装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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劔冑風、AIC分析

その日の夜、俺は反省文とお説教に疲れた体と精神を休ませるためにベッドに座っていた。

 

「一夏、今日は助けてくれてありがとう」

 

向かいのベッドに座っているシャルルにそう言われた。

 

「助けたってなんのことだ?」

「ペアを言い出してくれたことだよ」

「あぁ、あれか。今シャルルのことがばれると大変なことになりそうだったからな。先手を打って防がせてもらったまでだ。それにこういう言い方をすると謙遜に思われるかもしれないが、シャルルがこの学園に来て一番付き合いが長いのはたぶん俺だと思うから、俺が一番組みやすいと思ってな。模擬戦を数回もしてるし、お互いにある程度の手札は知ってるから。何よりあのときシャルルは助けを求めてると思ったから、助けないといけないと思った」

「確かにそうだね。この学園に来てから一番一緒にいたのは一夏だよ。ちょっと理屈っぽいけど・・・それでも僕は凄く嬉しかったんだ」

 

シャルルはそう言って喜んでくれている。こういう笑顔を見ると、あのときの選択は間違えてなかったと思えて救われる気分になるな。

 

「そう言えば、俺と二人きりの時は男子口調にしなくてもいいんじゃないか。もう男子のふりをする必要もなくなったんだしさ」

 

シャルルはあの出来事の後でも男子口調で話していた。前から気にはなっていたが、それに慣れてしまっていたためにすっかり忘れていた。

 

「う~ん、僕もそう思うんだけど、こっちに来る前に徹底的に特訓させられてたから、すぐには直せないかなぁ・・・・・・やっぱり女の子っぽくなくておかしいかな・・・?一夏が気になるなら早く直すようにするけど・・・」

「いや、本人がそこまで気にしてないならいいんだ。それにシャルルはかなり女の子っぽいから大丈夫だ。十分に可愛いと思うぞ」

「えっ・・・か、可愛い? 僕が? 本当に? うそついてない?」

「ああ、ついてない。武者に二言はない」

「うん、ありがとう! (そうなんだ・・・一夏が僕のこと、可愛いって・・・・・・)」

 

シャルルはそのあと顔を真っ赤にしてポー、としていた。どうかしたんだろうか?

 

時間もそろそろ遅いのでシャルルに寝るように言い、俺は部屋の電気を消した。

 

 

 

暗闇の中、すやすやと可愛らしい寝息が聞こえてくる。

隣のベットではシャルルが静かに寝ていた。

俺はそれを確認次第に部屋の窓を開ける。

 

「来い、正宗」

『呼んだか、御堂よ』

 

俺はシャルルが起きないように小声で正宗を呼び出した。

 

 

「今日戦った奴について、お前はどう思う」

『あの鴉のようなか細い者か。ふん、信念も無く力を振るうだけの暴徒よ。あの程度の者など、この正宗の敵ではないわ。信念無き力などただの暴力、暴力を振るうものはただの悪よ。そのような悪に正義が負ける道理など無い』

「ああ、俺もそれは一緒だ。あんなやつに負けるほど俺達の正義は緩くない。それであいつのAICだったか、お前から見てどうだった?」

『うむ、確かに面白い能力ではあるがな、あの程度の能力など劔冑の陰義にはいくらでもありそうなものだ。それにあれは随分と未熟でお粗末なものよ』

「というと?」

『あれはどうやら使い手が常に対象に集中してないと効果が維持できぬようだ。現に今日あの小童は此方の無弦・十征矢を喰らったら驚き、効果を維持出来んかった』

「確かにあのとき腕の拘束が解除されたな。つまり集中を乱されるとAICは効果が維持できず使えない」

『そうだ。それに止められるものも大きさも範囲もそこまではないとみた。あの場合なら、全身を停止させるのが常套だ。さすればこちらに一切の抵抗ができぬように出来たのだからな。しかしあやつが止めたのは腕のみ、此方にはほかにも蹴りを出したりすることもあるというのに。それを踏まえて考えれば、つまりは出来ない。停止させられるのはそこまで広範囲はないということよ』

「つまりAICはそこまで万能ではない、か。しかもそれを聞くと、とても使えそうに無いな。そんな一カ所に集中してたら実戦では命取りだ」

『あの小童は過剰なまでにあの術を過信しすぎている。自身は戦いの玄人とでも勘違いしているのだろうよ。御堂、あのような阿呆の目は早々に覚まさせてやれいっ!!」

「ああ、そうだな。俺達の正義を見せつけてやる・・・・・・・・・でもな、正宗」

『何だ、御堂よ』

 

俺はシャルルに右手の指をさしながら左手を口元に近づけて人差し指を口前に翳す。

 

「シャルルが起きてしまうから、静かにな」

 

 

 

この日の深夜、俺は正宗とAICの攻略に関して話しあいに熱を入れて話し合った。


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