初めまして。私は篠ノ之 箒と言います。
天災で有名な姉のせいで家族はバラバラにされ、住んでいた場所からも追い出されるように出て行く羽目にあった不幸としか言えない境遇の女の子です。
そんな、すぐにでもやさぐれそうな状態だった私ですが、未だにやさぐれずにすんでいるのは偏に幼馴染みである一夏の存在があったからでしょうか。
私の初恋の相手であり、現在進行形で好きな人です。
彼と過ごした幼少期と、また再会したいと言う想いが私を支えてきました。
国からの指示と言う名の強制で、嫌々IS学園に行くことになった私ですが、一夏が劔冑? とかいうのでIS学園にくることになったのにはかなり驚きました。
今のご時世に戦いを挑む、という前代未聞の大事に想い人が関わっているというのには、なんと言いますか・・・・複雑な気持ちになります。
身内のせいでこんな世の中になってしまった訳ですが、それを変えようとする一夏たちが絶対に正しいとも言い切れない。私自身女ですから。
それでも再び会えるということは純粋に嬉しいことです。ぶっちゃけテレビを見たときには踊り出してしまったくらいですから。
映像で見た一夏は小さなころよりかなり大人びていました。性格はどうなのかな~、昔と変わってないのかな~、などと妄想に耽ってしまいます。
そしてIS学園にきた当日、私は一夏と同じクラスになりました。
本当ならその場で喜びのあまりにハシャいでしまいそうになりましたが、なんとかこらえます。私にだってメンツというモノがありますからね。
改めて見た一夏は、何というか・・・・・・変わりすぎでした。
体は大きくなっているのは当たり前、容姿も変わり格好良くなっています。でもそれ以上に・・・・・・性格や雰囲気が変わってました。
まず雰囲気。落ち着いている雰囲気は私の好みですが、はっきり言って落ち着きすぎです。
あまり同年代の男の子と触れあったことはありませんが、それでも分かるくらいで、とても同い年に見えません。姿を見ないで声だけ聞いたら三十代だと見られてもおかしくないと思います。
そして性格。昔は何というか、やんちゃ坊主みたいな感じでしたが今では礼儀正しい青年と言った感じになってました。まさか千冬さんにあんな態度をとれるとは!?小さいころでは考えられないくらいです。あの頃の一夏は千冬さんにべったりでしたから。
しかもどういうわけかは知りませんが、副担任の山田先生から私と同じ匂いを感じます。これも今の一夏の影響ということでしょうか?
もしかしたら一夏は変わってしまったんじゃないか・・・・・・
そんな不安に駆られつつも、私は確かめるために一夏に話しかけました。
「ちょっといいか」
この複雑な視線にさらされながら俺は休み時間を過ごしていた。
俺に話しかけようとするも、紹介のときの担任とのやりとりに尻込みしているようだ。
俺としてもあまり女性と話すことはなかったからどうしていいかわからない。
まぁ、そのうちなんとかなるだろう、と思っている俺に声がかけられた。
頭を上げると、そこには幼馴染みの篠ノ之 箒がたっていた。
用事があるらしいが、何故かまわりを気にして言いづらそうだ。何の話をしようとしてるのかは分からないが、このままでは箒も言いづらいだろう。
俺は箒を連れて屋上に行くことにした。ここならまわりに人の目は無いのでいいやすいだろう。扉もちゃんとロックしておく。
「久しぶりだな、一夏」
「ああ、久しぶり、箒。元気みたいで安心した」
「一夏も元気のようだな」
そのあと何故か箒は沈黙してしまう。何か言いたいことがあったはずでは?
仕方なく俺から話しかける。相手との会話をスムーズに行うためには此方からもよく話しかけることが重要だ。
「そういえば、剣道の大会に優勝したんだって。今更言うのもどうかと思うけど、おめでとう」
「な、なんで知ってるんだ!?」
「新聞でみたからな」
「何で新聞なんて読んでるんだ」
俺が新聞を読むのは変だろうか。
師匠の受け売りで新聞には毎日欠かさず目を通している。新聞は言わば情報集合体であり、ネットを使うより色々な角度の情報を手に入れることができるので、結構便利だ。一々株価と地域ニュースを検索するのは面倒だしな。
「知ってる奴のことが書かれてれば、嫌でも気付くだろ」
「私のことを覚えていたのか!?」
「大切な幼馴染みのことを忘れるはずがないだろ」
「た、大切な幼馴染みっ!?」
箒はそう叫ぶと、ボンッ、と音が出たかと思うくらい真っ赤になってその場でうつむきながらぼそぼそと何かを呟いていた。生憎小さすぎて聞こえない。
さて、こんな状態の箒をどうすればいいのかと考えていたところでチャイムが鳴り始めた。
「もうこんな時間か。次は織斑先生の授業だから遅刻すると大変だ。箒、教室にもどるぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
まだうつむいていた。さすがにこのまま放置して行くのは後味が悪すぎる。
「ほら、遅刻するぞ!」
「あっ、!!」
俺は箒の手を握り、教室まで移動した。
まわりの女子達が何か騒いでいるようだが、気にしていては遅刻してしまうので気にせずに教室に入った。
一夏と話して私が分かったことは・・・・・・一夏が昔より格好良くなりすぎていたことだけでした。