装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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アリーナへ強制的に入る方法は一つでは無い

シャルルの件が終わってから二日経った放課後。

俺とシャルルは訓練をするために第三アリーナに向かっていた。

あれからシャルルと話したが、女の子に戻るのは月末のトーナメント戦が終わってからにするそうだ。

何でかと聞いたら、

 

「だってそのほうがきりがいいし、月始めのほうが新しい感じがするから」

 

だそうだ。気持ちは分からないまでもないが、それで苦労するのはそれを処理する先生方だということを忘れないでもらいたい。

歩いて向かっている最中、通りすがった女子たちが話していることを小耳に挟んだ。

 

「ねぇ、ちょっと聞いた!? 今、第三アリーナで代表候補生三人が模擬戦してるって!!」

 

代表候補生三人が模擬戦をしているらしいな。

 

「訓練の前に見学してみようか」

「そうだな、見てみるか」

 

そうして俺達は第三アリーナに入った。

 

 

 

入って早々ざわざわと騒がしくなっていた。

その中に箒がいたのを見つけ、どうしたのか聞いてみる。

 

「よう、箒」

「!? 一夏・・・来たのか」

「どうしたんだ、この騒ぎは? いくら代表候補生の模擬戦と言ってもそこまで物珍しいものではないだろう。騒ぎすぎじゃないのか」

「まぁ、そうなんだが。とにかく見てみればわかる」

 

そう言われアリーナに目を向けるとセシリアと鈴、そして何故かラウラ・ボーデヴィッヒが模擬戦をしていた。どうやらセシリアと鈴が組んで2対1でラウラ・ボーデヴィッヒの相手をしているらしい。

 

「私もさっき聞いたのだが・・・向こうが二人を挑発したらしい。それで模擬戦になったとか」

「挑発? また随分なことだ。ボーデヴィッヒのやつは戦闘狂か何かか?」

 

そう言いながら模擬戦を見学をし始める。

セシリアは遠距離から射撃で交戦し、鈴は衝撃砲を放つが、ラウラ・ボーデヴィッヒが手を翳すと見えない壁にあたったかのように止められてしまう。

 

「何だ、あれ?」

「たぶん・・・・・・AICだよ」

「AIC?」

 

俺が?を浮かべるとシャルルが丁寧に説明してくれた。

 

「アクティブ・イナーシャル・キャンセラー。通称AIC、慣性停止能力のことだよ。PICのことは授業で習ったよね。AICはそのPICをさらに発展させたものなんだ。あれはエネルギーで空間に作用を与えて物体の慣性をゼロにして停止させることが出来るんだよ」

「へぇ~、そんなものもあるんだな」

 

説明を受けている間も模擬戦は続いていく。

セシリアと鈴は善戦するも飛び道具を封じられ、また自身を停止されたりして攻撃を受けてしまっていた。ラウラ・ボーデヴィッヒはさらにワイヤーブレードを展開して距離を選ばない戦いを繰り広げていく。

その内二人ともワイヤーブレードに捕まってしまい、振り回され引きずられ地面に倒されたりしていた。ラウラ・ボーデヴィッヒはさらにセシリアの頭を踏みつけ、ワイヤーブレードを巻き戻し鈴を過剰なまでに殴り始める。

二人ともどんどんISの装甲が砕け始めた。

 

「ひどい・・・あれじゃシールドエネルギーが持たないよ!!」

「たしかにあれはやり過ぎだな」

 

どう見てもやり過ぎだ。あれでは模擬戦の域を超えてしまう。

どうやらラウラ・ボーデヴィッヒはISが強制解除されようとも気にしない腹づもりのようだ。二人の命に関わることなのに・・・わかってやっているのだろう、あの顔は。

 

「さすがにあれは不味い。止めてくる」

「でも一夏、どうするの!? ここからアリーナのカタパルトまでは結構遠いよ! あっちまで行ってたら二人のISは持たないよ!!」

「シャルル、少し落ち着け。今思いついたんだが、手がないわけじゃない。このシールドバリアーを突破する」

「そんなこと出来るの!?」

「まぁ・・・たぶんな。あぶないからみんな離れて!!」

 

俺は早速行動に移すためにまわりの人たちをここから離れるように言う。

実際にこのシールドバリアーを突破する方法はある。

正宗のある正宗七機巧を使えば突破できるだろうが、周りの被害が凄すぎてこんなところでは使えない。師匠や師範代ならこんなもの、ものともしないで行きそうだが。

となると俺が思いついたもう一つの方法を試してみるしかない。正宗はかなり怒ると思うけど、仕方ないか。後で謝り倒すしかなさそうだ。

 

「来い、正宗!!」

『応』

 

俺の呼びかけに応じて正宗が俺の目の前にズシンッ、とした重厚な音を立てて飛び出してきた。

 

「正宗お前に一つ問う」

『なんだ、御堂よ』

「お前は天牛虫だよな」

『我は劔冑ぞ! そのようなっ』

「いや、お前が劔冑なのはわかってるって。そうじゃなくてお前のモデルは天牛虫で合ってるか聞いてるんだ」

『それはそうだが・・・・・・なんなのだ、御堂』

「たしか天牛虫は木に穴をあけることができたな。正宗、モデルがそうならお前も同じことが出来るはずだ・・・・・・この部分に穴を開けろ」

 

俺はそう言ってシールドバリアーが発生している足下の壁を指す。

 

『御堂は我にあの虫けらと同じことをしろと言うのか! この破邪の聖甲たるこの我に!!』

「そういうなよ。俺だってこんなことはしたくないけど、時間が無いんだ。急いでるからそこを何とか頼む。いくらでもあとで謝るからさ」

『・・・・・・仕方ない御堂よ。確かにあそこの様子を見れば急がねばならぬようだな。相分かった。今回限り、我はあの虫と同じことをしてやろう』

「すまん、恩にきる」

 

正宗は了承すると早速壁にへばりつき何かをし始める。ここからはよく見えないが、ゴリッ、バキッ、ブチッ、と何かが砕け千切れる音が聞こえる。

 

『御堂、少し離れていよ』

 

正宗はそう言って俺を壁から離れさせると、自身も壁から身を離し後ろに少し下がる。

壁は見るも無惨になっていた。

 

『DYARYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA』

 

正宗はそう叫びながら壁に突進して激突。

壁はとどめの一撃を受けて砕け散り、物の見事な穴が空いた。

人一人がしゃがめば通れそうだ。

 

「よし、正宗、よくやった。それじゃあの二人を助けに行くぞ」

『応』

 

俺は正宗をつれてその穴をくぐり、アリーナに侵入した。

 

 

 


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