装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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悪鬼の稽古の様子

アリーナで激突する藍と紅。

瞬時に激しい激突音が鼓膜に響き渡る。

アリーナの真ん中でお互いに合当理を噴かし鍔迫り合いになっている。

火花が散り、管制室にもその轟音がマイクを通して伝わってくる。

 

「正宗、この鍔迫り合いにまず勝つぞ! ここで流れを掴む!」

『諒解!』

 

俺はさらに筋力強化に熱量を回し力を込める。

鍔迫り合いはさらに苛烈になり、師匠もさらに力を込めていく。

力同士が拮抗し、お互いの足が地面にめり込んでいく。

 

「ふむ、膂力がまたさらに上がったようだな。ちゃんと鍛えていることがよく分かる」

 

師匠はそう言うとさらに力を増してきた。拮抗が少しずつだがずれていく。

 

「このままでは押し切られる! 正宗、筋力強化に熱量をさらに使え、一旦離れるぞ!」

『諒解』

 

瞬時に合当理を切り、筋力強化に熱量を10使い瞬間的にではあるが師匠の力を超える。

 

「があぁあああぁあああああぁあああああああああああああああああ!!」

「ふんっ!」

 

弾かれ合う藍と紅。

離れた瞬間を狙って此方は追撃に出る。

右からの袈裟斬りを放ち師匠に迫る。師匠は此方とほぼ同じ斬撃を此方に放ってきた。

またぶつかり合う刀と刀。

剛力と剛力がぶつかり合う轟音がアリーナに轟く。

さらに剣戟は続き、返す刀がお互いの左側から襲いかかる。

 

『『吉野御流合戦礼法 木霊打ち』』

 

お互いの刀がさらに激突していく。

稽古とあって刃を伏せての峰打ちだが、下手に当たれば甲鉄が砕ける可能性もある。

それなりに命がけの稽古となる。

 

「はぁああああああああああああああぁあああああ!!」

 

またお互いに弾かれ、今度は死角を狙って回し踵蹴りを放つ。

しかし師匠も同じ動作に入り、同じ技を放つ。

 

『『吉野御流合戦礼法、逆髪』』

 

同じ流派の同じ技が同時に出されぶつかり合った場合、その勝敗を決めるのは使い手の力量だ。

俺と師匠は同時に蹴られた方に体が揺れる。

しかし受けたダメージは此方の方がでかい。

 

「ぐぅぅ、やはりまだ力量では師匠にかなわないか」

「そうでも無いぞ、先程の連撃には驚かされた」

 

師匠にそう褒めてもらえるのは嬉しいが、その分自身の未熟を痛感させられる。

 

「正宗、このまま空に出る。高度優勢を取るぞ!」

『諒解』

 

そして同時に空へと飛翔する俺と師匠。

先に高度優勢を確保出来たのでそのまま双輪懸に入る。

 

「せぇぇえいぃいい!!」

 

上方から師匠に向かって強襲する。

 

「はぁっ!」

 

師匠も迎撃し、お互いの間にまた激突の轟音が鳴り響いていく。

 

「このままさらにいくぞ、正宗!」

『応』

 

その後三分ほど双輪懸が続いていくが、未だに一撃も与えられていない。

師匠の攻撃もなんとか凌いでいた。

 

「なかなかやるな・・・前よりも強くなっている。よく成長した」

「ありがとうございます」

 

そう言われて喜びつつも果敢に攻めていく。

次第に白熱していき、稽古は熾烈を極めていく。

剣撃を弾くと、俺は師匠の下に潜りこむ。

これはチャンスだと思って刀を振るおうとしたが、肩から胸にかけて痛みと衝撃が襲いかかった。

 

「ぐはぁっ!?」

『左肩部に非撃、損傷軽微』

 

いきなりの衝撃に驚いたが、急いで体勢を立て直す。

今の技は、

 

『吉野御流合戦礼法が一芸、転』

 

故意に相手を下に行かせ迎撃する初歩の技だ。

しまった! まさかこんな技で来るとは・・・

 

「成長は認めるが、まだ詰めが甘い。初歩を忘れ警戒を怠るのは関心せんな」

「申し訳ありません」

 

師匠に言われ猛省する。この稽古が終わったら一から鍛えなければいかんな、これは。

その後も剣戟は続いていき、辺りに轟音を轟かせていく。

そして俺はまた師匠の下に潜り込んだ。

 

「今度はやらせない!」

 

斬馬刀を右上段に構え上に向かって振る。

 

『吉野御流合戦礼法 昇竜』

 

俺の放った斬撃は師匠の右肩を捕らえる。

 

「ぐぅっ!? 見事だ」

 

師匠にそう褒められたことを内心で喜びつつも気は抜かない。

その後も同じような展開の剣戟が続き、打ったり打たれたりしている。

 

「正宗、そろそろ決めるぞ!」

「村正、そろそろ終わらせる」

『『諒解』』

 

アリーナ上空の真ん中で激突する藍と紅。

俺は片足を使い師匠の足の裏から絡ませ押し込む。

すると足絡みを軸に体勢が変転する。

正宗が上に。村正が下に。

このまま相手を地面に叩き付けようと俺は刀に力を込める。

 

『吉野御流合戦礼法 二虎競落の法』

 

争いに熱中するあまり山から転げ落ちても尚、相手の喉笛を喰い争う二虎の故事にちなんでそう呼ばれている。

 

「しかしまだ甘いぞ、一夏」

 

師匠はそう言い絡んだ足を軸にして転回する。

俺が縦に回ったに対して師匠は横へ。

位置関係が逆転する。

俺も返しは知っていた。無論また仕掛け体勢を入れ替える。

しかし師匠もまた体勢を直そうと仕掛ける。

そして空中でぐるぐる回りながら落下していき・・・・・・

二人して同時に地面に叩き付けられた。

痛みに顔が歪み、空気が肺から叩き出される。

しかし気力を持って起き上がると、師匠は既に立ち上がっていた。

 

「本日はここまでだ」

 

そう言うと師匠は装甲を解除、村正さんは女性の姿に戻る。

 

「ありがとうございました!」

 

俺も装甲を解除して師匠に礼をする。

しかし俺は結構息が上がっているのに対して、師匠はまったく平然としていた。

やはりまだ師匠の足下にも及ばないな・・・・・・

しかしだからこそ、俺は師匠を尊敬する。

今日稽古を付けて頂いて、改めて俺は師匠を尊敬した。


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