なるほど、なるほど。
これが初めて上野に来たパンダの気持ちか。いや、もしかしたらGHQのマッカーサーかもしれないな。
少なくとも歓迎的とは言えない。そんななんとも言えない視線が俺に四方から突き刺さってくる。
「次は一夏く、げふんげふん。織斑君の番なんでお願いします。駄目かな?」
山田先生がこちらに手を合わせて嘆願してきた。俺はそんなに取っつきづらいのだろうか?妙に俺に関してそわそわしてるような気がする。
「いえ、大丈夫ですよ。山田先生も落ち着いて下さい。教師たるもの、生徒の前では威厳を持って接しないと。不安を見透かされては生徒も不安になりますから、もっと自信をもって下さい」
「は、はい、頑張ります!」
随分と元気よく返事をするなぁ。やっぱり先生も不安だったのだろう。しかし・・・・・・
「先生、顔が近すぎます。落ち着いて」
「は、ひゃい!!」
山田先生は脱兎のごとく俺から離れていった。自分で言っといてなんだが、先生がこんな状態でこのクラスは大丈夫なんだろうか?
そして俺は自分の席から立ち上がり、まわりを見回してみる。皆からの視線が刺さってくるが、その内容は『好奇心や興味、見世物的なものが五割、ISを敵視したものとしての怒りや嘲りなどが三割、残り二割はなんともつかないもの』だ。
俺はその中の何ともつかない視線の中で懐かしい人を見つけた。
(もしかして篠ノ之 箒か?へぇ、大きくなったな)
箒はこちらを気にしているようすだが、さすがにこちらの視線に気付いたらしい。そっぽを向いてしまった、何故?
さすがに気にしていられないので自己紹介を始める。
「このたび劔冑の運用のためにこのIS学園にきました、織斑 一夏です。ISにケンカ売った本人の一人ではありますが、俺は別にISは嫌いでは無いですし自ら毛嫌って敵対しようなどと好戦的でもありません。皆さんと同じクラスになれたので、仲良くなりたいと思います。どうかよろしくお願いします。ただし・・・・・誰がどう見ても悪いことを、女性だからという理由で通そうというのなら、たとえ世界最強のブリュンヒルデであろうとも、許さずに自らの正義に則って討ちます。これは男性だろうと同じで、悪たるものに容赦はしませんのであしからず」
俺がそう言うとまわりから変な歓声?が湧いてくる。
曰く、『格好いい!』『何あの時代遅れ。だっさいんですけど』『武士キター』など。人の感性は人の数だけあるのでそこまでは気にならない。
「なんなんだ、この騒ぎは!?」
そんな声を上げて教室に入ってきたのは俺の姉である千冬姉だった。
「「あ、織斑先生」「遅かったな、千冬姉」」
「すまないな、山田先生。会議で遅れてしまった。それと織斑、ここでは織斑先生だ、馬鹿者!」
千冬姉は山田先生にねぎらいの言葉をかけたあとに俺に向かって出席簿を高速で投げてきた。
無論くらうつもりはないので一寸の見切りをもって避ける。
出席簿はそのまま俺の後ろに飛び、ロッカーに『突き刺さった』。
当たったのでなく、変形させたのでもなく、出席簿は手裏剣のように深々とロッカーに突き刺さっていた。
「それはすみませんでした、織斑先生。以後気をつけます。ですがこの叱責はあんまりかと。あまりひどいと体罰で訴えられるのではありませんか?」
「ここでは私が法律だ。異論、反論は認めない」
「そうですか、それは気をつけます」
そうして俺と千冬姉はお互い不敵に笑い合った。
その光景を見てクラスのみんなは恐怖でどん引きし、
(この二人を怒らせるのは絶対にやめよう)
と心に誓わせた。
若干二名ほどは違っていた。
(い、一夏君、あの千冬さんと対等に張り合えるなんて・・・・・・格好いい!!)
(い、一夏!? 一体私から離れての六年間に何があったというのだ。お前はそんなやつではなかったはずだろう!?)
こうして織斑 一夏のIS学園デビューは幕を閉じた。