さて、早速お披露目だ。
俺はマスコミの人たちが見てる中、九○式竜騎兵甲を装甲してみせた。目の前の光景がかわり自身が武者になったことがよくわかる。
「コレがその兵器、劔冑ですっ!」
総理が意気揚々に高らかに紹介する。ああ、子供みたいに喜んじゃって・・・まぁ気持ちがわからない訳でも無いけどな。ISが出てから男は辛酸を嘗めさせ続けたから無理も無い。天皇陛下も顔にあまり出さないようにしてるみたいだけど、すこしはみ出してるし。
皆が驚く顔がよく見える。ISの量子変換に馴れたりすると、こういった分離、変形合体は新鮮に映るのかもしれないな。
「性能のほうはどうなのでしょうか?」
早速質問が来たようだ。いつまでも驚いていたら、記者としての仕事がなりたたないしな。
「それに関してはスペックをこの場で話すより、見てもらった方がよいと考えます。すでにデータ収集のために、ISと戦闘をしました。これがその映像です」
総理が自分の背後に指をさすと、立体映像のプロジェクターが出現し映像が流れる。
そこには日本の第二世代型IS『打鉄』と九○式竜騎兵甲が映り戦っていた。
(あ、コレ確かちょっと前にやった入学試験のときの映像だ。こんなもんいつのまに撮ってたんだ?)
映像の戦闘ははっきり言って一方的だった。
打鉄がアサルトライフルをフルオートで撃つのだが、九○式竜騎兵甲はそんなモノは豆鉄砲、とでも言うかのように突進して一気に間合いを詰める。
劔冑の装甲はかなり堅固で、銃器などはなかなか通らない。レールカノンくらいないと傷つけることすらできないのだ。つまり装甲した武者の一撃は、それ以上の威力になるのだ。
そして推進機関、合当理(がったり)はこの重い巨躯を飛行させるために、かなりの出力が要求される。その合当理をフルに噴かせての突進は、ISの速度に匹敵する。
九○式竜騎兵甲は打鉄に刀を振るう。防御が間に合わないと判断したのか、持っていたアサルトライフルで防ごうとするが、一太刀できれいに切断されてしまった。しかも九○式竜騎兵甲の攻撃は終わらない。武器破壊とほぼ同時に反対の角度からもう一太刀が飛んできて打鉄は食らってしまい、壁にまで吹っ飛ばされ叩き付けられてしまった。
(たしかこのときは吉野御流合戦礼法の基本技、木霊打ちを使ったんだっけ)
そのあとも九○式竜騎兵甲の猛攻は止まらない。近接用ブレードで対抗しようとする打鉄だが、力の差がありすぎて近接戦では相手にならなかった。鍔迫り合いをしようものなら九○式竜騎兵甲の剛力でたたき伏せられ、打ち合おうなどとすればブレードを真っ向からはじき返される。そして九○式竜騎兵甲の斬撃は打鉄のシールドエネルギーを削り続け、あっという間に残り二桁台にまで持って行った。
損害から見ても劔冑のほうが優勢に見える。数多くの被弾こそすれど、機体にそこまでの損傷はうかがえない。むしろ装甲が欠けたか?くらいにしか見えない。対して打鉄はあとちょっとでクラスCのダメージになりそうなほどの損傷を負っていた。ぱっと見でも中破だと誰の目から見てもわかるくらいだ。
打鉄はなんとか離れグレネードランチャーを喚び出すと、九○式竜騎兵甲に向かって全弾発射した。
さすがにこれは無事では済まないだろう、と皆が息を呑んで映像に齧り付く。ISシンパの記者もいるのだろう、さっきから鬼気迫るような顔をしている人がこちらを睨みまくっている。怖ぇええ!
残念ながらそのおっかない顔もこれでおとなしくなるだろうさ。次の映像が流れ次第、あたりは凍り付いた。
九○式竜騎兵甲は焦げ目や煤で汚れていたが、殆ど無事だったのだ。
九○式竜騎兵甲は何も無かったかのように動くと、刀を納め小太刀に手をかける。
次の瞬間には右手が振り上げられていた。
しかしその手に小太刀は無い。ではどこか?それは・・・・・・
矢のごとく高速で飛び、打鉄を撃ち堕とした。
(吉野御流合戦礼法が一つ、飛蝙)
これにより打鉄はシールドエネルギーがゼロになり、試合が終了した。
「ご覧いただけたでしょうか、これが劔冑の実力です!」
総理が高々に言うと男性の記者からは賞賛が、女性の記者からは、そんな・・・・・・と言った感じの自失とインチキだの不正だのと言った罵詈雑言が溢れかえった。
「この戦闘データは既に、世界各国に配信しました。当然IS委員会にも送っています。不正が無いかはこのデータを調べればわかることですから、不満がある方にはこのデータを送らせていただきます」
「「こちらにもそのデータを下さい」」
マスコミがごったがえしている様は、蟻のように見える。この情報は確かにマスコミにしてはとてつもなく甘い砂糖のようなものだしな。
周りの反応も上々に、総理はさらに話す。どうやらここで一気に決めるつもりらしい。
「これは九○式竜騎兵甲と言う機体で、なんと量産機です。ISと違いコアなどを必要としないので数に左右されません。我々にはこれを量産する術があります。これにより、ISの時代に歯止めをかけたいと、私は思います。しかしこの映像だけでは納得しない人たちもいるでしょう。そのために、我々はさらに劔冑の優位性を見せるために、ある策に出ました。それは・・・・・・」
総理にあわせて俺は装甲を解除した。
「彼、織斑 一夏君をこのたび、IS学園に入学させることに決まりました!」
俺の名を聞いてまわりは騒然となる。正確には『織斑』の名に、だ。
「彼はまさかっ!?」
「皆様予想の通り、あの『織斑 千冬』のご姉弟です」
それを聞いてさらに沸き立つ会場。IS最強のブリュンヒルデの弟が、ISにケンカを売ると言うんだから、その衝撃と話題性はすさまじい。ネームバリュー、て恐ろしいな。
こうして緊急速報の報道は幕を閉じた。
一夏を知ってる人たちは皆、動揺と困惑で大変なことになっていたがそんなことを一夏が知ることはなかった。
「何でこんなことになっているんだ・・・・・・・・・」
私はあまりの事態に頭が追いつかず、頭痛で寝込んでしまいたくなった。
こうして織斑 一夏はIS学園に通う、もといISにケンカを売りに行くことになった。