臨海学校当日、俺達はバスに乗って目的地である旅館に向かっていた。
臨海学校と言っても遊びに行くわけではなく、ISの装備の稼働試験をするために行うため、遊ぶだけではない。
と言ってもそれは二日目であり、初日は自由行動なので半分は遊びなわけだが・・・
どちらにしも俺にはあまり関係が無かったりする。
劔冑はISと違って拡張性が無い。後付けなど出来ないのだ。
実は劔冑の中にも、競技劔冑(レーサークルス)と呼ばれる競技用の劔冑がある。
これはレース用に作られた数打であり、コレならば改造出来たりする・・・のだが・・・
当然レース用に調整されたもの故に、装甲は紙切れ同然に脆い、実戦では何の役にもたたない。
なので武者の中で好んで使う人はいないんだとか・・・
装備の試験も何もない俺は二日目も自由みたいなものだ。
皆あまりそういったことは考えず、海で遊ぶことに心がいっぱいのようだ。
さて・・・俺も本来なら浮かれたくもなるが、そういうわけにはいかない。
三日前のこと・・・
自室で体を鍛えていたらいきなり政府の人間が来た。(シャルは女と皆に知れたので部屋を移った)
何事かと思ったところ、機密文書を渡されその場で読む事に。
内容は要約すると・・・
『こんど行く臨海学校の旅館の近くには、古くから続く槍術の道場があるらしく、そこの主は劔冑を保有している。政府が俺を筆頭として劔冑を世界に大々的に見せつけると同時に、秘密裏に劔冑を保有している武者と接触している。要は勧誘なのだが・・・他にも武者を招く理由もあり、劔冑は武術を学ばなければ性能を発揮することは出来ないので、その教師として招く意味合いもある。近年では武術というのは廃れ始めているだけに、こういった人材は貴重なのだとか。それで政府が早速接触してみたが、消極的のようで良い返事がもらえなかった。どうすればよいのかと悩んでいたところ俺の話が出てきて、『その武者と戦い、政府を見極めさせてもらいたい』と言われたらしい』
つまりは旅行先で試合してこいというわけだ・・・むしろ死合いのほうが正しいかもしれない。
武者同士の試合はあまり試合にならない。身内や同門ならそこまでなことにはならないが、別の武門の武者同士、劔冑を用いるのならそこに流血は避けられない、血戦になることは目に見えている。
しかし武者たるもの、同じ武者との戦いには血が滾り、胸が高鳴る。
俺は了承すると、その場で文書は燃やされた。
というわけで俺は皆が浮かれている中、一人戦いに向けて精神を集中させているわけだ。
「一夏、どうしたの? 眉間にしわなんか寄せて」
「せっかくの海なのだ。そんな顔をしては楽しめないぞ」
「一夏さん、もっと楽しみましょうよ」
「一夏、何か心配ごとでもありましたか?」
箒達が心配そうに話しかけてきた。
いかんな、どうやら顔に出てしまっていたようだ。
せっかく皆が楽しみにしているのだから、水を差すわけにもいかん。
「いや、何でも無い。ちょっとめまいがしただけだよ」
俺はそう答えて皆と話すことにした。
何はともあれ、今はこの臨海学校を楽しむべきだ。
そう思い直して、俺はこの旅行先に想いを馳せることにした。
山田先生が俺の顔を見て深刻そうに考えていることに気付かずに・・・・・・
他のヒロインをどうすればいいのか、実に難しくて困りますね~、いや本当に。