師匠のアレな笑顔を戻して俺達は教室に入っていった。
教室には丁度良く箒達五人と千冬姉達がいた。
「む、織斑、誰だその人は?」
千冬姉が師匠を見てそう聞いてくる。
「ああ、この人は俺の師匠だ」
「お初にお目に掛かります、湊斗 景明と申します」
師匠はさっそくお辞儀をして挨拶をすると、村正さんも挨拶をした。
「『妻』の村正です」
村正さんは笑顔でそう名乗るが、思いっきり辺りを警戒していることがわかる。
「何をいっているのだ、お前は」
師匠が透かさずに突っ込み訂正していた。村正さんは、何よ! と頬を膨らませてすねていたが、師匠は全く気にしていない。
「先日は妹が大変なご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。つまらないものですが、これをどうぞ」
師匠はそう師範代の件を謝罪して菓子折を千冬姉に渡す。
まったくもって見事な謝罪であり、師範代にも見習ってもらいたくなるものだ。
「これはご丁寧にどうも」
千冬姉が師匠の真面目な態度に敬語で答える。滅多に見られないような気がしたのは気のせいだろうか?
「一夏君、この人が一夏君のお師匠さんなんですか?」
「ええ、そうですよ。吉野御流合戦礼法の使い手であり、俺が一番尊敬する人です」
山田先生の質問に自信をもって答える。一部を除けば本当に尊敬出来る人なのだ・・・・・・一部を除けば・・・・・・
その後師匠は箒達一人一人にも丁寧に謝罪していった。
箒達は大の大人がもの凄く丁寧な謝罪をしてくることに困惑し、対応が滅茶苦茶になっていた。
その姿をすぐ隣で村正さんが笑顔で見ていたが、目が笑っていないような気がして俺は背筋が寒かった。
そして山田先生にも謝罪をするのだが・・・・・・
師匠が丁寧に頭を下げると、山田先生もわたわたしながら頭を急いで下げ始めた。すると、その動きで豊満な胸がゆさゆさとゆれてしまう。師匠はそれを見て、
「実に良いおっぱ」「ふんっ!」
言い切る前に俺は師匠の目に目つぶしを放っていた。
自分でもしたあとに驚いたが、体が勝手に動いたのだ。村正さんも俺がそういうことをしたことに驚いていた。手にはすぐにでも出せるように目つぶし用の握りがされていたが・・・
「どうしたのだ、一夏。痛いではないか」
師匠は両目を押さえながら木訥と此方に聞いてきた。
俺は内心混乱しつつも表に出ないようにして答える。
「すみません、師匠。村正さんが放とうとしていたので先に放ち向こうの手を潰させてもらいました。手加減はしたので大丈夫だと思います(たぶん)」
「・・・・・・そうか・・・・・・」
師匠はそう何ともない声で答える。俺は急いで山田先生の方を見ると、俺の行動に驚きはしていたが師匠の言おうとしていたことは聞いてないようで安堵した。
「あれ? もしかして・・・・・・」
村正さんは俺を見てそう呟くとニヤニヤと笑い始める。
「あの、一夏がね~。へぇ~そうなんだ」
「何か?」
「いえ、何でもないわよ」
何だか村正さんの反応に苛立つ。しかしちゃんとした理由もないのに怒る訳にもいかないので我慢した。
村正さんは山田先生に近づき何か内緒話をすると、山田先生の顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。何を話しているんですか、村正さん!
俺は師匠のお願いして村正さんを山田先生から引き離してもらった。
「これで挨拶と謝罪も終わったな」
「このあとのご予定はどうなっているんですか? 観光でも」
「いや、特に決まっていない。手持ちが少ないので観光も出来んしな、帰ろうと思っている」
師匠はこの後用事が無いらしい。てっきりこっちに来たのだから観光くらいするかと思ったのだが、やはりと言うべきか金が無い。
「でしたら、久々に稽古を付けていただけませんか」
俺はつい声を大きくしてお願いしてしまう。
この学園に来てからは色々あり、臨海学校では同じ武者とも戦った。前に比べてどれだけ成長したのか、試してみたくなったからだ。
「別にそれは良いが、大丈夫なのか?」
「ええ、ちゃんと許可をもらいますから。そうでなくても師範代に茶々丸さんと、勝手に入ってきて暴れ回ったりしましたから、そういうのに学園側も慣れてると思いますよ」
「堀越公方様もいらしていたのか・・・・・・あの人は何をやっておられるのやら・・・」
師匠はそう呆れ返りつつも承諾してくれた。
俺はそうと決まれば急いでアリーナの使用許可やら何やらを取りに行き、師範代をアリーナまで案内した。
「ここがISのアリーナか・・・・・・レーサークルスのスタジアムに似てなくもないな」
「向こうのとは違って此方はよりハイテクです。シールドバリアーも張られていて、観客席の安全性が段違いですから」
師匠が感慨深く感想を言う。俺も最初来たときはそう思ったものだ。
俺と師匠は早速お互いに向き合う。
管制室には千冬と真耶、それに箒達五人が来ていた。どうやら皆劔冑の稽古に興味があるらしい(光との稽古は一方的過ぎて全然わからなかった)
「あれ、そう言えば村正さんはどこだ?」
箒が管制室の中を見渡すが、どこにもいない。
「確かにいませんわね。どこにいったんでしょうか?」
セシリアも気がついて辺りを探すと、アリーナの方にその姿を見つけた。
「あんなところにいましたわ」
「何であんなところにいるのよ、危ないじゃない!」
鈴がそう言い、山田先生に放送で呼びかけるようお願いする。
真耶は早速呼びかけようとしたが、その光景を見て唖然としてしまう。
「え?」
村正が景明の前に行くと体が強く光を放ち、光が収まるとそこには巨大な鋼鉄の蜘蛛が現れたからだ。
皆いきなりのことに理解が追いつかない。
しかし村正が蜘蛛になったことを理解すると・・・・・・
「「「「「「「えぇえええええええええええええええええええええええええええええ!?」」」」」」」
驚きで大声を上げてしまっていた。千冬は声こそ上げてはいないが、驚きで顔が固まっていた。
管制室のマイクが入っていたらしく、七人の絶叫が此方の鼓膜に叩き付けてきた。
「ぐあっ・・・・・・一体何があったんだ?」
「大方村正が元の姿になったことに驚いたのだろう。ちゃんと説明はしたのか?」
しまった、話すのを忘れていた。後でちゃんと説明しよう。
俺は気を取り直して正宗を呼び出す。
「来い、正宗」
『応』
正宗はアリーナの入り口から入ってきた。
「これから師匠に稽古を付けてもらう。稽古だからと言って気を抜くつもりは毛頭無い、行くぞ正宗!」
『諒解』
「あれからどれだけ成長したのか見せてもらおうか・・・行くぞ、村正」
『ええ、御堂』
そして同時に装甲の構えを取り、誓約の口上を発する。
『世に鬼あれば鬼を断つ 世に悪あれば悪を断つ ツルギの理ここに在り』
『鬼に逢うては鬼を斬る 仏に逢うては仏を斬る ツルギの理ここに在り』
そしてその場には濃藍の聖甲と紅の妖甲の武者が現れる。
「では、行きます!」
「来い、一夏」
お互いに合当理を噴かし、アリーナの真ん中で二騎は激突した。
最近甘いのが書けてないような~、しかし甘いと糖尿病になりそうな~(砂糖が口から出そうになること)どうしたら良いのやら、困ってますね。
しかし甘すぎると作者の顔がきっと悪鬼笑いしてると思いますしね。