装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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お風呂は危険がいっぱい

山田先生からの朗報を受けて俺は今風呂に浸かっている。

やはり日本人たるもの、風呂は入りたい。

IS学園に来てしばらく経つが、唯一の不満があると言えば風呂に入れないことくらいだろう。

部屋にはユニットバスしかなく、大浴場は女子が常に使っていることを考えれば俺が風呂に入れないのは仕方の無いことだ。

なので今日から風呂に入れることは実に嬉しい。

シャルルには悪いが留守番をしてもらった。

さすがに一緒に入ることなど出来ないので、どちらが先に入るかという話になったのだが、どうやら俺は喜んでいるのがバレバレだったようだ。

シャルルに先に入るよう進められてしまった。

と言うわけでシャルルの好意に甘えて俺は先に入りに来たわけだ。

湯加減が少し温い気がしなくもないが気持ちよい。疲れが体の外へと溶け出していくようだ。

そしてつい、うとうととし始める。思えばIS学園に来てからは色々あったな・・・・・・

幼馴染みとの再会、代表候補生との試合、正体不明の敵との戦いに過去の自分の不甲斐なさが招いた結果が襲いかかってきたり・・・・・・

しかしどういうわけか女性がらみの問題が多くなった気がする。

女難の相でも出てるのではないだろうか。弟子は師匠に似るというが、俺はそういうところは似たくはなかったんだけどなぁ・・・・・・師匠の周りが問題を起こすと、下手したら街一つ吹っ飛んでもおかしくなかったりするし・・・・・・やっぱり似てしまうものなんだろうか?

そんなこと考えていたら眠気がピークに達してしまい、俺は意識を手放した。

 

 

 

ちゃっぷん、と水音が聞こえて意識が覚醒した。

どうやら寝てしまったらしい。いかんなぁ、風呂で寝てしまっては。下手をしたら惨事になっていたかもしれない。

そんな風に反省をしていたら背後からお湯をかき乱す音が聞こえ、どんどん近づいてくる。

 

「誰だっ!?」

「きゃぁっ!? 一夏、こっち見ないで!!」

 

咄嗟に振り向いた先には何と、

 

タオル一枚巻いただけのシャルルがいた。

湯気で湿ってしまったようで体にぴっとりと張り付いている。体のラインが強調されてとても色っぽかった。

 

「なっ、シャルル!? どうして入ってきたんだ! 留守番していたはずじゃ・・・・・・」

 

そうは言うがシャルルを凝視してしまっている自分に気付く。

 

「す、すまん!?」

 

俺は慌てて反対を向く。頭に乗っけていたタオルで急いで股間を隠すのも忘れない。本来はマナー違反だが、非常事態故に許せ、マナーよ。

 

「あ、あんまり見ないで・・・」

顔が見えないが、凄く恥ずかしがっていることが分かる。

 

「ど、どうしてここに・・・」

「あの・・・そのね・・・一夏に話したいことがあってね・・・」

「そ、それは今すぐじゃないと駄目なのか!?」

「それは・・・うん、今すぐじゃないと駄目だと思う(今退いたら二度と出来ないと思うから)」

「そ、そうか・・・それで話したいことってなんなんだ・・・」

 

緊張のあまり呂律がおかしくなりそうになる。

俺の背後からシャルルが近づいてくる気配を感じ、体が萎縮する気がした。

そして俺の真後ろで止まると・・・なんと!?

 

俺の背中を抱きしめてきたっ!?

 

背中から感じる柔らかな二つの感触に顔が溶解寸前まで真っ赤になり、耳元で感じるシャルルの吐息で心臓が破裂寸前に追い詰められる。

 

「なっ!? シャルル、一体何をっ!?」

 

声が明らかに裏返っておかしくなっているが、それを気にする余裕など無い。

 

「一夏、あのね・・・まだ一夏に言ってないことがあるんだ。あのね、これからは僕のこと、シャルロットって呼んでくれる?」

 

シャルロット? 何でそう呼ぶように・・・・・・あぁ、そうか。

 

「それが本当の名前か」

「そうだよ、僕の名前。お母さんがくれた本当の名前」

 

IS学園に男として入ってきたのだから、男の名前に偽る必要があった。さすがに男でシャルロットというのは可愛すぎる名前だ。最近は増えてきたようだが、男で女みたいな名前の人もいる。

と言ってもさすがに男で桜子とか菫、みたいなのはいないだろう。シャルロットはそれにあたる気がする。だからこそ、男の名前っぽいシャルルに偽名をしたんだろう。名前からしてこいつには似合ってるから違和感が無い。それを狙って付けられた偽名だったようだ。

 

「わかった・・・シャルロット」

「うん・・・」

 

シャルル改めシャルロットはしばらく俺に抱きついた後にまくし立てるように早口で話すと、お湯を凄い勢いでかき分けて急いで風呂から出て行った。

俺はその間ずっと反対を向いていた。

そしてシャルロットが出た後俺が何をしているのかと言えば・・・

冷水のシャワーを頭からかぶりまくっていた。

少しでも速く鼓動を押さえ、頭から顔にかけて堪りまくっている熱を冷ますために。

おまけに般若心経を唱え心を落ち着かせようと必死だった。

そのせいでまったく気づけなかった。

この場に来た新たな人物に・・・

 

 

 

「い、一夏君っ!!」

 

また女性の声が聞こえ体が硬直する。見てはいけないと思うが、姿を確認しなくては何なのかわからない。俺は、ギッ、ギギ、と音が鳴っているかのように振り向く。

そこには・・・・・・

 

山田先生が立っていた。

しかも風呂場だから当たり前なのだが、バスタオル一枚だけ巻いた姿でだ。

明らかにきつめに巻かれたのか、胸がとても窮屈そうになっている。しかしそれでもタオルは胸に勝てず、胸の大きさが際立ち乳肉が溢れそうになっている。それを隠して抱えるように持ち上げている山田先生の姿はとても色っぽく、艶やかな表情をしていた。

 

「なぁっ、山田先生!? なんでここにいるんですか!?」

 

シャルロットの時も凄まじかったが、山田先生はさらに大人の魅力のようなものが溢れていた。

直視しようものなら死ぬかもしれん。俺は全力で見ないようにそっぽを向く。

 

「えへへへ、せっかくですから、一夏君のお背中を流そうかと思いまして~」

 

そう甘すぎる声でそう答えると、山田先生は俺にしなだれかかってきた。

体に当たる破壊的なまでの感触に一瞬にして頭がオーバーヒートを起こす。

 

「せ、先生、その、あの・・・あたってるんですが・・・」

「何がですか~、うふふふふ」

 

山田先生は顔を俺に近づけて囁いてくる。しかも自分のしてることが分かっているようで、さらに体を押しつけてきた。自分に中で理性という柱がガリガリと削れてく音が聞こえた気がする。

その甘やかな声に意識がふやけそうになり、その体から香るいい匂いが理性を削るのに拍車をかけていく。

しかしその匂いの中に一つだけおかしなものが混じっていることに気付いた。

この匂いは嗅ぎ慣れた匂いだ。

 

「先生・・・・・・もしかして・・・酔ってます?」

 

そう、これは酒の匂いだ。

その匂いが山田先生から出ていた。

 

「すこ~し飲んだだけですよ~」

 

そう先生は答えるが、この反応は少しでは無い気がする。もしかしたら本当に少しなのかもしれないが、先生が酔いやすいのかもしれない。

俺はさっきとは別で脂汗をかき始めていた。

経験上、酔った人間はろくなことをしない。下手にやめさせようとすると余計に反発して酷くなるだけであり、手の打ちようが無い。台風のように過ぎ去るのを待つしか無いのだ。

 

山田先生はその後俺を椅子に座らせると早速背中を洗い始めた。

先生の手が背中を這いずり回すように洗っていく感触は妙に官能的で、意識が持って行かれそうになるのを必死に押さえていた。

 

「んん~、一夏君の背中って・・・大きいですよね~」

「そ、そうですか・・・」

「抱きしめがいがありそうです~」

 

そう言って俺の背中に抱きついてくる山田先生。

 

「せ、先生っ!? む、胸がっ」

「ん~、何ですか~、い・ち・か・く~ん」

 

駄目だ駄目だ駄目だ!! このままでは俺は駄目になってしまう、武者失格になってしまう?

混乱の極みに達してしまって自分でも何を考えてるのか分からなくなってくる。

しかしなんとか理性を振り絞って先生に聞く。

 

「何でこんなことしてるんですか、先生・・・」

「だって~、最近一夏君の周りは女の子だらけじゃないですか~。篠ノ之さんにオルコットさん、鳳さん。よりどりみどりで皆さん、きれいで可愛いじゃないですかぁ・・・・・・私ってそんなに魅力ないですかぁ~、やっぱり年上はみんなおばさんだとか思ってたりするんですか~!」

 

先生の顔が一気に近づいてくる。そんな潤んだ瞳で見つめないでもらいたい。理性がさらに削れてしまうじゃないですか。

 

「い、いや~、先生は魅力的な女性ですよ・・・」

「どこが~! どこが魅力的なんですか~!」

「え~っとその~・・・ぼ、母性的で優しい所とかです!」

 

そう言いつつも胸に目が行きそうになってしまう自分を激しく恥て嫌悪する。

 

「それに先生はまだ十分お若いじゃないですか。おばさんだなんてことは全くありません。おねえさんですよ、年上の魅力に溢れてますよ、きっと」

「・・・・・・本当ですかぁ~」

「ほ、本当ですよ、武者に二言はありません!!」

 

俺が必死にそう答えると山田先生は沈黙してしまった。何か間違えてしまったのだろうか!

 

「・・・・・・うふふ・・・嬉しいです!!」

 

そう言って俺に飛びついてくる山田先生。

俺の顔は先生の胸に埋められた。

 

「せ、先生っ!?」

「そうですか~、一夏君はそう私のことを見てくれてたんですか~。うふふふふ」

 

先生はさらに興奮して俺を椅子から引き倒した。どうやらわざとではなく足を滑らせたらしい。

 

「きゃぁ!?」

「ぐぉっ!?」

 

そして二人して床に倒れ込む。

山田先生の顔が近づいていき・・・・・・

 

唇に唇が重なってしまった。俗世に言うキスというもの。

俺は混乱が極みに極み、思考が吹っ飛ぶ。

先生は手を俺の頭に回して引き込み、さらに唇を押しつけてきた。

 

「っっっっっっっっっっっっっっっっ!?」

 

少しして解放された。

今の俺は顔は目の当てられないものになっているだろう。

先生は顔を赤らめつつも瞳を潤ませながら、

 

「んふふふ、一夏君とキスしちゃいました」

 

とご満悦な様子。

急いで離れようとして手を動かしたら何かを引っかけた。

引っ張った瞬間、

 

山田先生のタオルがほどけ、その豊満な胸が俺の眼前に晒された。

身長からは不釣り合いなまでに大きいその胸を生で見てしまった俺は・・・・・・

 

意識がはじけ飛んだ。

 

最後に聞いたのは水が撥ねるような音だけだ。

 

 

 

『御堂の熱量の急激な低下を確認! どうした、御堂よ、御堂!!』

 

己の仕手の急激な熱量の低下を感知して来た正宗が見たものは、鼻血を川のように流している一夏だった。

この後正宗は一夏を背に乗せて自室まで運んでいった。


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