることは覚悟すべきだろう。
奥座敷に着いて皆を座らせると俺は茶を六人分入れて出す。
「粗茶ですが」
お決まり文句を言ってお茶を渡していく。
みんなはお茶を飲んでくつろぎ始めた。
「ところで皆様、お昼はまだでしょうか?」
板長がまた現れてみんなに聞き始める。いきなり現れたことに内心驚いたが、表に出すまいと堪えた。
「いえ、まだ食べてません」
「IS学園を出たときはまだお昼前でしたし」
「それどころじゃなかったしね~」
「そうだね、お昼どころじゃなかったしね」
「そうだな」
箒達はまだお昼を食べてないらしい。
「ここのお料理を楽しみにしていたんですよ! 前食べた時もすっごく美味しかったですから」
山田先生が興奮気味にそう答える。作った方としては実に嬉しいお言葉に頬が緩む。
「一夏・・・・・・言わなくてもわかるな」
「はい、すぐに」
俺は板長にそう答えると早足で板場へと戻った。
きっと板長は俺がこの場を離れた理由をことなげに説明してくれているはずだ。
板場に戻ると俺は早速調理に取りかかる。
「どうした、一夏? そんなに張り切ってよぉ」
俺の様子を見て龍さんが声を掛ける。
「ええ、お客様に昼食をお出ししろと、板長から」
俺がそう言うと龍さんは納得したようにうなずく。
この店において板長にそう言われた場合に限り、メニューの料理ではないものを作ることになっている。そしてそれは板長の分も含まれており、自分たちの腕を直に見てもらえる機会でもある。
この時だけはいつもと違い食材の制限などが無くなる。だからといって高級食材を使えば良いと言うものではなく、純粋に本人の腕がモノを言う。
なのでいつも以上に張り切り、それこそ武者同士の死合い並に集中して料理に取りかかる。
「お客さんってのは前に来たあの巨乳の嬢ちゃんのことか」
龍さんは下品な感じに手を胸の辺りで弧を描くように動かす。
いつもなら慌てて突っ込むところだが、今の俺は集中しているので視界に入っても気に留めない。
「さっすが、良く集中してやがる。お前等ぁ、後学のために見学しとけ!!」
龍さんは周りの人達にそう言い放ち、ぞろぞろと人が集まっていく。
先輩や後輩(年齢は向こうのほうが五つ上)が俺の周りに集まり俺の手を見ていき、関心の声を上げたりしていた。しかし俺は集中していて気に留めない。
俺はその後も料理を作り続けていく。
「それでさっきのはどういうことなんですか」
箒がきつめの目つきで真耶に問いかける。
「さっきってどういうことですか・・・・・・」
真耶はそう答えるが、目が泳いでいた。
「しらばっくれないでくださいな!」
「そーよ、山田先生しっかり言ってたじゃない!」
「『前食べた時もすっごく美味しかったですから』って言ってましたよね。ね、ラウラ」
「しっかりと言っていた」
五人にそう責められ、真耶は観念して話すことにした。
「い、一夏君と一緒に来たことがあるんですよ」
意識せずとも熱くなる頬を感じながら真耶は恥ずかしそうに言う。ちょっとだけ周りに牽制をかけたのは本人だけの内緒だ。
「「「「「どういうことなんですか!? 詳しくお願いします!」」」」」
真耶の反応に五人が食いつく。何があったのか気になって仕方ない様子だった。
そして真耶は恥じらいながら話始めた・・・・・・
一夏と出会ったあのときのことを。
話終えたところで五人は羨ましそうな顔で真耶を見た。
一夏から直に食事に誘われたのは真耶だけだった。そのことがわかり、真耶は少しだけ優越感に浸ったりした。
そして奥座敷の戸が開き、板長と一夏、それと着物を着て料理の膳を持っている女性が六人現れた。
「お客様、お待たせいたしました」
板長がそう言い頭を下げると一夏も続いて頭を下げる。
そして着物の女性が膳を皆の前に運んでいく。
膳の料理を見た瞬間、六人はその美しさに感嘆の声を漏らした。
「本日の料理もこの者に作らせました。味は私が保証しますので、ごゆるりとお楽しみ下さい」
板長はそう言ってまた頭を下げると奥座敷を後にした。
「うわぁぁぁ、やっぱり一夏君は凄いですね! このお料理も美味しそうです!!」
「お褒め頂ありがとうございます」
真耶がそう喜ぶと、一夏はかしこまった様子でそう返す。
そのやり取りを見て箒達五人はこの料理を作ったのが一夏だと知る。
「「「「「え・・・・・・えぇえええええええええええええええええええええ!?」」」」」
そして五人はショックで固まった。