装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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因縁の決着

その組み合わせが決まったとき、私、篠ノ之 箒の胸中には何とも言えない複雑過ぎる感情が渦巻いた。

一夏がとデュノアが組んだこと知ってショックを受けてしまい、どうすればいいかと悩んでいたらあっという間に時間が過ぎ、気がつけば誰ともペアを組めなかった。

前にした約束のためには一夏にも勝たなければならなかったが、ペア戦になれば一夏と戦わずにすむし、一夏とともに戦えるのはそれはそれで魅力的なわけなのだが、それを知ったあとに行ってみれば既に一夏はペアを組んでしまっていたのだ。

ショックのあまりふらふらしてしまい、呆然としていたらこの始末。

しかし約束は有効、勝てば問題は無い。(一夏はこの約束を一切聞いていない)

私はそう考え直しながら控え室で待っていたわけだが・・・・・・

よりにもよってこんな奴とペアになるなんて・・・。

 

ラウラ・ボーデヴィッヒ。

 

一夏に敵意を持っているドイツからの転校生。

私も鈴とセシリアの模擬戦は見ていた。あれは・・・・・・あまりにも酷い戦いだった。

戦う相手に一切の誠意もなく、相手の尊厳を侮辱するような戦い、あれはまるで・・・・・・

少し前の自分を見ているようだった。

中学の時に優勝した大会、あのとき私は自分の境遇に苛立ちが募りきっている時期であり、ただ闇雲に力を振り回してしまった。はっきり言って八つ当たりでありみっともない。

そのときの姿は今のラウラ・ボーデヴィッヒと重なって見える。

私はその時の自分ほど自己嫌悪するものはない。となればボーデヴィッヒのことも苦手なわけだ。

私はこいつと一緒に戦えるのだろうか・・・・・・今度こそ強さを見誤らず勝つことはできるのだろうか・・・・・・

 

 

 

正宗はアリーナに来てから装甲した。いつもはしないのに何故か。

俺だって劔冑のことを皆に知ってもらいたい気持ちくらいは少しある。故にこれは観客へのサービスのようなものだ。見世物になるのはあまり好きでは無いが、たまにはこういうのもいいだろう。

そして今俺達はボーデヴィッヒ、箒と相対する。

 

「一戦目で当たるとは、待つ手間が省けたな」

「そうだな。此方もそのめぐり合わせには感謝が絶えないよ」

「はっ、ほざけ!」

 

そうしてお互いに戦意を高め合っていく。そしてそれが頂点に達したとき、丁度良く試合開始のブザーが鳴り響く。

 

「叩き潰してやるっ!!」

「いざ、尋常に参るっ!!」

 

戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 

「シャルル、手筈通りに箒を頼む」

「うん、一夏も頑張ってねっ!」

 

シャルルにそう指示を飛ばして俺はボーデヴィッヒと一対一に持ち込む。

しかしボーデヴィッヒはすぐには仕掛けずに間合いを離しながら警戒する。

 

「どうした。前みたいににすぐ撃ってきたりしないのか?」

「ふん、貴様ははっきり言って不気味だ。不用意には近づかないっ!」

 

ボーデヴィッヒはワイヤーブレードを展開して距離をとって攻撃してきた。

ワイヤーブレードの数は四本、それぞれが独立しているかのように動き、俺に仕掛けてくる。

しかし劔冑にはこの程度の攻撃など効く訳が無い、当然これは牽制、ならば本命は別にある。

俺は刀や拳を使ってブレード部分を弾いていく。巻き付かれると面倒だ。

 

「そっちこそどうした、仕掛けてこないのかっ! ならばこちらはさらにいかせてもらう」

 

さらにレールガンによる砲撃が俺に襲いかかる、こちらが本命か。

 

「はぁっ!!」

 

さすがにこいつは喰らうと不味いので矢払いの術で叩き伏せる。

 

「そちらこそ俺にこの攻撃が通用しないことを忘れたのか。少し様子見をしていたに過ぎない、その程度で調子付かれては困る!」

 

今度はこちらの番だ。俺は合当理を噴かして突撃を仕掛けに行った。

 

 

 

「ごめんね、相手が一夏じゃなくて」

「なっ! 馬鹿にするなっ!!」

 

シャルルは箒を挑発しながら戦闘を行い、一夏から遠ざけていく。一夏はボーデヴィッヒに接近戦を仕掛けようと刀を振るう。

その光景を管制室で織斑 千冬と山田 真耶は見ていた。

 

「どうして一夏君とデュノア君は一緒に戦わないんでしょうか?」

「たぶんだが、劔冑は連携などをしないものなのではないか。通信も出来ない以上、連携など出来たものではあるまい。それで二人とも各個撃破にするつもりなのだろう」

「なんでそんなことを・・・」

「これも予想だがな・・・たぶん一夏のやつが望んでこの状態になるようにしたのだろう。確か武者は一対一を好んで戦う風潮があるらしいからな」

「一夏君って結構昔気質ですよね」

「まぁ、本人が言うには劔冑を使う人間は自然とそうなるらしい。しかしそう言うところがいいんだろう、お前は」

「えぇ、私は一夏君のそういうところも好きで、って何言わせるんですか織斑先生!!」

 

真耶はポーッと顔を赤らめながら言ったあとに自分がからかわれたことに気付き、慌てて千冬に突っ込む。千冬は千冬でそれが面白かったらしく、笑いを堪えていた。

そんな風におちょくられたりしてからからわれている内にシャルル対箒の戦いは決着が付いた。

シャルルは特に損傷なくその場で佇み、箒は乗っていた打鉄がシールドゼロで機能停止を起こし、強制解除していた。

 

「あっさり負けちゃいましたね、篠ノ之さん」

「専用機がなければあんなものだろう。援護もないわけだしな」

 

そして二人は一夏対ボーデヴィッヒに注目する。

 

 

ボーデヴィッヒのプラズマ手刀が閃き、斬馬刀がそれを剛力でもって弾き迎え撃つ。

それが何合も続き、未だ戦局は膠着状態に陥っていた。

 

「どうした、先程でかい口を叩いた割にはその程度か!」

 

ボーデヴィッヒそうこちらを煽りながら、さらに苛烈に責め立ててくる。しかしその攻撃には焦りがにじみ出ていた。

(何故だ、何故倒せない! こんなISより劣っている骨董品に、何故!!)

 

「別に・・・ただ待っていただけだ。お前が一人になるまでな」

「ふっ、二人がかりなら勝てるとでも」

「いいや、違う、お前とは一対一だ。ただ邪魔されないように待っていただけだ」

「何だとっ!? 嘗めた真似をっ!!」

「見せて、そして教えてやる。本当の力というものを、信念というのを、そして・・・正義というのをっ!!」

 

俺はそう言い放つと斬馬刀を鞘にしまう。

 

「何だそれはっ!? 私相手には刀は不要とでも言うつもりか・・・・・・ふざけるなぁああああああああああ!!」

 

俺の行動に神経を逆なでされたらしく、激しく怒りながらボーデヴィッヒが襲いかかる。

 

「別にふざけてなどいない。ふざけていると思うのなら、自慢のAICとやらで停止させてみればいい。ただし・・・できればなぁ!」

 

俺は徒手空拳から構えて一気に懐に飛び込み、左手を相手の背に回すと同時に右の拳を相手の鳩尾に打ち込む。

 

『吉野御流合戦礼法、鉄床』

 

「ぐぅっ!?」

 

至近距離から鳩尾に襲いかかった衝撃にボーデヴィッヒが苦悶の声を上げる。

 

「まだだ、さらにいかせてもらう」

 

俺はそこから体をひねり死角から回し踵蹴りを放つ。

 

『吉野御流合戦礼法、逆髪』

 

「がはぁっ」

 

ボーデヴィッヒの体がくの字に曲がり、ISの装甲が砕けていく。

その後も追撃に拳を、蹴りを放ち相手に反撃のチャンスを与えない。

(く、くそ・・・これではAICを使えない)

ボーデヴィッヒはさらに顔を焦りで歪める。

AICの弱点の一つ、集中出来なければ対象を停止させることは出来ない。ならば集中出来ないほど攻めて使う余裕を一切奪い使わせない。

劔冑を使う武術には無手による技もあり、これを武者式組打術と言う。もちろん俺の学んだ吉野御流合戦礼法にも当然あるわけだ、武者は剣術だけではない。

 

「そろそろ決めるぞっ!!」

 

俺はボーデヴィッヒに掌打を打ち込み、たたらを踏みながら後ろに下がった所で斬馬刀の鞘に手をかけ抜き放つ。

 

『吉野御流合戦礼法、迅雷』

「がぁあああぁああああ! がはぁっ」

 

俺の放った居合いが直撃してボーデヴィッヒは装甲の破片を撒き散らしながらアリーナの壁まで吹っ飛び叩き付けられる。

 

「その砲も封じさせてもらう」

 

追撃のために斬馬刀をまた鞘にしまい小太刀に手をかける。

 

『吉野御流合戦礼法、飛蝙』

 

飛んでいった小太刀はレールカノンに突き刺さり破壊する。これでレールカノンは完璧に使えなくなる。

 

「これで終わりだっ!!」

 

俺は合当理を噴かせながら突進、斬馬刀を上段に構えながらボーデヴィッヒに振り下ろす。

 

『吉野御流合戦礼法、雪崩』

「くっそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおおおおおおおおお!!」

 

ボーデヴィッヒは何とか止めようと必死になってAICを起動、俺の手を止めた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・どうだ、止めてやったぞ・・・」

 

してやったり、といった顔で笑おうとするボーデヴィッヒだが、そうはいかない。

 

「その油断が命取りだ、愚か者がぁああああああああああああああああ!!」

 

俺は熱量をすべて筋力強化に回し全力で腕に込め、自力で無理矢理AICを突破した。

 

「な、何だと!? そんなっ・・・」

 

俺の斬馬刀は解放された力を存分に発揮し、斬撃を受けたボーデヴィッヒをさらに壁にめり込ませる。

もうボーデヴィッヒのISは半壊状態であり、とても試合を続けられそうに無い。

これで終わりかと思ったがそのとき、

 

「あああぁああぁあああああぁああああああああぁあああ!!」

 

突然ボーデヴィッヒが絶叫し始めると、半壊になっていたISが紫電を放ち始めた。

紫電が収まったかと思うとISは黒いどろどろとした泥のようになるとボーデヴィッヒを包んでしまい、ISを纏った人型の何かに変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 


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