装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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ついに残りの公方が登場します。


六波羅な人達1

師匠にそう言われて日が経ち、俺と師匠達は茶々丸さんの屋敷に行った。

そう言えばあの人の家に行くことは初めてのことだと思いどのようなものかと思ったら・・・・・・

出てきたのは日本庭園付きの見事な日本屋敷だった。

あんな人だがさすがは六波羅 堀越公方、住んでいる世界が違う。

敷居を跨ぐのに少し躊躇したが、師匠は通い慣れているらしく平然と跨いでいった。

 

「随分と慣れているみたいですね」

「少し仕事の手伝いをしていたりしたのでな、大体慣れている」

 

師匠はそう言いながら屋敷の一室へと向かい、俺もそれについて行った。

そして部屋の前で襖を開ける前に名乗る。

 

「湊斗 景明、参りました」

「ああ、いらっしゃい、お兄さん。そんなかしこまらなくて良いっていったじゃん」

 

襖がスーと開き中から茶々丸さんが出てきた。

俺も一応名乗ることにする。

 

「織斑 一夏、参りました」

「いっちーもいらっしゃい。ま、楽にしてなね」

 

そう言われ師匠と一緒に部屋に入ろうとするが、中を見た瞬間その足が止まる。

中にいたのは茶々丸さんだけではなかった。

幾人かの人が座っていた。

禿頭をしたお坊さんにド派手なスーツを着て、またド派手な化粧と髪型をした男性、それときっちりとスーツを着こなし、神経質そうな性格なのが窺える男性、または美少女と言っても良いほどの女の子に俺より少し歳が下と思われる少年と、多種多様な人がいた。

後半二人からは感じないが、前半三人には共通して感じる威圧感がある。

この感覚は・・・・・・武者だ。

俺はこの三人が凄腕の武者であることを、その気配を持ってして感じた。

師匠は部屋に入ると丁寧に挨拶し始める。

 

「湊斗 景明、只今参りました。本日はこの会合に参加させて頂き、感謝の念が絶えません」

「はっはっは、湊斗殿は相変わらず真面目よのぉ」

「別にこんな話し合いに感謝なんかしなくてもいいのにね~。只の相談ごとなんだし」

「そのようなことを言うな、雷蝶! 邦氏様の大事に何という言いぐさだ、恥を知れ! そしてその臭くケバい化粧を今すぐに落とせっ、この化け物め!」

「何ですって!! この美しい麿に向かって化け物ですってぇ!」

「あっはっはっは、その程度にしてはどうだろうか、ご両人。お二方の争いに気が引けてそこの若者が入ってこられぬようでござろう」

 

師匠はそれがいつもの様子だと言わんばかりに部屋に入って座り始めたが、俺は何だか入りづらくなってしまい襖の前で立ち尽くしていた。

 

「あら、けっこう美しいじゃない。麿ほどじゃないけどね」

「む、貴様は何者だ」

 

先に争っていた二人に値踏みをされるように見られる。

その迫力は常人であれば逃げ出すかもしれないくらいの威圧感がある。

俺が答える前に師匠が先に説明する。

 

「は、この者は私の弟子です」

「織斑 一夏と申します。以後お見知りおきを」

 

俺がそう言い頭を深く下げると、お二人は成程と何かを納得していた。

 

「そうか、貴様が湊斗の弟子か。成程成程、中々に鍛えられているではないか」

「は、ありがとうございます」

 

師匠もその言葉に礼を言い頭を下げ、俺も頭を下げる。

 

「あなたはよくテレビに出ている織斑 一夏だったの。道理で美しいわけだわ」

「む、テレビ? 湊斗よ、お前の弟子は俳優でもしているのか」

「いえ、そのようなことはしておりません」

「獅子吼ったら相変わらず遅れてるわねぇ、彼は今じゃ有名よ。今の世を正しき世界に戻すために戦う若き武者、相州五郎入道正宗の仕手よ」

「む、あの天下一名物の仕手か。成程、道理で目に力があるわけだ。しかし雷蝶よ、別に俺は遅れてはいない! たまたまテレビを見れなかっただけだ!」

「仕事ばっかりで全然遊ばないからそうなるのよ」

「貴様等が仕事をせぬから俺にその分が回ってくるのだろうがぁああぁああああああ!!」

 

神経質そうな男性は半ばキレつつケバい人と茶々丸さんを指さして叫ぶ。

 

「あてまで巻き添えかよぉ!」

「貴様が一番サボっているのだろうが!!」

 

俺はこの人達の争いに関与せず、師匠に伺う。

 

「師匠、この人達は」

「ああ、この方達は六波羅の公方の方々だ。あそこにおられる方が古河公方の遊佐童心様だ」

「うむ、お噂はかねがね聞いておりますぞ、それがしは遊佐童心と申す。只の破戒僧なのでそこまで肩肘を張らずに楽にしなされ」

「あ、これはご丁寧に。どうもありがとうございます」

 

俺はお坊さんに礼をする。何というか・・・・・・つかみ所がないような感じな人だ。

 

「そしてそこで毎度のごとく言い争っているお二方も公方の方だ。あの真面目なお方が篠川公方、大鳥 獅子吼様。そしてそこの華美? な方が御弓公方、今川 雷蝶様だ」

 

俺は未だに言い争っている二人を見る。なんだかな~っといった感情がわき上がってくる。

 

「そんであてが堀越公方、足利 茶々丸だ」

 

茶々丸さんが言い争いを抜けてきて此方に胸を張ってどや顔で名乗る。

俺はそれを無視して師匠に話しかける。

 

「それで、今日はどういった話なのでしょうか? まったく伺っていないのですが」

「ちょっ! 無視されたーーーーーーーー! お兄さん、いっちーがあてのこと無視したよーーー」

 

茶々丸さんは無視されたことにショックを受けつつも師匠に慰めてもらおうと師匠にすりよるが・・・・・・

 

「そこまでよ、この半端者! 御堂に近づかないで頂戴!」

 

どこから現れたのか村正さんが茶々丸さんの前に立ち憚かった。

 

「なんでてめぇーが来てんだよ、呼んだのはお兄さんといっちーだけだっての!」

 

茶々丸さんは額に青筋を立てながら村正さんを睨む。

 

「一夏はともかく、あなたが御堂を呼び出すなんてろくなことがないじゃない! 私は御堂の劔冑にして『妻』、泥棒猫には容赦しないわよ!」

「はぁ!? 何言ってんのさ、この鉄屑! 主のことを思ってるんだったら主の恋路も応援しろってんだ、あてとお兄さんの恋路を邪魔すんな!」

 

ぐぬぬ、とお互いににらみ合う二人。

 

「・・・・・・師匠、どうするんですか、これ・・・」

「・・・・・・・・・俺に聞くな・・・・・・」

 

師匠と二人の争いに途方に暮れていると、俺達の近くに男の子が近づいてきた。

 

「あ、あの、織斑 一夏さんですよね!」

「あ、はい、そうですが」

 

少年は懐をごそごそと漁ると、色紙とサインペンを出してきた。

 

「ファンなんです、サイン下さい!」

 

そう言い少年は目をきらきらさせると俺に向かって差し出してきた。

 

「え、あの、その・・・・・・君は?」

「あ、これは申し遅れました! 僕は足利 邦氏と言います」

 

少年は顔を真っ赤にしつつぺこぺこと頭を下げる。

 

「あ、これはどうも。織斑 一夏です」

「はい、知ってます!」

 

少年は俺を凄く尊敬した目で見つめてくる。

 

「はっはっは、邦氏様は貴殿のファンなのですよ。結構有名だからのう、貴殿の勇名は。今では若い男の憧れよ」

 

遊佐童心様(以降は童心様)はそう笑いながら言うと、少年は顔を赤くしていた。

 

「師匠、この少年は?」

 

俺は聞かれないように師匠に小声で聞く。

 

「このお方は六波羅をいずれ総べるお方で、現盟主の足利 護氏様のご子息である足利 邦氏様だ。粗相の無いようにしろ」

 

それを聞いて俺は萎縮してしまう。

 

「こ、これは失礼を」

「いいんですよ、僕自体が偉いわけじゃないですから。これから頑張って父上のような立派な人になろうと思ってます」

 

成程、実に良く出来た方だ。この方ならさぞ立派な人になるに違いないと思わせるほどの素質を感じた。

俺はさっそく色紙を受け取ってサイン(書いたことが無いのでそれらしくした自分の名前を書き、ついでに邦氏様へ、と付け書きをした)をし渡すと、邦氏様は大層喜んで下さった。

 

「それで・・・・・・これはどういう会合なのでしょうか?」

 

この中で唯一まともそうな童心様に聞いてみると、童心様は大層面白そうに笑いながら答えた。

 

「実はのう、この話し合いは六波羅とはあまり関係がないのだ・・・・・・実は邦氏様のお悩み相談なのだ」

 

そう笑いながら言うと、邦氏様は顔を真っ赤にし恥ずかしそうにしていた。

 

「それでお悩みとは?」

 

俺が呼ばれた事にも意味があるはずだと思い聞く。

 

「実はのう・・・・・・邦氏様の恋愛相談なのだ! はっはっはっはっはっは」

 

愉快な感じに童心様が答えた。

俺はこの答えを聞いて嫌な予感がしてきた。

そして・・・・・・この少年の恋愛相談にこんな、

濃い大人に任せて大丈夫なのか心配になってくる。

 

「何を考えているのだ、一夏。この会合での相談はお前の話も含まれているのだぞ」

 

師匠が木訥とそう言ってきた。

それを聞いた瞬間、俺はショックで固まってしまった。


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