さて・・・・・・バスに揺られること数時間、旅館に到着した。
着いた旅館は古風漂う大きな旅館だった。歴史を感じる良い旅館だ。
早速出迎えてくれた女将に挨拶をすることに。女将には落ち着いていしっかりしていると褒められたが、それは謙遜ですよ、と気恥ずかしさから頬を掻いて答えると、何故か箒達と山田先生に睨まれた。何故そんなに睨むんだ・・・女将が引いているぞ。
挨拶を終えて割り振られた部屋に向かう。部屋の割り振りは千冬姉と相部屋だ。
本当なら個室にしてもらいたいところだが、さすがにそれはわがままというものだろう。この部屋割りならば妥当だ。
俺は荷物を置いて早速水着に着替え始めた。取りあえず、今日は楽しもうと思ったからだ。
着替え終えて海へと向かう。旅館のすぐ近くに海があるというのは凄いことだと実感させられた。
「ふぅ・・・海だな・・・」
「な~にそんなジジくさいこと言ってんのよ!」
海に着いてから感慨深くそう呟いたら鈴にそう言われた。
「別にジジくさくはないだろう」
「あんたが言うとそう思えんのよ」
鈴にそう酷いこと言われ少し俺はへこむ。まだそこまで歳を取った覚えはないのに・・・
そうへこんでいたら鈴が俺に飛び乗ってきた。
「・・・・・・鈴・・・・・・前も言ったと思うが、人に乗っかかるな」
「にししっ、別にいいじゃない、減るものでもないし(こんな時じゃないと密着できないじゃない! 昔からしてるから違和感ないしね)」
こいつは昔から水着になるとよく飛びかかって俺に乗っかる。理由は分からないが、気分が高揚しているからだと推測する。若いものは何を考えているのかまったくわからんな。
「なっ、なっ、なっ、何してるんですの、鈴さん! はやく降りて下さい!!」
声がするほうに向くと、怒りで顔を真っ赤にしてわなわなと振るえるセシリアがパラソルを持って立っていた。
「やーだよーだ、べ~」
「また子供のようなことを言ってあなたは・・・!!」
セシリアに向かってあっかんべーをする鈴。その行動は同い年の人間として恥ずかしいぞ、鈴。
「鈴、セシリア、そのへんにしておけ。せっかく海を前にしているのに喧嘩なんてしてたら時間が勿体ないぞ」
「「は~い」」
二人をなだめ、セシリアが持ってきたパラソルの設置を手伝った。
その後にセシリアに日焼け止めのオイルを塗るよう笑顔で脅迫? され仕方なく背面を塗ることに。
その時セシリアが悩ましい声を上げたためにドギマギしたことは内緒だ。
他の部分も塗ってくれと頼まれたところで鈴がセシリアに突撃、ばたばたしながらセシリアにオイルをを無理矢理塗っていた。
手が届かない部分は塗ってやったのだから、あとは自分でどうにかしてもらいたい。
その後鈴と海で泳いだのだが、あいつは準備を怠ったので溺れ、救出することになった。
しばらく休ませる意味合いも含めてセシリアのパラソルの所に寝かせた。
「一夏、一緒にビーチボールしようよ」
鈴を寝かせて海に戻ったらシャルにビーチボールに誘われた・・・のだが・・・
「・・・・・・シャル・・・お前の後ろに隠れているそのミイラみたいなのはなんだ・・・」
「僕は大丈夫だって言ってるんだけどねぇ。そのままでいるなら僕だけ一夏と遊んじゃうよ、ラウラ?」
何っ! このミイラはラウラだったのか・・・確かにサイズが同じような気もするが・・・
ラウラは観念したらしく、タオルを外していった。
「ぅぅ・・・あまり見ないで下さい、一夏・・・」
ラウラが頬を赤く染めながら恥ずかしがって体を覆うように手で体を抱きしめていた。
ラウラの選んだ水着は黒色のビキニでフリルがあしらっており、下着のようなデザインだった。
見ようによって犯罪チックな背徳感を感じるかもしれない。
「どう? 似合ってるでしょ。僕が選んであげたんだ」
「そうだな、似合ってるとは思うし可愛いとは思うが・・・少し派手じゃないか?」
「そこがいいんだよ!」
そう自信満々に答えるシャル。やっぱり最近の若い子は何を考えてるのか分からない。
「や、やっぱり、派手でしたか! でも似合ってるって言ってくれましたし、それに、か、可愛いって・・・・・・ぁぅ」
「「ラウラッ!?」」
顔が真っ赤になって血が上りすぎたのか、ラウラは目を回しながら気絶。仕方なくラウラもパラソルの所に寝かせに行った。
そしてシャルに誘われたビーチボールをやりに行く。
試合は二対二で行われ、結構良い試合になっていった。
「ふむ、楽しんでいるようだな」
そう声が聞こえそちらを振り向くと千冬姉と山田先生が立っていた。
「きゃぁああああああああ! 千冬さまの水着姿、格好いい!」
「スタイルすっごーい! 私もあんなふうになりたいな」
「山田先生も胸、すっごい大きい! 織斑先生より大きいんじゃない」
「先生方の水着、すっごく似合ってる!」
山田先生は前買いに行った水着を着ていて、俺を見て赤くなっていた。
やっぱりあの水着は先生に似合っているな。
千冬姉は黒いビキニのようだ。千冬姉のイメージにぴったりだ。
「どうだ、一夏。似合ってるか?」
「ああ、よく似合ってると思うぞ」
「何だ、それだけしか無いのか。まぁ、お前は山田先生の方が気になるみたいだからしかたないか?」
「な、何言っているんだ、千冬姉!」
千冬姉はそう言うとカラカラと笑って俺と戦っていたチームと交代していた。
正直な話・・・・・・あの一件以来俺は妙に山田先生のことを意識してしまっている。
それが恋心なのか思春期特有の感情なのか、測りかねているために困っているのだ。
千冬姉にそれを見破られてしまっていることに、俺は恥ずかしくて仕方なかった。
そして俺とシャル対千冬姉と山田先生の試合が始まった。
少しして・・・・・・試合は全くといっていいくらい俺達が負けていた。
理由は単純で、俺のミスが殆どだ。
何故か・・・・・・集中出来ないからだ。
山田先生がトスを上げたりするたびに、その豊満な胸が大きく揺れるのだ。
思春期の男には明らかなまでの有害。しかも気になっている相手なのだから、その集中の乱れもひとしおに酷い。俺は真っ正面を向けずにいた。
そして気がつけば最終局面。
あと一点で千冬姉達の勝利が決まる状態になり、二人とも張り切ってボールを打ち上げていく。
そしてもはやおきまりになりつつある俺のミスで甘いボールが向こうに飛んでしまった。
「これで終わりですよ~」
そう言って意気揚々にボールをレシーブする山田先生。
その時なんの因果かは知らないが、ビキニの前がほどけてしまった。
「へ・・・っ!? きゃぁあああぁあああああああああああああああああ!!」
すぐに気付いて慌てて先生は前を手で隠す。しかしそれに力を入れすぎたのか、胸がさらに押しつぶされ、明らかに破廉恥な感じになってしまった。
「ぶぅっっっっっっっっっっ!」
その光景を見てしまい、俺は吹き出してしまった。
そして今は試合中、ボールは見事に千冬姉の所に飛んでいき・・・・・・
「教師をいやらしい目で見るのは関心しないなぁ、織斑」
渾身のスパイクが打ち出され、俺の顔面に直撃。
俺はその一撃で、砂浜に沈んだ。